永久(おわりな)きグリシオン

Last-modified: 2015-03-29 (日) 21:21:09
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簡潔に言うならば、ヤルダバオートである。

(以下はツクヤ=ピットベッカーの交霊筆記による。要部外秘。誰も信用するまいが)
人魔大戦を導いた存在の一つ。実際には彼女のみの意思によるのではなく、
複数の存在の思惑が一致し、誰も阻止しなかったが故にかの大戦は起きた。
その内での彼女の思惑は、世界秩序の再編、及び肥大化し過ぎた人魔の力の削ぎ落とし、
及びに生命体の間引きである。彼女としては、相争わせる事でより優れたものが
生き残ると思っていたようだが、結果として彼女自身が否定されたのは歴史の皮肉であると言える。


彼女、というには理由がある。彼女は元を正せば人間であり、ニホンというかつてあった国が出身である。
そして、現在における事象システムの発見、遥か過去から現代の断絶の原因を齎したのが彼女である。
単一の人格を保つというのは、単に彼女が元より一人の人間であったからに過ぎない。
尚、厳密にはかつての人間と現在の人間は種族からして別物であり、
エルダーデーモンの方が種族としては古の人間に近い。
権能は秩序というと語弊があり、正確には「人間が見出したあらゆる法則を司る」とでも言った方が正しく、
カガク?なるものに基づいたシステム?なるものの権化である。
人であった頃は嘗て滅んだ世界を蘇らせる事を己の責務としていた。
事象システム、及び古き魔物達については彼女らが直接作りだしたものも数多い。
代表例としてはエルダーデーモン、古巨人が挙げられる。
これは彼女がそれぞれ個体としての完成、及び科学が夢見た理想社会と技術を託す存在として生み出したもの。
エルダーデーモンには考えうる限りの個体としての完全性とその僕たる古龍を、
古巨人──こう呼ばれるのは彼らが巨大なカラクリ人形を操っていたからだ──には
人間のあらゆる英知と技術、そして完璧な社会組織を与えた。
彼女は己の幻想に従い、地上に楽園を建設せんとしたのである。
だが、全てをカガク的部品としてしか見ない彼女の愚かさが反逆を招いた。
彼女はゴウリ的カガク的に行動し、その結果厳密に間違えたのである。
為に、エルダーデーモンと古巨人は彼女を裏切り、戦によって滅んだ。
以後、彼女は積極的に何かを作り出す事を極度に怖れるようになった。


彼女は変われない。変わらない。それは悲劇ではあるが喜劇でもある。
しかし、不易なるもののなかでも常に移ろうものはある。
楽園などなかった。だか、ただ世界は変わらずあり続けた。
黙して語らぬまま。結局のところ、このヤルダバオートは神に敗れたのだ。

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