2021年5月30日、小林亜星が死去。今作は氏が初めてゲーム音楽に挑んだ作品である。作曲と監修は亜星が務めているが、歌謡曲/CMソング/アニメ仕事などと同様、編曲は他者に依頼されている。その発注先として、本CDの為に録音された(ゲームでは未使用の)アレンジバージョンは、時代劇スター大友柳太朗の長男、中冨雅之(本名:中冨雅至。2011.11.1逝去)が、ファミコン版は樹原涼子がそれぞれ選ばれている。FC音源プログラミングは開発会社アドバンスコミュニケーションのサウンド部門だが、当ゲームにはそのアドバンス社と発売元のビクター以外に2社が関わっている。
1つはNHKサービスセンターで、シルクロードの情報提供を行ったようだ。もう1社は(当時まだ桝田省治が在籍していた)広告会社I&Sで、ここからCM音楽でつながりの深い小林亜星へ発注されたと言う見立てが出来る。CDアルバム全体のディレクションは亜星の会社・アストロミュージックの木原茂夫が担当。木原は桝田省治がシナリオを書いた『桃太郎電鉄』(1988)でサザンオールスターズ・関口和之のメロディーを樹原涼子と共にFC編曲を担ったことがある。『虹のシルクロード』には枡田もハドソンもさくまあきらも関わっていないが、I&S周辺から生まれた制作物の一環として、似た存在と思っていいのかも知れない。
さてアレンジバージョンの内容だが、当時ビクターからCDを発売していた縁からか、ダンガンブラザーズバンドの中島文明とTAN TANこと森野多恵子(1998年逝去)をボーカルに起用。シンセインストや、中冨の本業であるジャズピアニストとしての手腕が垣間見えるピアノソロなどを収めてある。全体としては可もなく不可もないと言った感じで、1991年であればもっと手の込んだシンセプログラミングが幾らでも存在したようにも思う。やはり本作の主人公は同時収録のFC音源で、中近東~インド~中国と各国土着の音楽的特色を忍ばせた牧歌的なメロディーは、珍道中的な朗らかなムードを醸している。アラビックメロの戦闘曲にみられる中毒性の高さは、CM仕事で培った短尺作曲術が活きているのだろう。
亜星の訃報をうけた樹原のツイートによると、(何かしらの)アニメ案件や、レナウンのCMソング「ワンサカ娘」のレコーディングにも立ち会うなど、本作以外でも亜星とは縁があったようだ。なお、亜星のゲーム関連仕事として、『高橋名人の冒険島』(1986)を下敷きにしたTVアニメ『Bugってハニー』の初代エンディングテーマ「愛はメリーゴーランド」の作曲がある。
- アレンジバージョン
01. 風雲シルクロード(タイトル)~熱血タイフーン(バトル)
02. 忘れちゃだめさ(マップ) *vocal曲
03. シルクロード組曲「風の旅人」:灼熱の砂嵐(アラビア)~熱風の街(ペルシャ)~草原の疾風(モンゴル)~神秘の薫風(インド)~悠久の微風(シャム)~万里の旋風(中国)
04. 貿易風にのって(航海)
05. 賢者の風紋(安全地帯)
06. 忘れちゃだめさ~リプライズ(マップ)
07. マホロバ~約束の地(ジパング) *vocal曲 - ファミコンサウンド(モノラルと記載あるが実際はステレオ)
08. タイトル
09. バトル
10. マップ
11. アラビア
12. ペルシャ
13. モンゴル
14. インド
15. シャム
16. 中国
17. 航海
18. 安全地帯
19. ジパング
表記:SUPER GAME MUSIC SELECTION VOL.3「虹のシルクロード」イメージアルバム WINDY ROAD ウインディ・ロード
型番:VICL-5052
発売:1991-3-6
監修/作曲:小林亜星
プロデュース/編曲(arrange version):中冨雅之
編曲(PSG):樹原涼子
プログラム(PSG):笠井治、原田昌亮、蓮谷通治(アドバンスコミュニケーション)
作詞:深沢恵海
演奏:
中島文明(vocal M-2)
TAN TAN(vocal M-2/森野多恵子=大空はるみ)
スージーキム(vocal M-7)
中村信吾(gt from ダンガンブラザーズバンド)
中冨雅之(key)
深澤順(manipulation for HAM)
大城静乃(manipulation)
深沢恵海(voice) *I&S社員?
石井博行(voice for I&S)
録音:岡部潔、沖津徹
マスタリング:ビクター青山スタジオ(エンジニアの記載なし)
ディレクション:木原茂生(アストロミュージック)
パッケージイラスト:榎本一夫(有限会社バナナグローブスタジオ)
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