スマブラ個人小説/PMの小説/亜空の使者(1)

Last-modified: 2011-06-04 (土) 22:33:05








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禁忌は、見ていた



美しい自然、たくさんの生命を。












禁忌は、悔しかった



自分に創造力がないことが。












禁忌は、嫉妬していた



楽しそうに暮らす人形達に。


















だから


















禁忌は、欲した




































この世界を




































          『亜空の使者』 






          第一章 《騒動》

































「さぁいくぞ、カービィ」






赤色の帽子と青色のオーバーオールをまとった男が

構えを取りながらそう言った。

















    空中スタジアム。






お互いが技を、力を、戦術を競い合うこのリングにて

今日一番の試合が始まろうとしていた。












 『マリオVSカービィ』












試合の様子を中継するモニターにはそう書かれている……












「ぼくが絶対勝つ!」






先ほどの風変わりの男の言葉に、

桃色の球の身体をした者が勢いだけは負けじと答えた。






「ではー、そろそろ試合開始なのです!」






実況席からマイクを通し、少々変わった声が会場に響く。

その声の持ち主、マイクの後ろには、深緑のローブに身を包んだ者がいる。

彼はマイクに向かって続けた。






「両選手とも、準備はよろしいでしょうか!

それでは試合開始の合図を!」












そして開始へのカウントダウンがはじまる


















          












          












          












          GO!
























対峙していた二人の戦士は、そのサインと同時に駆け出した……!

























そのころ実況席……






「……」






先ほどの深緑のローブの者が、実況席から無言で試合を眺めている。



しかし彼はいつものように試合の実況をするでもなく、

実況の場を後にしてしまった。












    彼の名前は『エインシャント卿






このスタジアムのオーナーであり、試合とあれば実況も務める。

ここをよく利用する者には馴染み深い存在である。



今、試合中のマリオ・カービィなどもスタジアムの常連で、彼とは親しい仲であった。






……そんな良いオーナーである彼が、なぜ今日は実況という大切な仕事を投げ出すのか。
なぜ実況席を、スタジアムを後にしようとするのか。


















    彼は今、それ以上に大切である使命をさずかっていたのである。

























時を同じくして……






スタジアムでの戦いに終止符が打たれた。






    『そこ』には、人形となったカービィの姿があった。












……












「……あれ?」






普段との違いに、マリオが違和感を感じとる。












試合結果の実況がない












「おーい、オーナー!」






エインシャント卿(オーナー)を呼ぶマリオ。



しかし返事はこなかった。 マリオの声だけがむなしく響く。



今日の流れは全部オーナーに任せてあるので、彼がいなければ進行ができない。

困ったことになってしまった。



困惑しながらも、マリオはとりあえずカービィを人形の姿から開放する。


















「う~ん…… またぼくの負けかぁ」






そんなひとりごとをこぼすカービィとは代わって、

マリオは真面目な表情をして辺りを見渡していた。






「……どうしたの?」






彼のただならぬ雰囲気にカービィも気づいたようだ。






「……オーナーはどこにいった?」






その言葉でカービィは実況の方へ振り向く。



目に入ったのは、ガランとした無人の実況席。












「あれ、オーナーは?」






「だからそれを聞いてるんだって」












スタジアムにはマリオとカービィの二名のみ。

今日は練習試合(リハーサル)だから観客もいない。






……いや、正確に言えば、二人だけこの試合には観客がいた。

その『彼女ら』もスタジアム上の二人の様子を心配に思ったのか、

マリオ達の元へと静かに降りてくるのであった。












「あ……」






思わずマリオが声をもらす。



降りてきた二人の人物のうち片方、それはマリオのよく知る人物であったからだ。












ピーチ姫 じゃないですか」






そう、ピーチ姫である。 そして彼女の隣には、上品な格好をした女性がもう一人。

こちらは、マリオとは面識がなかった。






「あの、そちらの方は?」






「 ゼルダ といいます。 あなたがあのマリオ様ですね。

お話はよくピーチ姫から伺っております……」












「あぁ、あなたが……!」






    聞いたことのある名前だ。 ハイラルのゼルダ姫。

まさかこんなところで出会えるとは……












「というかピーチ姫。
周りにキノピオたちがいないってことは、もしかしてまたこっそりとお城を抜け出して……」






「え? やっぱり分かっちゃうかしら」






「……キノじいがエラく騒ぎますよ」






「大丈夫、彼にはバレないよう上手く手配してあるから!
ゼルダ姫だって似たようなことやっていますし……」






「そ、そうなのか……」






これでいいのかキノコ王国!?






話をしながら、国の行く末が心配になるマリオであった。
























「おーい、マリオ~」






話の流れから外れていたカービィが

マリオの赤いシャツの袖を引っ張っていた。

それでハッと我に返る。






「あ、そうだった。 それでピーチ姫、ここのオーナーさんを見てませんか?

深緑のローブをかぶった方なのですが」






マリオがピーチ姫にたずねた。






「ごめんなさい、私達もずっと試合を見ていたもので……」






「そうですか……」






マリオは思わずため息をついた。


















そのとき


















「!?」












スタジアムを轟音が襲った。






そのやかましい音とともに毒々しい排気ガスを噴出しながら

一機の大型の飛行船がやってくる。












「あ、あれ、ハルバードだ!」












カービィは驚きを隠すことができなかった。






飛行船の頭部…… つまりその正面にはまるで仮面のような外装が施されている。



モデルとなったその仮面の持ち主、

カービィはその人物をよく知っていた。












メタナイト、どうして……?」




























突如飛来した飛行船は、瞬く間にスタジアムの空を埋めつくしてしまった。






見上げても視界に入るものは青い空ではなく、灰色をした金属のカタマリだ。



だが、視界に入ってくるのはその色だけではない。

船の灰色を背景にして、紫色の斑点がうごめいているのが分かった。

その紫点は、スタジアムにも粉雪のようにふりそそぐ。



そもそもが身体に悪そうな色である。

ゆえにもちろん、初雪が降るときのような喜びや感動などは一切なかった。

むしろ、そのような正の感情を奪い去っていく、そんな感じさえした。






そして、その『負』の紫点は

具現化し、マリオの前に形となって現れた。






「なん……だ? こいつらは……!」






まるでおもちゃの兵隊のような姿をしたモノがマリオの目の前に

うじゃうじゃと湧き出てきたのだ。



あの紫の点が集まってこのおもちゃの兵隊を成している、

マリオにはそう見えた。






奴らは敵か、味方か。



そう思っていたときだった。






「……」






先頭に立っていた兵隊の一人が、静かにビームソードをとりだした。






この瞬間で、マリオ達は次に何が起こるかを悟った。






先頭のビームソードに続き、兵隊達の群れの一人一人が

ブーメランや大砲などの武器を取り出す。



中には、己の拳をふるっているものもいた。

‘この拳が武器’そう主張しているのであろうか。






「ムー!」






先頭の奴が大きな掛け声をあげる。 












……来るぞ! みんな!












マリオの第六感が迫り来る危険を察知し、そう叫んだ。









それは的中、全ての兵隊がいっせいに襲い掛かってきた……!















「……」






ハルバードが過ぎ去り太陽の輝きを取り戻した空



エインシャント卿はスタジアムの混乱をじっと見つめていた……




























……






兵隊は全くと言っていいほどその数を減らさない。



いくらマリオがスマッシュを決めようが、ゼルダが魔法で投げ飛ばそうが……

虫のようにうじゃうじゃと際限なく湧き出てくる。






「くそっ……! キリがない!」






マリオ達が負けるのは、もはや時間の問題になろうとしていた。






「と、というかこいつらは何なの!?」






追ってくる兵隊をハンマーで蹴散らしながらカービィが言う。

その表情には明らかに疲労の色が見えていた。






「し、知るかいそんなこと!」






そう言いつつトルネードで敵を巻き込むマリオがいた。



カービィ同様、敵の素性が気になるであったが、それ以上に疑問に思うことが一つ。






    あの人…… オーナーは、どこで何やってんだ……!



















エインシャント卿。



スタジアムのオーナーであり、多数のファイターと親しい存在でありながら、

誰一人として彼の正体を知るものはいない。






「……だいぶプリムに時間は稼がせたけどさ、ロボット、アレの準備は?」






薄暗い空間の中    ロボットと会話を交わす彼。






「ハイ、ヌカリハアリマセン」






部屋の中で、ロボットのランプだけが不気味にかがやいていた。






「ならいいんだ」






エインシャント卿はゆっくりとうなずいた。















    そう、誰もワタシのことを知る者などいない。












もちろん、これからワタシが何を起こすか、も。



















「はぁ、はぁ…… ぐっ」






傷口を押さえながら、必死でマリオは戦場に立っていた。

まぎれもなく『敗北』が4人を飲み込みこみつつあった。



そしてここまできて、マリオはようやく気づいた。



目の前にいる敵が、無限に現れ続ける理由。









    あの兵隊は機能を停止すると、再び紫の点に戻るみたいだ。

そう、戦いが進むにつれ、フィールドはその紫の点で埋め尽くされることになる。



……問題はその後だ。



あの紫の点は、意思を持っているかのように再び数ヶ所に分かれて集まる。

そうして寄り添ったその紫の点は    



また兵隊となって僕らに襲いかかる……!









どうする……? 



このままじゃ僕らは確実に負ける。



いったんここはひ……









マリオの思考回路はそこで閉じられた。



『閉じる』以外の選択肢はなかった。






あぶない!






ピーチ姫に兵隊の魔の手が迫っていたのを、マリオは見逃さなかったからだ。






「え……?」






ピーチが危機に気づいたとき、彼女は自分を守る準備が全くできていなかった。



    万事休す。






「うおぉぉ!」






次の瞬間、爆音が一帯を飲み込んだ。



マリオの『ファイア掌底』がピーチの背後から迫ってきた兵隊に炸裂した!



強烈に吹っ飛ばされた兵隊が、スタジアムの壁に叩きつけられる。

その方向からはもうもうと煙があがっていた。









「大丈夫ですか!」






「ええ、ありがとう。 マリ……」






二人が手を取り合う直前だった。






ッガン






ぅぐっ……?






マリオの背中を黒く光るラインが貫く。

それはピーチの頭上を通り、観客席へと深く突き刺さるようにして消えた。



全身を鋭い痛みが駆け巡る。

それが、マリオが眠りにつく前 最期に感じたことだった。















……ピーチの前に、コトンと小さな音をたてながら
人の形をした何かが転がり落ちる。

彼女の目の前に見えるのは、マリオ。



    そう、人形(フィギュア)となった彼の姿が。




























……とっさに光のラインが駆けてきた方向に視線を送った。

爆煙が徐々に薄くなっていくと共に、その犯人の輪郭があらわになってゆく。






「あなたは……!」






ピーチがその人物に反応をかえした。












    少しだけなら、聞いたことがある。



ダイヤモンドシティにある、ゲーム会社『ワリオカンパニー』経営者、



ワリオ。



派手な衣装と彼を象徴する『W』のマーク。

TVでもたまに見る顔であり、認知度はマリオにも劣らない。



その彼が、ここで何を……?












「あ、あの……」






ピーチがおそるおそる声をかけた。






「……」






対して彼は沈黙に徹していた。



彼のイメージからは無言など考えられない。

うるさいくらいにおしゃべりで自慢が好きな人のはず。

何も起こさないワリオを、ピーチは率直に不気味だと思った。












しばらくの間、どちら側も言葉を発することはなかった。

様子を伺い次の戦略を練っているのか、それとも……



長い沈黙の後、奥に立っていたワリオがようやく口を開いた。

しかし、聞こえてきた言葉は    






「その人形をこちらによこしなさい」






とても彼の言葉とは思えない、丁寧な口調だった。



余計に不気味さが増してくる。









「ピーチ姫、あれって……」






カービィがワリオの方を見ながらピーチへ話しかけた。






「えぇ、様子がおかしいわ……」






ピーチはそう言ってもう一度ワリオの方へ振り向いた。



彼の手にはキャノンのようなものが握られている。

おそらくはそれを使ってマリオを襲ったのだろう。

でも、マリオも言っていた。

下品でお金に汚いけどあいつは楽しい奴だって。



……少なくとも、『マリオの言う』彼は丁寧に話す人でもなければ、

いきなり人を襲うような者でもない。



その彼と『今の』彼は、別人としか言いようがなかった。






……嫌な予感がしてならない。









「人形をわたしなさい」









そんな思考も、彼の冷たい一言によってさえぎられた。



感情が無いと言っていいかもしれない、その言葉は。






「断るわ」






もちろんマリオの人形(フィギュア)を渡すわけにはいかない。

だがそうすることによって、目の前のワリオはどのような行動にでるか……

3人は立ちつくす彼をかたずをのんで見守った。






「……そうですか」






そう言いながらワリオは先ほどマリオを射抜いたキャノンを構えだす。









やはりそうくるか……!



予想通り、武力行使にでてきた。



だが、どうすることも……






できない。






ピーチをはじめ3人はわずかに焦りを見せ始めていた。

予想通りのできごとに対して何もできないのか、無力感すら覚えつつあった。









しかし……






『予想通り』はここまでであった。

このタイミングである人物が割り込んできたのだ。



今更になって来るとは予想外、常識の裏を突かれた感じだ。






そいつは、






「もういいですよ。後はワタシに」






エインシャント卿。






彼の言葉は、カービィ達ではなくワリオを助けんとしたものだった。






















「オーナー……? どういうこと……?」






カービィの声は震えていた。 動揺するのも無理はない。 

エインシャント卿が敵に位置しているようにしか見えないからだ……






「こういうことですよ、カービィ」






エインシャント卿はそう言うと、光沢のあるものをこちらへ放り投げた。



カービィ達の前で ゴトン、という音をたてその物体は横に倒れた状態で静止した。






「もしかして、これ……」






十字架の模様が刻まれたプレートの上に、固まった生き物……



カービィ達もこれと同じ種類のものを手にしている。

プレートの文様は、マリオのフィギュアと同じもの。

つまり目の前にあるこれはフィギュアだ。



だが、投げられたフィギュアに型どられているのはマリオではなく、異形の植物……!






着地したフィギュアは光を放ち実体化し始める。






「パックン、こいつらを全員フィギュアにしなさい」






「!」






その言葉にカービィ達3人の顔つきが変わる






「僕たちを、攻撃する気……? どうして?」






「……」






目の前に召喚されたのは巨大なパックン(ボスパックン)だった。

奴がまず狙うのは、マリオを抱えていて動けない ピーチ だ。



……さらにそのマリオはフィギュアから戻らない。






そもそもフィギュアになるのはダメージを負った身体を回復するためのもの。

ある程度のダメージを負えばファイターの意識に関係なく人形と化して身体を守る機能だが、

マリオはキャノンで非常に大きなダメージを負い、その回復が追いついていないがために

まだ戻ることが出来ないでいるのだ。






不意を突かれたピーチはボスパックンに捕らえられ、手に持っていたオリに閉じ込められた。

捕まる直前とっさにマリオのフィギュアを手放したので どうにかマリオの人形は巻き込まれずに済んだようだが……






「ピーチ姫!」






勇気を出してカービィがピーチを助けようとバーニング能力で突撃するが、

ボスパックンはピーチのオリを振り回しカービィを軽くあしらった。






「うっ!」






オリをぶつけられたカービィが吹っ飛ぶ






「カービィさん!」






直撃をもらったカービィを見て、ゼルダが叫んだ。






「ぼ、僕は大丈夫…… それより、マリオをなんとかしなくちゃっ」






言われてゼルダはハッとする。


そうだ、マリオのフィギュア……!

ピーチがボスパックンに襲われた所のそばにあるはずだ。



そう思い目線をすぐにボスパックンの方へ戻す。






「いけない……!」






ゼルダがそう言わせたのはボスパックンではなく、パックンの近くにいたエインシャント卿の行動であった。



   エインシャント卿   は今、マリオの人形を浮遊する台座のようなものに乗せて飛行を始めようとしていた。
行動からして彼は私たちの敵。おそらく、マリオのフィギュアを回収するつもりに違いない。
ゼルダがエインシャント卿の方向へ走る。






「ゼルダ君、キミの足では無理だよ。 空を飛ぶワタシにさわることすらできない」






エインシャント卿とマリオを乗せた台座が少しずつ地面から離れていく。






「それはどうでしょうか」






ゼルダがそう言った瞬間、彼女の身体が光に包まれた。






「!」






光が消えたとき、そこにゼルダの姿はなかった。






「ム、どこに……」






視界から一瞬で姿を消され、エインシャントはゼルダを見失う。






エインシャント卿と台座は地面から5mほどの高さに位置していた。













「あ……」






正面からその光景を見ていたカービィは気づいた。 シークは今……



エインシャント卿の後ろにいる。

彼の左手には、4本ほどの仕込針。






「ム、後ろか」






だが、エインシャント卿はあくまで落ち着いた様子だった。






「ッハ」






そしてシークが針を投げる。 狙いは、エインシャント卿。






針には、即効性の弱い麻酔が仕込んである。
シークの算段では、この針でエインシャント卿の動きを止め、台座ごとエインシャント卿を地上へ叩き落とすつもりだった。
左手で針を投げたのも、もしものために右手に鉄仕舞を構えられるようにするため。






しかし、針はエインシャント卿に届くことはなかった。






バチッ!






一瞬、何かがはじけるような音がしたと思うと、仕込針はバラバラと落下し始めた。






「シールドか!」






「その通りだよ」






エインシャント卿の周囲の空間に瞬間的にシールドが張られ、シークの針を食い止めたのだ。





「ワタシに危害を加えるのは、まだキミには難しいかな」






「何を…… くっ!」






台座についている小さな砲台から赤い光線が放たれ、落下してゆくシークの肩に当たる。

地面との激突を避けるため受身をとり、後転しながら体勢をたてなおす。

だがその頃には、エインシャント卿とマリオの人形は、シークの手の届かない高さにいた。



あの高度では…… カービィでも無理だろう。






「パックン、そいつらを足止めしておくんだよ」






そう言い残してエインシャント卿は人形とともにハルバードの中へ消えていった。






「くそ…… マリオが!」






しかし悲しんでいる暇など与えられなかった。






「ォオオォンン!」






ボスパックンがおたけびを上げる。






「うっ」






シークが少したじろぐ。






くそ…… だが、まずはこの巨大植物をどうにかしなければ!

当面の問題はこいつだ。



しかしそこまで考えたところであることを思い出す。












そういえばさっきのワリオとかいう男は……












そう、彼は再びキャノンを構え、砲口をあるところへ向けていた。



その先には…… カービィ。












タッ












シークが軽やかな足取りでカービィの元へ全速力で駆ける。



なんとかキャノンが発動する前にカービィまでたどり着き、小さなカービィの身体を抱えて逆の方向へとダッシュ。






「わっ」






突然抱え上げられたカービィが小さな悲鳴をあげた。

その瞬間キャノンが放たれる。 砲は空を切り二人には当たらなかった。



しかし次の関門が。 ボスパックンがシーク達に横からピーチのオリを叩きつけようとしていた。



シークは持ち前の動体視力でパックンの攻撃を見切った。

ジャンプで横方向からの追撃をかわし、さらにそのまま浮身を使いボスパックンの上まで移動した。
そこから先ほどの針を数本落とす。
針は全てボスパックンに刺さり、即効性の麻酔効果でパックンは力なくその場に倒れこむ。



これでパックンはやり過ごした。残りはワリオ。






手に持っている砲台さえ引きはがしてしまえば何とかなるはずだ。

シークはカービィを降ろし、ワリオの方向へと駆け出した。













スタジアムの一角、さっきまでエインシャント卿とロボットが会話していた薄暗い部屋の中。



今は二体のロボットだけがこの部屋にいる。

その空間でひときわ目立つものはロボットの頭にある小さなランプの光だろう。

だがそれに加えてもう一つ。ロボット二体に挟まれるように置かれている装置。

それに表示されているデジタルの数字が青く不気味に輝いていた。






00:45:02






00:31:09






00:18:74






00:07:03






数字が淡々とカウントダウンを刻む。



戦士達はそんなことを知る由もない。



















スタジアムのリング。






軽やかなステップを踏み、ジグザグに走りシークはワリオに近づいていく。

黒い光線をギリギリのところで避ける。それをワリオの元まで続ければよいのだ。

光線はシークの走りについていけない。

まるで見当違いの方向へ飛んでいるように見える。



カービィから見て、シークがワリオの元にたどり着くのは一瞬の出来事だった。

接近した瞬間、シークは素早い蹴りでワリオの持つ砲台をはじき飛ばした。



あとはこの男を取り押さえれば  



それを実行に移そうとした瞬間だった。






『00:00:00』






大きな地響きがスタジアムを襲う。






「何だ!?」






見るとスタジアムが黒い空間のようなものが突如発生し、周りのもの……

いや、空間を飲み込んでいた!



その黒い空間は少しづづ大きくなり、シーク達まで飲み込もうと迫ってきていた。






「ッ、次から次へと……!」






シーク自身、かなり混乱していた。



もう何が起きているか分からない。

全てを諦め黒い空間に身をゆだねようとしたとき、

シークは何かに手を引っ張られ、その身体は宙に舞った。



















空を漂っている間に少しは状況が理解できた。

自分の手を引っ張ったのはワープスターに乗ったカービィ。

すんでのところで彼に助けられたのだ。



そしてスタジアム……



謎の黒い空間に飲み込まれ、もうそれは存在していなかった。

かつてそれがあった場所には黒く穴が開いた空間のみ。

スタジアムの面影などは全く残っていなかった。

見下ろす限り、空間の侵食だけは止まってくれたようだが……







「ピーチ姫はどうなった?」



ようやく落ち着いたシークが問いかけた。






「ごめん、きみ一人助けるだけで精一杯だった……」



カービィが低い声でそう返した。



ピーチ姫の入ったオリがパックンの下敷きになってしまっていたようで、

助けようと思っても間に合わなかったそうだ。

さらに彼が言うには、あのワリオとかいう男も一緒に巻き込まれてしまったらしい。

もちろんパックンも……






「……そうか」






だからといって、自分以上に落ち込んでいるカービィを責めようとは思わなかった。












「このままハルバードを追うよ」






その言葉と同時に、暗い目から、強い目へと。 カービィの目が変わった。






「分かった」






闘志を燃やしたカービィとシークを乗せたワープスターは、スピードを上げハルバードへ向かっていった。



















ハルバードのブリッジ。



そこにカービィとシークは降り立った。

ここには見回りのような者はいないようだ。

潜入口を求めて、強風が吹き荒れる戦艦上を探索し始める。






「確か、裏口的なものがこっちにあったはず……」






カービィは一度ここに来たことがある。






その記憶を頼りにシークとともに忍び足で移動する。



そのとき、大きな音をたてハルバードの主砲が作動した。






気づかれたか……!






二人は口には出さず心の中でつぶやいた。



しかし主砲はこちらを向くと思いきや、全く別の方向に照準を合わせていた。

そもそも艦上にいるものに主砲など撃つはずが無いのだが。






……主砲の指す方向を見ると、飛行物体が迫ってきているのが確認できた。

小型の戦闘機だ。

主砲はアレに狙いを定めているに違いない。

そして次に主砲に目をやった瞬間、そこからはすでに青白い光線が放たれていた。



戦闘機は直撃こそまぬがれたものの、翼に光線がかすってしまい、飛行に大きな乱れをきたしていた。

その戦闘機はめちゃくちゃな飛行のままカービィ達の方へ向かってきている!

操縦がままならない状態なのだろう。


幸い、戦闘機と直接ぶつかるのは避けられたが……






「「うわぁぁ~!」」






戦闘機がすぐそばを横切ったときの多大な風圧に耐え切れず、

カービィとシークは宙に放りだされてしまった。









~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


















場所は大きく移り変わる。



天使の住む楽園、天界の『エンジェランド』で一人の天使が地上の様子を眺めていた。






「こ、これって……!」






今、天使の目には、黒い空間がスタジアムを飲み込む瞬間が映っていた。



ちなみに直接見ているわけではなく、

不思議な水晶のようなものに地上の様子が映りこんでいるのである。

その天使はよくスタジアムで行われる試合を天界から一人観戦していた。

大体スタジアムにくる顔ぶれは覚えてしまったほどだ。

今日、お気に入りであるマリオの試合(のリハーサル)が見られると知ってワクワクしながら様子をのぞいていたのだが……



映りこんだものは試合ではなく、紫の何か、襲い掛かる兵隊に、黒い空間。






天使はこのことを、エンジェランドを治める女神パルテナに報告しようと走り出した。



















「パルテナさま!」






パルテナの元へたどり着いたその天使は、大きな声で女神の名を呼んだ。






「パルテナさま、大変なんです。ち、地上が……」






ピット、あなたの言いたいことは私も分かっています…… 

地上が、得体の知れないものに襲われている…… そのことですね?」






「は、はい!」






『ピット』と呼ばれたその天使は威勢の良い声で返事をした。






「今、地上で何が起こっているかは私にも分かりかねます……

しかも、マスターハンド・クレイジーハンド。 

このお二方とも意思の疎通が届かない状態にあります」






「あ、あの方達と連絡がつかないんですか!? そんなことは……!」






ピットはおどろく。あの方、この世界を創ったあの方達が消息不明?

今までこんなことはなかったはず。そんなことは本来あるハズがない。






「しかし現実に起きているのです、ピット。私は今、お二方の意識を探っていますが……

見つからないということは、何らかの事情で地上にいらっしゃる可能性もあります。

……そこでピット。あなたにお願いがあります」






「パルテナさま……」






「地上で何が起こっているか、調べてきてほしいのです」






女神パルテナから天使ピットへ、一つの命が下った。






「分かりました! パルテナさま!」






ピットはすぐにそれを受け入れた。

それがどれだけ大変なことなのかあまり分かっていないだけなのかもしれないが。






「では、あなたにこれを渡します。何かあったときにだけこの神弓を使うのです」






そして、パルテナからピットにまぶしい輝きを放つ神弓と鏡の盾がささげられた。






「ありがとうございます! パルテナさま! 僕、行ってきます!」






ピットはそう言って天界の門へと走っていった。






「あ、待ちなさいピット! あなたはまだ確か…… だ、大丈夫なのでしょうか……?」



















天界と地上をつなぐ門にたどり着いたピットは両手でその扉を押す。



ギ、ギィと音をたてながら扉が開いた。






「こ、ここを出れば地上か……」






ピットは思わず息をのむ。



そして……



深呼吸をして気持ちを落ち着かせた後、下に見える雲海へ飛び込んだ。






ピットの身体は重力にしたがって落下していく。

下から感じる風はピット全体を包み込んでいた。







    そして僕は翼を広げて……







ここで大事なことに気が付く。




    僕は、



    飛べない。






正確にいうとまだまだ飛ぶ技術が甘い。

何かの見よう見まねで翼をばたばたさせてみるもみるみる高度は落ちてゆき……









 「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」









結局、まともに飛べずに地上へ落下していった。



 「パルテナさまぁぁぁぁぁ!」






ピットの落下は止まらない。

分厚い雲を通り抜けると、うっすらと地上が見え始めてきた。






    まずい、このままじゃ地面と激突する……






そう思い、翼を動かしてもがく。

少しだけ落下が遅くなったような気がするが、それでも危険だ。






    どうしよう!






下に目を向けると地上の様子がはっきりと分かるようになっていた。






    このまま行けば僕は!






眼前には緑色の木々が生えている地帯。



そう、森に落ちる。






「ぅぅぅ~!」






最後の力を振りしぼって翼を大きく動かす。

森を目の前にして落下速度が落ちつつあった。






「う、わぁぁぁ~!」



















ばきっ ぐしゃ



ピットを受け止めた木がバキバキ折れてゆく



ぼよん 『ふぎゃ!?



その直後何かやわらかいものにぶつかった。

自分のものではない声が聞こえた気がするが気のせいだろう。



ドサッ



そしてついに地面にたたきつけられた。

最後の頑張りでかなり速度が落ちたので、大事には至らなかった。






「あいたたたた…… ここどこだろ」



自分の置かれている状況を確認しようとあたりを見回す。

すると自分の後ろには……






『うぅ~ん、イタいです…… 誰ですか寝てるときに……』






緑色をした カメレオン? 恐竜? がいた。






    もしかしてさっき僕はこの生き物にぶつかったんじゃ?






「あ、あのぅ」






ピットはおそるおそるその緑色に声を掛けてみた。






『ん? アナタは誰ですか?』






そう言ってその緑は顔をあげた。






「あ、あなたは、ヨッシーさんですか? スタジアムの試合にもよく出ている」






自分が天界からスタジアムの様子を見ていた頃、この緑色の恐竜はよく目にしていた。

彼も闘技場のファイターの一人。『ヨッシー』という名で来ていた記憶がある。






「わ、わたしのことを知っているんですか?

ちなみに『ヨッシー』というのは種族名で、わたし個人の名前は『エメラ』っていうです。

なんか緑色の宝石からとった名前らしいですが。スタジアムにはヨースター島の代表として来てるです」



エメラというヨッシーはそう自分の素性を述べた。






「ぼ、僕はピットっていいます。天界のエンジェランドという所からきた天使です」



    僕も自己紹介で返したけど、いまいち信じてもらえる気がしないのはなんでだろう。






「て、天使ですか? 聞いたことないですけど…… と、とりあえずよろしくです」






「こちらこそ、よろしくおねがいします」






「それでピットさんは天界から何をしにきたんですか?」






エメラからそれを言われて自分の使命を思い出す。






「そうだった! 今、地上が大変なことになっているんです! エメラさんは知らないんですか?」






「う~ん、よく分からないです」






地上でも知らない人がいるということは、まだ大騒ぎにはなっていないということか。



そう考えたとき、自分達のいるところが影におおわれた。

二人とも空を見上げる。



目に映ったのは青空ではなく……






「戦艦? あれは確か!」






ハルバード。






ピットは名前こそ知らないが、あれがマリオ達を苦しめたところは天界からしっかりと見ていた。

そしてハルバードはあの時と同じように紫の点をばら撒く。






「い、いったい何ですか?」






「エメラさん、気をつけてください」






見る見るうちに紫は実体化をはじめる。マリオ達のときと一緒だ。

つぎつぎと武器をもった兵隊があらわれる。






「ま、まずいです。数か多すぎます。ピットさん、よく分かりませんが今は逃げるです」






「わ、分かりました」






戦おうかと思ったが、よく考えれば自分は戦闘に慣れていない。

やはり逃げるのが得策だろう。






しかしいかんせん数に差がありすぎた。



行く手は阻まれていき、いよいよ戦う以外の選択肢がなくなってくる。






「こうなっては戦うしか…… ないですか」






「た、戦い……」



戦い。ピットに一瞬の恐怖がよぎる。






    だめだ。僕も戦わなくちゃ。



……しかしその必要はなくなる。






ドゴォォォォォ……






行く手を阻む兵隊が突如爆風で吹き飛ばされたのだ。



その先には……






『無事ですか!』






緑色の衣をまとった勇者がいた。



ピットはやはりその姿に見覚えがあった。

   あれは、『リンク』さんだ。

スタジアムによく稽古しにくる剣士の一人。

今の爆風は彼の爆弾によるものだと思う。






「リンクさんですか? 助かりましたです!」






当然、スタジアムに通うエメラとリンクはお互いに顔を知っている。






「ここは僕が足止めしますから、あなた達は先に安全なところへ!」






リンクはそう言い放った。






「でもリンクさんはどうするですか!?」



とエメラ。






「後で必ず合流します! だから今はその子を連れて!」



リンクが剣で兵隊を追い払いながら言った。






「……分かりました。ピットさん、わたし達はひとまず退くです!」






「は、はい」



エメラに手を引かれるままにピットは足を進める。



















そしてリンク。



斬っても斬っても復活する兵隊に一人苦戦していた。






「だめだ、キリがない……」






ピットとエメラは避難できたようだ。自分もほどよいところで一度退いた方がいいのだが……

復活して行く手をふさぐ兵隊が邪魔をする。



八方塞がり、絶体絶命。



そのとき。






リンクの視界を白いものが横切った。



それと同時に目の前の兵隊が破壊されているではないか。

破壊された兵隊はそれぞれ紫の点にもどる。






そしてリンクを助けた白い物体はそのままリンクをさらい、高速で森の奥へと突っ切ったのだった。



















安全地帯まで来た後で、白い物体はリンクを降ろした。



リンクが降り立ったそこにはエメラと白い翼の少年、カービィにシーク……?

リンクはシークがいたことに驚きを隠せない。






「ゼ…… シークがどうしてここに? それにカービィも」






「事情ならそこの白い手袋の方がよく知っているようだが」









あの後、ハルバードから落下したシークとカービィは途中でこの『白い手袋』に受け止められ、

事なきを得た。そうして「ここなら安全だ」とこの森に連れてこられて今に至る。










『白い手袋』。目の前の白い生き物はまさにそうとそうとしか形容できないフォルムだ。

彼はリンクとエメラに、シークとカービィのこれまでの経緯を簡単に説明した。






「話だけ聞いても一体何が起こっているか分からないですね。ところでアナタは誰ですか?」



ピットのときと同じようにしてエメラが目の前の『白い手袋』に訊いた。






『あ? おれは…… まぁ手袋って呼んでくれてもなんでもいいが』



手袋はそう応えた。






「じゃあ左手さんで」



カービィがすばやくつっこんだ。

手袋は良く見れば左手の形をしているからだ。






「じゃあそれでいい」



左手は続ける。



「あの紫色の変な粉…… あれが何かこの世界にやらかしてくれてるみたいだな」






「世界とは、ずいぶんとスケールの大きい物言いだな」



シークもつっこんだ。






「あ、まぁそれはおいといて。

おれはちょいと事情があってその原因というか黒幕を探ってる途中なんだ。

たまたまここに来たとき、お前達が襲われているのを見て…… 今に至るワケだが」



左手が一通りしゃべり終えた。






「そう、じゃあわたし達の敵じゃないんですね。よかったです」



その場にいた全員の表情が少しだけやわらいだ。






一人を除いて。






「ピットさん、どうしましたか?」



エメラが一人様子のおかしいピットを見て言った。






「あ、いや、何でも……」






    どうして左手様がここに!?






目の前の左手袋はパルテナに『クレイジーハンド』と呼ばれた、この世界の創造主の一人だ。

地上の者は彼のことを知らないだろうが、天界に住むピットは彼とつながりがあり、少しは彼を知っていた。






「み、みなさ……」






このことをピットは地上の皆に説明しようとした。



が、






《ピット、ストップだ》



頭の中に届いた左手様の声が、それを静止した。






《ど、どうして》



ピットは自分の思考を左手のテレパシーにのせ、彼との会話を試みる。






《今、こいつらにおれのことを説明しても面倒なだけだ。

伝える必要ができたときでいい。それまで、おれのことは一般人として通してくれないか》



とのテレパシーがピットの頭の中に返ってきた。






《分かりました、左手様》






《悪いな、ピット》






二人の間のテレパシーはそこで途切れた。












「ところできみはだれ?」



とカービィがピットに問いかける。






「僕の名前はピットと言います。い、一応天使です」






「てんし?」「天使……?」「天使?」



それぞれカービィ・シーク・リンク。






    最初は信じてもらえないだろうな。頑張れピット……






ピットを見守る左手は小さなエールを送った。












「さて、おれは調査を再開するが、お前らはどうするんだ?」






「僕は一緒に行きたいです」



使命を授かるピットが真っ先に名乗り出る。






「ぼくも。このまま放ってはおけないよ」



とカービィ。






「僕もだ」



シーク。






「そうですか。では僕もお供します」



リンク。






「わ、わたしはどうすればいいですか……
と、とりあえずここは場の空気を読んで……」



エメラ。









「結局全員か。まぁいい。

……お前らから聞いた話だとハルバードが怪しいみたいだな。

まずはそこからつぶしにかかるか」



左手の言葉。






「地上は広いから…… 探すのは手間がかかりそうですね。早く行きましょう」






ピットのその言葉を合図に、5人は先へ向かって進み始めた。












~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


















ハルバード船内の一角。






……僕は目を覚ました。まだ頭はぼんやりとしている。



まずは気を失う前の記憶をたどってみる。



襲い掛かる兵隊、敵に回ったオーナー、確か僕はピーチ姫をかばって……?






そこまで思い浮かべたところでようやく意識がはっきりする。






「っ! みんなはどうなって……!」






そう声をだした瞬間、何者かの手に口を塞がれた。






『あまり大きな声をだすな、敵に見つかるぞ……

ここは中心と離れているからそう見つかりはしないがな』



そいつは僕の口をふさいでいた手をどかしながらそう言った。






見れば強そうな男だ。かなりの武装もしている。



その男は僕の顔を見て言う。






『君がマリオか』






「あ、あぁ…… あなたは一体……?」






強面といえばそうだが、敵という感じはしなかった。

状況や言葉から察するに、彼が人形となった僕を助けてくれたのだろう。

そしてどうやら僕の名前を知っているようだ。



一体、何者なんだ……?






『俺はソリッド・スネーク

スネークと呼んでもらって構わない』






強面の男は僕にそう名乗った。