Today We Choose Faces
DotAには2種類のヒーローがいる。たった1人のcarryと、それ以外の4人だ。
LoLとその元になったDotAには多くの相違点があるが、実際のゲームプレイにおける大きな違いの一つとして、DotAはcarryの性能が段違いに高いということがあげられる。育ちきったcarryが1対5の場面を余裕で捌くさまなど、LoLでは想像もつかないだろうが、DotAでは日常茶飯事だ。そのため、pubの低レベルなDotAにおける基本戦略はこうなる。
1. carryは安全なlaneを見つけて徹底的にfarmする
2. その他の4人で相手carryのlaneをpushする
これがうまくいけばcarryがfacerollして勝手に試合が終わるし、そうでなければ負ける。単純なゲームだ。それ以外の戦略的要素は一切考える必要がない。
「carry以外にもtank、pusher、sitterとか、考慮すべきロールはあるだろう」
と君は思うかもしれない。ところで君は、アイテム・スキルなしのGoblin Techiesで、10分以内に50/30を達成できるだろうか?
言わずもがな、DotA系のゲームはラストヒットに極めて依存したゲームだ。すべての戦略や戦術、ヒーローごとのバランス調整は、最低水準のラストヒット精度があることを前提にしている。私の知る限り、私を含めた当クランにこの最低水準に達していたものはいない。これは格闘ゲームに例えるならば、昇竜拳が出せないようなものだ。そのような中で、各ヒーローのロール分布を含めた戦略・戦術についてあれこれと考えることは、「昇竜拳が出せないなりに、相手の飛び込みに対処する方法について色々考えを巡らせている」状況に等しい。上級者たちはこぞって言うだろう。「その時間で昇竜出せるようにしろよ」
DotAのプロシーンにおけるプレイヤーのAPMは250をゆうに越える。150が精いっぱいのプレイヤーにはInvokerを扱いきることができないとまで言われるようなゲームに対し、「DotAはWC3と比べたら操作が簡単で楽だわ」などとぬかしていた私たちにとって、戦略要素は上記の2項目で十分なのだ。
前置きが長くなったが(実は、初心者のためとは名ばかりのあまりにも複雑なガイドに対して、このような論旨のシンプルな初心者ガイドを書こうとしたことがあるのだが、そうこうしているうちにDotAの流行が終わってしまった。これはその反動だろう)、DotAというゲームに対する私の解釈はこうだ。翻って、LoLとは一体どのようなゲームなのだろうか。
※Goblin Techiesのくだりは有名なDOTA2 BetaKey抽選テストの応募基準
Three Men in a Boat
LoLから見たDotAが「carryの強さが尋常ではないゲーム」なら、DotAからLoLを見た場合、「しょーもないcarryが3人いるゲーム」だと言うことができる。3人とはすなわち、solotop, solomid, rangedADだ。この3人にrangedADのお守りとしてつくsitterを含めた4人がfarmに縛られることが、LoLとDotAのゲームプレイをまったく違ったものにしている大きな要因のひとつだろう。
チーム内の4/5がfarmに縛られ、かつ邪魔すべき対面のcarryは3人に増えているため、相手carryのfarmを阻害して勝つというゲームプランを成立させることは極めて難しい。EUstyleが浸透した現状のLoLにおいてたったひとりの遊撃手であるJunglerのGankが成功し、決定的な差がついたレーンから勝利が生まれることも多々あるが、それは大抵戦術レベルの話であり、またそれを毎回安定させることは難しいだろう。よほどのことがない限り、どれだけ相手をkillしても一定のfarmは許してしまうし、残りの2laneのこともある(対面のJunglerが標的とするには格好の品だろうね)。また信じがたいことに、このゲームでは相手を殺しても相手のお金を奪うことができないのだ!
戦略を組み立てる際に肝要なのは、「こうなれば勝つ」という状況をイメージすることだ。現状を無視したイメージは単なる失着に過ぎない一方で、勝ち筋を定めない現実的なプレイは勝敗を流れに任せているだけと言える。carryへの妨害によるfarm差で試合を決定づけるというDotA流の勝ち筋をLoLで実践するのは、チェスの試合で入玉を試みるようなものだろう。
ではLoLにおける「必至」とはどのような状況だろうか。
簡単な話だ。対面よりもこちらのcarryのほうが多ければ勝つ。
ちょっと待ってほしい。何も冗談でこんな長文を書いたりはしない。つまりはこういうことを言いたいのだ。
LoLはKillが発生しづらいかわりに、比較的容易にturretを折ることができる。しかし、対等の戦力で相手のturretをぶち折るにはそれなりの工夫が必要だろう。そこで人数差ということになる。midのAP carryが1対1でにらみ合っているところに、ひょっこりbotのrangedAD carryが顔を出したらどうなるだろう。間違いなくmidのturretは折れる。同じ要領でbotのturretをもらったころには、topのturretは自然に折れている。相手のjungleにwardを撒いたらもう1回。ここまできたら埋められないほどのgold差がついていることだろう。集団戦もfacerollで事が済む。「詰めろ」だ。
このイメージを元に、実際のゲームをどのように運んでいくかを考えていく。
turretにとてもご執心なように思えるこのプランだが、当然それだけでゲームに勝つことはできない。
よくLoLは「turretを折るゲームだ」、「killをとるゲームだ」、「farmするゲームだ」「集団戦に勝ってbaronを取るゲームだ」、「敵を煽るゲームだ」などと形容されるが、これらはすべて間違っている。LoLは「farmしてkillを取り、turretを折ってbaronを奪い、敵を煽るゲーム」であり(味方は煽るなよ!)、「これらの中からその時最善と思える一手を選択していくゲーム」なのだ。これを一語で表すと「ストラテジーゲーム」になる。
では、carryの視点から相手のturretを目指してgroup upするのが最善手になる状況とは、いったいどのような状況を指すのか。
これも単純な話である。carryにとって平時最もプライオリティの高いオブジェクティブは、言うまでもなくfarmだ。carryをプレイするのであれば、君には状況の許す限りfarmをする義務がある、ということを思い出してほしい。つまり、これの対偶をとればいいのである。farmが許されなくなった、それが君がgroup upするもっともシンプルな理由だ。
序盤、中盤でfarmが許されなくなった、farmのプライオリティが落ちたと判断するにはある程度の経験が必要で、一言で表すのは私には難しい。
手引きとして、以下の条件のうち2つ以上、midならば3つ以上が当てはまった場合などはひとつの目安となるだろう。
・相手laner1人がMIA
・相手laner1人がMIA
・人数差-1のlane/中立creepがある
・人数差-1のlane/中立creepがある
・今いる場所へのケアできないgankルートが1つ以上ある(wardが切れた)
・担当laneをpush outした
・隣のlanerがpush outした
・ベースで3kクラスの大きな買い物を終えた
・laneでkillをとった
・gankが見込める
Blackmailers Don't Shoot
さて、ゲームも後半戦になってくると、group upしても思うように人数差をつけられなくなってくる。相手も同様にgroup upしてくるだろう。上記の条件に照らし合わせてみると、状況は常にレッドアラートだ。ゲームのルール上、4人目のcarryを呼ぶことはできない。ではどうすればいいのか。ここまでのノリに照らし合わせて考えると、「相手のcarryを1人減らせばいい」ということになるだろう。君が優秀なプレイヤーならば、turret下に居座る相手を1人殺せばいい。しかし、私のような優秀ではないプレイヤーには、もう少し頓智の効いた方法が必要になってくる。
自分たち5人がmidにgroup upしているなか、相手は1人side laneに顔を出している。そうなると、midの状況は5対4。「こうなれば勝つ」だ。
この状況を作り出すためには、ゲーム後半のlaneに対する理解が必要だ。ゲームが終わりに近づくにつれて、laneのfarmingはターン制の様相を呈してくる。つまり、どちらかがturretまでpushしてどこかへ下がる、pushされたほうは相手のturretへpushし返す、といった具合だ。これはturretがなくなってくるにつれて、「今いる場所へのケアできないgankルートが1つ以上ある」の条件が常に点灯しっぱなしになることによる。そして、pushし終わったヤツはそこで「MIA」だ。
このような戒厳令下のlaneでもcarryがfarmに固執するのは、carryにとってfarmが必要不可欠だからであって、もしpushされたlaneをそのままにしておけば、turretに食われたminionのgoldとexpはそのまま自身のビハインドとして返ってくる(ゲーム後半の2wave12csはおよそ1killに相当する)。ここを利用することで上記のような状況をセットアップできる。
今まさにgroup upしようとする時、事前にside laneをpre-pushしておく。これにも細かい作法があったりするのだがそれは別項に譲るとして、ようは目的とは違うlaneを思い切りpushすればいい。そうすれば、こちらが今まさに5人で相手midに迫ろうというとき、同時に相手side laneにはminionの大群が押し寄せることになる。相手は囲碁でいう「見合い」を迫られるわけだ(賢明な君は、相手にとってこの状況は上記の条件の、「人数差-1のlane/中立creepがある」ただひとつにしか当てはまっていないことに気が付いただろう)。side laneのminionを処理しなければfarm面でビハインドを背負ってしまうし、最悪minionにturretを折られてしまう。しかしside laneに向かえばmidのturretはもっていかれてしまうだろう。
余談になるが、split pushはこれの延長線上にあるといえる。相手側のjungleの要所にしっかりとwardが刺されている、あるいは君が逃げ性能の高いチャンピオン(Nidalee, Shaco, Twisted Fate, Shen, Pantheonなど)を使っている場合、pre-pushからもう一歩踏み込んでsplit pushを仕掛けてみるのもいい手だ。相手が対応にきそうならそこで味方に集合すればいいし、こないならそのlaneの戦力比は都合1対0だ。この差は私にはもはや計算することができない!
以上がcarryのfarmを中心としたLoLの戦略に対する私の解釈だ。
この投稿が皆のLoLへの理解の一助となることを願って。
