戦闘/王立砲科士官学校/第2章

Last-modified: 2009-09-13 (日) 20:16:27

砲兵の展開(Deployment)

牽引砲/騎馬砲兵の展開(Foot/Horse artillery deployment)

悪い例その1.牽引砲/騎馬砲兵を歩兵の戦列と距離を置いて後方に配置

歩兵の戦列の背後に小高い丘がある場合は、そこに砲兵隊を配置したくなるかもしれませんが、
牽引砲/騎馬砲兵とも直射砲で、弾道角度が低い為に自軍の歩兵の上に砲弾の軌道が設定されるので、
自軍歩兵の戦列に砲弾が命中する恐れがあり、とても危険なためこの様に配置するのは止めて下さい。

これらの砲兵は散弾を発砲できるので、散弾を有効に使う為にもできる限り歩兵と同じ戦列に配置されるべきです。

また、前章でも述べましたが、牽引砲と騎馬砲兵の違いは移動速度に違いがあります。
騎馬砲兵は機動性が高いので、個人的には牽引砲(Foot Artillery)よりも騎馬砲兵(Horse Artillery)をお勧めします。

一方で、牽引砲は散弾(canister shot)と同じ効果で、より広い着弾範囲を持つ榴散弾(shrapnel)を利用できます。

(注意:下の写真は演習用に撮ったもので、実戦のものではありません。)
図1.

Artbehinflinesfar.jpg

上の写真は、戦列の後ろの小高い丘に砲兵を配置するという、よくある間違いです。
この布陣では騎兵の突撃を防ぐ為に、散弾を撃つことができません。

何人かは、Late era*1で牽引砲で榴散弾を撃たせると主張するかもしれませんが、
この様な配置の場合、榴散弾は命中率が低いので、敵にとってもそうであるように、自軍にとっても危険なものであると言えます。
特に敵の司令官が歩兵戦列を相手の白目が見えるほど近くに移動させた時に、あなたが榴散弾を使おうものならば、
榴散弾が自軍に命中し、大きな損害がでるというリスクがあります。

悪い例その2.牽引砲/騎馬砲兵を歩兵の戦列と距離を置かずすぐ後方に配置

時々、丘が多い地形で、山複に陣取る歩兵の戦列の真後ろに砲兵を配置することは、
大砲の火力を最大限利用でき、同時に敵の騎兵と歩兵から砲兵を防衛できる為、安全だと思うかもしれません。
比較的急な丘と平らな地面がある戦場では、上記の様な配置は一見正解の様に見えます。
しかし、この配置は間違いです


図2.

Artbehinflinesclose1.jpg

図2と図3を見てください。
歩兵と砲兵の高低差により、砲兵は歩兵戦列の向こうの遠くの目標に発砲することができますが、
接近した敵に対して自軍の戦列に当てることなく散弾を利用することができません。


図3.

Artbeinflinesclose2.jpg



上記2つの例は最も多い一般の誤った砲兵の配置の仕方で、不慣れな指揮官はこのような間違いをする傾向があります。

あなたの戦列の後に大砲を配置することは安心感を与えるので、上記の様な配置にしてしまうことは本能レベルからくることで無理からぬことです。
本校のゴールは上記のような誤った概念を壊し、我が軍の士官が18世紀の戦場で、最新かつ合理的な戦術を確実に行えるようにすることです。

V字陣形(V-formation)

牽引砲/騎馬砲兵を運用するにあたり、V字陣形が最も基本となる陣形です。
基本ではありますが最も効果的に、これらの砲兵を配備する陣形のうちの1つです。
単純にVの字の形をしている陣形なので、以降これを「V字陣形」と呼びます。

正しく配置されるならば歩兵戦列に挟まれ比較的安全となります。
また、砲兵の射線を広く確保することにもなります。

整然と配置されたV字陣形は砲兵の火力を制限せずに戦列を強化します。

この陣形を用いれば、接近した敵に対して、砲兵が散弾の一斉射撃を加えることができます。

下の図では歩兵戦列と砲兵がV字陣形に整然と配置されています。

V-linepic1.jpg

大砲の射線を広く確保しつつ、砲兵の両側の2個歩兵連隊が射線を重ね、キルゾーン(kill zone)を作り、
散弾と一緒にキルゾーンに入った敵を壊滅させます(緑と青の線が歩兵連隊の射線・赤の線が大砲の射程)

黄色の線はV字陣形の右側面の歩兵連隊の射線を表します。
黄色い射線の歩兵連隊によって、V字陣形に配置された連隊側面の脆さを取り除きます。

また、両翼に2部隊以上配置し大きなV字陣形を用いるものよいでしょう。
ただし、この場合はV字陣形の両翼側面に注意が必要です。

ここは王立砲科士官学校です。これ以上の歩兵の陣形や戦術についての説明は致しません。
それは近い将来作成されるであろう「Royal Infantry School guide」に任せます。
(誰か作成してほしいデス by編集の人)

次の図は、V字陣形の悪い例です。

ImproperV1.jpg

上の図ではV字の角度が鋭くなっている為、懐が深くなり、砲兵については敵突撃に対しての十分な防御がされています。
しかし、V字の角度を鋭くすることによって、砲兵の射線(赤い線)を減少し、黒いエリアで示されている箇所の火力が不十分となりそこが弱点となります。

この様にならぬように、V字の角度には注意して下さい。

牽引砲/騎馬砲兵も状況が合えば、半V字陣形(half-V formation)で配備することができます。
半V字陣形については次のパックルガンの節で記載します。

パックルガンの展開(Puckle Guns deployment)

パックルガンは射程が短く、防衛戦専門の武器であると考えられている為、多くの指揮官に軽視されています。
この考えは、多くの指揮官のうぬぼれと、戦場で効果的にパックルガンを運用していないことが原因です。
防衛戦用の武器として非常に有効であると評価されていますが、パックルガンは攻勢に打って出るときこそ使われるべきでしょう。
パックルガンに関する戦術のほとんどは第3章*2に記載する予定です。本章では基本的な配置を記載します。

パックルガンにおいても歩兵の後ろに配置しがちです。
普通、パックルガンを配置する理想的な丘がある地形*3を見つけることは簡単です。
また、散弾と比べてパックルガンは命中率が高く、有効射程が短い為、この配置でも自軍のユニットに誤射する可能性は騎馬砲兵よりは少ないでしょう。

しかし、上記の様にパックルガンを配置するくらいならば、騎兵を変わりに使ったほうがましです。
騎兵は、あなたの主力の後ろに配置された砲兵を防御する際に遥かに良い働きをするでしょう。
同時に騎兵の機動性は、あなたの軍を戦術的に支援することが可能です。
重ねていいますが、ここは王立砲科士官学校です。これ以上、本稿で騎兵の運用を説明するつもりはありません。
騎兵の運用はいつかリリースされる「Royal Cavalry School」に任せます。

V字陣形と半V字陣形(V and half-V formations)

ここまで読んだ読者ならば、パックルガンも騎馬砲兵と同様にV字陣形に配置しようとするでしょう。
しかし、V字陣形はパックルガンを配置する陣形としては騎馬砲兵ほど効果的ではありません。

もしV字陣形に配置した場合、パックルガンは騎馬砲兵より多くの損害を受けてしまいます。

この理由は散弾とパックルガンの瞬間火力差にあります。

散弾を撃てる騎馬砲兵などの場合は、最初の一斉射撃で即座に多くの敵の歩兵を排除するでしょう。
また、散弾を受けた後に敵が壊走しなかった場合でも、散弾が敵部隊に命中すれば、士気を大いに低下させて簡単に壊走されることができます。

一方、パックルガンの場合は、確かに多くの敵兵にとどめを刺しますが、散弾に比べ、一度に多くの敵兵を殲滅できません。
パックルガンはじわじわと敵兵を殲滅していきます。
その結果、V字に配置してしまった場合、散弾のように敵兵はすぐ壊走せずに、歩兵同士のだらだらとした射撃戦になり、いらぬ犠牲を出してしまいます。
また、歩兵が次弾を装填している間に、敵騎兵の突撃されてパックルガンに被害がでやすくなります。

そこで、半V字陣形(half-V formations)という陣形にしV字陣形でできた戦列の両翼に配置することをお勧めします。
V字陣形は「歩兵」「砲兵」「歩兵」の3部隊で横並び1セットからなる陣形でしたが、
半V字陣形はその字が如くVの字の半分、つまり、「パックルガン」「歩兵」の2部隊1セットで
V字陣形を組み合わせた戦列の両翼に展開するのが最適です。

V字陣形に比べ、半V字陣形は戦列を横方向にわずかに伸ばすことが可能になります。
戦列を横方向に伸ばすということは戦闘正面幅を大きくできるため、側面をつくことや包囲することさえ可能にします。

要は敵戦闘正面幅よりも自軍の正面幅が広い場合にパックルガンは有効に運用できると言うことです。
また、このような状況の場合は、この半V字陣形のパックルガンの代わりに上記騎馬砲兵等の直射砲を配置しても効果があるでしょう。

Half-V1.jpg

上のSSでは、半V字陣形が歩兵戦列の側面に展開されています。
(青線と緑線はそれぞれ歩兵連隊の射撃範囲を示します)。

半V字陣形における片翼の歩兵連隊の配置角度が、標準のV字陣形より急であることに注意してください。

自軍歩兵と敵歩兵が銃撃戦をしている間、パックルガンは敵側面に発砲し、多くの敵を倒し、自軍歩兵が敵陣を側面を突きつつ、包囲するのを可能とするでしょう。

メモ
片翼の歩兵連帯の前に軽歩兵(ライフル銃兵など)のユニットを配置するものよいでしょう。
軽歩兵を用いることで、敵戦力側面をより速く壊走あるいは壊滅し、騎兵の攻撃からパックルガンを守る歩兵連隊と共に運用し、
可能なかぎり犠牲を減らすことができます。

初期配置(マルチプレイ向けの内容)

戦い前の部隊配置フェーズでは、自軍歩兵の近くに配置可能な森が戦場にある場合は、パックルガンを森に隠すようのも良いでしょう。
何故ならば、パックルガンは射程範囲が短いので、戦いの初期段階*4では何もすることがありません。
しかし、敵に発見され脅威と見なされれば最優先で射程距離が長い敵砲兵から砲撃を受けるでしょう。
森に隠しておけば、大砲の弾幕と散兵戦が始まりお互いの歩兵戦列が距離を詰め始めた時に、パックルガンを森からこっそりと移動させれば、相手がパックルガンの存在に気付かない場合があるかもしれません。

榴弾砲・迫撃砲(臼砲)・ロケット砲の展開(Howitzers, Mortars and rocket artillery deployment)

榴弾砲・迫撃砲(臼砲)・ロケット砲を配備することに関して本章で述べることはそれほど多くはありません。
これらの砲は間接射撃が可能な為*5、歩兵戦列の後ろに配備しても、なんら問題はありません。
これまで述べて来たV字陣形の間に、配置するのに最適な場所があります。下の図の位置です。

howizers01.jpg

また、迫撃砲とロケット砲はより高い位置に配置するのをお勧めします。

私は、野戦の場合には迫撃砲やロケット砲よりも榴弾砲を好んで使います。
理由は、迫撃砲やロケット砲は確かに射程は長いですが、移動ができません。
また、開けた地形では簡単に砲撃を避けられてしまうでしょう。

しかし要塞戦の場合は、私は迫撃砲部隊を1・2部隊用意します。
その理由は、迫撃砲の砲弾は非常に高い砲弾軌道と非常に急な発射角度のため、壁の上もしくは、壁の向こう側の相手に対して
弧を描くように迫撃砲の砲弾を撃つ事ができるからです。

ロケット砲は完全に好みの問題となってきますが、長距離の命中がかなり低い点を除いては、
迫撃砲よりも火力が高い為、要塞戦用の兵器としては迫撃砲以上の兵器と言えるかも知れません。

上記以外で、砲兵の展開について知っておくべきこと

砲兵は歩兵戦列の少しだけ前に配置する。

前の図から気付いている人はいるかもしれませんが、歩兵連隊側面のほんの少し前に砲兵部隊を置きます。
この様に配置することで、自軍歩兵が敵歩兵と白兵戦になった際に、砲兵の射線を広く確保することができ、
白兵戦中の敵兵に砲撃を加えることができます。

注意
この際に、敵歩兵部隊に対して射撃命令を砲兵に出すと、とんでもない所(自軍歩兵の戦列のど真ん中)に
散弾を撃ち込む恐れがあるので、敵歩兵部隊でなく、散弾を撃ち込みたい場所に直接、射撃命令を出してください。
(要は撃ちこみたい敵戦列のちょっと前の地面を狙うということです。)

砲兵を密集させて配置しない

砲撃目標が同じ時に、砲兵を密集させて配置すると、火力が高まるとのではないかと考える人もいるかもしれません。
しかし、この認識は間違いです。
密集している砲兵は、敵砲兵の砲撃や騎兵の突撃によって、まとめて殲滅されてしまうでしょう。

密集させて配置しようが、上記で述べてきたV字や半V字陣形に配置した砲兵と火力は変らないので、

上記の様なまとめて敵の餌食になるリスクを負ってまで密集して配置する必要はありません。

効果的な砲撃方法

概説

まず、任意射撃(Fire at Will)モードを解除して下さい。
そして、砲撃する際は、目標の敵部隊に直接照準を合わせず、その近くの地面に照準を合わせる様にして下さい。

照準の合わせ方

散弾(Canister Shot)

散弾を撃つ場合は直接敵部隊に照準を合わせると、砲撃を行う砲兵部隊に最も近い目標側面に向けて砲撃するという特性があります。
砲撃目標が目の前にいても直接照準を合わせてしまうと、目標側面に向けて散弾が発射されます。
この特性から、直接照準を合わせると散弾の弾子が半分以上も敵部隊に当たらないので、必ず地面に照準を合わせて下さい。

生石灰弾(Quicklime Shell)

生石灰砲弾は着弾地点に生石灰を滞留させます。
その為、滞留範囲にいる敵兵は視界を悪くし、焼かれます。*6
生石灰の滞留は着弾直後ではなく、その2・3秒後に発生します。
この特性を認識するのは重要なことです。

この特性から、生石灰弾が移動している敵のユニットに直撃してしまうと、効果が下がります。

移動する敵に直接照準を合わせるよりも、それらの予想ルートに照準を合わせるべきです。
そうする事によって、生石灰滞留範囲にいる敵兵に対して大いに損害を与えるでしょう。

実体弾(Round Shot)

一般的に野戦では役に立たないと思われている実体弾ですが、運用次第では非常に役に立ちます。

運用のコツは以下の通りです。

まず、敵の戦列のより厚みのある地点に実体弾を転がすように照準を合わせます。
例えば、敵歩兵が横隊を組んでいる時には、その側面近くの地面を狙います。
特に実体弾が数回弾むことができる平坦な地形で戦う場合は、敵により多くの損害を与えるでしょう。

また、実体弾は騎兵に対しても効果があります。
理にかなった配置をされた砲兵による実体弾の一斉射撃は、近距離で撃たれた散弾よりも多くの騎兵を殲滅する可能性があります。

  • 注意
  1. 榴弾砲は砲弾が目標に達するまで比較的長い時間がかかるので、
    直接敵部隊に照準を合わせると、目標が着弾域から出てしまう可能性があります。*7
    よって、榴弾砲は上記に加え、敵の予想ルート上に照準を合わせるとよいでしょう。
  2. パックルガンは例外で、直接敵部隊に照準を合わせる方がよいでしょう。

砲撃角度について

適切な配置と砲撃角度で砲撃することは、砲撃効率を劇的に上げます。

実体弾(Round Shot)

実体弾は敵部隊の側面に対して砲撃角度が垂直になる様に配置できれば言うことはありません。(下記図参照)

RoundShotAnglesoffire.jpg

散弾(Canister Shot)

散弾の場合は、敵の横隊に対して35-45度になるように配置できるとよいでしょう。

下記からの3枚の図を見て下さい。

  • 敵部隊正面の場合(効果:小)
    Canisterfront1.jpg
    砲兵前の敵歩兵連隊正面に散弾を撃ち込みます。
    赤い円はおおよそ効果範囲を示します。
  • 敵部隊側面の場合(効果:中)
    Canisterflank1.jpg
    砲兵前の敵歩兵連隊側面に散弾を撃ち込みます。
    この場合は、一斉射撃よりも時間差砲撃が効果的です。
    赤い円は一斉射撃時のおおよそ殺傷効果をあらわします。
    青い円は時差射撃時のおおよその効果範囲を示します。
  • 敵部隊に対して約35度の場合(効果:大)
    Canistreangle1.jpg
    砲兵前の敵歩兵連隊正面約30度の角度で散弾を撃ち込みます。
    赤い長方形はおおよそ効果範囲を示します。
    敵部隊に散弾が分散交錯し浴びせられるので、より多くの敵に効果があります。
 

上記の図から理解できるように、散弾は敵に向かって35-45度の角度で撃ちこむのが最も効果があります。

結び

ここまで読んでくれた読者は、基礎が出来上がっているはずです。
実際に、戦場で砲兵を適切に運用できるでしょう。


*1 シングルプレーやマルチプレー対戦で設定できる項目で18世紀前期:early後期:Late
*2 現在(9月上旬)時点で本家TWCに第3章はまだ執筆されていない。
*3 牽引砲と騎馬砲兵の展開の節で記述したような
*4 戦いの初期段階では、あたりまえですが、互いの歩兵の戦列間の距離が開いているので、パックルガンの射程距離外です。
*5 曲射砲の為、砲弾が放物線を描いて目標地点に向け発射される
*6 生石灰は、水を加えると発熱し、数百℃にまで温まった後、消石灰を生成する。目に入ると失明のおそれがあり非常に危険な化合物である。ちなみに、消石灰とはグラウンドなどに白線を引くラインパウダーに良く使われる。
*7 迫撃砲とロケットにも言えることです