おすすめ有機化学教科書

Last-modified: 2017-12-24 (日) 10:12:08

Let's study
参照2chスレ:有機化学の教科書について語ろう
http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/bake/1299499812/

教科書の選び方

教科書は、まず授業で使ってる奴をきちんと読め。時間の都合で授業で触れなかったところをきちんと独習しましょう。
一番良くないのは、いろいろな教科書の自分の興味があるところを拾い読みすること。そこには必ず、著者の考え方の違いとか難易があるのだが、それを読んでいない部分に拡張して考えがちだ。それで「何とかという教科書は良くない」とか決め付ける。研究室に入って、非常に狭い専門領域に知識が偏る例が目に付く。

 

残念ながら昨今の学力の低下により、日本には学部3年ぐらいで教科書の良し悪しを論評できる力を持った学生はほとんどいない。それには自分も含まれるのだ、ということを自覚しよう。

おすすめブログ

http://chemistrybook.blog.fc2.com/
個人サイトのようだが、評価には文句がない。有機化学以外も網羅。
参考になる。

おおまかな評判

上記2chスレから改変
【有機化学の一般的な教科書】
―――――――――――――――――――――――――――― 理系院生レベル
マーチ ・ケアリー ・大学院講義有機化学 ・Oxford Chemistry Primersシリーズ・ウォーレン
―――――――――――――――――――――――――――― 化学系学部生標準レベル(院試8-9割を狙う)
・ボルハルトショアー ・ジョーンズ ・パイン ・モリソンボイド
・ソロモン ・ブルース ・マクマリー ・ソレル
―――――――――――――――――――――――――――― 一般理系大学生レベル(院試5-6割を狙う)
・奥山 ・マクマリー概説 ・ハート基礎有機化学 ・ウーレット有機化学
・ ブルース有機化学概論 ・ベーシック薬学教科書シリーズ
―――――――――――――――――――――――――――― 有機化学入門(院試3-4割を狙う)
・有機反応のしくみと考え方&有機人名反応 そのしくみとポイント (両方やれば一つ上のランクへ)
・工学のための有機化学 ・キーノート有機化学
・ビギナーズ有機化学 ・ベーシック有機化学
――――――――――――――――――――――――――――

【問題集】
――――――――――――――――――――――――――――
・演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで(これが解ければこんなスレに用はない)
・大学院講義 有機化学 演習編
・有機化学演習―基本から大学院入試まで(院試対策オススメ)
・有機化学演習(院試対策オススメ)
・プログラム学習有機合成問題の解き方(院試対策オススメ)
――――――――――――――――――――――――――――

副読本

上記2chスレより

【万人に有用と思われる副読書】
――――――――――――――――――――――――――――
・人名反応に学ぶ有機合成戦略(人命反応まで網羅したいならこれ.院試レベルでは必要ない.)
・電子の動きでみる有機反応のしくみ(反応機構の説明が充実していてコンパクト.オススメ.)
・有機化合物のスペクトルによる同定法(同定に関して勉強したい人へ.)
・有機化学のためのスペクトル解析法 (上との二択)
・知っておきたい有機反応100(電車やトイレで読むには良いかもしれない.院試前の総復習とか.)
――――――――――――――――――――――――――――

【合成初心者必読の書】
――――――――――――――――――――――――――――
・研究室で役立つ有機実験のナビゲーター(実験操作一つ一つが詳しく説明されている.必読.)
・有機化学実験のてびき(何かとお世話になる.必読.)
・フィーザー/ウィリアムソン有機化学実験(実験操作のグローバルスタンダード.)
・実験を安全に行うために(安いし,買っておいて損はない.)
・入門クロマトグラフィー(クロマトグラフィーの入門書として.一通り記載されている.)
・研究室ですぐに使える有機合成の定番レシピ(よく使う反応の具体的な手順が記載されている.)
・有機合成のナビゲーター(上と似た趣旨の本.個人的には↑がおススメ.)
・有機合成の戦略―逆合成のノウハウ(合成経路設計の入門として.)
・取り扱い注意試薬ラボガイド(試薬会社が作った試薬の取り扱い方法の本.物性から廃棄方法まで.)
・有機化学実験の事故・危険―事例に学ぶ身の守り方(敵を知り己を知れば百戦危うからず)
――――――――――――――――――――――――――――

【合成を専門でやってる人向け】
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・天然物全合成の最新動向(解説が丁寧なので,類書と比べて読みやすい.)
・最新有機合成法 設計と戦略(同上.)
・Classics in Total Synthesis(パラパラと見た程度で何とも言えないが,評判は良い.)
・天然物の全合成(解説少なめ,情報量多め.)
・天然物の全合成―華麗な戦略と方法(同上)
・Greene's Protective Groups in Organic Synthesis(保護基に関するバイブル.)
――――――――――――――――――――――――――――

高分子の教科書

  • 東京化学同人の基礎高分子科学は詳しい。
    しっかり勉強するなら、邦書はこれ一択
  • 阪大高分子教授陣で共著してる共立出版の高分子化学がお勧め
    全分野広く薄くカヴァーしてるけど
    溶液あたりが面白い説明してる
  • 山口達明「有機化学の理論 学生の質問に答えるノート」が良書だった
    改訂され続けてるし昔から評価の高い本なんですね
    精確な計算を行いとか言いながらSTO-3Gだったりするのは??ってなるけど

参考図書

保護基の3大名著

  • Greene's Protective Groups in Organic Synthesis(定番。何より詳しい。巻末の反応性の表をもっと使おう)
  • Protecting Group Chemistry (Oxford Chemistry Primers)(実用的。実験の合間にパラパラめくるのによい)
  • Protecting Groups(Kocienski)(実践的。巻頭の脱保護条件は必読。NMRのデータ付きなのがポイント高し)

データ集

  • The Synthetic Organic Chemist's Companion (実験のテクニック集)
  • The Merck Index(研究室に1冊あればいいが、自分で買っても損なし。付録の人名反応は必読)
  • Structure Determination of Organic Compounds: Tables of Spectral Data(NMR, IR, UV/VISのデータ集)

原書(英語版)について

通しで読む教科書は、日本語で勉強することを勧める。
大学院に進学した以降は英語も日本語もあまり区別せずに購入することになるが、レファレンスやデータ集的な使い方をするもの、実験プロトコール集などは原書で買うこと。新版では翻訳が追いつかなくなることがほとんどだし、専門性が高い本であればあるほど翻訳の質は下がる。

試薬会社のカタログは情報の宝庫だ

研究室で試薬会社のカタログをパラパラめくってみよう。引用文献を含め、最新の情報がこれほどコンパクトにまとめられたメディアはない。
Aldrichなどの総合試薬メーカーの他、専門試薬のメーカーのカタログには実験のプロトコールなども詳しく述べられていて、下手な教科書読むより勉強になる。Aldrichmica Actaなどの定期刊行物はステマむき出しで、試薬会社が今何に力を入れているのかを親切にも解説してくれる。

  • 具体的にはどのメーカーのカタログ? この項目を読んで試しに東京化成のカタログを頼んだら、本当に大量の試薬リストばかりの(巻末にちょっと有機溶媒の物性とか載ってるだけ)分厚いカタログが来てしまった。
  • (続き)↑で書いたのは総合カタログで、一緒に頼んだ「Reagent Guide 有機合成化学・機能性材料編」は在庫切れとかで1か月以上待たされてやっと届いた。こちらは結構解説とか載っていて読みごたえがある。総合カタログはウェブ上の商品ページがあるからあんまり使い道ないかも。私個人としては、場所も取るし捨てちゃおうかとも思う。

「新研究」は今すぐ捨てろ

大学受験の参考書、「化学の新研究」を今でも持っている大学1〜2年生に告ぐ。その参考書は今すぐ捨てなさい。
間違いだらけの「新研究」を参考にして学生実験のレポートを書く学生が今でも後を絶たず、その事情を知らない大学教員が自分の説明を無視されたと思って学生にブチ切れるシーンを何度も目にした。特に有機化学は矢印の方向はいい加減で、用語の使い方も間違っている。電子論を前提にした化学的な感覚を身につけさせようとする、大学初年度の教育を激しく妨害する悪書である。

  • 日本化学会の化学教育部会でも名指しで問題視されたことがあるらしい。
  • 逆に授業を担当し始めた若手教員は、一冊手元においておくとよい。学生にどういう知識があってどういう理解の仕方をしているか、実によくわかる。それ故に正しい理解の仕方を教えると、学生にちょっとした感動が残る。
  • そもそも有機電子論自体がかなり曖昧な概念でしかないが…。
    こんな記事もある。「捨てろ」などと過激な言葉で文句を言う前に確認くらいはしよう。
    http://logostheoriaphilosophia.blogspot.jp/2015/07/curved-arrow.html