実験の小技いろいろ
- 濾紙の裏表
- マメにろ過しよう
- 単離収率が 100%, 100%以上になった。ナニかがおかしい・・・
- 収率が文献値と比べて低すぎる。廃液タンクに捨ててるレベル。ナニかがおかしい・・・
- サンプルの保存方法と管理
- 役に立つ日用品
- 有機溶媒の性質のまとめがほしい
- 超音波っていつ使うの?
- 器具の洗浄
- すり合わせガラス器具
- 紙の実験ノートとは別に実験ノートのデータベース化ってできる?
- セプタムはどれくらい使い回ししてる?
- キャピラリーがうまく引けない
- この用語・言い方は使用禁止だ!
- ソフトフェア編
- 海外留学のおみやげ
- 学内学外・国内外の他の研究室を訪問する機会があったら・・・!
- 海外の学会に行ったらおみやげはこれ買え!
- ドライアイス浴
- ChemicalBook.comのデータの信頼性に注意
- 筆記用具あれこれ
- 実験室での服装
濾紙の裏表
濾紙の裏表はツルツルかザラザラで判断するのではなく、フチで判断する。
固体の定量回収を目的にしているんだったら、微妙な裏表ではなく、そもそも凹凸が少なくてツルツルしている定量濾紙を使うべきだ。
濾紙は大きな紙を円形の刃で打抜いて作る。その時に必ずフチがどちらかの側に湾曲する。
吸引濾過する場合は、ブフナーや桐山漏斗にこの湾曲した凹面を伏せるように置く。
そうしないと隙間からスラリーが裏面に侵入するから。
これが濾紙の裏表の定義だよ。
- 眼から鱗の定義!
この定義だと、ザラザラ面が表ということになる。不審に思って調べてみたら、ザラザラ面は繊維が疎なのでそこで大きい沈殿物を補足し、つるつるした密な面で細かい粒子を除去するという考え方があるらしい。だから沈殿に接するザラザラ面こそ表なのだ、と。
一方で、沈殿物が必要な場合はツルツルした面を表にしろという定義もある(これは自分も習った定義)。だけど「そういう時には定量ろ紙を使え」というのも、それはそれで一理ある。
いずれにしても少なくとも吸引ろ過の時には、フチで裏表を判断するというのは、説得力のある定義だと思う。
マメにろ過しよう
大きいフラスコから小さいフラスコに移すときや、クロマトのフラクションをまとめるときなど、ピペットに詰めた綿栓でいいから簡単なろ過をする習慣をつけておこう。この作業で、反応の精度やNMRの分解能などが着実に上昇する。
使えなくなったルアーロックシリンジの外筒に耐溶媒性のクロマトディスクを装着した「ろ過キット」を用意しておき、それでろ過すればもっと良い(圧はスポイトでかける)。これは一回で捨てないで、使い回しが効く。
単離収率が 100%, 100%以上になった。ナニかがおかしい・・・
精製プロセスで必ずロスがあるので、単離収率>95% はおかしいという報告がある。*1
see M. Wernerova, T. Hudlicky Synlett 2010, 2701-2707(PDFファイルにつき注意)
Chemstation にも書いてあるが、正確な結果を出すためには容器の選択なども当然重要な要因になる。
反応させるだけだからとか、秤量するだけだからという理由で無駄に大きい容器を選択することは逆に自分の首を絞めることになる。
大は小を兼ねるとはいかない。
- 秤量が正しいのであれば、モノの純度・含量が低いと考えざるをえない。
・水や溶媒が残ってる(いくら減圧乾燥しても10w/w%以上溶媒が残る事もある。)
・副生成物や反応試薬の残渣が残っている(脱保護や、NBSを使った時とか)
・無機塩が残っている(カラム精製を行わなかった場合)
・カラムやPTLCのシリカが溶け出した(展開溶媒・抽出溶媒にMeOHを使った場合に多い)
・コンタミ(グリスやシリコンオイルの混入・使った器具が汚れていた、etc.)
・生成物が塩だった(pH調整ミスって、カルボン酸ナトリウムで取れたとか)
・生成物が、実は目的物ではない
まぁ、無機塩以外は、大抵NMRで判るが。
収率が文献値と比べて低すぎる。廃液タンクに捨ててるレベル。ナニかがおかしい・・・
- (本当に廃液タンクに捨てていた。)
- 論文にはチャンピオンデータが載せられていた。
- SIが充実している論文は精度高い。チャートやgeneral procedureしかないような論文だと再現性がやたら低かったり。
- 反応終了~後処理中の分解は馬鹿にならない。
例えば、原料消失後のオーバーリアクション、水と接触中や減圧留去時の高濃度粗体加熱による分解、
シリカゲル上での経時分解など。
論文には、最適収率を与える反応時間が書いてあっても、その後の安定性を担保するデータは載っていないものだから。
でも、クエンチ~カラムまで時間をおかず速やかに進めていても尚収率低いのなら他の要因だろうけどね。
せめてどの段階で収率低下しているのか、チェックしながらすすめるべき。
水相へのロス、濃縮前後のバイプロ量の増加、カラムで目的フラクション流出後の洗い出しで分解確認、など。 - シリカゲル上での分解は、二次元TLCをあげることで確認できる。
適当な長さの正方形のTLCの隅に一次元と同じ要領でスポットを打ち、一回目の展開をした後によく乾燥させる。
一回目の展開のラインが下になるように二回目の展開を行う。一回目と二回目で展開溶媒は変えない。
二回目の展開が終わったら、スポットを確認する。
一回目と二回目でRf値は同じになるはずなので、展開に対して対角線以外にスポットが現れていたらそれはシリカゲル上での分解によって現れたスポットである。
また、出現したスポットの位置から分解物のおおよその予測もできる。
サンプルの保存方法と管理
薬品保存用の冷蔵庫
庫内灯は外して、ソケットをビニールテープ等で塞いでおく。スパークが散って、庫内に充満した有機溶媒に引火するリスクを回避するため。
- 最近の冷蔵庫は庫内灯がLEDなので、この操作は不要。
サンプル保存編
- サンプル重要度別
ケアレベル 禁忌対象
保存期間保存方法 0 安定
1日~数日1 酸素、水 不活性ガス置換。冷凍庫 1* 光 褐色容器。アルミホイルで遮光。 2 酸素、水 アルゴン置換+テフロン栓付きストレージフラスコ+アルミパック+モレシーor青ゲル+脱酸素剤+冷凍保存 3 酸素、水 グローブボックス中アンプル封入+冷凍庫 - サンプル量別
量 保存方法 数mg スクリューバイアル - 一部の研究室で語り継がれている風習で「ベンゼンに溶かして冷凍すると、サンプルが分解しにくい」というのがあるが、これは真っ赤な大嘘だと思う。
凍結したベンゼンは容器の中で昇華を繰り返すとともに少しずつ失われ、結局濃厚溶液が得られる。フリーザーの中で、この状態から真っ黒に分解している例を何度も目撃した。- そもそも、ベンゼンは有機溶剤でもトップクラスの毒性だから、昇華してしまうような密閉性の低い容器で保存すること自体が不適切。冷蔵庫に排気設備なんて無いし、冷蔵庫内に毒々しい蒸気が満ちることになる。
- なるべくフラスコでは保存しないこと。ラベルやマジックペンでのメモ書きはすぐに消えてしまうし、フラスコ同士で箱に詰めると割れやすい。
面倒でもサンプル瓶に不活性溶媒(トルエン推奨。特にクロロホルムは避けること)で移して、濃縮して保存するのが経験的には最も分解が少ない。 - スクリューバイアルとスナップバイアル、どっちを研究室スタンダードにしているかは様々だが、基本的にはスクリューだ。接液部がパッキン一枚だし、密閉性もよい。またフタを開けるときにも苦労しない。
サンプル管理編
一仕事終わったら重要な物以外全部捨てる!!
役に立つ日用品*2
園芸用支柱 | カラムに脱脂綿を詰めるときの棒として使える |
カタログ | 装置の下敷き。破いて粉末漏斗や大量合成用の薬包紙になる。 |
金魚ポンプ | フラッシュカラムで圧力をかける |
計量カップ | クロマトに使う溶媒を作るのに使う。メスシリンダーに比べて圧倒的に壊れにくいし、口が大きいので中で溶媒を混合することができる。値段が安いので、壊れても惜しくない。持ち手があるタイプではなく、コップ型を使う。もちろんガラス製。 |
トイレットペーパーの芯 ジューCのケース | 適当な長さに切ってスクリューバイアル、ミクロチューブをまとめておくのに使える。 |
ハンガー | 伸ばしてカラムの綿詰め用の棒 |
ワンカップ大関 | TLC 展開槽 |
プリングルス(40 g) じゃがりこの箱 ガムテープの芯 | ナスフラスコを置くのにちょうどいい |
シャトルシェフ・保温弁当箱 (ステンレス製魔法瓶) | ドライアイスバスを含む、冷浴に使う。実験用のデュワよりも圧倒的に安く、丈夫でサイズも各種揃っている。若干トルクは落ちるものの、スターラーも使用可。氷をぎっちり詰めれば、氷冷下でオーバーナイトもいける。オススメだ。 |
カップどん兵衛の空き容器 | アイスバスに最適。ただし一滴の有機溶媒で防水性は破壊されるので注意! ↑カップヌードルは? ↑カップヌードルは深すぎて使いにくいぞ。 |
竹ひご | 先端に刻みをつけ、綿棒にする。NMRのサンプルチューブを掃除するのに使う。 減圧蒸留するときに、沸石の代わりにする。無水蒸留には使えないが、騙されたと思って一度やってみて欲しい。大量合成の蒸留精製などでは絶大な威力を発揮する。キャピラリーと違ってなかなか死なないし、スターラーバーみたいに沸騰を促進しなくて苛立つこともない。 ↑これってキャピラリーと同様にゴム栓を突き刺して、根元を常圧大気中に晒すの? それとも、切ってフラスコ内に入れるだけで大丈夫? ↑折って、ささくれた方を下にして入れるだけ。 |
ビニール被覆の針金 | スーパーでビニール袋を閉じるのに使うやつ。温度計の中程をこれで縛り、フラスコの縁に引っ掛けると内温を計るのに便利 |
調味料入れ | 硫マグ、海砂などを直接入れるのに使える*3 |
アイスクリームの空きカップ | エバポの溶媒回収装置の受けフラスコの下におく。凝結した水分で周囲が濡れるのを防ぐことができる |
女性用ストッキング(パンスト) | 使い捨ての簡易フルイに使う。何らかの理由で回収したクロマト担体と海砂との分離、誤って混入したガラスの欠片の除去とか、ちょっとした用途に気軽に使える。周囲に女性がいないと購入困難なのが、欠点。 |
工作用方眼の厚紙 | 緑色の罫線が入っている学童用のボール紙。TLCを切るときのカッティングボードとして使う。 |
水道工事用シールテープ | ビニールテープの代わりにネジ口の密閉・ゴム管の補修・真空漏れの防止など幅広く使える。長期保存したり溶媒と接触しても極めて安定で、劣化しない。 |
ティッシュペーパー、キッチンペーパー | キムワイプやキムタオルなどの消費が激しく、研究室の消耗品費を圧迫しているラボにオススメ。通常の目的にはこれで十分。(追記)「エリエール 超吸収」というキッチンペーパーは、紙箱入りの物と箱なしビニール包装(2個入り)の物で質感が全然違っており、紙箱入りの物は凹凸がしっかりしてて拭き取る力が高かったのに、最近売ってるのを見かけなくなった。箱なしの物は、天ぷらとかの料理にはいいんだろうが、物を拭くのにはまるでダメ。なので最近は「スコッティ キッチンタオルボックス」を使っている。なお、マツキヨの88円の袋入りのやつは表面の粗さがガラス容器内の汚れを落とすのに絶妙だが、箱入りでないため使いづらいのが難点。 |
あぶり寿司作成用のガスバーナー(カセットボンベ使用) | キャピラリー作成やスリの固着剥がしなど、実験台でのちょっとしたガラス細工に便利。溶媒などへの引火には十分に注意すること。 |
エアダスター | 各種配管に詰まったゴミなどを押し出す時に使う。もちろん、分光光度計などのメンテにも便利。その辺に置いておくと、みんなが遊び半分で使っちゃうのが難点だが。 (追記)私が一番これを愛用してるのは、逆さにして噴射すると内容液が出て、簡単に-20℃台を得られるという性質があるから。プラスチック容器に内容液を50mLくらいためて、フラスコとか瓶を漬ければ簡単に氷水以上の冷却作用が得られる。低温でやった方が収率がいいグリニャール反応もこうして容器を冷却してからやっている(再結晶にも便利!)。なお、これはエアダスターの内容液がHFC-152a(沸点マイナス24.1℃)のようなあまり引火しないガスの場合以外、やってはいけない。欲を言えば不燃性のHFC-134a(沸点マイナス26.1℃)がベターだが、最近はHFC-152aに取って代わられつつあるので仕方ない。DMEやLPGなどと書かれている強い可燃性のエアダスターでは禁止。ちょっと高い製品は、「逆さにしても液が出ないタイプ」なので、安物を探すとよい。(追記)HFC-134aタイプの物は「急冷可能なエアダスター」としてアズワンカタログにも載っているが、1本が2千円程度と高価なのが問題。HFC-152aのタイプにも「急冷スプレーとして使用できる」と書いてあるので、引火源さえなければ問題ないだろう。HFC-152aやHFC-134aタイプではせいぜいマイナス20℃台が限界だが、「急冷スプレー」と題されているLPGタイプではマイナス40℃まで冷却可能。しかし、安全面を考えると、もうこのレベルでは寒剤・ドライアイスの使用が望ましいだろう。「氷殺ジェット」の事故も要検索。 |
ブルーベリーエキス | 一体何の役に立つのかと言うと、NaBH4などの還元剤が系中に残っているかどうかの確認に使える。栄養剤として売られているブルーベリー錠剤を1、2粒、水と一緒にボトルに入れてしばらく待つと濃い紫色の溶液ができる。これを紙に数滴たらし、ガラス棒で判定したい溶液を塗りつけると、還元剤がまだあれば漂白される(なお、アルミニウム系などの水と反応してしまうタイプの還元剤には無効。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムには有効だった気がする)。また、還元剤とは無関係にpHによって大きく色が変わるので(酸性では赤、アルカリ性では緑)pH試験紙・pH指示薬の代用にもなる(笑) ↑すごい。すごいけど、どういう時にその確認が必要なのかわからんw ↑次の反応の前に還元剤を完全に潰しておきたいとき。例えばNaBH4はエタノール溶媒の時は希塩酸ですぐ潰せるけど、THFを溶媒にすると、ボラン錯体が生じるためか、塩酸入れてクエンチしたと思っても、ブルーベリー液を塗った紙で判定するとまだ還元力が残ってて脱色した経験あり。 |
有機溶媒の性質のまとめがほしい
東京化成工業-お役立ち情報
主な有機溶媒の物性
超音波っていつ使うの?
- 難溶性のものを溶かしたい時
結晶化が進むと、そのパッキングエネルギーを与えなければ今まで溶けてた溶媒にも溶けにくくなるんだよ。
だからそういう場合、結晶に溶媒を加え、超音波を当てたりする。
そうすると結晶が砕けて溶媒に溶けやすくなったりする。
あとは、フラスコの壁にモノが付いてたりした時に、やはり溶媒を入れて超音波を当てると剥がれ落ちたりする。
もちろん化合物によって上手くいったりいかなかったりする場合があるのでその辺りは自分で手探りで宜しく。 - グリニャール試薬を発生させる時
グリニャール試薬を発生させる時に、表面の酸化皮膜を破壊してフレッシュな面を出してくれるので反応が進行しやすくなる。 - 試薬が不均一になった時
試薬がガム状になったりして不均一になった場合にも有効だ。 - スリが固着してしまった時
スリが固着してどうにもならない時、どっぷり漬けて超音波をあてておくとスルッと外れるかもしれない。 - 器具洗浄に
器具に汚れがこびりついた場合に、強酸や強アルカリを入れてで20~30分 超音波を当てれば大抵落ちる。
(酸かアルカリかは、こびりついたものに応じて使い分ける)
ただし、アルカリはガラスを痛めるので程々に。 - パラフィン漬け金属の洗浄
高純度の遷移金属、特に希土類単体など。
アセトンとかに沈めて超音波洗浄を2~3セット。 - 無機物結晶研磨後の研磨剤除去
ピカールのアルミナとか、紙やすりのカーボランダムとか
研磨剤の微粒子って残りやすいからね。
器具の洗浄
器具洗浄の泡切れが悪いんだけど
三分の一だけ水を入れてひっくり返す。これを三回繰り返したあと三分の二水を入れてひっくり返す。これは二回。
後は純水洗浄して終わり。
クレンザーは使用禁止
どんなにすすいでも残ります。
よっぽどのこびりつき以外では使用禁止。使ったら、超音波洗浄でのすすぎを複数回すること。
ただし、手を徹底的に洗いたい場合に限って(手が荒れるのは承知で)使用する。(参照:試薬の取り扱い-アルキル化剤)
研磨は重曹
クレンザーが使用禁止だから、研磨する必要があるときは重曹の粉を使います。少量の水で溶いてペースト状にする。
天秤の汚れなどもだいたいこれで落ちます。もちろん、最後はきれいな水でよくすすぐ。
モレキュラーシーブを使う
複雑な形のガラス器具やブラシが届きにくい大型器具にこびりついた汚れには、使用済みのペレット状モレキュラーシーブと少量の水と食器洗い洗剤を入れ、栓をして振る。
よくすすぐこと。
どうしても落ちない汚れには
希釈したフッ化水素酸で流す。手袋着用で、絶対に皮膚に付けないこと。
- ファーストチョイス
フッ化水素酸は安全性に問題があるので、それを使うくらいならガラス器具を買った方がいいと思います。
洗剤で落ちない汚れには以下のような方法があります。
水酸化カリウム/IPA溶液に浸す(アルカリバスと通常呼ばれる)、スキャットの希釈液に浸す、濃硫酸/過酸化水素水の混合溶液(ピラニア溶液)を入れて1晩放置
個人的にはスキャットの希釈液に浸すのが比較的安全でオススメです。
どの方法でも液が目に入ったら失明の危険があるので保護メガネを忘れないで下さい。
↑フッ化水素酸は、私も知り合いが指1本無くす事故起こしており、リスクが高いため勧めるべきでないと思う。
付着しても気が付かないうちに、症状が進行していたそうです。
すり合わせガラス器具
スリの固着が心配な時は
アルカリで加熱するなどの条件では、必ずグリースを塗る。
またはテフロンスリーブ使うべし。濃縮ぐらいの減圧には耐える。
「テフロンTSグリスレスシート」で検索。
微妙に合わないスリがあったら
微妙に合わないスリがあったら、カーボランダム粉で磨っておくとよい。
番手は600くらい。スリの間に少量の水をつけてゴリゴリと回して磨る。
製品で買うとものすごい量が来ちゃうので、ガラス細工室か出入のガラス加工業者に頼んで、
番手をいろいろ分けてもらうのがオススメだ。
すり合わせコックに傷筋が入ったら
すり合わせコックは使い方が雑だと、穴と穴の間に傷が入ってリークする。
気がついたらこれもカーボランダム粉で磨っておくと良い。
すり合わせコックにグリースを塗る
まず、古いグリースをよく拭き取り、炭化水素系溶媒で超音波洗浄をしておく。
コックのオスメス両方を乾燥機やドライヤーで十分に温める。
オス側の表面に真空グリースを点々とつけて、穴を合わせた位置からグイッとコックを押し込む。この時、グリースが完全にスリ全体に回るまでコックを絶対に回転させないこと!
- 炭化水素系グリース、例えばアピエゾンならばそれでいいが、シリコングリースの拭き取りはエタノールを使った方が落ちやすいイメージ
- 拭き取りにはシリコングリースはジエチルエーテル、アピエゾンは1,1,1-トリクロロエタン(クロロセン)がよく落ちる。
スリが固着したら
上記されているように超音波で処理するのもよいが、より簡単なのは固着した部分をガスバーナーで軽くあぶることだ。外側のスリが加熱により膨張してするっと外れる。
- あぶりすぎると、内側のスリも膨張して意味が無くなるので注意
紙の実験ノートとは別に実験ノートのデータベース化ってできる?
- 電子ノート導入しているところもおおい。
- データベースなんて大げさなものじゃないけど
Chemdrawの反応式を貼って、試薬量の計算、実験フロー、簡単な結果を入力してる
条件検討とかスケールアップの時に、原料の量だけ変えれば試薬量を再計算してくれるからラクチン
大学生の時にAccessで「俺的scifinder」を作ろうとしてたけど面倒になってやめたw - データーベースと言うよりも
まとめて表にして見やすいようにしている
セプタムはどれくらい使い回ししてる?
- ウチは1回使ったら捨ててる
- 一回で無理そうなら捨てる。いけそうなら二三回は使う
- 一般的には使い捨てらしいけどへたってくるまで使い倒す
- 二三回シリンジ刺して捨てるってもったいない気がするよねえ
まあうちはパスツールまで洗って再利用していたから貧乏性なだけなのかもしれないが - 要するに研究室によって違うんじゃないでしょうかね。
- もともと分析系研究室出身なのでセプタム使いまわしといて
0.1%の収率がどうのこうのと言える神経がよく分からない。 - Aldrichで売ってるセプタムには白いのと赤いのとがあるが、赤いほうが耐薬品性が強い。ただどっちにしても酸には弱いから、BF3とかTiCl4とかに使ったら捨てる。塩基だったら使いまわしたりもする。
キャピラリーがうまく引けない
キャピラリーの太さは、熱したパスツールを引っ張る速度で決まる。
このときビビらずに、十分柔らかくしたもの*4を一定の速度で引くのがポイント。速く引けば細く、遅く引けば太くなる。
太いキャピラリーはLAH還元やスラリーの反応など通常のキャピラリーでは詰まってしまう反応に用いる。
反応チェックはセプタムに18Gくらいの太いシリンジ針を差し、そこを通してキャピラリーを突っ込む。不活性雰囲気の反応などに便利。
陽圧になってるとキャピラリーから吹きだすことがあるので注意は必要。
この用語・言い方は使用禁止だ!
- 規定度(N):規定度はモル濃度を価数で割ったものだが、反応が特定されないと定義が曖昧になる。もはや高校でも教えていないはずだ。酸塩基だったらまだしも酸化還元でも使用され、その場合は何電子酸化かによって数値が異なることになる。そもそもNはSI単位系ではニュートンを示す。「ノルマル」と読むのは論外。
- pH(ペーハー):とっくの昔に化学会の用語集では「ピーエイチ」と読むことが指定されている。普段からそう読むクセをつけておくこと。
- 例のSTAP細胞騒動で生物学の専門家はみんな「ピーエイチ」と言っているのに、肝心の化学者が「ペーハー」とか言ってる。嘆かわしい。
- cm-1(カイザー):海外では絶対に通じない。機器分析の赤外編参照。
- aq.:これを「アクエリアスaquarius」と読むバカが、いかに多いことか。「え?」と思った奴は、辞書を引いて自らの恥を知れ。正しくはaqueous(アケアス)だ。
- NMR:研究室スラングであろうとも、これをエネマと略すのだけはやめてくれ。enemaを辞書で引けば、理由はわかる。
- electron poor: electron richの反対語はelectron deficientであって、poorという用語は使わない。
- electron-poorってプレゼンでも論文でも割とネイティブが使っているのを見ますが間違いなのでしょうか。「電子『吸』引性」のように実は間違った用語だという可能性もありますが…。根拠となる情報をご存知の方がいたら教えてください。
- それは「間違い」ないしは「不適切な表現」です。iupacの用語集にもeletron-deficientはありますが、electron-poorはありません。
- たぶんこれはpolitical collectness的な事情でpoorという言葉が避けられている。娘イオンdaughter ionを嫌うのと同じ。
- electron-poorってプレゼンでも論文でも割とネイティブが使っているのを見ますが間違いなのでしょうか。「電子『吸』引性」のように実は間違った用語だという可能性もありますが…。根拠となる情報をご存知の方がいたら教えてください。
- 電子吸引性:正しい用語は「電子求引性」である。「吸引性」は間違いだ。
- 教科書や術語集にも時々「電子吸引性」と書かれているので、「どっちでもいいじゃないか」というアホが必ず出現するが、そういう奴は以下の記述を見て自分の頭で判断することを勧める。
有機化学勉強会「電子吸引性」 - 「電子求引性」というのは実は電子供与性という術後の対義語として作られた造語。確かにelectron withdrawingの訳語として出来がいいとはいえないのだが、統一して使うべき用語を勝手に書き換えるべきではない。
- 教科書や術語集にも時々「電子吸引性」と書かれているので、「どっちでもいいじゃないか」というアホが必ず出現するが、そういう奴は以下の記述を見て自分の頭で判断することを勧める。
- マススペクトルにおける「親イオンparent ion」「娘イオンdaughter ion」:それぞれ、「プリカーサーイオン」「プロダクトイオン」と言う。詳細については下記PDF参照。
目から鱗のマススペクトロメトリー
上記リンクが切れていたのでこちらもご確認ください目から鱗のマススペクトロメトリー - 配位:配位子が配位し、中心金属は配位される。能動・受動の関係を明確にすること。「金属が配位する」と言ってはいけない。また構造式を書くときには、配位子は小文字で書くのがルール。DMFやTHFなどでもdmf,thfと小文字表起する。詳しくは命名法の教科書を参照のこと。また「キレート」という言葉を使っていいのは、配位子が多座配位子である場合だけだ。
- 酸化と還元:主語が曖昧である日本語ではかならず受動態で使う。「〇〇が酸化した」と能動態で使うと、酸化したのか酸化されたのかわからなくなるから。研究室の日常から気をつけて使いましょう。
- %, ppm: 単に純度・収率等なら問題ない。が、不純物や溶媒の含有量の場合、w/w・v/v・mol/molを明記すると誤解が少ない。
- l(リットル):小文字・筆記体のエルlは使用禁止、必ず大文字Lにする。これも普段から注意する。
↑ L は間違い。単位は斜体にしてはならないので、Lが正しい。
それ以外にも、研究室スラングを学会で言わないように十分注意すること。「酢エチ」なんかも要注意だ。
ソフトフェア編
ChemBioDraw 編
δ, Δ, ℃(特殊記号)の打ち方がわからない*5
ごめんなさい。編集中・・・
- ギリシア文字
読み アルファベット symbol*6 Alt+(10進Unicode)*7 アルファベット symbol Alt+(10進Unicode) アルファ a α Alt+0945 A Α Alt+0913 ベータ b β Alt+0946 B Β Alt+0914 ガンマ g γ Alt+0947 G Γ Alt+0915 デルタ d δ Alt+0948 D Δ Alt+0916 イプシロン e ε Alt+0949 E Ε Alt+0917 ゼータ z ζ Alt+0950 Z Ζ Alt+0918 エータ h η Alt+0951 H Η Alt+0919 シータ q θ Alt+0952 Q Θ Alt+0920 イオタ i ι Alt+0953 I Ι Alt+0921 カッパ k κ Alt+0954 K Κ Alt+0922 ラムダ l λ Alt+0955 L Λ Alt+0923 ミュー m μ Alt+0956 M Μ Alt+0924 ニュー n ν Alt+0957 N Ν Alt+0925 クシー,クサイ x ξ Alt+0958 X Ξ Alt+0926 オミクロン o ο Alt+0959 O Ο Alt+0927 パイ p π Alt+0960 P Π Alt+0928 ロー r ρ Alt+0961 R Ρ Alt+0929 シグマ s σ Alt+0963 S Σ Alt+0931 タウ t τ Alt+0964 T Τ Alt+0932 ウプシロン u υ Alt+0965 U Υ Alt+0933 ファイ f φ Alt+0966 F Φ Alt+0934 カイ c χ Alt+0967 C Χ Alt+0935 プサイ y ψ Alt+0968 Y Ψ Alt+0936 オメガ w ω Alt+0969 W Ω Alt+0937
- 特殊文字
代数学の記号 読み 記号 Alt+(10進Unicode) 正付号 + Alt+0043 負符号 - Alt+0045 乗法記号 × Alt+0215 除算記号 ÷ Alt+0247 加法と減法 + Alt+0177 総和 Σ Alt+0931 総乗 Π Alt+0928 根号 √ Alt+8730 幾何学の記号 読み 記号 Alt+(10進Unicode) 合同 ≡ Alt+8801 角 ∠ Alt+8736 直角 ∟ Alt+8735 垂直 ⊥ Alt+8869 平行 ∥ Alt+8741
- 約物
ハイフン類 学術記号 読み 記号 Alt+(10進Unicode) 読み 記号 Alt+(10進Unicode) enダッシュ – Alt+0150 ゆえに ∴ Alt+8756 emダッシュ ― Alt+0151 なぜならば ∵ Alt+8757 ハイフン - Alt+0045 Mars symbol ♂ Alt+9794 ダブルハイフン = Alt+0061 Venus symbol ♀ Alt+9792 単位記号 一般的な記号 パーセント記号 % Alt+0037 アンパサンド & Alt+0038 デグリー ° Alt+0176 単価記号 @ Alt+0064 プライム ′ Alt+8242 アスタリスク * Alt+0042 ナンバー № Alt+8470 ビュレット • Alt+0149 リットル ℓ Alt+8467 短剣符 †,‡ Alt+0134,0135 オングストローム Å Alt+0197 番号記号 # Alt+0035 セルシウス度 ℃ Alt+8451 華氏度 ℉ Alt+8457
海外留学のおみやげ
ダイヤモンドチップのガラス切りを持って行きましょう。海外にはないので、喜ばれます。
学内学外・国内外の他の研究室を訪問する機会があったら・・・!
便利な実験小道具を見せてもらいましょう。個人の実験台の引き出しに入っているようなもの。
それから、さり気なく天秤をチェックする。天秤の使い方を見て自分たちのと比較すれば、その研究室の雰囲気は大体わかります。天秤がきれいに使われていないラボは、いかなる事情があろうとろくな研究室ではない。
海外の学会に行ったらおみやげはこれ買え!
ドラッグストアに行ってマグカップヒーターを買ってきましょう。日本では法律上の規制で入手困難だが、海外(特にアメリカ)では普通に売っている。
もちろん、スライダックにつないでオイルバス用の投げ込みヒーターとして使う。
ドライアイス浴
普通のドライアイスアセトン浴では-78℃までしか冷えないが、粉砕したドライアイスと少量のアセトンで粥状にしておいてから、そこに少しずつメタノールを加えていくとあら不思議、-85℃まで冷却することができる。
- マジか?
ChemicalBook.comのデータの信頼性に注意
- 数年前から、化学物質名で検索すると国内試薬メーカーのページよりもChemicalBookのページの方が上に来たりする。中国の会社が運営しているらしく、その化合物を取り扱う中国メーカーへのリンクが多い。しかし量的には非常に充実しており、東京化成のページでは沸点が書いていないのにChemicalBookには載っていたりするなど、網羅性も高い(また、水に対する溶解度のデータがきちんと載ってるのは便利)。しかし、時々誤ったデータが載っている場合があるので、ここで調べたデータは、一度他のサイトでも確認しておく癖を付けるとよい。例えば12タングストリン酸n水和物の分子量は348.86と書いてあるが、こちらのページでは3421となっている(そもそもn水和物なので厳密な物ではないが)。また、化学物質の別名欄に、明らかにおかしなものが混じっていることもある。
筆記用具あれこれ
ボールペン
実験ノートの記入など、いろいろ使う。
居室なら好きなものを使えばいいが、実験室で使うなら水性インク(ゲルインク)のキャップ式ボールペンがベストな選択。
ノック式ボールペンは溶媒がかかったときにノック機構が固まってしまう場合がある(特に多色ボールペンでこうなると悲惨)。
油性インクは書いた文字に有機溶媒がかかると判読不能なほどに滲んでしまうので、実験室で使うなら水性インクのほうがよろしいかと。
油性マーカー
フラスコやバイアル、プラスチック容器などにメモする用。
(風袋や総重量、内容物、サンプル番号など)
ただしアセトン等の有機溶媒がわずかにかかっただけで簡単に滲んでしまうので、あくまでメモと考えよう。
正式な記録は速やかにノートに記載すべし。
また、長期保存サンプルであれば直書きよりもきちんとラベルを作るほうがおすすめ。
(ガラスに直書きして冷凍すると、こすったときに消えてしまうことがある)
鉛筆
TLCに書き込む用(原点、UVスポットのマーキング)。
シャープペンシルも使えるが、ノック式ボールペンと同じ理由で非推奨。
表面の塗装はアセトン等の溶媒で簡単に溶けるので無塗装のものがベスト。
その他、NMRを考察するときの書き込みなんかにも便利。
また、水・有機溶媒の両方に完全な耐性を持つ唯一の筆記用具なので、溶媒ビンのラベルに記入するのにもおすすめ。
ただし、当然のことだが鉛筆、シャープペンシルで実験ノートを記録するのは御法度である。
実験室での服装
白衣を着る必要はないが、燃えにくいものを心がけたい。
ただ、白衣は一着あると何かと便利。生協や大学購買で買うよりも、Amazonでコスプレ用白衣を買うのが安い!
- コスプレ用の白衣は医療用を模して作られているので、袖口がボタン留めになっている。推奨はできない。
- ワークマンで実験用白衣をたまに見かけるようになった。大学で買うより安い。