映像作品/【FINAL FANTASY】(映画)

Last-modified: 2023-05-03 (水) 00:41:20

【関連項目】


概要

英語版タイトル:「Final Fantasy:The Spirits Within」。
2001年にアメリカと日本で公開された映画。
製作はハリウッドで行われ、原作・監督はFFの生みの親とされる坂口博信が担当。
スタッフロールでは氏の名前が一番最初に出てくる。
しかしゲーム製作でもPS移行期から問題視されていたFFナンバーの売り上げに頼った制作費管理の甘さが痛手となり、
興行収入は日米合わせて20億円と上々だったが制作費が160億円と尋常でなかったため、結果140億円近くの大赤字を出してしまった。
その皺寄せはFFリメイクの中止、デジキューブが決算連結を切り離され倒産、
そこそこ人気のあったアニメ・FFアンリミテッドの打ち切り等多岐に渡った。

  • FFリメイクに関しては3が開発中止になって4が先に出たり、
    PS2で発売予定だった7~9が「PS版で十分」という理由で中止になったり、かなり迷走していた時期だったな。
    予定されていたWSC版5・6もWSCのスペックでは移植不可能ということでオジャンになったらしいし。

ちなみに肝心の内容はと言うと、世界を侵略する宇宙生物「ファントム」を
八つのアイテムを集めて最強武器を作って倒そうという極めてゲーム的プロットで
映画として見ると30分もすれば退屈になってきて寝てしまうといった感じである。
映像のリアルさだけが前評判として突っ走りすぎたと言える。

  • しかも冒頭で8アイテムのうち7つ目を集め終えてしまうという始末。
    要するに本編の殆どは最後の一つを集めている間の出来事という事になる。

映画の企画が動き始めたのはFF7開発中だった1996年。
そのために1997年5月にハワイにスクウェアUSA・ホノルルスタジオが設立された。
1998年11月に製作発表が行なわれ、発表時の製作費予定は84億円。
しかし2000年時点ですでにその額がつぎ込まれており予定額は1億1500万ドルになっていた。
2001年秋の公開時には当初予定の2倍近い1億3700万ドル(157億円)に。
北米では全米2000館で公開予定だったが、試写会の好評から配給会社のコロンビア・ピクチャーズが拡大を決定、
全米2649館(2933スクリーン)で公開され興行目標は8000~9000万ドル(約100億円)だったが、結果は3200万ドルと大失敗。
日本でも9億円を目標としていたが達成できず、スクウェアは130億円の特別損失を計上。


1作品あたり50~60億円程度の映画をコロンビア・ピクチャーズと製作費折半で、
今後3作品製作する予定だったが、スクウェアは映画事業から撤退することになった。
2001年10月に、1120万株を約149億円でSCEが取得する形で赤字補填が行なわれた。
このとき後に社長になる和田氏(当時は代表取締役兼COO。社長は鈴木氏)が、DVD販売などもあるのでまだ総括する時期じゃないと言い、
その後発売された映画のDVDは製作費には見合う程ではないが、日米ともにヒットを収めている。
またCG技術の蓄積などの成果にも触れたが、FF9製作などにも使われたホノルルスタジオ自体は2002年3月に閉鎖された。


ノベライズ版は結構面白かった。
やっぱり映画にしたせいで尺が足りなかったのでは。

  • 小説版はかなり細かい部分まで描かれてるからな。
    あれ読んだ後に改めて映画版を見たら展開が速すぎてギャグにしか見えないw
  • 小説は「FINAL FANTASY full length」(大型本と文庫の2種)、「FINAL FANTASY evolution」(文庫)が刊行。
    オススメなのは「full length」。
    • 正直、小説の方を読まないと映画版はかなり理解し辛い。
      というよりぶっちゃけ小説だけ読めば(ry

「映像はCGがリアルですごいけど、ストーリーが退屈」という評が多いように、ストーリー面の評価は低い。
ただし、説明不足でわかりにくい展開はいくつかあるものの、話の展開や設定がものすごく破綻しているとかではなく、ストーリーの構成自体はちゃんとしている。

欠点なのは「これぞ」という突き抜けた魅力に乏しいところ。
ファントムとの戦闘、スリリングな逃走劇、主人公アキが見る夢の秘密、笑えるユーモア、勇敢なディープアイズの活躍、アキとグレイの恋愛の行方…など、観客を楽しませるための要素はさまざま含まれてはいるのだが、どれも今ひとつ突き抜けて優れたところが無い。
ゴミだなんだとか言われるほど酷くはないのだが、平凡な出来に留まっている。
また、3DCGの技術力は高く、質感やライティングなどとてもリアルであるが、流石に20年以上経つと本作以上に精細な3DCGは珍しくなくなってしまい、映像的にも今や平凡になってしまったのは否めない。

  • 評価は高くないが、出来がものすごく酷いというわけではなくツッコミどころも大して無いため、
    いわゆる「クソ映画」という切り口でおもしろおかしく取り上げられたりするタイプの映画でもない。
    よくも悪くも平凡で印象が薄い映画、というのが大方の感想ではないだろうか。

キャラクターもすべて3DCGで表現されていることが特徴なのだが、「この内容CGでやる必要あるのか?」という意見も多かった。
写実的なCGキャラクターは技術的な価値こそあるものの、「こんなに一生懸命に高い金かけて現実の人間を模倣するくらいなら、普通に実写で撮ればいいんじゃないの?」と思われてしまったのである。

演出的にも普通の実写の芝居を3DCGのキャラにただ置き換えただけというか、CGキャラクターならではの面白いアクションなどがあるわけではないこと、キャラクター造形がリアル寄り過ぎて現実の人間と大差ないことなども「現実そのままの真似をしようとするくらいなら、そもそも実写の俳優で撮ればいいじゃん」と感じさせる点である。

しかし、CG技術をレベルアップさせるステップとしての映画製作という目的から考えれば、
写実的なCGキャラクターを実際の人間と同じように演技させる技術力というのは、是非とも重要だったのだろう。


「ファイナルファンタジー」というタイトルこそついているが、ゲームのFFとはほぼ無関係の内容であり、観た人からは「これ、全然FFと関係ないSF映画だろ」というツッコミを受けた。
FFと言われれば、召喚獣、飛空艇、魔法、クリスタルなどを思い浮かべるだろうが、そういう”FFらしい要素”はこの映画に全然登場しないのだ。
シドという名前のキャラクターがいるとか、一瞬写るアタッシュケースにチョコボが描かれてるとか、僅かにその程度である。
これではタイトルにFFとついている意味がわからないと言われてもしょうがなかったろう。
おそらく、元からFFとは関係ないCG映画として企画され、後からFFと関連付けたのではないかと思われるが。


「FFじゃない」と言われる一方、監督・坂口博信の好む思想「ガイア理論」が強く反映された世界観であり、”坂口博信らしい”作風ではある。
この映画の低評価として「話や設定がよくわからない」という声があるのだが、本作の死生観はFF7で描かれたライフストリームとかなり近いものなので、FF7経験者はわりと理解しやすいかもしれない。特に、融和波動やガイアのビジュアルは、FF7の後半シーンにかなり似た表現になっている(コメンタリーでもムービーを作っている人が同じですからね、と触れられていた)。


人気がなく需要が無いと言ってしまえばしょうがないのだが、レンタルDVD店に行くと、FF7ACは置いてあるのに本作は置かれてないことも多い。
動画配信サイトでも本作を配信しているサービスは無いようだ。
また、アメリカではブルーレイ版も発売されたが、日本では発売されなかった。


サブタイトルの意味についてヒゲ氏はいかのようなコメントをしている。

―ところで、『THE SPIRITS WITHIN』とはどんな意味なんですか?
坂口:作品の根底にあるのが、『VII』や『VIII』にでてきたような精神や魂の世界なんです。
    あえて日本語でいうなら『内なる魂』といったところでしょうか。

余談

―『FF』といえば、最高のステータスを誇る作品なんですが、
  それを映画化しようとしたきっかけとは?
坂口:きっかけはね、まずボクが映画だけを作りたかったわけじゃないんです。
    『FF』が次の世代へ進むためのステップを作っておきたかった。
    『FF』という作品は、『X』のCG映像を見てもわかるとおり、
    このまま進化していくと、最後は映画との勝負になると思うんです。
    で、いざ勝負となったときに、例えばハリウッドなんかは、
    どんどんスゴイCG作品を生み出しているじゃないですか。
    ですからそのCG技術を研究、または学ぼうと思いまして、
    映画を目標にプロジェクトを立ち上げたのがきっかけです。
    ホノルルスタジオはそのために作ったんですよ。
    まあ映画は、第1ステップといったところでしょうか。
   (中略)
―映画の次に考えていることはありますか?
坂口:次のステップは、すでに始めています。
    というのも、今映画を作りつつ新たなCG技術の研究をしているんですよ。
    今回のような高密度な世界というのは、ゲームではまだ表現されていない。
    確かにこれまでは、いろいろ制約があってムズかしかった。
    でもボクらが映画を作っているうちに、ゲームの技術が想像以上に追いついてきた。
    実際、PS2に内蔵されているチップはかなり高性能ですから。
    “いつ・どこで”というのはありませんが、将来ボクらが学んだ映画を使う日がくると思います。

映画のような演出のゲームを、映画のような映像のゲームを、とひたすら映画に憧れ続けてきたスクウェアが作った映画。
しかし結果は皆さんの知ってのとおり惨敗し、映画の赤字額はギネスブックにも載ってしまった。
その結果、スクウェアはソニーからの資金援助などで救済して貰わなければならない事態になった。
ただしエニックス合併時はすでに財務状況は回復ずみであり、吸収合併の話はデマ。

  • 監督のヒゲ氏によると、とりあえず日本上映での敗因は
    日本語吹き替えではなく英語音声での日本語字幕表示だったため
    字幕部分によりCGの美しさが削がれたから」らしいが…。
    • 時期も悪かった。
      当時日本ではジブリの『千と千尋の神隠し』が興行収入300億超の大ヒットを飛ばしていたし…。
      ちなみにこの興行収入は、配給後約20年近くまで破られていなかった日本映画史上歴代第二位の超高額。
  • 「ギネスブックに載った」とよく喧伝されるが、赤字額で世界一になってギネスブックに載った訳ではない。
    映画の興行収入赤字額の世界一は1995年の『カットスロート・アイランド』である。
    ただし、「参考記録」としてギネスブックに書かれたのは事実であるとされる。

あのFFで面白かったのはここだけ↓
(YouTube動画リンク)

  • ↑クソ吹いたwww
    というかそれ公式なのか?
    • 調べたらDVDの特典映像らしい。映画スタッフが直々に製作。

FF7ACを見ると、何故既存FF作品を無視してまで新作を作ったのかすごく聞きたくなってくる。
明らかに1~9を題材にしたほうが良かった気がするが。

  • 160億円もの制作費を疑問に思わなかったのかも是非聞きたい。
    完全新作ということで原作ファンが獲得不可能な状況で何故160億以上稼げると思ったんだ?w
  • 比較のために幾つか数字を持ってこよう。
    制作費で160億近くかかったハリウッド映画と言うと、タイタニック(制作費推定160億円)やX-MEN ファイナル ディシジョン(推定168億円)、
    またアバターの制作費が推定189億円+だとされている。
    何気にタイタニック同額つぎ込んでるわけだ。
    • んで、今度は興行収入なわけだが160億円も儲けるってのは結構尋常じゃない。
      興行収入が160億円近かった映画と言えば、上記のアバター(156億円、しかもこれは日本だけでの数字)や崖の上のポニョ(155億円)、
      それにタイタニックの場合だと262億円(これも日本だけでの数字)だったりする。
      • これらの数字を見れば160億円も制作費としてぶち込んで回収しようとしたのが、如何に無謀だったかが良く分かると思う。
        メガヒット級のハリウッド映画でもなきゃそうそうお目にかかれない数字だと言うのに…。
  • 確かに日本で100億稼ぐ映画は洋画邦画含めて、平均して数年に1本あるかないか。
    しかし日本で20億程度の興行収入の映画が、全米では1億ドル(100億円)くらい余裕で設けるのはよくある話。
    • 1億ドル程度では全米映画興行収入の年間ベスト10にも入れず、メガヒットとも言えない位アメリカの市場はデカイ。
      だから、全米で売れれば160億円の制作費回収だって、グッズやDVDの売り上げもある事だし、
      決して夢物語ではなかった…と思う。
      • 一応「映画事業」&「映像技術開発」への投資なので単品で回収しなきゃならないってことはないはず。
        (ゲームで言うとオープンワールドの技術開発を兼ねてたシェンムーなんかと同じ)
        まあそれを考えても無茶な投資であることには変わりないが。

FF11のウェポンスキルに「スピリッツウィズイン」が存在する。
元ネタがこの映画のサブタイなのは間違いない。


ゼノギアスのディスク2が妙に手抜きとなった根本的原因の一つ(予算不足)にも数えられている。


金田伊功の実際にありえない強調を使ったアニメ的な演出が、
CGでは無理、リアルじゃない、などと現地スタッフにことごとく却下されてしまったが。
FF13では金田伊功がそういう演出をちゃんと盛り込んだとNHKの番組でやってた。

  • 傷を負った部分に×印の絆創膏を貼ったり、ピンチ時にキャラが汗をかいたりする、ベタな演出のことね。
    この映画の登場人物は一切汗をかかない。フルCGとはいえ、一応アニメ映画に分類されている筈なのだが…。
    • 「でかい汗」は佐藤順一氏の開発した表現。
  • 金田伊功氏のいうアニメ的演出とは、一瞬体・光・メカがあり得ない方向に捻じ曲がる事から起きる先の読めない奇想天外なアクションが持ち味。
    後に金田系アニメーターの筆頭・今石洋之氏が「CG界の金田伊功を見つけなければ」という旨の発言をした。

ただ、技術的に残したものは結構大きいらしく、
「CG技術の発展で映画とゲームが将来ぶつかる可能性を考えた投資」という動機そのものが間違っていたわけではない。
あくまで映画単体としてイケてないことと、際限なく予算を使いすぎたことが主な問題である。
Pixarみたいに最初は短編から始めたほうが良かったのでは?という気はする。