「赤いマフラー完結編」 (91-343)

Last-modified: 2008-06-09 (月) 23:37:14

概要

作品名作者発表日保管日
「赤いマフラー完結編」91-343氏08/06/0908/06/09

 
このSSは
「不思議戦隊SOS」および「もしもあたしが消えちゃったら」
同じ時間平面を推移しています。ですからその二つの内容を覚えておいてから
「赤いマフラー」→「赤いマフラー完結編」と読んで下さい

作品

そんなわけで謎のヒーロー探しにでかけた我らSOS団であったが、当然のことながら何の手がかりも得られず解散した。
ハルヒは時間が経つにつれ、不機嫌になりとりつくろう島もない、今夜も閉鎖空間が発生するのだろうか?
家に帰り床に就く、なかなか眠れずベッドの上で転がっていると携帯が鳴った。
「夜分遅く申し訳ありません。緊急事態です」
「また例の奴が発生したのか?」
「とにかく速く来てください!」
「どこに行けばいいんだよ」
「あっ、すいません場所は・・・」
古泉らしからぬ口調でかなり慌てている様だ、何が起こったんだ?
「たとえでなく、この世界の存亡が懸かっています。涼宮さんに万一のことがあれば我々のこの世界は消えるかもしれません」
なんだって!
「長門さんから事情は伺いました。例のバイクで速く来てください。あと変身ベルトも忘れずに、我々には余り時間が残されていません」
よくわからんが、古泉が慌てるほどの緊急事態なのだろう、俺はベルトを押入れから引っ張り出し家を出た。
真夜中の静寂を打ち破るごとく猛スピードで目的地に向かう、世界の存亡、そしてハルヒの危機、頼む無事で居てくれ・・
爆音を響かせ急坂を登ってゆく、その頂上に着き俺はバイクから降りて走った。
真夜中の北高グラウンド、塀をよじ登り侵入する、こんな事やったのは東中の校庭に侵入したとき以来だ
「こっちです!速く」
真夜中のグラウンドにいたのは、古泉、長門の他に森さん、新川さん、田丸兄弟の6人、面子から見てただ事でないのはわかる。
「事情を説明してくれ」
「あのアトラクションで閉鎖空間が発生したのを覚えていますか?」
嫌な予感がする。まさかとは思うが今度は謎のライダーの夢なんて観てるんじゃないだろな?
「それだけでしたらまだ良かったのですが・・・」
「それだけじゃないのか!」
「そこからは私が説明します」
闇の中から聞き覚えがあるが、いつものスウィートヴォイスではなくしっかりとした大人の女性の声が聞こえてきた
「朝比奈さん・・・」
闇の中から出てきたのは朝比奈さん(大)だった。
 
「詳しくは禁則なんですが未来から観測していてこの日この時間に極めて時空間が不安定になると記録が残っています。」
「そしてその危機を救えるのは、キョン君あなただと記録されていました。」
誰かわかる様に説明してくれ正直わけがわからない
「あなたの推測どおり、今涼宮さんは閉鎖空間を発生させています。しかし通常と違い我々は侵入できません」
長門が口を開いた。
「別次元空間の積極的関与が認められる」
「どうゆうことだ?」
「この次元世界とは別の世界が関与していると言う事ですか、長門さん?」
古泉が口を挟むがいつもの冷静さが感じられない
「そう・・・」
それじゃまるで、いやそんなことがありうるか?いよいよやってきたのか最後の奴が・・・
古泉、長門、朝比奈さん(大)そして俺が同じ言葉を口にした。
  
「異世界人」
 
「おそらく、彼らは閉鎖空間に侵入し涼宮ハルヒに接触しているものとおもわれる」
そいつらが何を考えているのか知らんが、俺たちにハルヒを助け出す事はできないのか?
絶望が心を覆い尽くす。俺は約束したんだ、もしハルヒが俺の前から消えちまったら必ずみんなで探しに行くと
あの時、涙を流しながら俺の手をずっと握り締めていた感覚はまだ残っている。俺はまだ何もしていない
絶望の極地に達していた俺を尻目に他の全員がなにやら話し込んでいる。
ようやく話がまとまったのか古泉がいつものスマイルを取り戻しある提案をした。
「まだ絶望するのは早いかもしれませんよ」
その言葉に急に立ち上がり、気づいたら古泉の胸倉を掴んでいた。
「落ち着いて下さい。説明しますから、我々「機関」のメンバーの力を結集すればほんの一瞬ですがこの閉鎖空間に接触できます。
通常の速度では進入できませんが時速392キロ以上で我々の作った隙間に突入すれば侵入は可能です」
古泉はバイクに目をやった。多分それしかないだろう
「しかし問題があります。この閉鎖空間の壁はちょうど校舎の壁と一致します。もし失敗したら時速400キロであなたは壁に衝突することになりますが」
「聞くまでも無いだろ、やってやるよ」
「止めても無駄でしょうね、では早速始めましょう」
俺はバイクをグラウンドの端に移動させる、最適なタイミングを計るため長門と朝比奈さん(大)がついてきた。
「キョン君ごめんなさい、私がもっと早くにこの情報をもってくればこんな危険なことしなくてすんだかもしれないのに」
大人になったとはいえ朝比奈さんは朝比奈さんだ、心の底から俺を心配し申し訳なく思っている。
「違います。あなたがこの情報を持ってきてくれたから対応策が作れたんです、安心してください、未来は必ずつくってみせますよ」
実は俺も内心ビビッているのだが弱音は吐けない、逆に覚悟が決まった。
 
長門がスタート地点を割り出し案内してくれた。こころなしかその眼は悲しそうだ
「ごめんなさい・・・私の責任・・・」
「長門、逆にお礼が言いたいよ、おまえがバイクに情報操作してくれたお陰でハルヒを助けに行けるからな」
「もしかして、この時の為にやってくれたのか?」
「ちがう・・あの時はあなたの希望に従っただけ、涼宮ハルヒが自分の身に危険が迫ったときにあなたに助けて欲しいと思ったから・・・」
長門はそこまで言いかけ、いつものガラスのような眼に戻った。
「もうすぐカウントダウンを開始する、許可を」
「長門、帰ってきたら約束通り図書館にいこう、ハルヒに内緒でな」
長門はミクロン単位でうなずいた
「よし、カウントダウン始めてくれ」
「5,4,3,2,1,0」
俺は一本の矢となり校舎の壁めがけて突っ込んでゆく、ブレーキをかけたら失敗するし古泉たちのタイミングがずれたら失敗する
実に分の悪い賭けだ、だが俺はみんながハルヒのもとに運んでくれる事を信じて臆することなく持っているものを全てこの一瞬に賭けた。
 
なによこれ、また同じ夢をみているの?
真夜中の学校、光の無い景色、さっきまでベッドで寝てたはずなのにどうしてあたしはこんなとこにいるんだろ
あの時はキョンがそばで寝てたけど今度はいない、みんなどこにいるの?
校舎を探し回ったけど電話もつながらないし、部室にも誰も居ない、暗い世界にあたしはひとりぼっち、さびしいのは嫌だ、どこにいるのキョン?
グラウンドに出てみよう、あたしだけが知っているキョンとの思い出の場所、何か手がかりがあるかもしれない
でも、グラウンドにも誰もいない、その時肩を後ろから叩かれた。振り向くとそこには黒いスーツの男達が20人ぐらいたっている
暗がりであまり顔は良く見えないけど、どうみても友好的な雰囲気じゃないわ
「なによ、あんたたち」
「涼宮ハルヒさんですね、お迎えに上がりました。」
「わけわかんないわよ、突然なに言い出すの、それよりここはどこ?」
「あなたの心の中と申せばよろしいですか、」
次の瞬間男はあたしの腕を掴んだ。
「おとなしく同行してくれれば、危害はくわえません」
「ふざけんな!どうみても悪人のあんたらに着いて行く程バカじゃないわ」
「仕方ありませんね、では力ずくで」
あたしは男のキン○マを蹴り上げた、そいつが股間を押さえ悶絶してるうちに逃げ出す。
「逃がすな、追え!」
男は股間を押さえながら叫ぶ、あっという間に囲まれてしまった。そして両腕をがっちりと固められてしまう
どうしよう、もしかしたら「あたしが悪人にさらわれれば謎のライダーが助けに来てくれる」なんて考えていたからこんなことになったのかな
あたしはバカだ、そんな事になったらキョンが必死になって探し始めるに決まってるじゃない、この前お葬式の帰りに言ってたもん
もし、あたしがキョンの前から急に消えちゃったら泣かないでみんなと一緒に探し始めるって
なんで、そんな事に気づかなかったんだろう、もう後悔しても遅いけど、あたし殺されちゃうのかな?もうキョンに逢えないのかな?
男達に引き吊られながらそれまで我慢してきた涙が止まらず頬を伝ってくる。あたしは大声で叫んだ
「助けて!キョン」
その声がグラウンドにこだまする。でもなんの反応もない
「無駄だ、この空間は我々が制圧している、あの超能力者も宇宙人もここには入って来れない」
こいつら何言ってるの、超能力者と宇宙人って誰?
うっすらと男の顔に笑みがこぼれるのが見える、とても冷たい氷のような笑顔、それはあたしを凍りつかせた。
 
「ヴオーンヴォンヴォーーン」
 
そのとき大地を震わせるような爆音と共に闇の中から光が見えた、男達がたじろぐ、その光は方向を変えあたしのほうにまっしぐらに進んできた。
どうやらバイクのようだ、まさか・・・
バイクはあたしたちの近くで急停止した。そして聞き覚えのある声がきこえてくる
「ハルヒ、無事か!」
「バカ!なんでこんな所に来ちゃったのよ、速く逃げて」
「ふざけるな、約束しただろどんなことをしても探しに行くと!」
キョンはバイクから降りて男達に殴りかかる、2人倒したけど囲まれて袋叩きにされている
「やめて!わかった、あんたらの言うとおりにするから」
男達は攻撃をやめ引き上げてきた。キョンがボロボロになって倒れている
「連れてゆけ」
あたしの意識はそこでとんだ、気を失う寸前に何度も辛そうな声で「ハルヒ」と呼ぶ声がきこえた。
眼が覚めると校舎の屋上にいた、手はロープで縛られてしまって動かせない
「ようやくお目覚めですか、涼宮ハルヒさん」
「誰!?」
星ひとつ無い空のもと、ゆっくりと人影が近づいてきた。なんとも奇妙なシルエット、なんなのコイツ?
あたしの眼にようやく映ってきたのは、サーカスの道化師の姿をした男だった、メイクのせいか薄気味悪い笑顔が特徴的な変な道化師
「手荒な事はしたくなかったのですが、お許しください」
口では謝っているけど、道化らしいジェスチャーと不気味な甲高い声からして本気でないのはすぐわかるわ
「何の用?悪いけどあんたの相手をしてるほど暇じゃないんだけど」
「用件は簡単なことです。あなたの生きている世界がタダの夢や妄想であったと認めてほしいのです」
「冗談じゃないわ、なんでそんな事しなきゃならないわけ?」
「あなたの力が作り出したこの世界は我々の「現実世界」にとって非常に都合が悪いのです」
「あたしにそんな力あるわけ無いじゃない!」
「あなたが気づいていない、もしくは周りが気づかないようにさせているだけです」
「その力が作り出したこの世界は、宇宙人、未来人、超能力者が闊歩する「現実世界」からみたら極めて非常識なものです
そしてこの世界はどんどん大きくなってゆき我々の「現実世界」を脅かしています。ですからこの世界は夢に過ぎないことを自覚して欲しいのです。
本来であればあなたが無自覚のうちにその力でこの世界を作り変えようとしたのですが我々の仲間が成功寸前に裏切りましてね
まあ彼にしても自分は普通にこの世界に生きる人間だと思わせておいて無自覚のうちに我々の駒として動く予定だったのですが・・・
あなたのせいで予定が狂いこの様な事になったのです。」
 
こいつの言ってる事はわけがわかんない、でもあたしの住む世界を消したがっているのはわかる。キョンやSOS団のみんながいる世界を消すつもりは無いわ
「答えはNOよ当たり前じゃない!」
「やはりそうですか、あなたの答えは、仕方ありませんあなたを消してこの世界を消滅させます」
男は懐から大型のサヴァイバル・ナイフを取り出した。
嫌だ死にたくない、だってまだキョンの口から「あたしが言って欲しい言葉」を聞いてないし、宇宙人、未来人、超能力者にも会ってない
男がゆっくりと近づいてきた。そしてナイフを振り上げる
 
「キョン助けて・・・」
 
「待て!その少女からはなれろ!」
 
その声は絶望の闇の中に放たれた一本の矢のように道化師の動きを止めた。
眼を凝らし声の聞こえたほうをみてみると、そこには赤いマフラーをした某バッタ型改造人間が立っていた。本当にいたんだヒーローが
ヒーローは自分のいた部室棟の屋根から「トオッ」と掛け声と共にジャンプして何十メートルも跳びあたしと道化師のいる屋上に舞い降りた。
「来たな裏切り者、おい!こいつを取り押さえろ」
道化師が大声で叫んだけど黒いスーツの男達は出てこない
「おまえの部下は全て倒した。無駄な抵抗はやめろ」
「なにい!貴様はタダの人間としての力しかないはずだ・・そうかそう言う事か」
何ひとりで納得してるのよ、悪役なら悪役らしく状況説明しなさい!
「そのけったいな衣装は宇宙人が作らせた物だな、そして超能力者の手を借りてここに侵入した。この計画を知らせたのは未来人か」
すごいわかりやすいけど逆にわからなくなった。このヒーローには宇宙人、未来人、超能力者の知り合いがいるの?まるで七夕の時にあった・・・
「裏切り者とか、なんとか、おまえの言ってる事は全くわけがわからん、そんな知り合いひとりで充分だ!」
次の瞬間、ヒーローは道化師をラリアートでなぎ倒した、スタン・ハンセンを彷彿とさせる見事な一撃だった。
道化師は立ち上がりナイフで切りつけたけど、そのナイフをそのまま手で握って受け止め大型ナイフをぺティナイフ見たいにペシャンコにした。
今度はピストルを抜いた、回転式の警察官が使っている物に良く似ている。
「バン!バン!バン!」と銃声がする、しかしヒーローの身体はその弾丸をBB弾のように跳ね返した。
鋭い蹴りで道化師の手から銃が弾き飛ばされた。
慌てた道化師はドラ○もんのポケットのように今度は小ぶりのナイフを取り出し、あたし首筋に当てた。
「貴様こそ邪魔をするな、涼宮ハルヒの命は無いぞ!」
出た、悪役の常套手段「人質攻撃」あたしの顔の前に道化師の手がある。そうなればこれはお約束
あたしはその手に力いっぱい噛み付いた。
「ギャー!」道化師が悲鳴を上げる
「今よ!」
そしてヒーローは大きくジャンプし空中で回転してとび蹴りを道化師に喰らわせた。
屋上のフェンスを破って遥か彼方へ道化師は飛ばせれてその姿はみえなくなった。
 
「大丈夫か?」
仮面の中から聞き取りづらいけど、どこかで聞いたことのあるような声が聞こえる
ヒーローはあたしに近づき縄を解いてくれている
「あたしは大丈夫、それよりキョンがキョンが大変なの、グスッ」
あたしは泣きながら自分の事よりキョンの心配をしていた。
「大丈夫、無事だ、次に会うときにはこのことは覚えておらず、怪我ひとつしてないさ」
「だって、あいつ力も無いのにあたしを助けようとして酷いめに・・・」
「ヒーローの条件は力の強さではない、たとえ力が無くても大切な人のために命を賭けられる勇気こそヒーローの条件だ、彼は君にとってのヒーローだよ」
その声は優しく、あたしは風に揺られている赤いマフラーをみて眼を疑った。あたしの作ったのにそっくりだけどそれだけじゃない
端っこに小さくつけた「KYON」の刺繍が着いている、どうしてこの人がキョンのマフラーを持ってるの?
その様子をみて何故かあせったヒーローは縄を解いて変なことを言った。
「君は悪い夢をみているんだ、もうじき眼を覚ますだろう。だから今夜の事は全て忘れなさい、もう君に会うことも無いだろう」
そういってあたしから去ってゆく、でも絶対に聞きたい事があった。
「夢の中でも命の恩人の名前を聞きそびれたら後悔するわ、せめて名前をおしえて!」
ヒーローは立ち止まって少しの間考えたあと自分の名前を名乗ってあたしの前から姿を消した。
その名前をきいてあたしは驚いたけど納得できた。だって宇宙人、未来人、超能力者の知り合いがいる人なんてその人しかいないもの
名乗った名前は
  
「ジョン・スミス」
 
気が付いたら自分の部屋のベッドで寝てた。変にリアルな夢だったけどキョンとファーストキスしたときと同じようにみんなには黙っておこう。
あたしだけの秘密がもうひとつできちゃった。
 
全身がバラバラになるほど痛い、顔も青あざができている正直立つこともままならない、あの後立ち上がって変身し敵を倒せたのは
キン○マンいわく「火事場のクソ力」だったのだろう。
気が付いたら俺はグラウンドのど真ん中でバイクと共に倒れていた。
「ご無事ですか!」
最初に見たのは朝比奈さん(大)の女神のような顔ではなく、長門の澄み渡った眼でもなく、よりによっていつも見慣れた古泉の笑顔だった。
「急に話かけるな・・・息を吹きかけるな・・・顔が近いんだよ・・・余計悪化する」
「なんとか無事のようですね、安心して下さい閉鎖空間は消滅し別次元世界からの干渉も無くなりました」
ひんやりとした小さな手が俺の額に触れると、痛みは無くなり傷も無くなった。服まで元通りだ
「長門ありがとう、これで明日病院に行かず学校に行けるよ」
俺は立ち上がって長門に礼を言う。しかし朝比奈さん(大)の姿が見えない
「彼女なら閉鎖空間の消滅を確認した後すぐに帰りましたよ、何でもあまりこの時間平面上には滞在できないそうです。」『
残念だ!最後にお別れぐらい言ってくれても良いのに。ご褒美にキスでもしてくれる事を期待してたのだが
「伝言を頼まれています。『本当にありがとう、あなたは未来を作ってくれました。あなたなら自分の力だけでも涼宮さんやみんなを守ってゆけます
でもこの事は今の私には秘密にしておいてください、あと詳しくは禁則事項ですが、あなたが助けた幼稚園児の中に
私達の住む未来にとってとても大事な人がいたのです。おかげで助かりました。
追伸、もうそろそろあなたの口から涼宮さんが「言って欲しい言葉」言ってあげてください。朝比奈みくる』」
なんだよ「言って欲しい言葉」って、おい古泉まさか伝言を捏造してないだろうな!
古泉は何も答えず、軽く両手を上げるジェスチャーでそれを否定した。そんな中、俺は長門にお願いをした。
「長門、このベルトは返すよ俺には過ぎた力のようだ。あと卒業まで乗らないと約束するからバイクも元に戻してくれ」
「そう・・・」
長門がベルトを手にするとすぐにタダの紐にもどり、バイクに触れるとサイクロンから中古の原付に戻った。
「それが良いと思います。過ぎた力は時として災いを呼びますから」
「古泉おまえが言うと説得力があるな」
「僕は災いだと思ってませんよ、そのおかげでいつも面白い痴話喧嘩を堪能できますから」
何の事だかさっぱり俺にはわからんがそれで良いのだろう
「じゃあ、みんな明日学校でな」
俺たちは解散し俺は卒業前最後のツーリングを家まで楽しんだ。家に帰ってベッドに入ったが眠れない
古泉と長門には黙っていたが、異世界人は俺を確かに裏切り者と言った。そしてハルヒの力の事も、古泉や朝比奈さん、長門の事も知っていた
「俺はこの世界の人間じゃないのか?・・・」
まあ考えても仕方ないそんなこと知ったこっちゃねーや!
 
 
翌日、寒さがますます厳しくなるなかハルヒのお手製マフラーを巻いて登校する。途中谷口にあった。
「おはよう、キョン知ってるか?」
「何をだ」
「例の謎のライダーは自分だと名乗り出てるマニアが後をたたないらしいぜ、バカだよな」
「どうでもいいよ、そんなこと」
ようやく教室に着くと俺の後ろの席ではハルヒがぼんやりと空をみている
「おはようハルヒ、随分眠そうだな」
「昨日の夜、変な夢をみたのよ、おかげで寝不足なの」
どんな夢かとは俺は聞かない
「ちょっと、そのマフラー見せて」
ハルヒは俺の首から強引にマフラーを奪って何かを確認している、そして怪訝な眼で俺を見た。
「あんた、昨日の夜どこかにでかけた?」
「昨日はずっと寝てたよ、くだらんライダー捜索で疲れてたからな」
「ふ~ん、そう」
何かを納得できないような表情で俺をみている、話題をずらそう
「今日もライダー捜索にいくのか?」
「あれはもういいわ」
「どうして?」
ハルヒは俺から顔をそむけ、また外を見だした。
「あたしのヒーローは、力が無くって頼りなくてもあたしを必死に守ろうとしてくれる人だってわかったから」
何を言い出すかと思ったら、やれやれまた話題を変えよう
「ハルヒ、俺に言ってもらいたい言葉はあるか?」
「特に無い、なにいってるのあんた?」
「じゃあ、俺はおまえに言いたい言葉を言うぜ」
「なによ?」
 
  
「そのマフラーあったかいぞ、ありがとう」
  
  
終わり