あの曇り空を割って (132-702)

Last-modified: 2010-09-11 (土) 14:55:40

概要

作品名作者発表日保管日
あの曇り空を割って132-702氏10/09/1010/09/11

作品

 それは、いつもとなんら変わりのない放課後。
 俺は朝比奈さんが甲斐甲斐しく淹れてくれたお茶をありがた~く頂戴し、長門が定位置で黙々と読書に励む様を目の保養としつつ、古泉が笑顔で自分の駒に自殺行為を強要しているのを嘆息して眺めていた。
「いやぁ、平和ですねぇ」
 お前の王国はもう絶対に絶命な状況だけどな。
「だといいんだがな…アイツのことだ。今日にでもまた騒ぎだしそうな気もするぞ」
 無謀にも単騎突進してきた女王陛下を容赦なく討ち取りつつ、俺は古泉に言葉を返す。
 
 ここ数日はこれといって目立った動きを見せなかった我らが団長殿であるが、そろそろまた何か自発的に興味を引くものを発見してきて傍迷惑な騒動を繰り広げそうな予感がしていた。
 思えば本当に心休まる日なんか高校に入ってからあっただろうか?あの暴虎馮河を地で行く女子高生がいつどんな厄介事を運んでくるか、戦々恐々としない日は無かったような……
「フフ…ですが、なんだかんだ言ってもそんな日常を楽しんでいるのではありませんか?」
 何を言うか。…確かに自分でこっちの世界を選んだのは紛れもない事実だがな、それでも安息を求めようとする気持ちは別に間違っちゃいないハズだ。ああそのハズだ。
 そんな思いを込めて、目の前のハンサム野郎に白旗を振らせようと無言で僧兵を差し向ける俺であった。
 
 
「やっほー! みんな揃ってるー!?」
 いつもの勢いでドアを蹴り飛ばし、噂の団長様がご登場。蝶番のリアルな悲鳴が聞こえた気がするぞ。
「ハルヒ。もう少し加減してドア開けることを覚えたらどうだ?」
「結果が同じなら過程はどうだっていいのよ!」
 んなこたないだろう。それじゃその内ココは妙な意味でバリアフリーな部屋になってしまうこと請け合いだ。
 しかしハルヒはお構いなしでズカズカと団長席に向かい、両手を腰に当てて高らかにこう宣言しやがった。
 
「ギネスに挑戦するわよ!!」
 
 ………いやいやいや、突然何を…そういや昨日ギネス特番とかどっかの局でやってたような。
 だが他のメンバーは相変わらずの表情。朝比奈さんに至っては
「ぎねすってなんですかぁ?」と言わんばかりの……未来じゃギネスは廃止されてるんだろうか。
 取りあえず誰も口を開くそぶりが無いので仕方なく俺がつっこむことにする。お決まりな展開だな、もう。
 
「お前な、単なる一高校生に過ぎない俺たちがいきなりギネスなんて…」
「なによ、実際に挑戦してる奴らなんてたくさんいるじゃない。あたしたちSOS団にできないわけがないわ!」
 …だめだ、これはもう止まらん。いや止めようと思ってホントに止まったことなんて実際ほとんどないけど。
「いいではないですか。ある意味とても学生らしい、有意義な試みだと思いますよ。流石は涼宮さんです」
 この太鼓持ちめ…さっきのチェスでもっとコテンパンにしときゃよかった。
 朝比奈さんはポケーっと、長門は当然変わらぬ無表情だし……………しょうがない。
「やれやれ………で、何に挑戦する気なんだ? 一口にギネスと言ってもいろいろあるだろう」
「ふふふ………コレよ!!」
 そう言ってハルヒが高々と掲げたのは……
「……紙飛行機?」
 
「そう、紙飛行機の滞空時間世界一を狙うのよ!」
 またマニアックな…つーかそんなの認められるのか?
「ええ、以前に日本人の方が紙飛行機の室内滞空時間を更新・認定されていましたよ」
「マジか…いやまて、『更新』ってことはそれ以前からもちゃんと記録が残ってたってことか?」
「はい。前回の記録保持者はたしか…アメリカの方だったかと」
 へぇ…紙飛行機なんて子供の遊びにそんな大層なものが付随していたとはな。
 
「しかもその記録っていうのも『27秒9』、つまりたったの30秒弱なのよ!楽勝じゃない?」
「いや、30秒って結構な長さだぞ」
「あたしの手にかかれば1分だって余裕よ! これはSOS団を世界に知らしめろって天啓に違いないわ!」
 んなわけあるかと思いつつも、まあ紙飛行機作って投げるくらいなら別にいいかと軽い気持ちでいたんだ。
 
 やっぱりそんなに甘くなかったけどな。
 
 
 ハルヒが「体育館の使用許可とってくる」と団室を飛び出し、残された俺たちはとりあえず紙飛行機の制作作業に取り掛かった。何年ぶりだろうな、コレ。
 というか俺はせいぜい2,3通りくらいしか折り方知らんのだが、そもそもこんな普通の紙で作ってそんなに飛ぶもんなのかね?
「そうですね。先ほどお話しした現在の記録保持者はサトウキビで出来た紙を使用していたらしいですが」
「…オイオイ、それじゃもう土俵が違うんじゃないか?」
「まぁこの紙でも出来ないことは無いでしょう」
 そう言ってやけに丁寧に折り目を付けていく古泉…目がかなり真剣だ。
「……お前、まさか本気で記録更新狙ってるのか?」
「もちろんです。お二人もそのつもりみたいですよ?」
 その言葉に女性陣の方へ首を向けると、確かに二人とも真面目に紙飛行機制作に取り組んでいるようだ。あー、でもこれは……
 
「あの、朝比奈さん」
「はい?」
 作業の手を止めて俺の呼びかけに反応してくれる朝比奈さん。うん、可愛い。可愛いんだけど。
「すいません、これは一体…」
「え? 紙飛行機ですけど…?」
 そう、それは紛れもなく紙飛行機だ。間違いなく紙飛行機だ。
 
 正確には飛行機型に切り抜かれた紙だ。
 
「えっと…ですね、紙飛行機っていうのはこんな…」
 そう言ってさっきハルヒが掲げた紙飛行機を見せる。
「あ、はい。涼宮さんすごいですよねぇ。どうやったらこんな立体的に切れるのかな?」
「いや、これは切って作ったんじゃなくて…」
 俺は一から紙飛行機とは何ぞやを説明してあげた。真っ赤になって恥ずかしがる朝比奈さん。
 ついでにこれをどうやって飛ばすつもりだったのか試しに聞いてみたところ、
「あ、あの…こう…ひらひら~って……/////」
 あーもう、可愛いなコンチクショウ。
 そしてハサミを所定の場所に戻しに行く天使を後目に、俺はもう一人の女子部員の方へと向かった。
 
 
「あー、長門?」
「なに?」
「えーとな、紙飛行機ってのはな…」
「…先程のあなたと朝比奈みくるの会話は聞こえていた。この制作方法で問題は無いはず」
「うん…一枚の紙を切り取ることなく全て使用し、ちゃんと手折りで作ってある。確かに作り方には問題ない」
 でも一枚の紙から手折りでF-18が出来ちゃマズイんだ長門。しかもコレすげ-リアル。どーなってんだ。
「これは…凄いですね。曲線までこんなにしっかりと…」
 古泉がやってきて長門作・紙製F-18を矯めつ眇めつしている。確かにスゴイ…操縦席まで付いてるし。
「…コレ実際投げたらどうなるんだろうな」
「ええ…気になりますね」
「…試してみる?」
 そう言った長門は神飛行機を手に持って立ち、開け放たれた窓から空に向かって…投げた!
 
キィィィーーーーーーーーーーーーン!!!!!
 
 (  д ) ゚ ゚
 (  д ) ゚ ゚
 (  д ) ゚ ゚
 ( ‐ ‐)
 
 
 紙飛行機が発してはいけない音と共に、それは大空高く直進していった。
「…す、すごいですぅ……」
「いや…これはちょっとマズイのでは…」
「…まあ、所詮…紙だし、な。そのうち朽ちて……………………あ、雲が割れた」
 
 もうあんなのは作らないと長門に約束させた。みんなも真似するなよ。
 
 
 
「お待たせ―! 許可とってきたわよー!」
 ハルヒが戻ってきてでっかい声でそう告げる…マジで体育館の使用許可が出たのか?運動部はどうした。
「外でランニングでもしてりゃーいいのよ。そんなことよりどう? みんな出来た?」
 そんなこと扱いされた。運動部のみなさん、どうもすいません。
 とりあえず完成した各々の紙飛行機をハルヒに見せる。実地で様子を見ながらまた折ってくつもりだがな。
 ああ、長門にはちゃんと普通の紙飛行機の作り方を教えてそれっぽいのを用意させた。抜かりはないぜ。
「………うん、みんな中々の出来ね。でもキョン!アンタのはダメー」
「何ぃ? そんなバカな」
「全然ダメよ!もう、仕方ないからあたしが紙飛行機の真髄を叩き込んであげるわ。みんなは先に体育館に行っててちょうだい!」
 …むぅ、納得いかん。俺はこれでも小学生の頃『達人』と呼ばれた男だぞ?少なからず自信あったんだが…
 というか、朝比奈さんのは結局俺が折って差し上げたんだがな。あっちは良くてこっちがダメってのはどんな了見だ。
 
 みんなは妙にニヤニヤしつつ退室していった。「ごゆっくり」って何言ってんだ古泉。
 ハルヒはやけに張り切ってるように見えるし…紙飛行機作るのにそこまで気合入れんでもいいだろうに。
「何言ってんのよ。何事も全力があたしのモットーなの!」
「わかったわかった。いいから早く作ろうぜ」
 そう言うとハルヒはアヒル口になりつつも制作に取り掛かった。
 …あれ、俺に真髄とやらを叩き込むんじゃなかったのか?
 
「……完成―! ほら見なさい、これがホントの紙飛行機よ!!」
「ん……まあ確かによく出来てるが…」
 …やっぱ俺の方が上手いだろ。いや別に天狗になってるワケじゃないぞ?
 でも折り目が甘かったりズレてたりする箇所が一目でわかる。古泉よりは上ってくらいのレベルかな。
「なによ!そんなに言うならアンタが折ってみなさいよ!」
「もう折ってるよ。ホラそれ」
 ハルヒと同時進行で折っていた新作を見せる。さっき以上に気を使って作ったから文句など出る筈がない。
「………………」じぃー…
 …粗を探そうと必死だな。そんなに俺に負けるのが悔しいのか? さっきの勢いはどうしたよ。
 やれやれ、仕方ない。
 
「ハルヒ、お前折る時に端から順に押しつぶしてるだろ? そうじゃなくて、なるべく一度に抑えつけるようにするんだ」
「……そんなことしたらズレちゃうじゃない」
「確かに難しいが、慣れるとこっちの方が案外ズレにくいんだよ。こうやって…」
「なっ!!??」
 ハルヒの手を取り実際に折らせてみる。こうすりゃわかりやすいだろって何変な声出してんだ?
「!! べっ別に!? ほほほら、続きはどうなのよ!」
「? ああ、んで最後に折り目をこうして爪でギューっと…」
「ぎゅ、ぎゅーっと……」
「おお、そうそう。上手いじゃないか」
「あ、当り前でしょ!?すぐにアンタなんか追い越して見せるわ!」
 その意気だ。お前が黙りこんでる時ほど不気味なことは無いからな。
「まあ一番大事なのはどれだけ飛ぶかだしな」
「そうよ!アンタあたしの『グレート・ハルヒちゃん号』の飛びっぷり見て腰抜かすんじゃないわよ?」
 その心配は無い。さっきの長門製F-18以上の飛びっぷりなんざそうそうあってたまるか。
 …ネーミングにはつっこむべきだったんだろうか?
 
 
「やあ、お待ちしていましたよ。……もうよろしいんですか?」
 何がだ。顔を近づけるな。
「さあさあ、さっそく世界記録を更新してやるわよー!」
 ハルヒはそう言って『グレート・ハルヒちゃん号』を片手に体育館の中心に歩いていった。
 …運動部の方々が隅から俺たちを睨んでる……ホントすいません。
「いいわね?この5人で記録ベスト5を独占するのよ!」
 I can fly!! と景気よく言い放つハルヒの声を皮切りに、我らSOS団の無謀な挑戦が始まった。
 
「じゃあ最初はみくるちゃんね!思いっきりいっちゃいなさい!!」
「ふぇっ、あたしからですかぁ~!?」
 オロオロしながらも紙飛行機を携え、朝比奈さんはしずしずと前に進み出た。
「ちなみにみくるちゃんのマシンはなんて名前なの?」
 待てぃ。
「な、名前? え~っと、う~んと…」
 朝比奈さん…そんな真剣に考えなくてもいいんですよ。つーかコレ俺たちも考えなきゃいけない流れか?
「そのようですね。さてどうしましょうか…」
 お前もか古泉。…ああ、長門まで心なしか思案顔に!?
 
「あーもうじれったいわね! みくるちゃん、あなたのマシンは『ミラクル・みくるん号』よ!」
「ふぇ~~!?」
「投げるときにちゃんと名前と決め台詞言わなきゃダメだからね! じゃあGO!!」
 …哀れな。こりゃ俺もマジで考えなきゃこっ恥ずかしい名前を叫ばなきゃならんことにってオイ!!
「待てハルヒ! 決め台詞ってなんだ!?」
「なによ、この手の展開にはお約束でしょ?」
 お約束ってなんだよ。あれか?「いっけぇ!マグ○―ム!!」とか叫べってか、高校生にもなって!!
「冗談じゃない、そんな恥ずかしい真似できるか!」
「いいじゃないの!そっちの方がマシンにも気合が伝わるってもんよ!」
 勘弁してくれ…と言おうとしたところ、背後からなんかスゴイ熱を感じた。まさか…
 
「………」メラメラ
 長門から激しいオーラが立ち昇っていた。いや冗談でなくて。
「…どうしたんだ長門」
「…興味がある」メラメラ
「何に」
「決め台詞に」メラメラ
 マジかよ。
「流石よ有希!ほらキョン、わかる人にはわかるのよ!」
 決め台詞の何が長門の琴線に触れてしまったのか…とにかく長門はやる気満々らしく、そんな長門の気勢をそぐのもためらわれるワケであって。
 仕方なくマシン名と決め台詞を熟考する羽目に陥る俺なのであった。合掌。
 
 
「おっと、話がそれちゃったわね。さぁみくるちゃん!行きなさい!」
「は、はい~…」
 さっきはオロオロと、今は照れ照れと。朝比奈さんは愛機(?)を構え、発射の姿勢に入った。
 …なんか期待してる俺がいる。いや俺だけじゃない、体育館にいる全ての男子の目が朝比奈さんへと…
「い、行きま~す!」
 向けられる視線に気づいているのかいないのか。朝比奈さんは恥じらいながらも…『伝説』を創りあげた。
 
「み、『ミラクル・みくるん号』、ふぁいや~~!!」ブンッ
 朝比奈さんの手を離れた『ミラクル・みくるん号』は縦に円軌道を描き!
「あ、あれ?」
 下から掬い上げるように舞い戻った『ミラクル・みくるん号』は何故か朝比奈さんのスカートを巻くしあげ!!
「…い、いやぁ~~~~~~~~!!!!!」
 朝比奈さんに羞恥の絶叫を、男子連中に歓喜の雄叫びを上げさせたのだ!!!
 
 …これがのちに語り継がれる「体育館で紙飛行機を投げたメイドさんは下着が丸見えになってしまう」という都市伝説の始まりである。 ああ、別に覚えなくていいから。
 
「うーん、みくるちゃんのドジっ娘具合がここまでレベルアップしてたなんてね…」
「不真面目な感想を述べてる場合か。朝比奈さんショックで帰っちゃったじゃないか」
 そもそも紙飛行機に布を巻くしあげるだけの勢いを持たせられるのかどうかは置いといてくれ。何故なら既に起こってしまったのだからして!
 …ボケてる場合でもないな。とにかく、一人脱落。
       
「じゃあ次は…有希!いきなさい!!」
「………」メラメラ(コクリ)
 相変わらず背後に熱い情熱を迸らせている長門が進み出る。
 …決め台詞に並々ならぬ関心を持っているようだしな。果たしてその寡黙な口から何が飛び出すのか…
「有希~!期待してるわよー!」
「…ああ、長門。いっちまえ」
「………」メラメラ(コクリ)
 
「…tui gratia Sylvester gratia sit…『cogito,ergo sum』」ブンッ
 
( ゚д゚)
( ゚д゚)
( ゚д゚)
 
 
「(…今なんて?)」ヒソヒソ
「(さ、さぁ…)」ヒソヒソ
「(最後だけならなんとか…)」ヒソヒソ
「(ああ、『コギト‐エルゴ‐スム』ね)」ヒソヒソ
「(…『我思う、ゆえに我あり』だったか?)」ヒソヒソ
「(ええ、ということはつまり今のはラテン語では…)」ヒソヒソ
「(有希ってラテン語まで出来るの?凄いわね…)」ヒソヒソ
「(まあ、長門ならおかしくはないが…)」ヒソヒソ
「(ですね。それより…)」ヒソヒソ
 
「………」じー
 
「い、いやー格好イイ決め台詞だったなー長門!!」
「ええ!惚れぼれしちゃったわよー!」
「まったくです!いやー、僕も見習いたいですよー!」
 
「………」
 
「………///」ポッ
 
 ふぅ、よかった。どうやら気落ちさせずに済んだようだ…いや仕方ないだろう、ラテン語なんてわかるか。
 まさか紙飛行機にデカルト先生の格言まで持ち出されるとは思わなかったよ…前半?知るか。
 
「いや待て、すっかり忘れてたが…これ結構飛んでるんじゃないか?」
「!そういえばそうね…古泉くん、何秒経った?」
「……20秒を超えました!」
 おお!? 見る限りまだ勢いは落ちてないし…これはもしかすると!
「イケるわよ有希!世界記録!!」
「よし!頑張れ長門の…えっと?」
「…『cogito,ergo sum』」
「そ、そう!『こぎとえるごすむ』!いけー!!」
「…24、25、26…!」
 
 その時!!
 
……ィィーーーン…
 
「え?」
「ん?」
「おや?」
「…」
 
チュドーーーーーン!!!!
 
 (  д ) ゚ ゚
 (  д ) ゚ ゚
 (  д ) ゚ ゚
 ( ・ ・)
 
 
ウワー! ナンダー!?
マドツキヤブッテ、ナンカオチテキタゾー!!
インセキカー!?
 
「な、何?何なの!?」
「……これは……まさか」
「…ええ……できれば信じたくありませんが…」
「………うかつ」
 
 長門の神飛行機が地球一周して落ちてきやがった。
 
 
 
                  ~~~~情報操作中(by長門)~~~~
 
 
 
「じゃあ次、古泉くん!」
「かしこまりました、閣下」
 キザったらしく頭を下げ、進み出る古泉。
 格好つけても無駄だぞー。お前も朝比奈さんのとき叫んでた男子の一人だろうがー。
「…そのことはどうかご内密に…」
「却下だ」
 
 ちなみに長門はさらに広範囲の人たちの記憶を改竄するために出ていった。
 体育館に残ってた運動部の方々も、万が一を考え(長門の力で)退室させてある。残るは俺達3人だけだ。
 
「そうそう、古泉くんのマシンの名前は? 予め聞いといた方が有希の時みたいに戸惑わずに済みそうだし」
 まあ一理ある。コイツのことだからそこまで変わった名前も付けてないと思うがな…多分。
「あ、はい。僕のマシンは『イツキ・スプリーム』です」
 
  supreme[形]:至高の、最高の
  意訳:『至高のイツキ号』
 
「なかなかイイ名前ね。さすが副団長!」
「ありがとうございます。…では、いきますか」
 …どうしよう。俺が間違ってるのだろうか?
 静かになった体育館の中央に佇み、古泉は紙飛行機を構える。そして…
「『イツキ・スプリーム』! Drehung!!」ブンッ
 何語だそれ。調子乗んなって。
 
 省略だ。何回か挑戦したがあんま飛ばなかった、以上!
 
「申し訳ありませんが、バイトが入ってしまいまして…」
 古泉、退場。
 古泉曰く、3人揃って大した結果を残せなかったことが団長様のお気に召さなかったらしい。
 あ、長門も何故かそういうコトになっている。どうせならもっといい感じの記憶にしてくれればよかったのだが…まあ文句は言うまい。
 
「もう…こうなったらあたし自らいくしかないわね」
「…え?お前がいくのか?」
 てっきり次は俺の番かと思ったが。
「あたしが見事新記録達成してやるから、アンタはその勢いに続きなさい!いいわね!?」
「そういうことか。…わかったよ」
 コイツなら『力』もあるし、本当に新記録行きそうだな。
 
 …でも、それっていいんだろうか?
 
 俺が若干の不安を抱いていることなど露知らず、ハルヒは紙飛行機を構える。
「よーし、『グレート・ハルヒちゃん号』!無限の彼方へ…さぁ行くぞー!!」ブンッ
 お前はどこのスペースレンジャーだ。
 いや、でも…確かにいい飛びっぷりだぞ。これなら…
 
 …しかし、惜しくも失速。記録は最長でも『23秒8』どまりだった。
 普通なら中々のタイムが出てよかったと喜ぶ所だろうが、コイツがこの程度で満足するはずもない。元々が負けず嫌いな奴だしな。
 その後も諦めることなく紙飛行機を投げ続けるハルヒ。だが…
 
「…ハルヒ」
「…なによ」
 見てとれるくらいに不機嫌だな…今頃機関の連中は大忙しなことだろう。
「言っとくけど、あたしは諦めたりなんかしないわよ。新記録出すまでね」
 気持ちは分からないでもないがな。
「それにしたって、ぶっ続けで頑張りすぎだ。少し休め」
「…いやよ」
「お前の紙飛行機だって、もう皺くちゃじゃないか。休みがてら作りなおせよ」
「いや!」
「!っと…なんでだよ。そんなんでちゃんと飛ぶわけないだろう?」
「……これで新記録出したいの」
 そう言って『グレート・ハルヒちゃん号』を胸に掻き抱く。なんでそこまでそいつに執着してるんだよ。
「だって…これはキョンと…」ボソ
「? 何だって?」
「…何でもないわよ!」
 そっぽを向き、また投擲体勢に入ってしまった。やれやれ…どうしたもんかね。
            
「ハルヒ」
「何よ!」
 思いっきり睨まれた。怖ぇって。
 しかし俺は構わず続ける。
「交代だ。次は俺がいく」
「!……」
「別に諦めろと言ってるわけじゃない。そもそも俺はまだ一回も投げてないんだぞ?」
 とりあえず思いついたことを言ってみる。と言ってもこれくらいしか思い浮かばないんだがな。
「ちょっとは俺にも見せ場をくれたっていいだろ? まあ新記録達成とまではいかないかもしれんが」
 
「…仕方ないわね。いいわ、交代よ」
 ふう、やっと休む気になってくれたか。
「でもね、『いかないかも』なんて弱気は許さないからね!絶対新記録って気構えを持ちなさい!」
「そう言われてもなぁ…こればっかりはやってみなけりゃわからんだろ」
「うっさい! いいわね、新記録出さなきゃ罰ゲームよ!!」
 オイオイ、勘弁してくれよ。そんなこと言われちゃ余計にやる気失せるぞ。
「達成したらご褒美とかの方がやる気も出るんだがな」
「ご褒美? …ま、まぁそれでもいいけど。何して欲しいのよ」
 あれ、許可されるとは思わなかった。
 うーん、特に何かあるってわけでもないんだがな……あ、そうだ。
 
「そうだな。達成したらキス、なんてどうだ?」
「んなっ!!!???」
 あくまで冗談だ、こんなの受けるわけないだろうしな。俺っぽくないってのは置いといてくれると助かる。
 これで「何言ってんのよバカキョン!!」なんてビンタの一つでも頂戴して「やれやれ」とか言うのが俺の
ポジションっぽいし、そうすりゃコイツの調子も…
「わ…わかったわ」
「ああ、やれy………なんだって?」
「してあげるって言ってんの!その…せ、成功したら……きききキス……」
「………」
 マジですか。
 いや……どうしよう。かなりジョークのつもりだったんですけど。
 べ、別に嫌なわけじゃないけどな?…あの閉鎖空間の時はそりゃもう…いやいやそうじゃなくて!
 どうするよ!? コレでもし新記録達成なんてコトになっちまったら俺はハルヒと…いやいやいやいy
「ちょっと!何ボケっとしてんのよ!!」
「ハッ!? あ、いや…」
 そ、そうだ。まだ達成すると決まったわけでもないだろ!むしろ失敗の可能性大なわけで……
…よし、落ち着け俺。今一瞬キャラ変わっちまったじゃないか。
 普通に投げりゃいいんだ、フツ―に。どうせそんなに飛ぶわけないんだしな。
 
「よっと」
「………」
 特に力むわけでもなく、軽~く投げる。
 あ、決め台詞言ってなかった。…まあいいや、ハルヒも気づいてないみたいだし。
 ……やけに真剣な目で追ってるなコイツ…自分の唇が懸かってるわけでもあるせいか?
 そこまで思いつめるとは、こりゃ悪いコトしたな。ほんの冗談のつもりだったんだが。
 まぁそんなにいくワケないさ。あまり気にするコトも…
「今何秒!?」
 うぉ、ビックリした…そんな大声で聞かなくてもいいだろう。
 投げると同時にスタートさせたストップウォッチを見ると…あれ、もうそろそろ20秒?
 おお、大健闘じゃないか。こんなに耐えるとは……ん、まだ落ちないな。
 22、23…オイ、ハルヒの記録超えちまったぞ。
 24、25…待て、これじゃこのまま…
 26,27…いやいや待て待てオイコラこれは
 28、29、30……落ちた。
             
「…………」
「…………」
 
「………超え…た?」
「………超えた…な」
 
「……新…記録?」
「……新記録…だな」
 
「…………」
「…………」
 
「……ぃぃいやったあああーーーーーーーーーー!!!!!」
「ぉあ!!? ちょ、ハルヒ落ち着け!!抱きつくんじゃない!!!」
 
 超えた。超えてしまった。
 …マジか? 嘘だろ! 本当に俺が世界新記録を達成してしまったというのか!?
 だが俺の手の中で『30秒2』と自己主張しているストップウォッチと…そしてコイツのこの喜びようは少なくとも夢幻の類ではない………ないよな?ハッ、ひょっとしたらまた朝倉みたいな急進派とか新たな敵勢力とかが見せている幻覚というコトも無きにしもあらずなわけがないコトもn
「キョン!!やったわよ!!アンタが世界一なのよ!!!」ギュ-!
「だから抱きつくなと!!!」
 
 やっとのことでハルヒを引き離し…それでもまだ眩しすぎる笑顔を俺に向けている。いや盛大にニヤけてる。
 ……今ちょっと忘れてたぞ。新記録達成した、いやしてしまったというコトは……
「…まさかホントに達成しちゃうとは思わなかったわ」
「こっちの台詞だ…なぁ、ハルヒ」
「んー?」
 すげぇニヤけ面。初めて見たぞそんな顔。
「いや……その…さっきの事なんだが」
「あ…そ、そうね。うん、だいじょうぶ。忘れてないから…」
 ハルヒは俺の首に手を回し…いや待て!
「あ、あのな?悪いがさっきのはほんの冗談のつもりだったんだ!だから」
「だ、ダメよ!仮にも一度した約束を違えるなんて団長としてあるまじき行為なんだから!!」
 もう既に数センチあるかないかの距離まで迫っている!てか鼻くっついてる!!
「ほ、ホラ、それにさっきは場所も指定してなかっただろ!? せ、せめて頬とか額とかにだな」
「そ、それもダメ!指定しなかったアンタが悪いんでしょ!?とっくに締め切ってるんだからどこにしようがあたしの勝手なの!!」
 その台詞立場逆な気がするんだけど!?あ、ちょっ…
 
「んっ……」
「っ…む……っ」
 ……重なった…俺とハルヒの…く、唇……
 うわ、柔らかい……こんなに、だったか?この前は堪能する余裕なんかなかったし…なんか甘いし…
「……んむっ…ぅ…」
「ふっ………ん……」
 さらに押しつけてきた。……ハルヒもやっぱする時は目閉じるんだな。
 ………つーか……長くないか?こんな長いもんなのか?………あーもう、なんかこのまま……
 
ドンドンドン!
 
「「!!!!」」
 
 体育館の扉を叩く音が響き、その瞬間に俺たちは素早く身体を離した。
『…すいませーん、今入っても大丈夫ですかー?』
 古泉……お前に殺意を覚えるとは思わなかったよ。
              
「いやぁ、急にバイトがなくなりまして。途中で長門さんとも合流できましたので、急いで戻った次第です」
「……そうかい」
 ぶっきらぼうに答える俺。……なんでこんなにイライラしてるんだろうな?
 ハルヒはハルヒでなんかボーっとしてるし…
「………」
 ……気のせいか長門の視線が冷たいような…後始末でコイツも疲れたのかもしれないな。
「それで、記録はどうなりました?」
「! そうよ、二人とも聞きなさい!!キョンが新記録達成したのよ!!」
「おお、それはそれは!おめでとうございます!」
 ? …なんか白々しいような…気のせいか?
「それでは…僕たちも彼の勇姿を拝見させていただきましょうか」
「………」コクリ
「あ?何言って…ってどこ行くんだ」
 
 古泉は体育館の隅にスタスタと歩いていき、置いてあった鞄の脇から『ビデオカメラを取り出した』。
 
「えっ!?な、なにそのカメラは!」
「? 証明用のVTRを撮っていたカメラですよ。ちゃんと証拠がないとギネスも認定しようがないでしょう?」
「「なっ……」」
 ってことは…アレか? 今までの一部始終が全て丸ごとあれに収められているということで…つまり…
「…もしかして…お気づきになられていなかったのですか?」
 
 
 
 
 
 
 翌日。俺たちはまたいつものように部室…もとい団室でくつろいでいた。
 …ギネスはどうしたって? ぜーんぶ立ち消えちまったよ。
 というのもあのあと暴走したハルヒがビデオカメラを破壊して、俺の新記録達成の瞬間も同時に消失してしまったのさ。ついでに俺の紙飛行機もどさくさに紛れてどっかに行っちまった。
 だからと言って残念な気持ちはこれっぽっちもない。俺にはギネス記録なんて荷が重いにも程があるしな。
「そうですか? 僕としましては、あなたはもっと評価されるべき人間だと思うのですが」
「…冗談はゲームの弱さだけにしておけ」
 ポーンでクイーンを討ち取りながら冷淡に告げる。
「おっと…手厳しいですね」
「うるせぇ。どうせお前昨日のバイトも嘘だったんだろ?」
「おや、お気づきでしたか」
 そう言って悪びれるふうでもなく、逆におかしそうに肯定する古泉。
「いえ、お気を悪くしたのでしたら申し訳ありません。ですがあそこで退室したのは『涼宮さんが望んだこと』でしたので」
「…どういうことだ?」
 …しまった、聞くんじゃなかった。見る間に嬉しそうな顔になってやがる。この解説好きめ。
 
「今回の行動における涼宮さんの願い…それはもちろん、ギネス記録を更新することにあります」
「…そりゃそうだろう。それ以外にギネスに挑戦する理由があるか」
「そうです。しかし、あくまでそれは『SOS団によって』為されることに意義があるんですよ。…今回のことで、あなたは何か疑問に思うコトがありませんでしたか?」
「………ハルヒの力が働けば、アイツが宣言した通り俺達で上位独占することなんぞ容易いことだ。なのにそうはならなかった」
「まさにその通りです。涼宮さんは、我々なら自分自身の力で世界記録だろうが塗り替えられるだろうとお考えだったんですよ。信じていた、と言い換えてもいいでしょう。…その期待に添えなかったのは残念ですが」
 掌で自分のキングを転がしながら、古泉は解説を続ける。
「しかし…そんな状況だったにも関わらず、閉鎖空間は発生しませんでした。これは何故だと思いますか?」
「さあな。なんだかんだ言って、アイツも楽しんでたんじゃないのか?」
「半分正解、ですね。もう半分は……あなたに期待していたから、ですよ」
                
「俺に期待? それこそ意味が分からん」
「フフッ、そうですか?あんなコトまでしたんですから、もうとっくに自覚なさっているものと思っていましたが…」
 あんなコト? ……こいつやっぱり!!
「はい、長門さんと一緒に大体は見させてもらいましたよ。自分でもいい趣味だとは思いませんが」
「…あのタイミング、わざとらしいような気がしたんだよ。クソ…この出歯亀野郎め」
 
「一応、それは否定しませんが……あの時扉を叩いたのは僕じゃないですよ?」
「…何? ……あれは長門だったのか!?」
 いつも通り、定位置で読書中だった長門の方へ振り向く。
 別にいつもと変わらな……いや、視線が動いてない。あれ絶対何も目に入ってない。
「もちろんです。僕としましては、あなた方がもっと決定的な関係になってくれた方がありがたいんですから」
「決定的って……ハァ」
「まぁアレでも十分と言えば十分なんですけどね。…っと、少しそれてしまいましたか」
 
「つまり、あなたなら絶対に自分の期待に応えてくれるだろう、と涼宮さんは信じていたわけです」
「だから閉鎖空間も発生しなかったって?どうだかな…」
「正確に言うと、危ない時間帯もありました。涼宮さんが延々と挑戦を続けていた時ですね」
 ああ、あの時は見るからに不機嫌だったからな。確かに危なそうだなーとか思ってたよ。
「ですが、あなたが交代を申し出て『あの』約束をして下さったお陰で、それも雲散霧消してしまったんです。そして…ここである意味、涼宮さんは禁を破ってしまったんですね」
 
「…『力』を使って、紙飛行機の滞空時間をムリヤリ伸ばした、と?」
「そうです。あなたとの、しかもあなたの方から言い出してくれた、数少ないチャンスですからね。何が何でもモノにしたいと思ったんでしょう」
 …しかしその言い方じゃあまるで、ハルヒは俺とキスしたくてたまらなかったみたいじゃないか。いくらなんでもそんなワケな……どうした3人とも。
「……いえ、これほどまでとは……」
「キョンくん…そこまでしておいてそれは……」
「………これは最早病気の域」
 
 なんなんだ一体。調子狂うな……
 …調子といえば、今日はハルヒ学校に来なかったな。どっか調子でも悪いんだろうか。
 まぁ俺も顔合わせづらいってのはあるし、助かったと言えばそうなんだが。
 あとでメールでも…って朝送ったのにまだ返ってきてないんだった。
 …ほらみろ。やっぱり古泉の予想も外れて……ん?
 
「キョーン!! 居るーー!?」
 いきなりドアを蹴り開けてハルヒが現れた!
「な、お前どうしたんだ!? 今日学校いなかっただろうが!」
「いろいろ準備してたのよ。もう、こんなにかかるとは思わなかったわ!」
「準備? 何の準備だよ」
 そう言うと、ハルヒは改めて俺に向きなおり…まさしく爆弾な発言をしやがった。
 
「キョン、あんたは昨日世界一の男になったわ。その証拠は消えてなくなっちゃったけど」
 世界一って…いや、ある意味では確かにそうなんだろうが。なんか気恥かしいぞ。
「それでね、今度こそはしっかり証拠も残して、ギネスに名を連ねようと思うの」
「…なんだ、また紙飛行機作れってか?流石にもう勘弁して…」
「違うわ!一度登った山をもう一回登ったって、同じ景色しか見れないのよ!」
 どんな例えだ。別にそんなコトも無いだろう、同じ山でも登れば登っただけまた違う感動が…
「山はもういいの!とにかく、次挑戦するのは違うヤツよ」
「…やれやれ……何をするんだ?」
 
「何時間続けてキスしていられるかよ!!」
 
 ハルヒがそう叫んだ瞬間、古泉がお茶を吹き出し朝比奈さんがキュウスをひっくり返し長門が分厚い本を
へし折るのが視界の端で見てとれた。
 …俺? とうとう耳がイカれたかと思ったね。
 
「……お前…正気か?」
「当り前じゃない!ってゆーかギネスって事前に何やるか申請しとかなきゃいけないのね。さっき知ったわ」
 ああ、つまり昨日のはどっちにしろダメだったっていうことかい。それじゃあしょうがないなぁ、うん。
「何ぼさっとしてんのよ。さっさと行くわよ!」
「…いや、行くってどこに?」
「あたしん家に決まってるでしょ!大丈夫、今日から1週間ウチの親居ないから!」
「! 待て!いくらなんでもそれは…」
「つべこべ言わない!一回したんだからあと何回しようが何時間しようが同じよ!」
「そういう問題じゃないだろ!!」
「いいの!あ、あんたは夢でも現実でもあたしの初めて奪った男なんだから、ちゃんと責任取りなさい!!」
「ふぇぇ!? は、初めて…奪ったって…」
「朝比奈さん!? 勘違いしないで下さいよ、それに昨日のはどっちかと言えばむしろコイツから…」
「うっさい!!いいから来るの!!」
 
 
 …俺はこれからどうなるんだ!? 誰か教えてくれー!!
 
 
 
「…ちなみにギネス記録は32時間7分14秒…2009年2月13・14日間にドイツで…」
「さっさんじゅう!!?? ふぇ~~~……」
「…まあ、あのお二人ならそれを更新してしまっても不思議ではない気がしますけどね」