いい湯だな♪ (81-880)

Last-modified: 2008-03-01 (土) 23:03:45

概要

作品名作者発表日保管日
いい湯だな♪81-880氏08/02/25~08/03/01

 

始まりの月曜日編

以下は、後に俺が直接涼宮ハルヒから聞いた事を勝手に補完した物であり、事実と異なる可能性があることを先に明記しておく。
 
月曜日、涼宮家
「えぇーっ!?風呂ガマが壊れた!?」
素っ頓狂な声を上げたのが我らが涼宮ハルヒ。
「もう寿命だったからねぇ。交換しないとダメだわ」
で、こっちがそのお母様だそうだ。
「交換って業者呼ぶんでしょ?ならちゃっちゃと連絡してよ」
家でまで団長気分かこの野郎。
「それがね、だいぶ古い型だから部品を交換するのに時間がかかるらしいのよ。早くて土曜日だって」
どうでもいいがこのお母さん、やはりと言っちゃなんだがハルヒに口調が似てるな。
「ちょっと、つまりそれまで風呂無しってこと!?」
風呂ガマが壊れただけだから水浴びればいいだろ。なんて言えるわけがない。過去話だしな。
「何言ってんのよ。銭湯にでも行けばいいじゃない。こんな時のために銭湯はあるのよ」
断固として違うがその場に俺は居なかったので突っ込むことすら出来ない。
「それも…そうね。たまには銭湯もいいわよね」
まあ確かに、こんな時でないと銭湯に行く機会なんてあまり無さそうだがな。
 
以上。「アレ?これで終わり?」なんて声が聞こえてきそうだが、流石にハルヒもこの後は描写したがらないだろう。
「お婆ちゃんがいっぱいいたわ。「ゆっくり暖まりなよ~」って、何か昔に戻ったような感じがしたの」
俺が聞けたのは精々これくらいだ。沢山の婆さん達に囲まれてまんざらでも無さそうなハルヒの顔が浮かぶ。……いやいや、入浴シーンを想像ってただの変態だろ。
とにかく、今回重要なのは「涼宮家の風呂ガマが壊れ、直るまであと6日かかる」という事実だ。これがこの一週間、色んな人を巻き込んでいったのだ。
もちろん、月曜の時点で俺含む後に巻き込まれる事になる奴らはそんな事さっぱり知らなかったし(まあ長門はわからんが)別に大事件に発展したわけでもないのだが。
てなわけで、話は明日、つまり火曜日に進む。ちなみに、このモノローグは全てが終わった土曜日にやっているのでそこんとこは了承してくれ。
じゃ、また明日な。
 

二つの膨らみの火曜日編 (82-67)

「うぃーっ……」
酔っ払いではない。本当は「うぃーっす」と言いたかったのだが、それを途中で切ったのだ。
「むぅ~~」
涼宮ハルヒが眉間に皺を寄せて何かを考え込んでいる。しかもあの声色はハッピーなアイデアのものではなさそうだ。
黙ってりゃ可愛い顔が絶賛台無しになるし、何よりコイツが何かを考えると高確率で俺達が酷い目に会う。早急に止めて欲しい。
「キョンくん、今お茶を淹れますね」
入室した途端動きを止めてしまった俺の心意を知ってか知らずか朝比奈さんが優しい言葉をかけてきた。そうだ、先ずは落ち着いて対処しよう。
「ハルヒ、どうしたんだ?考え事か?」
畜生、何でこんな時に限って古泉がいないんだ。ハッ、ひょっとして例のバイトか?もしそうなら事態は深刻だ。
「別に対した事じゃないんだけど、うちの風呂ガマが壊れたのよ」
あれ?意外に穏やかな口調だぞ?あれだけウンウン唸ってたのが嘘みたいだ。
「すみません、遅くなりました。今日は掃除当番でしてね」
そして胡散臭い笑顔で今入ってきた古泉。お前はもういい、廊下にでも立ってろ。
「直るのが今週の土曜なんだって。それまで風呂抜きよ風呂抜き」
そりゃ大変だ。ハルヒだって一応は年頃の女の子だ。男子と違って1日でも風呂に入れないのは辛いだろう。
「昨日は街の銭湯で済ませたけど、意外と銭湯ってお金かかるのよね…。アレを今後続けるのは財政的に問題だわ」
何が財政的だ。本当にヤバくなったら俺から毟り取る癖に。
「大変ですねぇ…」
やはり北高一乙女な朝比奈さんには、ハルヒの現状がよくわかるらしい。とてもいたわしそうな表情だ。
「あ、だったらウチに入りに来ませんか?お貸ししますよ?」
な…なんですと?
「みくるちゃんの家に?でもご家族の方に迷惑じゃない?」
おいおい、ハルヒの口からとんでもない言葉が出たぞ。誰かレコーダーは持ってないか?
「大丈夫です。今日は2人とも遅いので…」
そう言えば朝比奈さんは一人暮らしなのだろうか。まさか某軍曹のように未来人の同僚と共同生活何てことは無いだろうが。
「じゃ、お願いしてもいい?」
「勿論ですよぉ」
やれやれ、とりあえず問題は解決したか。
「……私が汚れを落とす事も出来たのに」
長門。いくらハルヒでも風呂に入らないでいきなり体がピカピカになったらビックリするっつうの。
 
↓此処からはハルヒにモノローグを任せる。俺はその場にいなかったんでな。
 
「はぁ~暖まるわ~」
みくるちゃんが体を洗うのを見ながらあたしは湯船に浸かった。
「ゆっくりしていってくださいね」
石鹸を泡立てながらみくるちゃんが優しく微笑んだ。なら、お言葉に甘えちゃおうかしら。
「………」
「ふふ~♪ん~ふふ~ん♪」
「………」
「……あの……さっきからジロジロ見てますけど何ですかぁ」
「いやあ、改めて胸大きいわねぇ」
あたしも結構ある方だと思うけど、何か完敗って感じよ。
「あたしもこれぐらい大きかったらなあ」
「大きくても大変なんですよ。肩がこったり」
巨乳が肩こるって本当だったの?てゆうか嫌みにしか聞こえないわよ。
それに……キョンがちょくちょくみくるちゃんの胸を見てる事をあたしはよく知ってる。キョンはバレてないと思ってるんだろうけどね。あのエロキョン。
「これぐらい大きかったら普段からあたしを見てくれ…」
「? 何か言いました?」
ヤバ、声に出ちゃってた!?
「な…何でもないわよ!それより背中流してあげるわ!!」
危ない危ない。コレだけは誰にも聞かれちゃマズいのよね。
風呂ガマが直るまであと4日……短いようで長いわよねぇ。

いい湯だな♪ 教えてあげる水曜日編 (82-252)

「それじゃ、今日の部活はここまで!」
その言葉を合図に長門が本を閉じ、朝比奈さんが編みかけのセーターを脇に置き、古泉が(俺が勝利するはずだった)チェス盤をしまった。
朝比奈さんが着替えなくてはならないため先に古泉と共に廊下に出る。こういう時男子は大変だ。
「そういや、今日ハルヒは風呂どうすんだろうな」
「昨日は朝比奈さんのとこにお邪魔したんですよね」
全く…朝比奈さんと一緒に入浴など羨ましい事この上ない。いやいや何を考えてんだ俺。
「また今日も朝比奈さんのとこに厄介になるのか?」
「今日は違うわよ」
噂をすれば何とやらか。
「………」
そばに長門がいるということはもしや。
「そ、今日は有希のとこに厄介になることにしたわ」
長門はOKしたのか?
「構わない」
いやよく考えたら長門がNOという理由は無いか。
「てなわけで有希、今日はよろしくね」
「了解」
そう言って2人は去っていった。やれやれ、とりあえず問題は無さそうだな。
「ところで…一つ疑問があるのですが」
何だよ。今の流れのどこに疑問を形成する要素があったんだよ。
「長門さん、確か家では何もしてないと仰ってませんでしたか?」
言ってたな。朝になるまでずっとぼおっとしてるのか…長門らしいっちゃ長門らしいが。
「マンションのお風呂…使った事あるんですかね」
………。
 
↓何だか不安だが、以下モノローグをハルヒに任せる。いや、俺は長門を信じてるけどな?
 
「有希、お風呂湧いたわよ」
「そう」
…………。
「一緒に入らない?」
「何故?」
………。
「そりゃあ…一人で入るより二人で入った方が楽しいからよ!」
「楽しい…?」
……。
「団長命令よ。一緒に入りなさい」
「了解」
はぁ…有希のこういうノリの悪いとこは本当ダメね。SOS団員として失格よ。
湯船に浸かりながらしみじみ考える。どうしたら有希がもうちょっと能動的になるか。…なんか想像出来ないのはなんでかしら。
「てゆうか有希、あんた何突っ立ってんのよ。寒いでしょ」
相変わらず無表情な有希。
「あなたが出るのを待っている」
体洗うとか、その間にやることあるでしょ?
「洗う…了解」
そう言いながら石鹸を泡立て始める有希。なんかぎこちなく感じるのは気のせい?
すると、何と有希は石鹸の泡を頭に付け始めた。ちょっと!そこにシャンプーあるでしょ!!
「……?」
なに不思議そうな顔してんのよ。……ひょっとしてあんたいつも石鹸で頭洗ってたの?
「………………そう」
随分な間と共にそう呟く有希。天才少女らしかぬ勘違いね…いや、天才ってこんなもんなのかしら。
「仕方ないわねぇ。あたしが洗ってあげるわ」
有希は何も答えない。同意って事でいいのかしら。
石鹸泡をお湯で流して代わりにシャンプーを泡立ててあげる。有希は抵抗することなくあたしがすることを受け入れていた。
「大丈夫?目に入ったりしてない?」
「問題ない」
それにしても…有希の髪ってサラサラして気持ちいい…。まるで人形みたいな触り心地だった。
今も有希は微動だにしない。突然あたしは、有希が生物じゃなくて人形みたいな無機物に思えてきて怖くなった。
湧き上がってきた感情を押し殺してシャワーで泡を洗い流す。と、突然有希はブルブルっと濡れた犬が水気を飛ばすように震えた。
「プッ、アハハハハハハハ!!」
「…………?」
やっぱり有希は人間だ。ちょっと変わった所があるだけで、あたし達と変わりない。
なんて安心してると有希が手にシャンプーを取った。そのままあたしの頭に付ける。
「………洗ってくれるの?」
「覚えた」
結構な自信ね。それじゃ、お手並み拝見と行きますか。
風呂ガマが直るまであと3日…。まだちょっとあるわねぇ。

意外な面を知る木曜日編 (82-399)

初めに気づいたのは長門だった。まあコイツなら当たり前だろう。
「来る」
「へ?有希、来るって何が?」
二番目に気がついたのは俺だった。こういうのには敏感だからな。
「やれやれ、この気配は…」
「キョンまで何なのよいったい」
三番目に気づいたのは古泉だった。
「珍しいですね。彼女が直接部室に来るとは」
ここまで来てようやくハルヒも気づいたようだ。いや、もうすでに普通の人なら感づくだろう。
「あ~、確かにこの足音はねぇ。みくるちゃん、お茶準備!」
「ふぇ?な…なんですか?一体誰が来るんですか?」
まあ朝比奈さんはわからなくても問題はない。なんてったって朝比奈さんなのだから。
 
「ヤッホー!ごきげんよう皆の衆!」
ドアを破壊せんかの勢いでハルヒ並みの大型台風、鶴屋さんが入って来た。全く、相変わらずテンションの高いお方だ。
「お久しぶりです鶴屋さん。なんか来る予感がしてたんですよ」
「さっすがあたし!オーラ出まくりだねっ!!」
確かに体から視覚出来そうなくらい元気が放出されてますが。
「聞いたよハルにゃん!お風呂に困ってるんだって!?」
「え?あ…まあそうね」
お風呂に困るってまた抽象的な言い方だなあ。意味的には問題ないんだけど。
「だったら今日はあたしのとこに入りにきなよ!快く貸したげるよ!!」
「本当に!?いいの!?」
いかん、ハルヒのテンションも上がって来やがった。
「もっちろん!めがっさ御招待さ!!」
考えてみれば鶴屋さん家のお風呂って見たことないな。多分ムチャクチャ広くて、桧作りだったりするのだろうか。
「まあ、僕達がお目にかかる機会は無いと思いますがね」
人の脳内を読むな古泉。お前は閉鎖空間でしか超能力が使えないはずだろが。
 
↓またまたハルヒにモノローグを託す。
先に断っておくが、もしハルヒファン兼鶴屋さんファンの人がいたら、鶴屋さんのイメージが壊れる可能性があるとだけは忠告しておこう。
 
「うわぁ!ひっろ~い!!」
初めて生で見るお金持ちのお風呂はやっぱり凄い広さだった。まるでちっちゃなプールみたいね!
「ま、ゆっくり浸かってくれよっ!」
なんか温泉に来たみたい。木の洗面器とかいい雰囲気出してるわ。
「気に入ってくれたようで嬉しいにょろ~」
のんびり頭を洗いながら鶴屋さん。
「こんなお風呂にいつも入れるなんて、本当に羨ましいわ」
このあたしが他人を羨ましがるなんて凄く珍しい現象よ。カメラに収めて永久保存するくらいの価値があるわ。
「う~ん……本当にそう思うかい?」
突然鶴屋さんが寂しそうな表情を見せた。あの鶴屋さんが。
「こんなに広くてもさ、結局入るのは一人なんだよ。広い意味が全く無いのさ」
黙って聞く。あたしにだってそれぐらいの分別はあるわよ。
「こんなに広くなくていい。ゆったり休まる事が出来る。それがお風呂ってもんなんじゃないのかなあ」
嫌だ。こんな鶴屋さんの顔は見たくない。鶴屋さんはいつも笑ってなきゃ駄目なんだ。みんなに有り余る元気を分けてくれる。そんな存在じゃなきゃ。
「あ…あのさ」
何か、何か言わないと。何でもいいから!
「決めたわっ!」
気がついたらあたしは夢中で叫んでいた。
「今日からここは、SOS団優先入浴場にします!もちろん鶴屋さんが最優先だけど、あたし達は無条件でいつでも入れます!」
ポカーンとしてる鶴屋さんを無視してあたしは続けた。
「今度みくるちゃんや有希も連れて入りに来るわ。いいえ…古泉君とキョンも入れてあげる!なんなら妹ちゃんやシャミセンも…」
「プッ」
耐えきれずに鶴屋さんが吹き出した。
「アッハッハッハッハ~!流石ハルにゃん、発想が豪快だね!気に入ったにょろ!」
そう言って、いきなり鶴屋さんは湯船のあたしにダイブして抱きついて来た。ちょっ、そんなことしたら倒れボコボコ…。
「………」
「………」
「アッハッハッハッハ~!」
「ハハ…アハハハハハハハ!!」
それからあたし達は馬鹿みたいに笑って、馬鹿みたいにはしゃぎ続けた。なんか止まんなくなっちゃったのよ。
「それじゃ、そろそろ上がろっか」
そうね、体ふやけるといけないし。
「…ハルにゃん」
ん?なに?
「……ありがとね」
どう致しまして。でも礼なんていらないわよ。
だって、世界を、寂しい顔してる人を大いに盛り上げるのがあたし達の役目なんだからっ!
明後日には風呂ガマが直る。もうすぐね。

いい湯だな♪ ハプニングまみれの金曜日編 (82-526)

さて、今日ハルヒはまた銭湯に行くらしい。
朝比奈さんは「あたしのとこに来てもいいですよ」とお優しい言葉をかけていたのだが、「そう何回もお邪魔は出来ないわ」とハルヒが拒否ったんでな。
他人の迷惑がわかるようになってきたとはハルヒも成長したじゃないか。なんつうか俺としては純粋に嬉しいね。
なんて事を考えながら帰宅する。なんだ、妹はまだ帰ってないのか。さて、とりあえず風呂でも入れるか。
さっと準備して、沸くまで宿題でもやって暇を潰すか。そう思った時だった。
「たっだいま~」
脳天気な妹の声におかえり~と返事をすると、まさに予想外の声が帰ってきた。
「おっじゃまっしま~す!」
あれ?おかしいな。何であいつの声がするんだ?俺があいつの声を聞き間違えるわけないから多分あいつだよな。
「…………待て待て待て待て待て!!」
慌てて玄関に直行すると、そこにはランドセル背負った妹と
「あ、キョン。お風呂借りるわよ」
洗面器シャンプー石鹸タオルとフル装備なハルヒがいた。
「銭湯に行くんじゃなかったのか」
「そのつもりだったんだけど途中で妹ちゃんに会ってね。「だったらうちに入りにきなよ~」って言うから好意に甘える事にしたのよ」
そう言いながらハルヒはズカズカとマイホームの奥へ進んでいった。
「あら、ちょうど沸いてるじゃない。あたしが来るのを見越して予め準備するなんて、雑用としての自覚が芽生えてきたようね」
誰がお前のためにやるか。俺が入るためにやったんだ。
「なによ、雑用の分際で団長より先に一番風呂に入ろうっての?まさかそんなわけないわよね?」
もちろんそんなわけなのだが、正直俺は面倒になっていた。さっさと入らせてさっさと帰らせよう。
「妹ちゃん、一緒に入りましょ」
「わ~い!ハルにゃんとお風呂だ~」
もう勝手にしてくれ。
「それとキョン。もし覗いたら…死刑だからね」
生憎そんなくだらない事に賭ける命なんて無いね。さっさと入れ。
 
↓やれやれ、いつものようにハルヒにモノローグを任せるぜ。ったく妹の奴…。
 
「本を読みながら入浴?」
「そう、健康にいいらしいんだよ~」
確かになんか聞いた事あるわね。うん、なんか面白そうだわ。
「ハルにゃんも読みなよ~」
そう言って妹ちゃんは一冊の文庫本を渡してきた。
「これ…フ○メタの新刊じゃない!あたしまだ読んでなかったのよね~」
「ちょうどいい機会だね!」
全くよ。さて、読書タイムといきますか。
……………。
…………。
………。
「暑~い。ハルにゃん、先あがるね」
ハイハイ、あたしはもうちょっと読んでからにするわ。
「あんまり長く入るのはよくないよ」
って妹ちゃんは言うけど、あたし読みかけの本を一瞬でも放り出すのって好きじゃないのよね~。
一度読み始めたら最後まで読む。それがあたしの主義よ。
……。
…。
ムム…なんか説明が多すぎて頭に入りきらないわね。てゆうか、なんか気持ち悪い……。
もう出た方がいいのかしら。でもあとちょっと……。
………………。
読み終わった!…けどなんかほとんど頭に入ってないような…。
あれ?なんか周りが揺れてるわね。地震?空間の振動?異世界への門が開く兆候?それと…も…。
 
 
 
頬に冷たい風が当たってる。ひんやりして気持ちがいい。
目を開けてみた。
「気がついたか」
キョン…?あたし…どうして…?
「のぼせて気を失うまで何してたんだ?」
団扇で扇ぎながらキョンが穏やかに聞いた。……本当の事は言えないわ。
「びっくりしたんだぞ。妹が血相変えて「風呂場でハルにゃんが死んでる!」なんて言うから」
アハハ…ごめん。謝るわ。
「毎年風呂場で何人も年寄りが死んでるんだ。気をつけないとお前も閻魔様の前で自分の間抜けな死に様告白タイムだ」
なによそれ…!あたしを年寄りと一緒にしないでよ!!
「ワッ!馬鹿!起き上がるな!!」
うう…確かに目眩が…あれ?キョン、あんた何で後ろ向いて赤くなってんの?
「……自分の姿をよく見ろ」
そこであたしは気づいてしまった。気絶してたあたしに服を着せる人なんて誰もいない。今のあたしはタオル1枚だけだった。
そして、起き上がった反動でタオルはあたしの体を離れてる。つまり…
「あ……あ……いや……」
 
「わぁぁぁぁぁぁぁっ!ハルヒ、落ち着け暴れるnグボハァッ!!」
 
 
 
………。
明日には風呂ガマが直って今まで通りの生活に戻れる。長かったなあ。
「やれやれ…ハルヒ、牛丼と豚丼どっちがいい?」
牛丼!とびきり美味しく作らないと許さないからね!!

完結っつうか蛇足気味な土曜日編 (82-609)

「どうやら、涼宮さんのうちの風呂ガマが直ったらしいですよ」
それが朝一番でやる電話か古泉。悪いが凄くどうでもいいぞ。
「単なる報告ですよ。これで、涼宮さんが他人のお風呂に厄介になることもありません」
そうかい。よかったなそりゃ。もう切っていいか?
「ええ、失礼しました」
ガチャッ。全く、今何時だと思ってるんだ。本当に失礼な奴め。
 
それから4時間後、また俺の携帯がブルブル震えだした。今度は誰だ。
「キョン、ようやく風呂ガマ直ったわよ」
そりゃさっき聞いた。今回一番蚊帳の外だった奴からな。
「話は最後まで聞く!……今すぐあたしの家に来て風呂に入りなさい」
は?なんでだ?俺関係ないだろ?
「えと…ど、毒味よ毒味!温かったり熱すぎたりしたらあたし達が困るでしょ!」
支離滅裂な上に毒味の使い方間違ってるぞ。
「うるさい!さっさと来ないと死刑だからね!!」
ガチャッ。ったくどいつもこいつも勝手に電話して勝手に切りやがって。
やれやれ…どういうつもりなんだか知らないが、面倒な事になる前に行くか。
 
これなら風呂ガマ直らない方が…何言ってんだ俺。