おめでとう! (100-956)

Last-modified: 2008-10-31 (金) 23:59:29

概要

作品名作者発表日保管日
おめでとう!100-956氏08/10/3108/10/31

作品

 夏の暑さなんてのが嘘に思えるような、すっかり秋という感じの最近の気温、布団の中というものがどうしてこれほど心地良いのかを誰か論文にでも書いて発表すれば大いに支持されること請け合いだろうに。いや、俺には書けないし、書くつもりも更々ないけどな。
「キョン……起きて」
 って、誰だ、ハルヒか? ってまさか、こんなところにアイツがいるわけはない。
「ちょっとキョン、あんた寝惚けてんの?」
 寝惚けているっていうより、眠っているってのが正解だろう、この場合はな。
 天下泰平、平和が一番、俺は普通に怠ける、っと。
「こら、キョン! あんたいい加減にしなさいよ」
 いい加減って一言で言うけどな、具体的にどの程度かハッキリ言ってもらわないと俺には解らんな。
 例えば風呂の湯加減でも、健康には三十六度で長湯ってのがいいらしいが、いくらなんでもそれだとぬる過ぎるだろ?
 やっぱ俺はお湯の温度は四十度を超えてないと駄目だと思うぜ。
「あんた……あたしのこと、バカにしてるんでしょ? ほんとは起きてるのに寝てるフリしてんじゃないでしょうね?」
 そうだな、壁際に寝返り打ってやるから、寝た振りしている間に、さっさと出て行ってもらおうか?
「もう、あったまきたわっ! こらアホキョン! さっさと起きないと、身包み剥ぎ取っちゃうんだから!」
 って、やめろやめろ、布団は持っていかないでお願いしますこの通り……、
「って、ハルヒ?」
「ああもう、やっと起きたわね」
「って、何でまたお前が……しかも、一体どうしちまったんだ、その格好……」
「し、知らないわよ! あたしだって、気が付いたら何故かキョンの部屋にいて、しかもこんな格好だなんて……」
 ハルヒは如何にも恥ずかしくて仕方がないといった様子で頬を染め、薄っすらと涙まで浮かべていた。
 ってこの状況、まさか?
 
 あたりを見渡す――ってなんじゃこりゃ?
 
 俺とハルヒ以外の何の物音も聞こえない……閉鎖空間、にしては妙だ。
 周囲の色合いはモノクロのダークなトーンとは正反対の、柔らかな薄いピンク色の光に溢れている。
 
 俺はその場で目を閉じてブンブンと頭を振った。
 
 今のハルヒの格好、胸の谷間とか、丸見えの背中から下半身へのラインだとか、諸々が俺にとってはあまりにも目の毒過ぎる。
 と、そのとき昨日の放課後の一件がふと俺の脳裏に再生されたのであった。
 
 ………
 ……
 …
 
 放課後の文芸部室、何故か団長様の思い付きで、いつぞやのコンピ研から貰った
《The Day of Sagitarius 3》
 を一対一で対戦することになった経緯なんかは、なんだか非常にどうでもいい気がするので解説は割愛させていただくとして、次に戦うことになっているのは俺とハルヒ、それもまあいい。
 問題は、ハルヒの奴が「負けた方は罰ゲームとして勝った方の選んだ組み合わせでコスプレの刑よっ!」なんてわけの解らんことを急に言い出したってことである。
 おまけに何故か、ご丁寧にルーレットダーツなんて小道具までが二台も用意されているのは、一体どこの機関の仕込みなんだよ、古泉?
「まあいいではありませんか。こういうことは心行くまで楽しんだ方が勝ちですよ」
 そりゃ、勝った方は楽しかろうが、負けた方は地獄でしかないだろ? ちなみに、そのコスプレの組み合わせとやらだが、どれどれ?
『ねこ耳/眼帯/血/眼鏡/制服/花/リボン/お菓子/ハート/哀しみ/サスペンダー/包帯/和服/ポンチョ/鼻血/うさ耳/ヘッドフォン/スーツ/タンクトップ』
 …………微妙にコスプレじゃないものも含まれているような気がするのは俺だけじゃないと思うぞ。もとい、もう片方のはどうなってるんだ?
『色気/体操着/ガクラン/笑顔/海パン/ヘアバンド/メイド服/ロリータ/白衣/不思議の国のアリス/羽/ジャージ/全裸/涙/軍服/裸エプロン』
「――なあハルヒ。お前、自分が負けたときのことなんて全然考えたことないだろ?」
「ええそうよ。あたしはSOS団の団長、涼宮ハルヒなんだもん。あたしの辞書には敗北の文字は存在しないのよ、キョン。よーく覚えておきなさいっ」
 やれやれ、眼鏡+ガクランなんて無難なところに落ち着いてくれたらいいが、果たしてどうなることやら……。
「……だいじょうぶ。あなたなら勝てる」
 そ、そうか長門。応援ありがとうな。
「……がんばって」
「ってちょっと、なによ有希、キョンの応援だなんてどういうつもり?」
「す、涼宮さん、がんばれー! ふぁいとー!」
 朝比奈さんのいかにも棒読みなハルヒへの応援であったが、何故か少々悔しい気がするのは今更言うまでもないことだな。
 しかしなあ、普通に考えたら以前のパターンから行けば、ハルヒは自爆的に猪突猛進を繰り返すだけであり、まあ負けるはずはないのだが……、
「ふふふ、やはり心配ですか?」
 まあな、古泉。ハルヒのことだ、長門がやったようなプログラムを自分の都合のいいように好き勝手に書き換えるなんてことを無意識の内にやりかねんだろう。
「さて、それはどうでしょうかね。僕はいくらなんでもあなたの考え過ぎのような気がしますが」
「こら、そこ! なにをコソコソ喋ってるのよ。言っておくけどこれはガチンコ真剣勝負なんだからねっ! 言い訳だとか難癖をつけて罰ゲームから逃れようなんて、そうは問屋が卸さないんだから」
 やれやれ……もう好きにしてくれよ。
「それじゃ、ゲームスタートよ! 見てなさいキョン、あっという間に全滅させてあげるんだから!」
 
 色々と省略させてもらったが、ゲームは一応のところは無事に終了した。
 結論から言おう――俺、大勝利! やったね。
「こ、こんなはずって……ねえキョン、もう一回、もう一回だけ、いい?」
 納得いかない! といった表情で『泣きのもう一回』を懇願してくるハルヒである。だが、ここはきちんとしておかないとな。
「駄目だ! お前さっき自分で言ってただろ、これはガチンコ真剣勝負なんだって」
「ぅぅぅ………………わ、解ったわよっ、もう! ホラホラ、グズグズせずにさっさと決めなさいよね」
 負けた方がこれほど偉そうな態度っていうのもそれはどうかと思うが、まあ実害はないので黙っておくことにしよう。 と、古泉が相変わらずのニコニコスマイルで俺にダーツを二本手渡してきた。
「それでは組み合わせを選んでいただきましょうか」
「やれやれ、っと……おいハルヒ、最初に言っとくが、恨みっこなしだからな」
「当たり前でしょ、そんなの。いいからチャッチャと投げなさいってば」
 
 ……結果、第一の的に当たったのは『ねこ耳』で、第二の方は……、
「ってちょっと待て! いくらなんでも『裸エプロン』はマズイんじゃないか?」
 あまりの結果に、ハルヒは顔を真っ赤にして俯いてしまった。朝比奈さんはオロオロ、古泉も少々引きつった表情に変わってきている。長門は……、
「約束は大事……絶対に守るべき」
 っておいおい! あのー、長門さん?
「もしこれが逆の立場であったら、あなたは彼にその格好を強要したはず」
「!」
 普段は見られない長門のどこか強気な言葉に、室内の他の四人も呆気に取られるばかりである。ってまさか長門、お前実はハルヒのコスプレ姿を自分も見たいからってことはないよな? って何で目を逸らすんだ、おい。
「…………」
 やれやれ、仕方がないな。ハルヒに助け舟ってわけでもないが、何とかしないと。
「解ったよ長門。ハルヒにはちゃんとネコミミ+裸エプロンのコスプレをして貰うことにするさ。いいな、ハルヒ」
「……なっ、キョン?」
 俺の言葉に狼狽を隠せないハルヒである。
「ただし……『いつ』『どこで』の指示は特にしてなかったよな。だから、それに関しては俺が勝手に決めさせてもらうことにする。まあ、少なくとも今すぐここで、なんてことはないから安心しろ。いいか、ハルヒ?」
「えっ……そ、そういうことだったら……解ったわ」
 それと同時に、部室内は安堵の空気で満たされた。長門も特に追求の言葉を発するでもなく、いつもの読書に戻ってしまった。
 ハルヒは俯いたまま俺に近付くと、
「ねえキョン、言っとくけど……貸しを作ったなんて思わないでよね」
 と、釘を刺してきた。へいへい、解ってますとも団長様。
 
 ………
 ……
 …
 
 てなことがあったばかりなのである。
 ああそうだとも。白状しておくと、今のハルヒの格好ってのはまさにその『ネコミミ』+『裸エプロン』のコスプレ状態なのだ。
 その格好で、ベッドの上で俺に圧し掛かってきてるんだから、俺の理性が保たれていることを奇跡だといって褒め称えられてもいい位なんじゃないかと我ながら思うね。
 しかしまさかハルヒめ、そんなに俺に借りを作ったつもりだってのが嫌で嫌で仕方がなかったってことなんだろうか?
 
 いやいや、そんなことより今はこの状況からどうって脱出するか、だ。
 景色は以前と異なるものの、これもきっとハルヒの作り出した閉鎖空間の一種に違いないだろう。
 とすると、脱出方法はまた、アレなのかよ? やれやれ。
 
 俺は起き上がると、ハルヒの両肩を自分の両手で掴んで手前に引き寄せた。
「あっ、やだ……キョン?」
「なあハルヒ。最初に言っておくが、これは夢だ」
「へっ? 夢? で、でも……それにしては、感触とか、なんか色々とリアル過ぎて気持ち悪いぐらいなんだけど……」
「でも、前にもこれと似たような夢、お前は見たことがあるんじゃないのか?」
「って、ちょっとキョン、何であんたがそれを知ってるわけなのよ?」
「いや、当たり前だろ、だってこの俺だって、お前が夢の中で見てる『俺』なんだから、お前のことを知っていても不思議じゃないだろ?」
「そ、そっか。言われてみればそれもそうよね。……でも、だったら――別に、恥ずかしがることなんてなかったじゃないの! ああ、バカみたい」
 といったかと思うと、何故かハルヒは俺に抱きつくように圧し掛かり、またしてもベッドの上に押し倒される俺。
 って、こら、なんだ……その……俺の方も色々と困ったことになってきちまうじゃないか。
「今更なに言ってんのよ。これは夢なんでしょ、あんたが言ってたことじゃないの!」
 ハルヒはそう叫ぶと、俺の胸元に顔を埋めるようにして甘えてきた。何故か俺の顎に触れる度にぴょこぴょこと動くネコミミが妙にくすぐったいやら艶かしいやらだ。って、これ、ひょっとして頭から直に生えてる?
「ねえキョン、お願い……ぎゅっとして」
 えーと、つまりここで俺が言うことを聞かないと、ハルヒはこれが夢であることに疑問を持ってしまうだろうから、まあ結果的にそれは多分良くないことなんだろうと推測可能なわけであり……要するに俺はハルヒの言う通りにするしか無いってことなのである、以上。
「あんたって前に『ネコミミ属性の持ち合わせ』はないって言ってたくせに、まあ夢の中とはいえ、ちゃっかりこうやってあたしにはこんな格好をさせるのよね。……ずるいわ」
 そんなこと俺に言われてもどうしようもないだろ、とかツッコミを入れる前に、ハルヒはその顔を起こすと、目を閉じて、唇を突き出すようにして告げた。
「キョン……ちゃんと……最後まで、責任取んなさいよね」
 
 って待てよ、おい。これは何だ?
 今俺がここでハルヒに……しちまうと、最後まで責任を取らなければならないってことであり、要するに……。
 待て待て待て、何を期待してるんだ、俺。
 そもそもハルヒはこれを夢だと思っているから、ここまで大胆になっているわけで……、
 ってことは、ハルヒは心の底では俺とこういう行為をすることを望んでいるってことなのか?
 いや、ありえないだろう。しかし、ワザワザ閉鎖空間まで作ってこの恥ずかしい格好を俺だけに見せようとしたとも考えられ、って、いやいや、いくらなんでもそれには無理が。
 てなことを俺が脳内に展開させていたのは一瞬のことであり、何故か俺自身でも説明不能なのだが、結果的には自分の唇とハルヒの唇を優しく触れ合わせ……、
 
 
 またしても背中から自室の床に叩きつけられた衝撃で俺は目を覚ます。
 
 はいはい、毎度律儀というか、実にご苦労なこったぜ、本当にな。
 ふと、すぐ脇の床に転がっている携帯電話のLEDが点滅しているのが目に入った。何だ? 通話着信かメールでも来てたってことなのか。
 身体も起こさずに腕だけ伸ばして携帯電話を手にした俺はメール三通の着信をそこに確認することができたのであった。
 
『やあどうも。またしてもあなたのお陰でこの世界は無事守られたようですね。心より感謝いたします。それから、おめでとうございます』
 
『キョンくん、無事だったんですね。よかったです! えーと、あの、おめでとうございます♪』
 
『あなたと涼宮ハルヒの帰還を確認。無事この時空間に回帰できたことをわたしも喜ばしく思っている。追伸、おめでとう』
 
 何だ何だ? 三人が揃いも揃って『おめでとう』だなんて、ハルヒの閉鎖空間が解消されたことが、そんなにおめでたいことなん……、
 床から起き上がった俺は、ベッドの上を見て、まさに心臓が口から飛び出るような思いをした。
 
 えーと、さっきのはハルヒの作った閉鎖空間内の出来事だったはずだよな?
 それなら何故、俺の部屋のベッドの上でハルヒが生まれたままの姿――先程のエプロンすら身に着けていない状態――で胎児のように丸まって寝息を立てているんだ?
 
「うーん……キョン……」
 
 そう寝言を漏らしたハルヒが寝返りを打った時点で、とうとう俺の理性はどこかに消し飛んでしまった。今まで隠れていた均整なバストが顕わにな
(省略されました・・全てを読むには『わっふる! わっふる!』と書き込んでから裸で正座してお待ちください)

イラスト

 
100-956 haruhi_nekomimi_nude_apron_01.png