お題で書くよ (135-320)

Last-modified: 2010-11-09 (火) 00:33:51

概要

作品名作者発表日保管日
お題で書くよ135-320(◆1/dtGJfhU6.F)氏10/11/0410/11/04

お題 (320、321氏)

何か書くよ
お題ください

 

炒飯

炒飯

「ちょっと、キョン」
 ん。
「あんたのそのお弁当、何」
「何って、弁当は弁当だろ」
 それ以上でもそれ以下でもない。
「そうじゃなくて、その色の付いてるご飯は何だって聞いてるの。味ご飯?」
 これか?
「炒飯だが」
「ふ~ん……美味しそうね」
「素直に食べたいって言えよ」
「味見くらいならしてあげないでもないわ」
 別に味見して欲しいなんて頼んだ覚えはないんだが……まあいいか。
 ハルヒなら一口で食えそうな量を箸で取り、
「ほれ」
「……え」
 口元まで差し出してやったのだが、何故かハルヒは固まっていた。
 味見するんじゃなかったのか?
 気が変わったんなら、まあ別にいいが。
「た、食べる」
 そうかい。
 おずおずと開けられた口の中に入っていく炒飯。
 ……お味は?
「ま、まあまあね」
 そうかい。
「……そ、そっちのからあげも味見してあげようか」
 お前は俺の弁当を全部食うつもりか。
「か、代わりにあたしのお弁当あげるわ。それならいいでしょ?」
 まあそれならいいが……って。
 弁当を差し出しても、机に肘をついたままハルヒは俺の箸の先をじっと見ているだけだった。
 さて、今度はいったい何を考えてるんだ?
 自分で食べるのが面倒なのか、それとも人に食わせてもらうのが好きなのか……まあいいか。
 雛鳥に餌をやる親鳥の気分を味わいつつ、俺はまたハルヒの口元へと弁当を運ぶのだった。

お題 (325~329氏)

お題もう一つくらい募集

 

326
マフラー

 

327
パエリア

 

328
お題『2人にとっては何時も通りだが、クラスメイトからイチャイチャしてる様にしか見えないハルキョン。をクラスメイト視点で。』

 

329
ひとつのイヤホンを二人で分けて使うハルキョン

>>326-329

「……なあ」
 どうかした?
「俺にはあそこを歩いてるのはキョンと涼宮に見えるんだが気のせいか」
 あ、本当だね。
「っていうか、あの二人何で一つのマフラーを二人で巻いてるんだ?!」
 あれはそういう用途のマフラーだと思うよ、やけに長いし。
「しかも二人で片方ずつイヤホンつけてるとか……」
 何の曲を聞いてるんだろ。
「いや、気になるのはそこじゃねぇだろ」
 ああ、二人が今立ち止まって見てるお店のお勧めならパエリアだよ。
「そこでもねぇよ! 何なんだあれは、あれじゃまるであの二人が付き合ってるみたいじゃ」
 あのさぁ。……知らなかったの?
「は?」
 あの二人ならずっと前からあんな感じだよ。
「……」
 本当に、気づいてなかった?
「……」
 まあ、キョンに聞いても否定するんだけど、あれはカップルだよね。
「……悪夢だ」

 

334
匂い

 

 ――なあ、あそこで悪夢だとでも言いたそうな顔で固まってるのって。
「え? あ、谷口ね。そんな事よりキョン、さっさとメニューを選びなさい」
 店の中に入ってからじゃ駄目なのか? この匂いは明らかにそうしろって言ってるぞ。
 後、俺の胃も。
「それじゃ面白くないでしょ? いい、この店のショーウィンドに展示された中からこの店で一番美味しいメニューを見つけるの」
 わざわざそんな博打みたいな事をしなくちゃいけない理由が俺には解らんのだがな……。
「どっちが美味しいメニューを選べるか勝負よ! 負けた方はこの後カラオケ奢りね」
 へいへい、まあいいか。
「じゃあ俺はこれだ」
 確か、国木田がこの店のパエリアは美味いって言ってたし。
「じゃああたしもそれ」
 おい、勝負じゃなかったのか?
「いいじゃない、あたしも同じのを食べたくなったんだから」
 解った解った。
「ちょっとキョン! 何でイヤホン外すのよ?」
 は?
「それにマフラーまで?!」
 いや、店に入るからだが。
「……」
 ハルヒ、何をそんなに怒ってるんだ?
「別に」
 そんなあからさまに拗ねられてもな。
「……」
 ほら、さっさと入るぞ。
 袖口から見えていたハルヒの手を引いてやると、
「あ……う、うん」
 てっきり抵抗されると思ったのだが、意外な程あっさりとハルヒは俺についてくるのだった。

お題3 (330、339氏)

ハルヒ「な、長かったわ。遂にキョン×古泉君の新作が描き上がったわ!」

 

書いたはいいけど、誰が得するんだろ……これ
 
「な、長かったわ。遂にキョン×古泉君の新作が描き上がったわ!」
 ……は?
「聞こえなかったの? あんたと古泉君の新作が描き上がったって言ったの」
 いや、何ていうか聞きたくなかったな。それ。
「涼宮さん、おめでとうございます~。大好評だった前作から半年、ついに完成したんですね」
 朝比奈さん? あの、あなたの仰る言葉の意味が解らないんですが。
「涼宮ハルヒ著作『恋するとは、古泉とするの略である』の第二作が完成したという事」
 解説しなくていいから、マジで。
「そう。ちなみに前作は貴方が古泉一樹に恋心を抱き、その思いに悩むシーンをリアルに再現して」
 だからしなくていいからっ!
 あー……ハルヒさん?
「何? 読みたいの?」
 読みたいか読みたくないかと聞かれれば間違いなく後者だが、一応中身を確認しておかないといかん気がするんでな。
「まあ確かに本人にも読んでもらうべきかもねぇ……いいわ、読みなさい」
 ……なあ。
「何」
 表紙に18禁って書いてあるんだが。
「あたしだって、そりゃあ一応表現の規制くらいは守るつもりよ」
 その前に俺のアイデンティティーを尊重しろよ! っていうか俺X古泉ってのはそもそも何だ?!
「あのね、この表記だとキョンくんが男役で、古泉君は女役って言うか……その、上手く言えないんですけど」
 朝比奈さん、言わなくていいです。むしろ言わないでください。
 それと何でこの漫画の表紙は半裸の俺と古泉なんだ?
「あんた馬鹿ね~全裸じゃかえって萌えないのよ」
 知るかそんなもん! 知りたくも無い!
「……この漫画の事を説明したい、でも、上手く言語化できない。だけど、聞いて」
 うわぁ……あの時とは別の意味で聞きたくない。
「二人の関係は最初は険悪に近かった、でも、互いの感情をぶつけ合う間に惹かれあい始める」
「感情の伝達に齟齬が発生する中、貴方は彼を本当に大事に思っている事に気づく」
「それは認めるには抵抗のある感情、でも、受け入れてしまえば素晴らしい物――信じて」
「……流石有希ね、完璧よ!」
「最初は古泉Xキョンしかないと思っていた。でも、あなたの作品でへたれ攻めの偉大さを知る事が出来た」
「有希、一つの視点にとらわれちゃだめ。カップリングには無限の可能性があるんだからね!」
「了解した」
「さ、じゃあ今度こそキョンにこの本を読んで……あれ? キョンは?」
「あの、もう帰っちゃいましたけど……」
 
〆 お題ありがとうございました

お題4 (462氏)

326
マフラー

 

329
ひとつのイヤホンを二人で分けて使うハルキョン

 「マフラー」「イヤホン」

 ――それはただ単に、寒く、退屈で、苦痛な単純労働でしかないその時間を、少しでも快適
にしたいと考えたからの行動だった。
 
 
 「マフラー」「イヤホン」
 
 
 本格的に秋も深まり、既にある程度は秋を通り抜けて冬になってしまっているのではないかと疑うような、厳しい寒さが訪れていた十一月のある朝の事である。
 日に日に寒さを増していく中、寒い中を歩かされる登下校に気晴らしと体温管理をと思い、その日の朝、俺はマフラーを首に巻き、耳にはイヤホンを装着して学校へと歩いていたのだが。
「――無視するなっ!」
 イヤホンの外部から割り込んできた声と同時、後方に引かれたマフラーと共に反転する視界。
 坂道から秋空へと移り変わった視点が落ち着いたのは、不満そうな顔で見下ろす反転したハルヒの顔で止まった。
 ついでに、背中を強打したせいで息も止まった。
「あんた、平団員の分際で団長様の挨拶を無視するなんて何様のつも……何それ、イヤホン?何聞いてるの?」
 いきなりマフラーを引っ張る奴があるかとか、これがお前流の挨拶なのかとか、今日は白なのかとか、色々と言いたい事や言えない事はあるが……まあ、あれだ。
 おはよう、ハルヒ。
 この寒さの中で指定のカーデガンすら着てないとか、無駄に元気だな。
「何なの、そのイヤホン」
「ああ、これか。ケータイを買った時についてた付属品だ」
 転んだせいで汚れたであろう背中……は諦め、せめてもと思いズボンを払いながら教えてやると、
「誰もそんな事聞いてない。ちゃんと耳は聞こえてる? いい、あたしはそのイヤホンで何を聞いてるの? って聞いてるの」
 さて、ハルヒは今何回「聞いてる」と言っただろうか。暇な奴は……
「……」
 そんなに怒るな。
 口で説明するよりこうした方が早い、そう思いついた俺は倒れた拍子に外れていたイヤホンをハルヒの耳に入れてやった。
「これってラジオ?」
 ああ。
「何で?」
 いや、何でって言われても。
 単に退屈だから何だが。
「……ラジオ何て聞いてて面白いの?」
 さあな、人によるとは思うが、まあ暇つぶしにはなるんじゃないか。
 顔に疑問を浮かべたまま耳に集中していたハルヒは、やがてそのままゆっくりと歩き始めて、イヤホンを介して繋がっていた俺もまた、ハルヒのペースに合わせて足を動かし始めた。
「――あ、この曲知ってる」
 何の曲だっけ。
「今の仮面ライダーのオープニングよ」
 そうだったか?
「ほら、もうすぐサビだから……えっと、るらら、その心が~熱くなる程~」
 英語の所だけ曖昧だな。
 朝っぱらからそんな高音が無理なく出てるのは凄いと思うが。
「うっさい! ――ねえキョン」
 ん?
「今のリクエストは恋するうさぎちゃん……って、何」
 ラジオネームだろ。
「何それ」
 ペンネームとか、そんな様なもんだ。
「そんなのあるんだ、へ~……心理テスト? ラジオてそんな事もやってるの?」
 最近のラジオじゃ定番のコーナーって感じだな。
 ハルヒは頷いた後、無言のままイヤホンから聞こえるナビゲーターの声に集中している様だ。
「……A、友達に相談する」
 いや、口に出さなくても俺も聞こえてるから。
 心理テストの出題が終わった所で、
「あたしはBね」
 ハルヒは何やら楽しそうな顔で俺にそう言ってきた。
 ……Bって何だっけ。
「自分で解決する、進路の相談なんて自分で決めるべき事よ」
 お前らしいな。
「あんたは何を選んだの?」
 俺はC。
「Cって何だっけ」
 確か、諦めて適正範囲の中から選ぶ。だったっけ。
「……あんたらしい答えね」
 そいつはどうも。
 俺は平凡で平安な人生を心情としてるんだよ。
「診断結果はナンバーの後かぁ」
 このままのペースで行けば……学校に着いてるだろうな。
 視界の先には既に校門が見えている、普通に歩いてたらあそこまで3分かかるって事はないだろう。まあ、心理テスト何て無理して聞くほどの物でもないだろう。
 他ならぬハルヒであればそう考えると俺は思っていたのだが、
「少し、ゆっくり行きましょう」
 そう言い終える前にペースを落としていたハルヒに、俺は慌てて歩みを合わせた。
 やれやれ、いったい何がこいつの興味を惹いたのかね?
 次々と追い抜いていく級友達の視線を気にしつつ、自分とハルヒを繋ぐイヤホンを意識していると
「ねえ……暖かそうね。そのマフラー」
 ハルヒが俺の首に巻かれた繊維の集合体に気づいてしまったらしい。
「暖かいぞ」
「あ~首元が寒いわ……」
 また髪を伸ばしたらどうだ?
 俺的にはその方がいいんだが。
「あたしは今寒いのよ!」
 はいはい、そんな至近距離で怒鳴るな。
 ったく、素直に貸してって朝比奈さんみたいに言えばいいのに……ほらよ。
 抵抗した所で無理矢理取られる事になるのは解っていたから、これ以上伸ばされるよりはいいだろうと思い、自分からマフラーを手渡してやったのだが……おい。
「……何?」
 何、じゃない。何のつもりだ、これは。
 羞恥プレイとか、それに類する何かか?
 ハルヒは俺からマフラーを受け取るや否や、片方の端を自分の首に巻くと、反対側の端を俺の首に巻き始めたのだった。さっき思いっきり引っ張られたから多少は伸びているものの、やはりというか二人で一本のマフラーは短い。結果としてイヤホンを共用していた時よりも更に接近を余儀なくされてしまった中、
「別に。マフラーを借りたせいであんたが風邪を引いたら迷惑だから、それだけよ」
 そうかい。
 だったらマフラーを返せ、それで解決だ。
 そうはっきり言ってやっても良かったのだが……。
「……」
 何かを気にする様な目で、じっと俺を見上げるハルヒを見ている内にどうでもよくなっちまった。
 ……周りから感じる奇異の視線はどうでもよくなかったんだけどな。
「キョン。ちゃんと暖かい?」
 おかげさんでな。
 保温効果よりも今は羞恥心が熱源だ。
 殆どくっつくような二人の距離のせいで、ますます歩みは遅くなり、一向に学校に近づく気配が無い中、イヤホンから聞こえていたナンバーは終わりを迎え
「……あ、結果みたいね」
 ナビゲーターはまずさっきの心理テストの内容を復唱した後、それぞれの診断結果の発表へと移った。
「Bを選んだ貴女」
 楽しそうな声でナビゲーターの声を真似るハルヒ。
 いったい何がそんなに楽しいんだろうかね。
「Bを選んだ貴女は、実は誰かに手助けを求めて……?」
「誰かに助けてもらったり、偶然が訪れないと本心を打ち明けられないタイプ。恋愛においては奥手で、相手からの告白を待ってしまうタイプでしょう」
「きっ聞こえてるから言わなくていいの」
 へいへい。
 で、当たってるか?
「全然。丸っきりハズレね」
 そうかい。
「……Cを選んだ貴方!」
 声がでかい。
「難しい局面ではすぐにもう諦める。そう周りに公言はするものの、内心ではどこかで期待しているタイプの貴方。恋愛においてもその思いは胸に秘めたままになってしまう事が多く、必然的に片思いばかりになってしまうでしょう……あってそうね、これ」
 ま、そうかもな。
「そうなの?」
 急に立ち止まるな、この距離でいきなり振り向くな。
「知る訳ないだろ? そもそも深層心理ってのは自分では自覚してない事を指してるんじゃないのか」
 多分。よく知らないけどさ。
 ――そんな会話をしている間に、気づけば校門の前に辿り着いていた。
 足を止めたハルヒは、寒さのせいか紅潮させた顔で
「そうじゃなくて……だから、あんたって、か……かの……」
 ……すまん、何だって?
 殆ど接触回線状態だったが、ハルヒの声は途切れがちで聞き取れなかった。
 結局、
「な、何でもないっ」
 ハルヒは何を聞きたかったのか言わないまま、マフラーとイヤホンを外してしまった。
 そのまま振り返ろうともせず校舎の中へ入っていくハルヒは……さて、何を聞きたかったのだろうか。
 ……ま、いいか。どうせたいした事じゃないだろ。
 俺はのろのろとした動作でハルヒが使っていたマフラーとイヤホンを身に付け――どうせすぐに外す事になるのは解ってるんだが、まあ何となくだ――予鈴が鳴り始めた校舎の中へと、のんびりと歩いていった。
 
 
 〆