コハル日和 (120-236)

Last-modified: 2009-11-21 (土) 01:46:37

概要

作品名作者発表日保管日
コハル日和120-236氏09/11/1309/11/17

作品

「……父さん明日は頑張ってね」
「娘に心配されてるようじゃ俺も親父失格だな」
「いやいや、母さんをあいてに出来るのは世界中で父さんだけだと思うし、あたしは尊敬してるよ」
「ありがとな、コハル」
そういって、父さんは何時ものようにあたしの頭を優しく撫でてくれる。母さんもあたしもこれが大好きみたい。遺伝かな?
 
「なにやってんの明日は早いわよ、さっさと寝なさい」
そういって、あたしたちを優しく見つめているのが
お母さん。凄い美人でなんでもできちゃう、スーパーウーマンなのよ………
「コハルどうしたの?」
「ううん、おやすみなさい父さん、母さん」
「おやすみ、コハル」
 
「何を話してたの?」
「父さんは偉大だねって」
「バカじゃないの」
 
「……コハルも、もう高校生なんだな」
「そうね、あたしたちが始めて合ったのも高校生の時だったわよね」
「………そうだな」
「懐かしい?」
「別に」
「嘘」
「嘘だ」
「お見通しよ」
「なぁ~コハルはお前に似て凄い美人だよな」
「そうね、その割には男の噂を聞かないわね?」
「やめてくれ~」
「そういうところはあんたに似たのかもね、超絶に鈍いところは……」
「じゃあ良い奴に巡りあうだろうな」
「なんで?」
「俺に似てるから」
「………バカ」
 
明日は結婚記念日、二人で旅行に行くんだそうです。あたしを有希さんに預けてね、一人は流石に心配らしいです。本当に何時までも仲良しな夫婦でやれやれなんですよ。

 

「母さん、あんまりはしゃいじゃダメだよ」
「わかってるわよ、コハルこそあたしが居ないからってダラダラしちゃダメよ」
「ハイハイ、父さんも頑張ってね」
「おう、長門に宜しくな」
「了解。行ってらっしゃい二人とも」
「行ってきます。コハル」
「ふぅ~もう一寝入りしょっと」
「ダメ」
「うわ!~有希さん、何時から居たんですか」
「さっき」
「ハァ~やれやれ」
父さんと母さんの高校時代の友人で今でも仲良しな長門有希さん、どう見てもあたしと同い年位にしか見えない、とってもミステリアスな女性。多分あたしの怠慢計画も母さんが用意したこの有希さんによって灰燼に帰すのだろう
「説明を感謝する」
「いえいえ」
「お茶煎れますね」
「お気遣いなく」
「どうぞ」
ズズズ~「……まずい」
「悪かったですね、下手くそで」
「私が煎れる」
「お任せします」
「飲んで」
ズズズ~
「どう?」
「……負けました。美味しいです」
「そう」
「有希さんってお茶を煎れるの上手ですよね」
「教わった」
「誰からです?」
「朝比奈みくる」
「たしか、父さん達の高校時代の先輩で今は海外で仕事をしている人ですよね」
「………そう」
「写真でしか見たことないけど、学校のアイドルだったとか?父さんは言ってましたね」
「そう、あなたのお父さんいわく、見るものすべてを恋に落とすらしい危険人物」
「危ない人なんですか」
「そう、得に胸囲が」
………やれやれ

 

「高校時代の父さんと母さんはどんな事してたんですか?」
「今と一緒」
「休みの日は不思議探索とか言って、デートしてたんですね」
「正解」
「高校時代の父さんはどんな感じだったです」
「あなたにそっくり」
「あたしに?」
「そう」
「具体的にお願いしますよ」
「あなたのお父さんは恐ろしく鈍かった」
「鈍そうですもんね」
「あなたも一緒」
「え~あたしは鈍くありませんよ」
「一緒」
「ブゥ~」
「血は争えない」
「そんなに似てます?」
「そっくり」
「……そうですよね、あたし母さんみたいなスーパーウーマンじゃないし、父さんの血の方が濃いいのかもしれませんね」
「イヤ?」
「全然ですね、むしろ父さんの血が濃くて良かったですよ、あたしは平凡で怠慢なのが良いですから」
「そう」
そう言った時の有希さんのホッとした感じの笑顔は本当に綺麗だった。家の母さんに負けないくらいに
 
「朝ご飯まだですか?」
「まだ」
「食べましょう」
「そうする」
「有希さんって結構食べますよね」
「割と」
「何が良いですか」
「カレ~」
「…相変わらずですね」
「カレは至高の食べ物」
「カレーはお昼ご飯か夜ご飯にしましょうね有希さん」
「……そう」
「パンで良いですか」
「良い」
「決定ですね」
「決定」
「直ぐできますから」
「手伝う」
「ハイ」

 

「……ごちそうさま」
「朝から良く食べましたね」
「そう」
食後にコーヒーを飲んでいます。
「ふぅ~」
「………」
有希さんと居ると静かな時間が流れて行く、気まずい訳ではなく、静寂の中に安心感を感じることができた。あたしが産まれた時からの付き合いだからかな?有希さんは静かに本を読んでいる………
「これからどうします。何処かに行きますか」
「………行く」
「何処が良いですか」
「図書館……」
「ちょっと待っててくださいね準備してきますから」
「待つ」
「用意できました。有希さん」
「待って、手を」
「手?」
ギュ
「あたしも、もう高校生ですよ」
「イヤ?」
「卑怯ですよ有希さん、そんな顔されたら誰だって……ま~いっか。行きましょ」
「出発」
有希さんがあたしの手を引っ張ってずんずん歩く、あの二人は何時もこんな感じだったかな、そして父さんがこう言うの……
「ハルヒそんなに急がなくても不思議は逃げたりしないぞ」
母さんはそっと歩くスピードを落として父さんの横に並ぶの、しょうがないわねって顔しながら
………………
「有希さん、そんなに急がなくても時間はたっぷりありますから」
「そう」
歩くスピードを緩めてあたしの横に並ぶ、何故か笑顔が隠せないあたし。
「どうしたの?」
「なんでもないですよ、行きましょう」
「………?」

 

図書館に到着
有希さんはあたしの手をゆっくり離れて、ふらふらと難しい本がある棚へ消えて行きました。
あたしも何冊かを手に取って、ソファーに腰掛けて読書することにしましょう
 
しかし普段からさっぱり読書というものをしないあたしには、この快適空間は睡魔様の独断先行が許されてしまい、それに抗う訳もなく呑まれて行きました。
………………………………………………………………「長門…おいこら行くぞ……」
「………」
「早く集合場所に帰らないとハルヒに怒られる」
「………」
「ダメだこりゃ」
「ダメ」
「やれやれだな」
………………………………………
「うぅ~夢?」
あたしが起きると有希さんが隣で待っていた。
「待ちました?」
「心配ない」
「……そうですか」
「………」
「もうお昼過ぎちゃいましたね」
「空腹」
「買い物して帰りましょう晩御飯はカレーですね」
「いつまでも待つ」
「……さいですか」
「行きましょ」
「待って、これを借りてくる」
「はい」
カウンターでカードを出す有希さん、
「随分と古い型のカードですね?」
「そう」
司書さんがカードを見て
「新しいカードにしますか?」
「いい」
「新しくするといろいろ便利ですよ」
「いい」
そのあとも司書さんは新しいカードを薦めていましたが、有希さんは
「いい」
の一点張りでした。

 

晩御飯はリクエストに答えてカレーです。
「美味しいですか?」
「美味」
「良かった~」
パクーパクパク
相変わらず良く食べるな、こんな小さな身体のどこに入ってるんだろう?
「ごちそうさま」
「………釜が空っぽ」
「有希さん、お茶煎れて貰えますか?」
「わかった」
「ハァ~」
「どう?」
「美味しいです」
「そう」
 
「お風呂入りますよね?」
「入る」
「先にどうぞ」
「一緒に」
「………二人で入ると狭いですよ」
「あなたの両親は良く二人で入っているはず」
「……誰から聞いたんですか」
「秘密」
「やれやれ」
「前にあなたと一緒にお風呂に入ったことがあるはず」
「何時の話しですか、あたしも、もう子供じゃないんですから」
「イヤ?」
「くぅ!またこの顔、卑怯ですよ有希さん」
「ダメ?」
「………行きましょ」

 

「………無理」
「何言ってんですか、有希さんが一緒に入ろうって言ったんじゃないですか」
「あなたは着痩せするタイプだった。迂闊」
「訳のわからないことを、背中流しますから、そっち向いてください」
「前はもっと小さかったのに………」
「当たり前ですよ、有希さんがイメージしてるあたしは一体いくつなんですか、まったく」
「人の成長するスピードは恐ろしい」
「ハイハイ、洗いますよ」
「………」
「どうですか?」
「割と良い」
「有希さんは小さいですね」
「挑戦?」
「ち、違いますよ、意味が、背中ですよ背中」
「変わっていない」
「昔はもっと大きく感じてたな~」
「………そう」
「流しますよ」
ザァ~
「代わる」
「ありがとうです」
「あなたもしっかりと成長している」
「そうですかね~」
「………」
「有希さん?」
「……あなたが無事に成長することは私達、三人の願い」
「三人?」
「私、朝比奈みくる、古泉一樹の三人」
「有希さんと古泉さん、朝比奈さんの願い?」
「あなたは朝比奈みくるに会ったことがないと言った。」
「ありませんよ」
「ある、あなたが産まれた時に一度だけ」
「覚えてる訳ないですね」
「そう、私達三人はあなたが産まれた時に誓った」
「何をですか?」
「あなた達から平穏を奪おうとするすべてから護っていくことを」
「なんですかそれ?」
「あなたはあなたの両親だけの子供ではない。私達、三人にとっても大切な子供」
「有希さん………正直よくわかりません」
「そう、今はそれで良い」
 
「上がりましょう」
「了解」

 

「有希さん寝ましたか」
「………なに?」
「……有希さんはどうして結婚しないんですか?有希さんくらい美人なら相手なんて………」
「興味がない」
「うわ~……好きになった人は?」
「………いた」
「えぇ~!!どんな人ですか」
「………私は彼に沢山の迷惑をかけた。でも彼はすべてを許し優しく私を包んでくれた。私は彼が好きだった。今でも……」
「付き合ってたんですか」
「ない、彼の隣には何時、彼の好きだった女性がいた。その女性も彼の事が好きだった、私は二人を見ているのが好きだった。」
「その人達は今どうしてるんですか?」
「結婚して、子供ができて幸せに暮らしている」
「そうですか、それにしてもその男、有希さんみたいな美人がいるのに違う女を好きになるなんて、一体どんな奴なんですかね」
「………知らない」
「その人以外に好きになった人はいないんですか」
「いない、彼だけ」
「それで良いんですかね」
「彼らが幸せなら、私も幸せ」
「そうですか」
「あなたは幸せ?」
「日々をダラダラと怠慢に生きて行ければ幸せなんですが、なかなか上手はいかないもんですね。でも何時も元気すぎる母さんとそれに振り回される父さんを見てたら、平和だな~とは思いますね」
「そう」
「それに有希さん、古泉さん、あと朝比奈さんもいますから、あたしは幸せなんでしょうね」
「そう」
「長話になりましたねもう寝ましょ」
「そうする、おやすみ」
「おやすみなさい」

 

「おはようございます」
「おはよう」
「朝ごはん、直ぐできますから、顔洗ってきてください」
「了解」
 
「いただきます」
「いただく」
「美味しいですか?」
「わりと……おかわり」
「ハイハイ」
もぐもぐ
「作りがいがありますよ本当に」
「そう……おかわり」
「やれやれ…どうぞ」
 
「今日はどうします、二人が帰ってくるのは夕方頃だそうなんで」
「得にない」
「じゃあ今日はあたしの買い物に付き合ってくださいね」
「わかった」

たまには母さんの真似でもとか思いつつ、有希さんの手を引っ張って歩くあたし。有希さんが少しだけ楽しそうな顔をしているように見えました。
 
……………………………………行くわよ有希、不思議はそこらじゅうに転がってるはずよ、今日こそ見つけてやるわ………ね、有希
………………………

 

「ただいま~帰ったわよ」
「お帰りなさい、父さん、母さん」
「………お帰り」
「おう、何もなかったか」
「大丈夫だったよ」
「心配ない」
「そうか」
「有希、コハルが迷惑かけなかった?」
「ない」
「そう、良かった」
「ちょっとは信用してよね、一応あなたの娘ですよ」
「あんた、一人だと直ぐダラダラしちゃうからね、本当そういうところはキョンにそっくりなんだから」
「悪かったな、悪い遺伝子で」
「……そっくり」
「有希さん……」
 
「迷惑かけたな長門」
「良い、楽しかった」
「……そうか」
そう言って、父さんは有希さんの頭を優しく撫でました。少しだけ有希さんの顔が綻んでいるように見えたのは………
「キョン~なに勝手に有希の頭、撫でてんのよ」
「良いだろ別に、世話になったんだから」
「顔がエロいのよ顔が、このエロキョン」
「悪かったな、エロキョンで」
なにやってんですかね、このバカ夫婦は……まったくやれやれです。
 
「そろそろ、帰る」
「えぇ~泊まって行きなさいよ」
「我が儘を言うな、長門にもいろいろあるんだよ」
「大丈夫、また来る」
「そうよね~絶対また来なさいよ」
「また来てくださいね、有希さん、今度はお茶も美味しく煎れますんで」
「期待せずに待つ」
「もう~有希さん」
「また」
「送って行くぞ」
「いい」
「……そうか、またな」
「……お邪魔ました」
そう言って有希さんは帰って行きました。
 
「さぁ~コハル、あたし達のお土産話をたんまり聞かせてあげるわよ、覚悟しなさい、今日は寝れると思わないことね~キョン、お酒を持って来なさい、今日は皆で飲むわよ~」
「勘弁してよ」
「明日はコハルは学校だぞ」
「あんた達~団長の命令は絶対なのよ、逆らったらどうなるかな~」
「ハァ~やれやれね」
「だな」