タイガーショット (55-87)

Last-modified: 2007-08-05 (日) 20:46:49

概要

作品名作者発表日保管日
タイガーショット55-87氏07/08/0507/08/05

作品

「ちょっとキョン真面目にやりなさい」
大声で叫んでいるのは我等が団長:涼宮ハルヒである。
ゴールデンウィークの冷たい海水の中を、波に圧し戻されたサッカーボールを何度も何度も蹴っている
そんな電波な少年を見かけた人がいるかもしれない。
恥ずかしながら、この俺だ
 
どっかの大馬鹿者が、先日見たアニメに感銘を受けて
「キョン、タイガーショットを打てるようになるまで特訓しなさい」
ときたもんだ
ちなみに、タイガーショットとは、日本で最も有名なサッカー漫画の主人公が打つ必殺シュートのことらしい。
「正確には主人公でなく主人公のライバルのシュートですが」
どっちでも良いが何故俺がやらんといかんのだ。
「涼宮さんがあなたに打てるようになってほしいからですね」
迷惑だなー、断れば閉鎖空間ですか、はいはい。今は世界を支える巨人の気持ちが良くわかる。アトラスだったっけ?
お前はリフティングの練習で楽そうだ、そういえば谷口もいるな、あいつも暇なこった
愛しの朝比奈さんの笑顔だけが清涼剤です。長門は相変わらず無表情だ
 
そんな無駄なゴールデンウイ―クが終わった時、DQN女が
「何やってるのキョン、全然駄目じゃない。明日も放課後練習やるわよ」
と言ったので俺はさすがにカチンときてこう言った
「あのなー、漫画の中の技が現実で使えるわけないじゃないか。もしできたとして、それは何十万人に一人の天才が何年も修行してできるんだぞ」
さすがにハルヒも悲しい顔をして
「ごめん、私が甘かった」
少し言い過ぎたかなと思ったところ
「やっぱりサッカー部で本格的にやらないとね。キョンなら1年もあれば充分でしょう」
「おい、1年もやって俺に何のメリットがある。SOS団のしょぼい勲章がご褒美というわけじゃないだろうな」
「タイガーショット打ててエースストライカーになればJリーグの契約金ががっぽり入るじゃない」
「だから何十万人に一人の天才が努力しないとだめなんだって」
「あんたなら一年あれば充分よ」
「何を根拠に」
「根拠?あたしのカンよ」
「カンだけかー」
「あんたが文句言っていた映画だって大盛況だったじゃないの」
あれはお前の不思議能力による洗脳で、とは言えなかった
 
「SOS団の活動はどうするんだ」
「あんたがタイガーショット打つのが活動じゃないの」
「そしてお前は見ているだけか」
「団にまともに貢献してきてないくせに生意気言うんじゃないの」
「だったらSOS団やめたいんですけど」
「そうだわ、あたしもサッカー部に入ってあんたの専属マネージャーになってあげる。古泉君と谷口も入ると楽しいよ」
「あのなー」
「あ、みくるちゃんと有希は良いよ。2人で残りの人の分も不思議探索お願いね」
 
「そう目指すわ全国制覇。キョン全国制覇まで頑張るのよ。古泉くんと谷口もキョンのサポートよろしく」
「了解しました団長殿」
「おいキョン、お前らいつもこんなのやっているのか」
「いつもより酷い」
「というわけで3人はサッカー部で全国制覇目指すSOS団派遣社員として頑張ってもらいます」
「俺いつの間に入団したんだっけ」
 
俺はなかなかやる気が出なかった。ハルヒが何か叫んでいるような気がしたが、何を言っているか何も覚えてなかった。
気が付いたらハルヒを含めた全員の顔が真っ赤だった。長門だけは相変わらず無表情で、俺には怒っているように見えたが。
こうなりゃヤケだ
「よしゃー全国制覇だ」
「そうその意気よキョン」
「キョンよー」
 
 
2週間くらいで飽きると思っていたが、気まぐれな神様は1月たっても2月たっても懲りずに『全国制覇』を叫び続けていた。
俺のサッカーの技術と体力は他人の何倍ものスピードでメキメキ上達した。「進化の可能性」の力は素晴らしい、かな?
サッカー部マネージャとなったハルヒがマネージャーの雑用などするわけがなく、俺の所に散々文句が来た。
しかし、マネージャーにも飽きたのか『ソフトボールで全国制覇する』と言ってソフト部に移っていった。
そういえば例の主人公のライバル君は恋人はいたっけ?もしかしてソフト部?まさかねー
互いに別々の部に入ってからは、教室外で会う機会も少なく寂しかった。
そして、3年夏の大会の予選がやってきた。俺は県を代表するエースストライカー。古泉と谷口もレギュラーの一角に食い込んでいた。
チームは機関による選手引き抜き、勧誘もあって全国で闘える強さになった。
これで全国大会に出れなかったら、閉鎖空間ですか?はいはい、がんばります
 
3回戦は第1シード相手。これを勝てば準決勝までは楽勝だ。
その日絶好調の俺は殺人的シュートで前半だけで3点を取り、4人を病院送りにした。
そういえば何時の間にかタイガーショットみたいなのが打てるようになったな。これもハルヒパワーか?
台風の日に海辺でボールを蹴らされたり10倍の重さのボールを蹴ったりしたのが懐かしい。
さすがに相手チームが抗議する。ルール上合法でもやりすぎかな?
「何するんだ、一体何人怪我をさせるんだお前」
「怪我が恐かったらサッカーなんか止めちまえ」
おれは怪我したいよ。怪我すればサッカーを合法的に止められるから
「俺のサッカーはお前らみたいな甘ちゃんじゃねえんだ」
どうせ進学に有利とかサッカーで飯を食うとかいったレベルだろう。
俺はなー、俺はなー『世界をしょって立っているのだぞ』どっかの亀とか象とか巨人みたいに。古泉達もだけど
この発言にカチンときた敵方選手と乱闘寸前になった
「君達止めなさい、止めないと退場ですよ」
 
「おい、キョン今日はひどすぎるぞ、乱闘になるところだったぞ」
「キャプテンやりすぎですよ、没収試合になったらどうするんですか」
そういやキャプテンになってたな
「あのなーお前らまで俺に文句言うのか。そんなに言うなら俺のサッカーとお前らのサッカーのどっちが強いか勝負だ。お前らだけの力で全国大会出れば俺は負けを認めてやる」
俺は何をDQNなこと言ってるのかねー、自分でもわからないよ。
そして背番号9のユニホームを脱いで後半戦をバックレた。3点差あったんで俺がいなくても楽勝だった
 
「谷口。キョンの奴。正にサッカーに人生をかけているって感じだが何であんなに血迷っているんだ」
「サッカー始める時に、あの涼宮に『全国優勝したら私の処女あげる』というのを言われたのだよ。俺はこの耳で聞いた」
「なるほどなー」 「あんな美人めったにいないからなー」
「俺もあんな彼女欲しい」 「顔だけは良いからなー」
「スタイルも良いし」 「性格は最悪だけど」
「2人の結婚式が楽しみだ」
おい、お前ら勝手な事言いやがって、聞いているぞ。
「ところで、キャプテンマークは不肖古泉が付けるということでよろしいでしょうか?」
 
自主練した帰りに古泉と会った
「すまん古泉、今日はひどかった。明日みんなに謝っておく」
「いえ、謝らないで下さい」
へ?
「漫画の主人公、いえ正確には主人公のライバル日向小次郎が漫画の中で行ったことは、あなたが今日行ったことと同じなんです」
「俺は、ハルヒが目指せと言ったキャラの行動をそこまでなぞっていると?」
「ええ、そしてその後、地方大会の決勝戦で味方ピンチの時にさっそうと現れて逆転するという」
「俺はその漫画読んだことないが、そいつは本当にそんなDQNなことをしていたのか?まるでハルヒじゃないか」
「涼宮さんもあの巻は読んでいないはずなんで不思議なのですが、やっぱりキャラに感銘を受けたのですかねー」
「それで俺は具体的にはどうすれば良い」
「作中では決勝戦から参加ということですが、念のため準決勝からスタンバイして下さい。それまでは近所の大学の練習に参加して下さい。これが紹介状です」
何度か胸を借りたことがあるが、かなり強豪の大学である。練習もきついし
 
古泉の予言どおり俺は地方大会準決勝戦の2点ビハインドで現れ見事逆転し、決勝戦でもハットトリックを決めて全国大会に出場した。
そして、延長戦で負けて全国制覇は逃したものの準優勝と好成績を収めた。
得点王はダントツで俺だ。確か大会新記録だった。漫画の中での日向君は準優勝だっけ?どうでも良いけど
 
決勝戦のあった日の夜、祝勝会だか反省会だか残念会だかいう、つまらん催しを俺はバックレた。
何故って?SOS団団長に呼び出されていたから。そいえばまだそんなのあったんだ
『5万円以上持って来い。無ければ借りて』っていうのは何だったのだろうか。古泉に借りたけど、結局使わなかったな。
 
さすが田舎で、宿舎から10分も歩くと、ほとんど何の明かりも無かった。
近くに見える明かりは、あれはラブなホテルか。さすがに悪趣味だ
「準決勝の後倒れた時はすごく心配したんだよ、すごい熱が出て」
「今は熱も無いし大丈夫」
「ダイビングヘッドの時、頭をスパイクされなかった?」
「少し痛むけれど。大したことなかったって」
「今日は残念だったね」
「でも冬こそは」
と言って気付いた、この分だと冬の大会で全国優勝しなければならないと。でも後悔は無かった。
 
ハルヒの機嫌はすごく良かった。真夏の向日葵のように無邪気に笑うハルヒを見ると不意に一年前の花火大会を思い出した。
多分あの時感じた気持ちと同じ。それが何かは知らないけど
夏の川原で俺達は何時間も話し合った。
俺の子供時代の話、ハルヒの子供時代の話、SOS団の思い出、俺のサッカーの話、ハルヒのソフトの話
俺達は話し合った、俺がサッカー始めてハルヒがソフト始めてからの会えない日々を取り戻すように。他愛の無い話を
その日は雲一つ無く、星が多くて、きれいな天の川が見えていた。
そういえば、西南の空にあった蠍座が何時の間にか消えていた。
最後の方は「結婚式は何月が良いか」「結婚式は洋式、和式?」「子供何人欲しい」とかいう話になったっけ
 
「ところで、あんた最初の約束覚えていない?優勝は逃したけれど、もし良かったら今から」
「どんな約束したっけ?覚えていないけど」
とたんにハルヒは怒り出し
「馬鹿!!」
と言って帰りだした。追いかけたけれど機嫌を直してはくれなかった。
俺の部屋の入り口で超能力者が立っていて
「あなたには失望しました」
古泉まだ起きていたのか、早く寝ろよ。俺も人のことは言えないが。ところで失望って何だよ。
相手チームDFの「うちのキーパーの若林さんはPAの外からのゴールを一度も決められたことがない」という言葉にカチンと来て
ムキになってPA外からシュートを入れようとしたことか?ハーフタイムに谷口に忠告されて止めたけど
 
翌日、朝食のバイキングでハルヒに会ったときも不機嫌そうだった。口をアヒルみたいに曲げて。
約束するから機嫌を直してくれよ、と思いながら
「冬の大会では全国制覇するから」
と言うと、顔を茹蛸のように赤らめて、とたんに機嫌が良くなり
「そうか、そうか、そんな殊勝なことが言えるか、あんたを誤解していたよ。お姉さんうれしいよ」
といって俺の後頭部をペコペコ叩いた。何を怒ってたのだろうかね
帰りのバスは2人並んで熟睡
残念会をバックれた俺を誰も非難しなかったなー。代わりに一日中周囲の生暖かい目で見られて気味が悪かった
そういえば生暖かい目って誰が言い出したのだろうか?
 
ちなみに、全国大会準優勝したというのに俺の所には一通もラブレター来なかった。
古泉はもちろんアホの谷口とか、誰とは言わんがブサイクのDFとかレギュラー陣は全員何通もラブレターもらっていたのに。
そんなに女子に嫌われていたかなー俺
「当たり前じゃないですか。あれだけあなたと仲が良くて、美人で、エネルギッシュで、喧嘩も強いす、、、」
古泉何か言ったか?
(終わり)

 

おまけ
問題:以下のものを簡潔にまとめよ(現代国語初級)
①最初のほうでハルヒ達の顔が真っ赤になったのは何故ですか
②最後のほうでハルヒが怒った理由は何ですか  
③ハルヒの機嫌が直った理由は
④古泉君が失望した理由は何ですか
⑤最後に古泉君は何を言おうとしたでしょうか
⑥キョン君がラブレター貰わなかった理由は何ですか
⑦生暖かい目をした皆様の心の声は?
⑧最初のときの約束とは?
 簡単すぎましたね。すいません
 
 
最後に皆様に質問です教えて下さい
「生暖かい目」の正確な意味は何ですか?(よく判らないのに使っています。すいません) 
「生暖かい目」はいつ頃から使われていますか? 
「生暖かい目」は誰か有名な人が言い出したのですか?
 

 

おまけ2
某未来人「涼宮さんたら私達を蚊帳の外に置くだけじゃなく
     あんな破廉恥な発言を大声で。
     それに対して、キョン君がやる気見せて幻滅したわ。」
某宇宙人「ムカついたので、彼の記憶から涼宮ハルヒの破廉恥な発言を削除」
某未来人「えーそうだったの?」
某宇宙人「そう」