概要
作品名 | 作者 | 発表日 | 保管日 |
チェリーガールズサマー | 78-990氏、79-22氏 | 08/02/03 | 08/02/04 |
作品
「熱い……」
只今の季節は猛暑真っ盛り。何て言うかこれはもう暑いじゃなくて熱いの領域だ。
寒い時の比喩に「バナナで釘が打てる(凍るからな)」というのがあるが、さしずめ今の状況は「バナナも液体になります」って感じか。ちと大袈裟かな。
だが、そんな暑くても熱くても買い物を頼まれたら断るわけにはいかない。久々に素麺以外の食い物が食べれるかもしれんからな。
そんなわけで、俺は糞熱いアスファルトの上を生まれたてのゾンビのように歩いていた。帰りにアイスでも買おう。そう決めた時だった。
「あれ?キョンじゃない。なにしてんの?」
夏でも関係なく、いや、普段の3倍はギラギラしてる奴の声が後ろからした。言うまでもなく我らが涼宮ハルヒのだ。俺は溜息をつきながら振り返った。
「見りゃわかるだろ。夕飯の買い物…」
えらい美人がそこにいた。という表現を改めてしたくなりそうなハルヒがそこにいた。
なにしろ麦藁帽に薄白いワンピースっていういろんな意味で夏の定番な格好だからな。どこぞのギャルゲのヒロインかって感じだ。
「なによ固まっちゃって」
「ど、どうしたんだよその服」
「あたしだってこういう服は持ってるわよ」
嘘つくな。お前と清楚ほどかけ離れた言葉はないだろ。
「……お母さんが昔着てた服らしいの。今のあたしにサイズぴったりだから着てみたんだけど…どう?」
どうってなにがだよ。
「その…似合うかどうかよ」
「そりゃ似合ってるだろ」
てゆうかこいつに似合わない服装を誰か教えてくれ。
「そうだ、あんたにもあげるわ」
何だよと思う間もなくビニール袋を手渡してくるハルヒ。中身は…。
「さくらんぼ?この季節に?」
「知らないの?さくらんぼは夏が旬なのよ」
知らなかった。もっとも最近はビニールハウスのせいでいつでも食えるからなあ。
「親戚から大量に送られてきて。これから有希にも届けるつもりなの」
「俺はついでかよ」
てゆうか端から予定になかったわけだな。
「雑用のくせに有希より先に貰おうなんて何様よ」
長門は俺と同じ平団員だったはずなんだが、いつから俺は団員ですらなくなったんだ?
「じゃ、急ぐから」
「あ、ああ」
白いスカートを翻してハルヒは遠ざかっていった。全く、人間何を着ようと中身は変わらないもんだな。
「……」
試しに食べてみたさくらんぼは以外に冷たかった。酸っぱい甘さが口に広がる。
アイスは買わなくていいな。俺は種を吐き出しながらそう思った。