デートまがい2 (49-105)

Last-modified: 2007-05-18 (金) 00:46:57

概要

作品名作者発表日保管日
デートまがい249-105氏07/05/1807/05/18
 

作品

あの悪夢に近い撮影の後、古泉はさっそく編集作業に入り色々と手を回していたようだ。
落ち着いたのは一週間後、ハルヒが部室にいないので聞いてみることにした。

 

「いやあ、大好評ですよ」
「…そうかい。そのわりには団員は増えていないようだが?」
「それはそうでしょう。あんなに仲の良いところを見せられて間に入ろうとする人はいませんよ。普通の人なら見せ付けられるのも御免こうむりたいと思うでしょうね」
「だったら意味ないじゃないか。本末転倒だぞ。…おまえまさか、はじめからわかって…」
「僕の身内にも大好評です。『これで世界は救われる』などと言っていましたよ」
「ちょっと待て、誰に見せてるんだお前。全然関係ない人達じゃないか」
「酷いなぁ、立派な関係者じゃないですか」
「それはそうかもしれんがな…」
「そうそう、感想を伝えておきましょう。『初々しくて良い』『見ているこちらが恥ずかしくなる』『もっとちゃんとリードしてあげてください』『性欲をもてあます』などなど」
森さんや新川さんも混ざっているような気がした。
「さらには『とてもよかった。今回の初デート編で終わらず、遊園地編、夏の思い出編、ジューンブライド編、新婚編、と続けていって欲しい』なんてのもありました」
「なんでお前らに娯楽を提供しなけりゃいけないんだ」
「足りませんか?では出産編や育児編などもやってみますか、これは大長編ですね。やりがいがあります」
「なんでそんなにノリノリなんだよ!だいたいな…」
バーン
「おっはよー!」
「俺とハルヒはまだ結婚もしてないんだぞ」
「「「………………」」」
えーと、何が起きた?俺と古泉が話してて、急にハルヒが入ってきて、俺が、何か、言った?
「なるほど、『まだ結婚していない』ですか。『まだ』ね」
意味深に言う古泉。
「い、いや。そうじゃなくてだな」
「確かに『まだ結婚はしていない』ですよね。『まだ』ね『まだ』」
声を押し殺して笑い出す古泉。
「お前な…、ハルヒ、お前からもなんか言ってくれよ」
「え…えと、『まだ』って、その、そういうつもりなの?」
なんで俺に対するツッコミなんだよ。しかも満更でもなさそうだし。
「ふーん、そうなんだ、ふーん」
チラチラ俺を見るな。
「で、でもそういうのは段階ってものがあると思うのよ」
逆走で周回遅れが発生しそうな思考を止めてくれ。
「そのとおりです、涼宮さん。実は僕は次回作の構想を練っていましてね」
「おい、まさか」
「次回は遊園地編などいかがでしょう。今回のおかげで協力者も多数できましてね、貸切も可能です」
どう考えても初めから準備していたとしか思えない手際の良さ。
「私は、別に、……いいけど」
「だ、そうです。さて、あとはあなた次第ですね」
チラチラと横目で俺を見るハルヒといつにも増してニヤケ顔の古泉。
俺次第なんて言うがどうせ俺には選択権などないのだろう。
こうして俺の予定は埋まっていく。
というか機関の方から既成事実にされそうな予感がする。

 

教訓、余計なことは言うもんじゃない。たとえ勢いで言ってしまったとしても。
口は災いの元とはこのことか。

 

ま、ハルヒはなぜだか嫌ではなさそうだし、古泉を筆頭として幸せになる人が多いようだ。
その程度の自己犠牲の精神は持ち合わせているつもりであり、長門や朝比奈さんの苦労が減るというならば、あのこっぱずかしい撮影をすることもでやぶさかではない。
「じゃあキョン、新しい衣装買いに行くわよ」
ご機嫌なハルヒは今にも走り出しそうだった。こんな引っ張りまわされてばかりの今を一瞬でも楽しいなんて思ってしまったのは、きっとハルヒ菌に冒されてしまったからだろう。
なんてこった。しかし過ぎてしまったことは仕方ない。うまくこの病気と付き合っていくことにしよう。
なにせ人は病気には勝てないからな。