ニキビのお薬、クレアラシル (89-897)

Last-modified: 2008-05-18 (日) 23:29:29

概要

作品名作者発表日保管日
ニキビのお薬、クレアラシル89-897氏08/05/1808/05/18

作品

さて、どうしたもんかね。
 
いや~そのだな、ほら、ハルヒが俺にすがりついて離れようとしないんだよ。そして俺はと言うとベッドで寝てるんだ。
さっき目を覚ましたばかりでまだ覚醒してないんだろう、とにかくこうなってる状況が思い出せない……なぜだ? Why?
「ハルヒ……どうしたんだ?」
「…」
「なぁ俺、なんでここで寝てたんだ?」
「……」
おいおい長門かよ、と思うくらいダンマリしてやがる。ハルヒらしくない…だがこうしてても埒明かないので、とりあえず上半身を起こした。だがハルヒは俺の胸にすがりついたたま、顔を見せようとしない。泣いてるわけじゃ……ないみたいだ。
混乱する俺はとりあえずこの体勢のまま、記憶を辿ろうと思った。まずここはどこだ?? そうだ保健室だ。ということは例の病院じゃなくて北高ということだ。俺は……朝は登校してきたはずだから、その後になにか起こったんだよな…
 
……そうだ、だんだん思い出してきた。
 
 
朝、教室に入る直前、俺の感覚がピーンと張るのを感じた。どこかの誰かが不機嫌オーラを放ってるに違いない。
それも特大のオーラだな、今日は。ああ、ここでそういうのがわかってしまうのは習慣なんだろうな。だがその発生原因が問題だ。とにかく原因を作ってる奴がとても気まぐれ屋さんな上、俺の普通人たる脳みそじゃ計り知れない事が理由であることがほとんどなのだ……というか、いつもそうだっけか? しかしここまでの不機嫌さだと、たいていは俺にとっていい事が待っていたためしがないので、その辺は覚悟しないといけない。
 
さ~息を吸って~はいて~、覚悟はできた! いくか!
 
気合入れて入り口に立って教室内を見た……ハルヒは外を向いててこっちを見ようともしない。ま、ここに突っ立ってても如何ともしがたいので自分の机に向かおう。おい、そんな目で見るな谷口、何とかしてやるからいいから黙ってろよ。
「よ!ハルヒ」
「……」
ハルヒはいうと、左手で頬杖ついてこっちを見ようともしない。
「どうしたんだよ?」
「……何でもない。」
「何でもないならいいんだが…」
「……じゃぁ見ないでよ。」
 
ハルヒが不機嫌な事はよくあることだが……いや”話しかけないで”とかじゃなくて”見ないで”とは珍しい。とはいえこのままにしておくと俺までこの不機嫌オーラにやられてしまう。古泉や長門に聞く時間もなさそうだし、こういう時はとにかくハルヒと話して原因を探るのが一番だ……と思ったのがそもそも間違いだったのを理解したのは大分たってからだったが……いや、このときはそれが最善だと思ったんだよ。
 
「なぁ、ハルヒ、何があったんだ?俺が何とかできることなら何でもするからさ…」
「何でもないわよ。」
「何も無いなら、どうして俺を見ないんだよ?」
「……見たくても見れないからよ。頼むから、こっちを見ないでよ…」
そう言いつつ、ハルヒはこっちをチラチラ見てる。うーむ、おかしい。いつものハルヒなら”頼むから”なんて絶対言うはずないし、そもそも俺に対してこんな弱気に…というか命令口調じゃないなんてありえない。何か変だ………そもそも頬杖ついて……と、ここで気がついた。ハルヒは頬杖じゃなくて左手で何か隠してる感じだと言う事に。
「ハルヒ、左手をどうかしたのか?」
「え、な、な、何でもないわよ!?」
どうやら図星だったみたいだ。
「何でもないわけないだろ、いいから、見せてみろ。」
だがそこでついハルヒの左手を掴んでしまったのがいけなかったらしい…
「だ、駄目!!!!!!!!」
次の瞬間に俺はハルヒに思いっきり突き飛ばされた!  って、ハルヒ、お前何て馬鹿力なんだ!? とスローモーションのような感じで、後ろに吹っ飛んだ俺は派手に前の机に激突した!!!
 
ガシャーーーーん、どかん☆!☆!☆!
激突した瞬間、俺の意識が飛んだ……
 
 
……?? ぉが……??? …意識を取り戻して顔を少し動かした瞬間に誰かと目があった気がした…………?そいつは、いきなり寝てる俺の胸のあたりに顔をうずめやがった。誰かと思ったけど、黄色いリボン付きカチューシャを見て気がついた…ハルヒじゃないか??いや、だがハルヒがどうして俺にすがりついてるんだ???
 
おい、誰か説明してくれ……
 
 
さて、ここで冒頭に戻るわけだが、ハルヒは何も語ってくれないからとにかく状況が全くつかめない。保健室にいるはずの先生はなぜか不在みたいで姿すら見えない。そもそも今何時だ? っと、ここからじゃ時計見えないな…
「なぁハルヒ、いま何時だ?」
「……」
いや、そんな難しい質問してないぞハルヒ……と思った瞬間に俺の後頭部あたりから少し痛みが走った!
「っつ…いててて…頭痛いな…」
自分の頭をなでなでしてみると……ああ、たんこぶが出来てるみたいだ。って事は前の机にぶつかったときに出来たんだろう。まぁ小さいから薬でも付けて置けば大丈夫だろう……って、あれ、ハルヒ!?!?いつのまに俺から離れて?
ハルヒの奴は俺を…心配そうに見てる。今日はじめてちゃんとハルヒの顔を見たような気がするな。と思ったらマシンガンのように質問してきた。
「キョン!ちょっと!大丈夫なの!? 救急車呼ぶ!? って人の話を聞いてるの?ちょっとこっちを見なさい!」
「あ、ああ。ちょっとコブになってるみたいだ。ま、心配いらないぞ。」
「ホント!!? でもキョン、あんた以前も頭打ってるんだから……そんなので大丈夫なの!?」
「ああ。」
頭打ったって、今回はお前が突き飛ばしたんだろうに……まぁそんな事はそっちのけにしてるトコ見ると、いつものハルヒに戻ったみたいだな。例の不機嫌オーラが消えて、勝手に心配してるモードになってるが……いや、でも何かいつもと違うな
何が違う??……と思ってハルヒの顔を見ていて気がついた。そうだ!ハルヒの奴、左ほほに絆創膏つけてるじゃないか????
「な、なぁハルヒ? その頬の絆創膏どうしたんだ?」
 
「え、え、ぇ、こ、これ…これは…その…」
「なあハルヒ、俺が何かしたんだっけか?これ大丈夫なのか?怪我でもしたのか?」
「………」
「なぁハルヒ…」
「違うわよ……って、ぜんぜん違う!!!!!怪我でもキョンが悪さしたんでもない!!!」
「へ?」
「その…に、ニキビが出来ちゃったのよ!! なによ、なんか悪い!?」
 
いや、悪くは無いが……というか、あの不機嫌オーラはニキビのせいなのか? おい、ハルヒ?
 
「だから……キョンにこの顔見せたくなかった……のに……」
 
 
……そうか、なるほど。いや、わかってしまえばこんなもんか……ニキビが原因か。そういえば妹もそんなので俺に顔を見せたくないって嫌がってたことあったし、ハルヒも女の子なんだな。こういうのを気にするんだ、うんうん、なるほど。
 
「な……なによ!!な、何が……そんなにおかしいのよ、キョン!」
ああ、どうやら俺は知らない間に笑顔になってたらしい。
「あ、いや、すまない。妹もニキビできたときに似たようなことあったから、つい可笑しくてな……」
「ふ…ふん!キョン、悪かったわね!!」
「いや、そのだな……妹の時も思ったんだが、女の子は可愛いもんだなって。」
「え?え?」
「いや、男だったらニキビできたくらいどうでもいいものだけど、ハルヒも妹も同じように何か一生分の不幸を背負った感じに焦るんだものな。」
「…う~」
アヒル口にして何か言いたそうなハルヒだが、超不機嫌オーラは完全に消えうせてるから、まぁこれでいいだろう。と思ったら急に心配そうな顔になったハルヒが聞いてきた。
「ねえ、キョン。」
「なんだ、ハルヒ。」
「あんた、怒ってないの?」
「ん?なんで俺が怒るんだ?」
「だって……あたし、キョンを突き飛ばして……またこの前みたいにベッド送りにしたのに……」
ベッド送りって……ああ、あの3日間の事か。ハルヒ、まだ気にしてたんだな。まぁ急に突き飛ばされたのはアレだが、そんなのはいつもの事だし、気にしてたらきり無いだろうさ。
「別に怒ってなんかないぞ。それより、お前がニキビ気にしてるのを気がつかずに悪かったよ。」
「……そう……」
うーむ、原因はわかっても万事解決とはいかず、やっぱりいつものハルヒらしくないな。これは話題を変えたほうがいいようだ。
 
「ところでハルヒ、そこの薬箱取ってくれないか?」
「え??え??」
少し放心状態にあったハルヒがきょろきょろしてる。なんかこんな朝比奈さんみたいなハルヒを見るのも珍しいもんだ。
「いや、ほら、俺、少しこぶが出来たみたいで……だから、ハルヒに薬を塗って欲しいんだ。頭の後ろだから塗りにくいし。」
「あ…うん、キョン、わかった。」
 
 
さて体を起こしたおかげで時計が見えるわけだが、いまは昼前、それも3限目が終わる頃か。じゃあ4現目には出れそうだな。
そう思ってると棚からハルヒが薬箱を持ってきた。
「ねえキョン、どれ塗ればいい? あんたわかる?」
「ん~よくわからんけど、化膿止めとか塗っておけばいいんじゃないか?」
「だから、それ、どれなのよ?」
「たぶんこれだろ、ハルヒ。ほらここ、効能にそう書いてある。」
「わかったわよ…」
上半身をベッドから起こした俺の後ろにまわったハルヒは、ベッドの枕に右足の片ひざをのせた……なんか綺麗な足というかふともも丸出しだ。なあハルヒ、俺も男なんだからさ、少しは隠せよ…
「ちょっと、キョン! どこ見てんのよ! ほら、向こう向いて!塗れないじゃない!」
「ああ、すまん。」
「このエロキョン!」
「しょうがないだろ。綺麗だから見とれたんだよ。お前も少しは隠せよ。」
「え?」
「ほら、向こう向いたぞ。さっさと頼む。」
「ふん、わかったわよ、キョン。この辺、赤くなってるわね……ここでいいの?」
「ああぁ、そこでいい……頼む。」
 
さてハルヒが俺の後頭部に薬塗ってる間に、俺は薬箱を引き寄せた。さてゴソゴソゴソっと……お、あったあった。
「さ、エロキョン、塗り終わったわよ。」
「悪かったな。じゃ、ハルヒ、こっち向けよ。」
「ちょっと、キョン、なにすんのよ?」
「ほら、これ、クレアラシル塗ってやるから、絆創膏取るぞ。」
「え?え?」
目をまるくして、動きを止めたハルヒの頭にそっと手をまわして引き寄せた。
「動くなよ、ハルヒ。」
「え?え?」
そっと絆創膏を取った……確かに頬のちょっと上あたりが赤くなってるな。じゃこれ、塗ってやるか。って、おい、
勘違いするなよ。俺だって恥ずかしいんだからな。でも妹がこうやって塗ってやると落ち着いて元戻るんだ。
それと同じことしてるだけだ。俺はいつものハルヒに戻って欲しいだけで、下心なしなんだぞ。
 
 
さて塗り塗りっと。しかし、妹もハルヒも…というか女の子って本当にほっぺたやわらかいんだな……ああ、違う違う。
そんな事考えちゃいかん。、っと、そして新しい絆創膏を取り出してハルヒを見たときに目があった。おいそんなうるうるした目で俺を見るなよ、ハルヒ。
「俺だって恥ずかしいんだ。だけどニキビ直したいんだろ?だから動くなよ…」
「……うん」
そうそう、おとなくしてろ、ハルヒ。動くなよ……絆創膏つけるまではな……ほら、できた。どれどれちゃんと貼れてるかな……とハルヒをのぞきこんだ。いや、妹にするときはこうやって確認してたから、ついそう動いてしまったんだ。
 
 
そう、このときにのぞきこまずに、すぐにハルヒから離れてればこの後の悲劇は起きなかったはずだった。
 
 
がらがらがら!! 唐突に保健室の扉が開いたと思ったら何人かわらわらと入ってきた。
「うい~っす。ほ、ほ、ほ、保健室♪~っと!うぉおぉお!!!!」
「谷口、ノックぐらいしなよ。キョンがびっくりしちゃうかもしれ…!!!」
「国木田くん、そこで立ち止まったら中に入れないのね。ちょっと、どいて……!!!」
扉には谷口、国木田、阪中が時間が止まったかのように俺たち二人を見て硬直して……
 
父さん。この状況を見ればおれがハルヒにキスしているように見えないこともないわけで…
 
「「「ご、ごゆっくり~~~~」」」
 
3人とも見事なくらいにハモったと思ったら、ものすごい勢いで出て行ってしまった。ああ~~~~これはいかん!
一方のハルヒは耳まで真っ赤な顔して俺を睨んでる。あ、まずい;;;;
「……あんたがこれ塗るって言ったんだからね!!ほら!キョン!さっさと起きて、授業行くわよ!!」
「あ、ああ」
「い、今なら4限目に間に合うわ!行くわよ!キョン!!」
「わ、ネクタイ引っ張るな、ハルヒ…」
顔を俺に向けずに俺を引きずるハルヒ……まぁいつものハルヒに戻ったようだからいいか、やれやれ。
 

  
さて、ここは放課後のいつもの部室だ。入ってみるとニヤニヤ顔の古泉と無表情な長門の二人がいた。まだハルヒは来てないみたいだな…と思ったら、さっそく古泉が近づいてきた。
「いや~、昨晩は久しぶりのバイトが入って大変でした。でも今朝になってすべて解消したのですが、何をされたんですか?」
「顔が近いぞ、古泉。というかお前の問題は解決したんだからそれでいいだろうよ。」
「おや、そうですか。でも噂では、保健室でいろいろ涼宮さんを説得されてたそうですが…」
「ちぇ、知っているならそれ以上聞くな。正直思い出したくないんだ。」
「そうですか、これは失礼しました。」
古泉のクラスまで話が広まってるのかよ……きっと谷口の仕業だな。あいつが話を10倍くらいにして噂を流してるに違いない。悪気があってやってるんじゃないんだろうが、何とかならんのか……と思ったところにドアが勢いよく開いた。
ハルヒか!? と思ったら違った。
 
「やっほ~~~、ハルにゃんいるかい?」
ああ、鶴屋さんはいつも元気で明るいな。
「こんにちわ、鶴屋さん。ハルヒはまだ来てないですよ。何かあいつに用ですか?」
「いや~用ってほどでもないんだけっどもね~。あ、そうそうキョンくんでもいいにょろ。」
「な、なんですか?」
そこで鶴屋さんの後ろからひょっこり小動物のように朝比奈さんが顔を出した。いつのまにそこに……あ、鶴屋さんと一緒に来たのか……と思ったら、いきなり爆弾発言を俺にぶつけてきた。
「あのぉぉぉ、涼宮さんがキョンくんを保健室に引っ張り込んでキスしてたって聞いたんですけど……本当ですかぁ??」
「へ!?!?!?!?」
上級生のクラスにはそんな風に伝わってるのか!?ちょっと待て!!どこで話が捻じ曲がってるんだ、おい!?
「おや、返事がないね。ということはホントなんだね。よかったよかった。でも授業をサボってあまりイチャイチャしちゃ駄目にょろ♪じゃね、キョンくん、みくる!」
「はい、鶴屋さん。また明日です♪」
勝手に納得した鶴屋さんは止めるまもなく去っていた。あの、俺は一言も答えてないんですけど……いや、これではいかん!このまま放置しておくとキスどころか保健室でライトノベルでは書けないようなイケナイ事しようとしてたことにされそうだ……。
こういう時は頼るのは一人しかいない…
 
「長門、お願いがあるんだが…」
「なに?」
他の奴にはわからないかもしれないが、不思議そうな顔してる。いや長門、おまえなら全部お見通しなんだろ?
「どうも俺とハルヒが保健室でしてた事が間違って伝わってるみたいだ。だから正しく伝わるようにして欲しい。」
「了解した。情報操作は得意。」
いや、さすがに長門は話が早い。そう思った俺は甘かった……
 
「あなたと涼宮ハルヒが保健室で抱き合ってた、と修正する。」
 
え、え、え、ちょ、ちょっと待て!!!いやそれは事実かもしれんが、いろんな意味で間違ってる!!やめろ、長門ぉぉぉぉ!!!!!! 
だが俺の叫びが長門に届く前に長門の一言ですべてが終わった orz
 
「修正、完了」
 

おまけ

691 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 00:56:49 ID:925fY9Fx
ニキビができちゃってキョンと顔を合わせられないハルヒ
 
692 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 01:09:09 ID:OG/zBw0X
>>691
そんなSSを今書いていたりするんですが……投下するかどうかは出来次第w

「さあ!キョン! >>691-692付近だと思うけど、何か電波を受信したから展開してみたわよ!」
「ちょいまて、ハルヒ。お前、これでまた北高内で変な噂流されてるんだぞ、いいのか?」
「ああ、SOS団がこれでメールがどっさどさくるわね……キョン!忙しくなるわよ!」
ああ、いつもの事だが聞いちゃいないな。
「あと>>692! あんたは別の電波を受信したみたいだから、さっさと展開するのよ!! この上のSSより出来のいいの出さなかった死刑だからね! いいわね! じゃ、あとはキョンに任せたわよ!!」
 
言いたいことだけ言って部室からハルヒの奴、出て行きやがった。やれやれ……皆聞いてくれ、団長命令だ。
>>692に限らず、いいSSがあれば俺はいつでもまってるさ。なに急かす気はない、じっくり推敲して投下してくれればいい。どーせハルヒはさっき言ったこと忘れてるはずだからな……じゃあな。