ハルキョン×ユキ (42-475)

Last-modified: 2007-03-21 (水) 01:38:28

概要

作品名作者発表日保管日
ハルキョン×ユキ42-475氏07/03/1007/03/11

作品

私には理解できないものが多い。
その筆頭が涼宮ハルヒとキョンと呼ばれる人間。
長いとはいえない私の稼働時間でも私の態度は人を遠ざけるということを知っている。
現に古泉一樹、朝比奈みくる両名は同じSOS団所属であるものの距離を置いている。
これはそれぞれの所属組織の違いによるものとは一概に言えない。
今までクラスメイトという立場で話しかけてくる人間は何人か存在したが、その内いなくなった。
常に本を読んでいる私を不気味に思ったのか、私の反応が悪かったのか、それはわからない。

 

キョンと呼ばれる人間、便宜上キョンと呼ぶ。キョンはなし崩し的に私を信じた。
何度かの事件を通じ信頼関係が結ばれていると判断する。
キョンは私を恐れない。私が害のない存在だと認識している。それ以外の感情は不明。
恋愛感情なのか、父性から来る保護すべきという感情なのか、判別できない。
ただ、彼と共にいる時には私は安定している。安心?理解できない。
彼は私といるとき同じ感情を抱いているだろうか。不安?理解できない。

 

もう一人の理解できない人間、涼宮ハルヒ。
涼宮ハルヒも私を恐れない。理由はわからない。
涼宮ハルヒは私に構う。理由はわからない。
そもそも何故私と共にいるのか。活動場所が欲しいなら私は必要なかったはず。
活動する上で涼宮ハルヒの求める人材に私は合致していなかった。私は必要なかったはず。
涼宮ハルヒが宇宙人・未来人・超能力者を必要としていたならば涼宮ハルヒにはもっと身近な人材がいた。
朝倉涼子。涼宮ハルヒとは同級生。涼宮ハルヒ並みの外見と身体能力を持ち、交友関係も広い。
活動を始めるというならば朝倉涼子のほうが適していた。
朝倉涼子が暴走したのは結果論。
朝倉涼子がもっと涼宮ハルヒに近い位置、つまり私の場所にいたならば違う手段をとっていただろう。
なぜ涼宮ハルヒは私を選んだのだろうか。
私は涼宮ハルヒを消失させてしまったというのに。
私のことを知らないのに涼宮ハルヒは私に近づく。理解できない。

 

「ん?何、有希」
いつの間にか涼宮ハルヒを見ていた。いつの間にかなんて私にはありえない。理由はある。
「別に」
本に視線を戻す。涼宮ハルヒは観察対象。ただそれだけ。
「変なの。あ!そうだ。コンピ研はどう?ヘンな事されてない?なんかあったらすぐ言うのよ。ギッタンギッタンにしてやるから」
涼宮ハルヒは私を心配している。団長としての責任なのか、個人としての意思なのか。判別できない。
「なにもない」
「ならいいけど。まああいつらも見る目はあるみたいね。なにせ有希はあたしが選んだ部員だもんね」
「何故…私を」
質問してしまった。私は何を期待しているのかわからない。
「なぜって…うーん。運命かしら」
「運命」
「そ。なんかね、有希を一目見たとき、「この娘とならやっていける」って思ったの。それだけ」
理由なんてなかった。でもある意味もっとも涼宮ハルヒらしい答え。
「あとは、笑わせたいなって思ったのよ」
私が笑うなんてありえない。
「キョンと会ってSOS団を作ろうって思ったとき、あたし久々に笑ったの。世界はまだ閉じてないって」
確かに涼宮ハルヒは長い間笑っていなかった。
「まあそっちの作戦はキョンに一歩リードされてるみたいだけど、絶対キョンより早く有希を笑わせるんだから」
そう言って涼宮ハルヒは笑った。きっとキョンが好きな笑顔。
「笑顔ってね、結構元気になるの。ほらやってみなさい。イーッって口をこう…」
涼宮ハルヒは本気で思っている。私のことを仲間だと。
私はキョンがいればいいと思ってしまった。あまつさえ障害となる涼宮ハルヒを遠ざけた。
涼宮ハルヒは違う。皆いて欲しいと、幸せであって欲しいと願っている。
涼宮ハルヒも一度皆を消している。キョンと二人きりであることを望んだ。
でも帰ってきてからは変わった。だから私も変わろう。
「いー…」
涼宮ハルヒは驚いたようだ。なにせ私も驚いているのだから。でも涼宮ハルヒは笑った。
「うん!やっぱりいいじゃない。まだまだぎこちないけどね、練習しましょ。キョンを驚かしてやるんだから」
理解できない。けれどキョンの笑顔も、涼宮ハルヒの笑顔も、失いたくないと思った。
私は誓う。この場所を守ることを。あなたが笑っていられるように。あなたと笑いあえる日の為に。

 

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