ハルツキ (40-622)

Last-modified: 2007-02-22 (木) 00:51:09

概要

作品名作者発表日保管日
ハルツキ40-622氏07/02/2007/02/20

作品

2人がキスをしていた。
こんなにも心が痛いとは思わなかった。

 

魅力的な女性だとは思っていた。
眉目秀麗、文武両道、スタイルも良く、性格はややエキセントリックな部分はあるものの聡明な方だ。
その明るさは他人を引っ張る。自分のような傍観者気取りの評論家ではついていくのが精一杯。

 

今にして思えば惹かれるのも自明の理。
そして彼女が僕を顧みないのも自明の理。

 

例えるならば月と太陽。
彼女はあまりにも眩しかった。だから彼女の目には入らない。
僕は彼女が現れている間は目立たない、目立つことを許されない。
だから僕は彼女のいない夜にだけ輝ける。彼女の目に触れないところで。
しかしそれすら彼女の輝きを拝借しているに過ぎない。
彼女という輝きがなければ僕は………ただの人間だ。
なんと言う矛盾。
彼女の望むモノであるというのに彼女に知られてはいけないなんて。
ここにくるまでこんなことを考えたことなどなかったのに。
この一年が、僕を変えてしまった。

 

名前にツキという言葉があるのは運命なのか皮肉なのか。

 

楽しかった。
彼女のそばで厄介なことに巻き込まれることが。
楽しかった。
彼女の為に様々なイベントを企画・実行することが。
楽しかった。
彼女のあの眩しい笑顔を見れたことが。
悲しかった。
その笑顔が僕に向けられていなかったことが。

 

彼はそのことを当然のように受け取り、相変わらずの態度をとり続ける。
何度自問したかわからない疑問が浮かぶ。
「何故彼なのか」
わかっている。答えは「理由などない」だ。
彼女に選ばれたから彼はここにいる。ただそれだけ。
言ってみれば彼だって被害者かもしれない。有無を言わさずここにつれてこられたのだから。
でもだったらなぜ、僕ではなかったのか。
僕なら彼女の望みをきっと叶えていただろうに。
僕ならもっと満足させてあげられただろうに。
僕ならあんな嫉妬なんていう彼女らしくない感情なんて抱かせはしないのに。
僕ならもっと笑わせてあげられるのに。
だからこそ、僕は選ばれなかった。そう自答する。

 

僕の想いなど関係なく、彼女は彼に笑いかける。あの極上の笑顔を。僕を魅了してやまないあの笑顔を。
だから僕は傍観者気取りの評論家になろう。彼女のそばにいるために。
だから彼の近くにいよう。彼女の笑顔を少しでも間近に見るために。
彼のことが嫌悪しているわけではない。むしろ好感を持っている。
だけど少しくらいは嫌がらせに似た憂さ晴らしをさせてもらおう。

 

彼女が笑っていてくれることは彼女の為であり、世界の為でもある。
だから彼を焚きつける。彼と共にあることを彼女は望んでいるから。
そんな欺瞞で自分を騙す。
さあ、いつもの仮面を身につけよう。
ここにいるのは謎の転校生、古泉一樹。役職は副団長。裏の顔は超能力者。
今日も僕は彼女を見る。真正面からは見たりしない。月には太陽は眩しすぎるから。
もう一度2人を見る。
長いキス。彼女は艶やかでなんとも言えず魅力的だった。

 

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