ハルヒと別れてから…… (95-346)

Last-modified: 2008-08-06 (水) 15:38:31

概要

作品名作者発表日保管日
ハルヒと別れてから……95-346氏08/08/0508/08/05

作品

俺ことキョンと、涼宮ハルヒが別れてから、長い時間が過ぎた。
どこにでも転がっているような理由だった。俺の無理解と不寛容が、致命的な結果を生んでいた。
いつも俺が、ハルヒの面倒を見て、フォローしているように思っていたが
どれだけハルヒが俺を支え、見つめてくれていたか、気がついていなかった。
いや、本当は分かっていたんだ。だが俺は一向に素直になれず、ハルヒにひどいことを言ってしまった……
いちばん大事な女性ハルヒにかけるべき優しさが、言葉があったんじゃないだろうか。
長門や朝比奈さんに気を配るあまり、ハルヒをないがしろにしていなかったか。
一日一回以上「愛してる」と言ってあげれば良かった。
少しでも髪型を変えたらかわいいと言うべきだった。
デートのためにしつらえた服を褒めるべきだった。
朝比奈さんをいやらしい目で見るんじゃなかった。
長門とアイコンタクトを交わしまくるんじゃなかった。
手を繋ぐのに照れたりしないで、自分からカワイイ彼女の手を取る積極性を持つべきだった。
「キスしてほしい」という雰囲気を敏感に察して、優しく情熱的にキスするべきだった。
たまにはロマンチックな雰囲気で、ドキドキに酔わせてあげればよかった。
募り募った末の爆発だったのだろう。
俺は俺自身のせいで、ハルヒを喪失した。
耐え難い痛みが、風になって胸を吹き抜ける。
俺はハルヒなしでは生きていけないんだ!
――いつか、もう一度涼宮ハルヒに逢えるなら――
愛してるよハルヒ。
俺は、一生愛してる。結婚しようと言って、
最高のキスをして、ハルヒをメロメロにしてやるんだ。
(完)
※※※※※※※※※※※※※※
「……あのーハルヒさん?」
なによキョン。苦虫噛みつぶしながら、肩をすくめて、随分器用じゃない。
「この実名入り小説はナンですか?」
なによ、その変な敬語は?ぜったい敬意がこもってないわね……
これは次の文芸部機関誌の原稿よ。なかなかの名文でしょ?
自分の過ちで、最高の恋人に振られてしまう男性の悲劇を書いたの。
「……あれは、俺が悪かったと言ってるじゃないか……」
別に、もーおこってなーいーよ――(棒読み)
「ほら怒ってるじゃないか……どうすれば許してくれるんだ」
許すとか許さないとかじゃなく、普段からどうしたらいいのかはそこに書いてあるじゃない。
「うう……愛してると毎日言うのか……髪や服はたしかに俺がニブくてすまん……が、手を繋ぐとか、キスとか、ドキドキ?とか、お前もっとしたかったのか?」
そういうのがニブチンだって言ってるでしょ!
あたしだけを見て、さりげなく優しくしつつ、情熱を抑えきれないアンタが暴走気味……なんてのも欲しいの!
……なによ。そんな顔して、そんな真剣な……
「……率直に暴走でいいなら、俺は本気で、おまえを好きだから、最後の三行を実行するぞ?
俺は、なにがあっても、ハルヒを喪失しないと決めているんだ」
「――――(一行目)」
やややや、ちょっとキョンをからかうために書いた小説モドキがなんてこと。
(こないだのケンカを根に持ってたのは否定しないけど)
「――――(二行目)」
キョンがたまーに見せる本気の表情。
こんなに真剣に告白されたら、あたし――
「――――(三行目)」
キョン――メロメロを通り越してとろとろにされてしまった――あたしも愛してる、キョン。
こんなの小説に出来ない。ううんしたくない。
あたしとキョンの物語に、エンドマークなんて付けたくないのだ。