ハルヒと親父 外伝 ー 写真の日(111-286)

Last-modified: 2016-11-15 (火) 15:43:51

概要

作品名作者発表日保管日
ハルヒと親父 外伝 ー 写真の日111-286氏09/06/0109/06/01

 

作品

ハル母「お父さん、こんなのが出てきました」
オヤジ「写真か。あんまり得意じゃないから、何枚も残ってないんだが。ほう、ちっこいハルヒだ」
ハル母「ビデオはたくさんあるんですけどね」
オヤジ「俺もあいつも、じっとしてられないタイプだからな」
ハル母「そうですねえ」
オヤジ「だが、こいつはよく撮れてる」
ハル母「そうなんです」
オヤジ「何故だろう?」
ハル母「ふふ、何故でしょう?」
オヤジ「降参だ。母さん、おしえてくれ」
ハル母「見て分からない? この写真のハル」
オヤジ「うん」
ハル母「目をつぶっているわ」
オヤジ「そうだな」
ハル母「で、口を閉じてるでしょ」
オヤジ「珍しいこともあるもんだ」
ハル母「ちょっと唇を突き出して、ね」
オヤジ「!なるほど。ヤフオクに出したら30万は下らないな」
ハル母「お父さん」
オヤジ「冗談だ。キョンの奴なら、倍出しても買うだろう」
ハル母「それは、どうかしら?」
オヤジ「そうだな。サイフはすでに握られていると見ていいからな。だがハルヒには効くぞ、この写真」
ハル母「わたしが持っておいた方がいいみたいですね」
オヤジ「そうしてくれ。これを撮った後のことを思い出した。殺されるかと思ったぞ」
ハル母「ハルも本気でしたからね」
オヤジ「ちょっとした冗談だったのにな」
ハル母「あの年頃の女の子には、ちょっとあれは」
オヤジ「あの頃は素直だったなあ」
ハル母「この時以来、すっかりバカ親父呼ばわりですものね」
オヤジ「信じていた者に裏切られると、人間変わるもんだ」
ハル母「お父さんが裏切ったんですよ。あの頃のハルはお父さんが大好きだったのに」
オヤジ「やれやれ。にがい記憶がよみがえっちまった。キョンには一応教えとくか。……お、キョンか? 俺だ、親父だ。もしハルヒとこっぴどくケンカしてな、なんとかして謝りたいと思ったら、いいもの持ってるから連絡しろ。ああ、切り札だ。ハルヒのファースト・キスの写真だよ。未遂だけどな。どうやって撮ったか? 言わせるな」
ハル母「『ハルヒ、お父さんとキスしようか』って言ったのよね」
オヤジ「な、何を怒ってんだ、キョン。相手は3歳児だぞ。……ああ、切りやがった」
ハル母「キョン君、怒ってた?」
オヤジ「うん。母さん、俺って極悪非道か?」
ハル母「時々、そう思うこともありますね」
オヤジ「やっていい冗談とわるい冗談の違いが分かれば、今頃、大司教ぐらいにはなってるぞ」
ハル母「分かった時は遅いことが多いんですよ」
オヤジ「人生の縮図だな。今度はもっと縮尺の大きいのにしよう」
ハル母「この写真、引き延ばして、居間に飾りましょうか?」
オヤジ「母さんって、ときどき悪意抜きでひどいこと言わないか?」
ハル母「そうかしら?」
オヤジ「一度、みんなで一緒に撮るか。今なら、シャッターを切る間ぐらい、じっとしていられるだろう。……バカ娘も、バカ親父も」
ハル母「そうねえ。……お父さん、覚えてませんか? 映画の『細雪』だったと思うんだけど」
オヤジ「ん?市川崑のやつか?」
ハル母「ええ。最後に4人姉妹の長女がね、『みんな、良(え)えようになったら、ええなぁ』って言うの。いま、そんな気持ちよ」
オヤジ「そういう写真になればいいがな」
ハル母「楽しみね」
 

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