ヒーロー志願 (119-400)

Last-modified: 2009-11-05 (木) 01:39:41

概要

作品名作者発表日保管日
ヒーロー志願119-400氏09/10/2009/10/24

 
なんだかスレの流れでヒーロー物が出てきてたので、並行して書いてる物の中にあったのを出してみる
これがシンクロニシティという物か・コメディ寄りな話・いきすぎたオリ設定ダメな人は読まない方がいいと思う

作品

「涼宮ハルヒが原因」
はあ、またですか。俺は唐突かつ規定事項さながらの長門のセリフを聞き、とりあえずやれやれと首を竦めてみた。
「で、今回は何をすればいいんだ。いや先に何があったと聞くべきか」
窓際の定位置で本を膝に載せた長門は、ゆっくりと立ち上がり自らのカバンへと近づく。カバンの中から見慣れぬ機械を取り出し、俺の前に差し出す。何だこれ。
「バックル」
俺が知るバックルと言えばベルトに付いてる物しかないのだが、これはあまりにもでかすぎやしないか。
俺は何の気なしに腰の辺りにそのバックルとやらを当ててみた。すると突然バックルから帯状の物が生成されそれはたちどころにベルトとなり俺の腰に鎮座した。
「イニシャライズ完了」
「あー、すまんが長門。これは何なんだ」
長門はその手にプレート状の物を持ち、俺のベルトに手を伸ばす。バックル部が左右に開き中からスロットが飛び出す。
手に持ったプレートをスロットに差し込み、長門はスロットを押し込んだ。…なんだか変な音楽が流れ出す。
「これは新種のカセットテープか?はたまたMDの進化形なのか」
「キーワードは変身」
俺の質問は無視らしい。それに変身って、もしかしてこれはヒーロー物の変身ベルトなのか。
「おねがい、言って」
長門にお願いって言われるとはな、しかしこの歳で変身ごっこはないだろう。いやそんな目で見るなよ、わかったよ長門。
「へ、変身」
長門がバックルをいじくり、開かれた部分を閉じる。するとバックルを中心にまばゆい光が俺を包み、光が収まったところで俺はヒーローらしき格好のものに変身していた。マジで変身するのかよ、おもちゃじゃないのか。
「聞こえる?」
多分被っているヘルメットだと思うんだが、その中に長門の声が響く。ああ、聞こえるぞ。
「わたしがあなたのサポートをする。涼宮ハルヒがあるTV番組を見た影響で発生した悪の秘密組織の壊滅、これがあなたの役目」
長門、俺帰ってもいいかな。窓ガラスに俺と思われる珍妙な姿をした男が見える。ハルヒに見つかったらヤバイよな、これ。
まあ、ヤバイよなとか思ってると大体手遅れだったりするんだけどな。ほら、こんな風にさ。
「やっほーい、みんな待っ」
大口開けて登場したハルヒは、セリフの途中で固まっている。ふう、俺はこれからどうするべきなのか。
「窓から飛び降りて」
言うより早く、長門は俺の手を掴み窓から外へ放り投げた。ゴミくずか俺は、というか殺す気か長門。
「スーツを装着しているのでへいき、50メートルの高さから落ちても無傷でいられる、ただし51メートルからだと死亡する」
物理法則とかそういうのはガン無視みたいだな。まあ、俺は怪我もなく地面に立っているし問題は無いか。
いや、死ぬとか普通に言うな長門。俺がこれから何をしなくちゃならんのかはともかく、色々な限界とかは先に言ってくれよ。
「あんた、何者よ。今からそこ行くから動くんじゃないわよ」
窓から飛び出さんばかりの勢いでハルヒが吼える。すまん、言われておとなしくしている程バカじゃない。さらばだ。
「気をつけて、お出まし」
気をつけるべきはハルヒだろう。いったい何がお出ましなんだ。と、ぶつくさ言っていると、目の前を横切る怪しい影。
「えと…何だこれ」
「おでん怪人、あなたが倒すべき敵。見た目と違っておいしくないので食べるのは推奨しない」
見た目も不味そうなんだが、その言い方だと食った事あるみたいだな長門。あ、おでん怪人がこっち向きやがった、俺を見るな。
「貴様、何者だ」
やべー、ロックオンされた。通りすがりとか言うわけにもいかんし、長門、どうすりゃいいんだ。
「闘って、あなたならできる」
できるか。と、反論すると長門の説明が、俺の頭の中に無理矢理押し込まれた。
 
・敵の正体は情報生命体の亜種。通常の攻撃はほぼ無効。
・情報連結解除コードが仕込まれている必殺キックが俺の武器。
・怪人は全部で23体。ボスクラスが4体。
・7日間で組織を壊滅させないと世界がピンチ。
 
頭、痛てえ。で、こんな説明を受けてる間に俺はどうしているかと言うと、体が勝手に闘っていた。
「戦闘用プログラムによりあなたへの負担はない、はじめてでも安心」
いや、無茶苦茶勝手に暴れてて俺の体もう壊れそうなんですけど。これ、後が凄く怖いんですけど。
「それは考慮していなかった。うかつ」
溜息をついたところで、おでん怪人の繰り出すパンチをしゃがんで避け、その手を取り俺はジャンプした。
そして空中で一本背負いの様におでん怪人を投げ飛ばす。すごい勢いで地面に叩き付けられ動けないおでん怪人。
「今。必殺キックのチャンス」
またもや物理法則を無視して空中から怪人を眺めている俺は、唐突にキックのポーズを取ると一直線に怪人の下へ落ちていった。
ドップラー効果を伴った俺の悲鳴と共にな。
 
「おつかれさま。おでん怪人は情報生命体素子に分解され、無害な物となった。再結合される事はない」
なんで、おでんなんだよ。おでんの能力を持った怪人とか作った奴はバカだろ、どう考えても。
「コンビニ店員になりすまし、からし満載おでんを混入する作戦に必要だったと推測される」
そうですか。変身ヒーロー物でも微妙にコメディ臭い感じだな。つか、おでんがコンビニの制服着るとか脚本家出てこいって感じだな。
しかし、怪人に気を取られていた俺は、肝心な事を忘れていた。そう涼宮ハルヒが俺を追ってきていた事を、だ。
「すっごい。何これ、あんたもあの変なおでんもいったい何者なの。もしかしてあんた変身ヒーローなの」
大興奮で見ていたらしい。機関銃の様にまくし立て、俺に迫ってくるハルヒ。やれやれ、どうごまかしたものか。
「いけない。またお出まし」
またかよ、7日間しかないとは言え随分巻きが入ってないか。さて今度は何怪人なんだ。
おでん怪人が倒れた場所を見ると、そこには全身にお面をぶら下げた変な奴がいた。
「おお、わが盟友おでん怪人よ。お前の無念は俺様が晴らしてやるぞ」
盟友とか言ってるけど、お前らつい最近に湧いて出たんじゃないのか。変な設定に凝るんじゃないよ、まったく。
それにおでんの次はお面かよ。何の駄洒落なんだこれは、というか洒落になってないし笑えない。
「あー、そこのお嬢さん。いろんな意味でこいつはヤバイので離れてなさい」
あれ、俺の声と違うな。ってハルヒに俺の声で話しかけるわけにいかんからか、ボイスチェンジャー的な処理がされてるのか。
「うるさいわね。離れたら見えないじゃないの」
やれやれ、とりあえずお面怪人の相手でもするか。
 
お面怪人は、ぶら下げたお面を全部剥ぎ取ったら動かなくなったのでキックで終了。手抜きの様だが、別にかまわんよな。
「おつかれさま。すぐに逃げて、涼宮ハルヒに捕まるととても危険」
ああ、言われんでもそうさせてもらう。体中痛いしもう帰りたい。
「お嬢さん、怪我はないかな。自分は色々忙しいのでこれで失礼する、さらばだ」
誰だよこれって感じのセリフを吐いて、俺はジャンプで校舎を飛び越えてハルヒから逃げ出した。
「待ちなさーい。逃げるなんて卑怯者のする事よ」
まあ、好きなように言ってくれ。さて長門、変身解除はどうやるんだこれは。
「バックル部を開放して、スロットからプレートを取り出せば解除される。現在地周辺に人の反応は無い、解除して問題ない」
なるほど、それじゃ解除っと。弾ける様に俺が着ていたスーツは光の粒子になって消えた。途端に俺を襲う疲労感と痛み。
「いててて。なんだかえらいことになっちまったな」
「ちょっとキョン。あんたこの辺で怪しいヒーローを見なかった」
うおぃ、長門よ。問題ありありじゃねーか。もう少しでハルヒに見つかる所だったんじゃないのか。
「あー、お前のセリフの方が十分怪しいが、俺は何も見ていないぞ」
ハルヒは俺の言葉に不満があるのか、ぶつぶつと言いながら部室へ戻っていった。さて、俺も戻るかね。体痛いけど。
部室の前に長門がぽつんと立っている。どうした長門?
「あなたの疲労状態及びダメージを受けている部位の治療をする」
「おお、それは助かる。頼むよ」
長門はすすっと俺に近づき、俺の首に手を回して俺に抱きついた。えっと…治療なんだよな。
「治療用ナノマシンを注入する。あなたの体内に常駐して体調を管理する」
長門は説明しながら俺の首に歯を突き立てた。痛みよりもぞくっとする何ともいえぬ感触に俺は震えるしか出来なかった。
長門は何も無かったかの様に俺から離れ、部室へと姿を消した。俺はといえばバクバクいう心臓をなだめるのに必死だったんだが。
2分ほどして部室に入ると、長門を問い詰めているハルヒがいた。
 
「おいおい、長門が何をしたっていうんだハルヒよ」
「さっきの変なヒーローの事よ。なんで最初ここに居たのか、有希が何か知ってるんじゃないかと思って」
ま、そりゃそうだな。あんなのが部室に居れば、何か理由があるかと思うのが普通だ。
「怪人を探してここに来たと言っていた、その後中庭近辺に怪人の姿を見て窓から飛び降りていった」
「そう、有希も何も知らないのね。…そうだ次の不思議探索はあの謎のヒーローを追いましょう」
やめてくれ。俺はお前に追いかけられるのなんて御免だ。長門はそ知らぬ顔で定位置で本を読んでいる。お前も止めてくれよ。
「そうと決まれば情報収集ね。あたしはこれから学校内と周辺の聞き込みをするから、みんなは勝手に帰って頂戴」
言うが早いか団長殿はカバンを掴んで飛び出していった。やれやれ。
 
その後現れた古泉と俺、長門の3人は今後の対策を協議する事となった。
「いやあ、変身ヒーローですか。僕も子供の頃は憧れたものですよ、もっとも僕は光の巨人派でしたけど」
お前は普段から赤い光になってるだろ。変な巨人もいるし言う事無しじゃないか。
「さしずめ俺はバッタ型改造人間か、ジャンプ力凄いしキックが必殺技だしな」
「あなたの場合は、昭和型でなく平成型。改造人間ではなく特殊スーツによる強化タイプ。ただしストーリー展開はどちらかと言えば昭和寄り。そこにさまざまな特撮ストーリーがミックスされているのが今回の特徴」
長門…おまえ結構詳しいのか。って、お前の持ってる本、なんとか超全集ってそれはヒーロー物の特集本か。
「光の巨人派とはいえ、僕も出来ることなら変身したいですね。子供の頃の憧れが実現できるなんてあなたが羨ましいですよ」
いや、やりたきゃおまえがやってくれていいんだぞ。俺は一向に構わん、むしろ代わってくれ」
「それは出来ない。最初に変身ベルトのイニシャライズをした者以外が装着すれば死ぬ」
俺と古泉は沈黙した。変身できないじゃなくて死ぬのかよ。怖いっつーの。
それから古泉側の機関に、怪人捜索やその他諸々のバックアップをしてくれるとの約束を取り付け、長門も最大限バックアップをしてくれると約束してくれた。後は俺次第ってのはいつもの事なんだが、はぁ、誰か俺に安らぎを下さい。
俺が天に祈っていると、唐突に古泉の携帯が鳴りだした。なんだ、閉鎖空間か?
「駅前公園に怪人が現れたとの連絡です。セミ怪人が子供達に天ぷらを無理矢理食べさせてるそうです」
早速、機関側からの連絡だ。仕事速いね、お前の所は。
「いそいで。天ぷらの食べすぎで子供達が太ってしまう」
長門、お前はまずよだれを拭け。天ぷら食べたいのか。突っ込みもそこそこに、俺はバックルを手に学校を飛び出す。
全速で坂を駆け下り、公園に到着する。見渡してみるとセミの着ぐるみが子供達に天ぷらを振舞ってる。子供達の親も一緒にだ。
これなんて実演販売だ、そのうち天ぷら粉を取り出して売り始めるんじゃないのか。
「はぁ、やれやれ。長門、いくぜ」
俺は気持ちポーズを取ってベルトを装着する、途端にバックルから長門の通信が入った。通信機にもなるのかこれ。
「気をつけて」
あんがとよ、長門。俺は息を吸いベルトを操作した。やるしかないならたとえコメディでもやってやるぜ。
変身の掛け声と共に俺はセミ怪人に向かって走り出していた。
 
ヒーロー志願 第1話 「変身」 おしまい
 
次回予告
順調に怪人を倒していた俺の目の前に現れる、謎の黒い影。
「おまえ…もしかして?」
美しき刺客を目の前に俺の心が動揺する。
「あいつを倒すなんて、俺に出来るかよっ」
そして長門から伝えられる衝撃の事実
「それでもやらなければならない、それがあなたの使命」
 
次回 ヒーロー志願 第2話 「登場」
まったく、やれやれだぜ。