リレー「キョンの家でシャワーを借りたハルヒ」(111-740)

Last-modified: 2009-06-14 (日) 03:52:51

概要

作品名作者発表日保管日
リレー「キョンの家でシャワーを借りたハルヒ」111-740氏、741氏、743氏、744氏、751氏、792氏、794氏、828氏、834氏、864氏、873氏、931氏、932氏09/06/1009/06/14

お題・スレの流れ (740氏、741氏)

帰り道でいきなり豪雨に降られて急ごうとしたら思いきり転んでしまうハルヒ
近くのキョン家でシャワーを借りる

 

そのまま濡れたままでは風邪を引いてしまう!
はやく風呂に、いやその前に服を脱げ!

作品 (743氏、744氏、748(743)氏、751氏、792氏、794氏、828氏、834氏、864氏、873氏、931氏、932氏)

 家族の留守中、女子を家に連れ込みシャワーを浴びてもらう、なんてのは学生青春ドラマ的で、俺だってそういうリア充生活を夢に見なかったかと言うと嘘になる。
 俺は現在その夢を実現させているわけなのだが…………
「キョンー!」
 おっと、シャワー中のハルヒ様がお呼びだ。何だ。
「着替え貸しなさいよ!」
「……あ、あぁ」
 着替えねぇ……着替え、ね……。
 ふむ。
 
 
 [き、禁則事項ですぅ! えっちなのはいけないと思います!]
 
 
「ちょっとキョン! はやくしなさいよ!」
 ……は! いかんいかん。妄想のなかの『俺のワイシャツを素肌に直接着用し、かつ俺の下着を着用したハルヒ』の姿が離れねぇ!
「あ、あぁすまん。ちょっと待っていてくれ。今すぐ取って来る」
 
 着替えを置いて、脱衣所から離れようとした俺を団長様の怒鳴り声が引き止めた。
「ちょっとキョン!! なによこれ!!」
 なにって……俺のワイシャツとパンツだが。
 ってぇ! おい! なんでそんなもん渡してんだよ、俺!
「そ、そう…………あんた……こういうのが好きなのね」
 いや、その…………まぁ嫌いではないな。
 なんだその目は。悪かったな。でもな、裸ワイシャツは男のロマンなんだぞ──てなことを言ってしまったらさすがに撲殺されてしまう。
「さすがに母親や妹のものを拝借するのは憚られるんでな。あ、パンツは一度も使ってないぞ。パッケージすら開けてもいない。新品未開封ってやつだ。安心してくれ」
「そういう問題じゃないわよ! なんであんたなんかのパンツ履かなきゃならないのよ!」
「嫌なら履かなくてもいいぞ」

 

「え?いや、穿かないなんて・・・」
「じゃあ、穿くのか?」
どうするハルヒ?
・・・・・・
 
今リビングには俺のワイシャツを着たハルヒが居る。その下は俺の・・・・
慌てて首を振る。いかんいかん。夢のようなシチュエーションだが油断は禁物。
過去の経験上どんでん返しは当たり前って言ってよいだろう。ここは一つ・・・・
 
「ねえ?キョン?」
「へえ?な、なんだハルヒ?」
うわ、やばい。結構至近距離だ。シャワーで上気したハルヒがやけに・・・やけに・・
 
「今日、家族誰もいないの?」
「あ、あああ」
どきん、どきんする。俺は何か着たいしているのか?
よせよ、相手はハルヒだぜ?はははは
 
「もう、遅いね?」
なんの問いかけだ?遅いとどうなんだ?」
「電車ももうないかも?」
 
「ああ・・」
いや、本当はある。でも何で俺はこんな返事をしたんだろう?」
 
「ねえ?キョン?」
さっきも聞いた問いかけだな。なんだ?
「どこか部屋空いている?」
俺の心臓は既に張り裂けんばかりに激動している。これって?

 

「それにしても……」
 今度はなんだ。
「なんか、暑くない? キョン……」
 そ、そうだな。ちょっと暑い、かな。じゃあ窓開けるか。
「バカじゃないの? 外は豪雨なのよ?」
 そ、そうか、そうだよなー。あははははは……
「……ねぇ、このパンツ、脱いだらちょっとは涼しくなるかしら?」

 

なっ、それはまさか、『俺のワイシャツを素肌に直接着用し』のみ、すなわち裸ワイシャツが現実のものになるということか!?
 しかも家に二人きりのこの状況で!?
「・・・・・・キョン?」
どうする、どうするよ俺!?

 

「結局キョン家に泊まったね・・・」
「ああ・・・」
誤解の無いよう言っておくが、昨夜の俺たちに間違いはない。
乾燥機の下着と浴室乾燥機に吊っていたセーラ服を身に着けたハルヒと
慌しく出立する。
 
ハルヒの寝ていた客間に行かなかった俺が臆病なのか?
俺の部屋に来なかったあいつが臆病なのか?
多分前者だろう。
でもな、こんなときめきを何回してもいいじゃないか。
今日も家族は帰ってこない。
自転車の荷台のこいつに声を掛ける。
 
「今晩もう一晩泊まらないか?」

 

「……今夜、だけ?」
 ん? なんだ? ちょっと聞き取りにくかったんだが。
「な、なんでもないわ! 忘れなさい!」
「で、どうすんだ?」
「あんたが泊まれってんなら、泊まってあげなくもないわ」
 そうか。じゃあまずはお前の家に行って着替え取って────
「その必要は無いわ」
 でもいろいろ準備しないとならないものがあるだろ。寄り道していいか?
「そうね、夕飯の材料も買わないとならないし」
 そうじゃねぇだろ。まったくこいつは。今夜どんな姿で俺ん家で過ごすつもりなんだ。あと誰だ「婚約指輪とかな」って言ってるやつは! んなもんコンビニに売ってるわけないだろう。
 
 スーパーで夕飯の材料を買い込み、ハルヒの替えの下着を買おうと思ったのだが、なんというタイミングだ。
 下着売り場に足を踏み入れた瞬間、店内が停電。どうやら落雷の影響でこの地域一帯が停電してしまったようだ。
 店は急遽閉店となり、近くの店も停電の影響で店を閉めてしまったし、どしゃぶりになってきたので仕方なく我が家へ。
 ふたりともずぶ濡れだ。腹が減っているが、まずはシャワーを浴びなければ。
 
 先にハルヒにシャワーを浴びてもらい、次に俺がシャワーを浴びた。脱衣所から出ると美味しそうな香りがしたので、台所に行くとそこには────あぁ、勘の良い人はおわかりだろう。そう、ハルヒはその麗しい素肌に、エプロンのみを身に纏っていたのだった。
 
 
 先ほどしたハルヒとの会話を思い出す。
 
 ──そういえばお前、替えの下着どうすんだ?
 ──下着なんて着けなくても死なないわよ!
 
 
 ……お前はそうかもしれないが、こっちは死にそうだぞ、いろいろな意味でな。

 

素肌にエプロンで台所に立つハルヒ。
ああ、最高に反則だ。これにぐらつかない男はいないだろう。
 
ところで皆さんご存知だろうか?
一生にうち数度だけ女性と仲良くなるために、都合の良いシーンが連続で訪れる奇跡的な現象がある事を。
 
「あ、キョン君。お母さんがね。用事が続くのでまだ帰れないってさ」
我が妹だ。家族は親戚の用事で遠出している。何故か妹も付いて行っているので学校の授業大丈夫なのか心配になる。
加えて停電を伴う大豪雨・・・
あははは、どこの神様だ。こんな状況作ったのは?こいつか?
 
若い男女が一つ屋根の下、邪魔をする存在と言えばシャミセンだけだが、猫まっしぐらっで簡単に懐柔させている。つまり障害はなし。
 
 
「さあ、出来たわ!キョン。頂きましょう」
俺の意味の無いプロローグの間にもハルヒは着実に料理をこなしていた。
レバニラ炒めとガーリックライス。しじみ汁は良く分からないが、ある特定の用途としか考えられないメニューだ。もちろん喜んで頂くつもりだ。
 
さてハルヒとの夕食だが、そこはハルヒの事。いつもらしい食欲で大皿のレバニラ炒めをすごい勢いで片付けている。俺も負けじと欲望を食欲へと全変換させておりがつがつと平らげていく。
・・・・・・・・
 
 
 
「・・・・・食った」
「ええ・・・・・・」
身体も暖まり、おなかも一杯だ。
食欲に廻した欲望を回収し、ハルヒに目線を向ける。
もちろんまだ裸エプロンだ。
うっすらと肌が桜色に変化しており、何か待っているようにもじもじしている。
 
どんなに強靭な東レの炭素繊維でも、たった一本では物の役にも立たないだろう。
俺は糸が切れる音を聞く・・・
 
 
「ハルヒ」

 

「キョン……」
「ハルヒ、俺……」
 絡み合う視線。
 コチコチコチコチ……秒針の音がやけに大きく響く。おかしいだろう。外はあんなに雨が降っているというのに、この部屋はまるで別世界のようだ。
 俺は何かを言おうとし、しかし何を言ったらいいのかわからず……情けない。
 静寂を破ったのはハルヒの方だった。いや、もしかしたらこいつも沈黙にな耐えられなかったのかもしれない。
「あ、お、お皿、洗うわね」
「お、おう」
 
 は! いかん!
 
 そう、皿を洗うってことは、まぁその……。形の良い、丸いふたつのモノがえーとその……、すまん! もう勘弁してくれ!
 
「何ブツブツ言ってんのよ、キョン」
 はぁはぁ。あまりの悶絶に呼吸困難になるところだった。
「も、もう終わったのか」
「二人分だもの」
 そうか……。って、おおおおおおい!
 洗った食器を濯ぐ時に跳ねたであろう水分が、ハルヒのスレンダーなくせに出ているところは出ている身体の、そのふたつの膨らみ似張り付いている。
「あ、濡れちゃったわ」
 そう言ってハルヒは胸元に張り付いたエプロンをつまみ、パタパタと仰いでいる。おいおい、チラチラこっち見るのはやめろ。上目遣いすんじゃねぇ。「暑いわねー」って言いながら髪の毛を束ねる仕草はやめろ! それだけはやめてくれ!

 

びっしょりと濡れたエプロンがハルヒに張り付く。
最早、布で出来たハルヒと言っても過言でないほど、そのスタイルのいいラインがぴったりと吸い付いている。
た、堪りません。・・・・俺。
 
しかし俺の言動は俺の意思に反していた。
「ハルヒ。濡れているじゃないか。この寝巻きでも着ていろよ」
「・・・・・・・」
 
ハルヒが俯いて振るえだした。
「・・・・・」
「ん?何か言ったか?ハルヒ」
「・・・・・・帰る」
 
 
 
羞恥と悔しさを滲ました顔で、俺の横をすり抜けていくハルヒ。
俺は慌てて追いかける。訳が分からん。
「おい、待てよ。何で怒っているんだよ?」
「付いて来るなバカキョン!!」
凄い音を立てて脱衣所の扉を閉めたハルヒ。俺はしたたかに鼻を打つ。
 
・・・痛て・・・・・   ・・・・どこが? ・・・鼻か? ・・・・俺の心か・・・
 
 
 
 
頭に冷静さが戻る。するとSOS団の顔が脳裏に浮かんできた。
 
 
まずは古泉
 「本当に分からないのですか?涼宮さんの心が・・・・彼女はあなたの事を・・・いや何でもありません。バイトがあるので失礼します。」
 すまん。古泉。今頃気づいた
 
次は朝比奈さん
 「もうキョン君。涼宮さんに謝って下さい。すぐに!酷すぎます! でないと、私・・・・私・・・・・・困ります・・・・」
 可愛い!!
 
最後は長門
 「・・・・あなたは鈍感。全ての女性があなたに泣く。私も泣いた」
 何て言ったらよいのやら分かりません。
 
 
 
 
目が覚めたよ。みんな。俺はもう迷わない。俺の気持ちをハルヒに伝える!
扉を強引に開け、中に進む。そこには全裸のハルヒが居た。
 
「キョン・・・・・」

 

 そういえば古泉はハルヒのことを神だとかなんとか言ってたが、ありゃ本当なんだと思う。
 こんなに美人でスタイルが良い女は、女神としか言い様がないからだ。
 
 生まれたままの姿のハルヒと向き合う。
 たった数秒のはずなのに異様に長い時間が流れているような気がする。喉が異様に乾く。白い肌、細いくせに、緩やかに描かれる膨らみと窪みのラインに息を飲む。
 俺もすべてを曝け出さなければ。この気持ちも全部────そうだ、この一歩を踏み出さなければ。女のこいつがこれだけサインを出しているのだ。ここで躊躇するのは男としてあまりにも情けないではないか。
 
「ハルヒ、俺……!」
「キョン! 鼻血! 鼻血出てるわよ!」
 ……へ?
 
 
 
 
 ……情けない。
 俺は今、リビングのソファに仰向けになっている。
「止まった?」
 俺のシャツを素肌に羽織ったハルヒが覗き込んでいる。開けた胸元から瑞々しい素肌が覗く。ついでにナニかも見えてしまいそうだ。
 俺の視線を感じたのか、ハルヒは胸元を両手で隠して睨んできた。
「な、なにニヤニヤしてるのよ、エロキョン!」
 あー、先ほどの光景をありありと思い出そうとしていただけだ。……とは言えるはずもなく、俺は黙って起き上がった。
「大丈夫なの?」
 返事のかわりに、ハルヒの両肩を掴む。
「ハルヒ……」

 

 
 
「ハルヒ・・・・・・よく聞け」
俺はハルヒの両肩を掴みながら、ハルヒを引き寄せる。
「キョン・・・」
素直に俺の胸に飛び込んでくるハルヒを優しく抱きしめる。
 
「ハルヒ。お前は知らないだろうが、俺はお前が好きだ。この数日間の同棲生活楽しかったさ」
「え、ええ」
「多分このまま俺たちは所謂男女の仲になるのも時間の問題だろう」
「そ、そうね・・」
「でもな、このまま進むのはちょっと待ちたいと思うんだ・・・」
「・・・・・・・・嫌なの?」
 
俺の胸に居るハルヒが緊張で身を固めだしているのが分かる。
ハルヒを悲しい気持ちにさせるのは、本意ではない。悲しい気持ちにさせる必要なんて無いんだ。
 
 
 
「ハルヒ。勘違いするなよ。俺はお前が好きだ。だが、お前が作ったSOS団。これも大切にしていきたいと思っている」
 
「SOS団?」
そうだ。不思議探しのへんてこサークル。その活動が実を結ぶことはないが、どの団体よりも結束の固い気持ちのよい仲間たちさ。
「高校も後二年。朝比奈さんの事を考えると後一年だ。」
「そうね。一年ね」
ハルヒが顔を上げる。涙が流れる5秒前ってところで止まっていた。
 
 
「俺たちの事だ。普通のカップルになるとお互い夢中になるに違いない」
「ふふ、確かに夢中になりそうね」
「ああ、となるとSOS団はどうなる?」
「手が回らなくなるかも・・・」
「ああ。で考えた暫く俺たちは恋人宣言保留って事にしないか?」
「保留ね・・・・」
「いいのか?」
「仕方ないわね。でもねあたしはSOS団長でもあるの、組織の維持発展はあたしのつとめ。了承するわ!」
やっと笑ってくれたようだ。
 
「しかし・・・・手付け金は貰うぜ」
いつぞやのキスのように俺はハルヒにキスをした。

 

「……ん」
 柔らかく甘い感触をもっと感じたくて、唇を押しつけたまま抱きしめる。
 唇だけではなく、身体もこんなに柔らかいとは。思わずいろいろなところを触ってしまいそうになる。……すまん、嘘ついた。触りました。えー、髪の毛とか背中とか腕とか腰とか色々……。
「……ふ…………う……ん」
 名残惜しいが、ハルヒが妙な声を出し始めたので唇を離す。これ以上は俺も我慢出来る自信がない。
 腕のなかを覗き込むと、潤んだ瞳が俺を見上げており、それを見ていたら自然に言わなければならない言葉が口から出ていた。
「結婚しよう」
 一瞬、瞳が大きく見開かれ、次の瞬間には今まで見たことのない晴れやかな微笑み。
「恋人保留じゃなかったの?」
 確かに恋人保留宣言はしたさ。だが、あくまで恋人保留だ。俺が言っているのは夫婦にならないかってことだ。
「……順序が逆よ、キョン」
 そうか。スマン。
「なんで謝るのよ」
 お前こそ、なんで泣くんだよ。
「嬉しいからよ。そうね、夫婦になればいいのよ。SOS団と学業との両立は大変かもしれないけど、やりがいがあるわ」
 お前ならそう言うと思ってたよ。
「でもね……本当は……さっき、恋人保留って言われて、ちょっと傷付いたの。だから嬉しくて……」
 もう一度、キスするから許してくれ。今度のは誓いのキスだ。俺は一生お前と一緒に居る。お前のことを愛し続ける。
 「あたしも」と頷くハルヒに口づける。さっきしたのよりも、もっと長く、もっと深く────
 
 
「誓いのキス、しちゃった……」
 そうだな。
「あたしたち、夫婦になるのよね?」
 あぁ。
「ふうん……」
 唇を人差し指でなぞるハルヒ。濡れた唇と細い指。妖艶な笑みにゴクリ、と喉が鳴る。
「……ねぇ、お詫びはさっきのキスだけ?」
 そして両腕が俺の頭の後ろに回され…………
 あぁ、また鼻血が出そうだ。今度こそ出血多量でくたばっちまう。
 だが、好きな女を抱きながら死ねるなんて、男冥利に尽きるってもんだ。
「エロキョン! 腹上死なんて絶対許さないわ!」
 そういう意味じゃねぇ!
 
 それからの俺たちは、ある意味放送コードに引っかかるため、詳細は省かせて頂く……いや、誤摩化すなって? すまん、これだけは俺たち夫婦の秘密だ。勘弁してくれ。
 
 
 
 
 (……本当に鼻血が出ちまって何も出来なかったなんて言えるかよ!)