上のほうで出てた花火ネタかいてみた (12-447)

Last-modified: 2007-02-08 (木) 22:09:12

概要

作品名作者発表日保管日(初代)
上のほうで出てた花火ネタかいてみた447氏(12スレ目)06/07/3006/08/10

作品

7月もそろそろ終わり、夏休み本番を迎えようとしたある土曜日の夕方
俺の携帯がなった。着信名を見る前に誰からかわかっちまう俺は病気か?
『涼宮ハルヒ』
予想通りだ。そろそろ何かしでかすころだと思ってたよ。

 

「何のようだ?」
「あんた今暇でしょ?」
「なんでそんな事がわかるんだ」
「今から花火大会に行くから準備しなさい、もうすぐそこまで来てるから」

 

俺が何か反論しようとしたとき『ピンポーン』と聞きなれたチャイム。

 

「もうついたわよ、早く降りてきなさい」

 

おいおい、いつになく張り切りすぎじゃないのか。まだ電話がつながったままだぞ。

 

「いいから早く、30秒で降りてこないと罰金だからね!!」

 

あいかわらず無茶を言うやつだ、結局いつも通り罰金じゃないか。

 

玄関のドアを開けた俺、思わず絶句。
俺が見たもの、涼宮ハルヒに間違いはなさそうだ。ただしいつも見慣れたハルヒじゃなく
浴衣を着ていた。これはまぁいい、だが髪型がいつもと違う。

 

『頑張ってポニーテールにしてみました』

 

ていう感じの髪だ、何時ぞや教室で1度だけ見たアレ。

 

「キョン、似合ってる?」

 

俺が見とれてると勘違いしたのか、ハルヒがニヤつきながら俺の顔を下から覗き込む。

 

「そうだな、まぁいいんじゃないか」

 

俺はそっけなく返事をした。でも実際にとても似合っていた。
黙って歩いていれば間違いなくナンパされるんじゃないか?
ハルヒは喋りさえしなければ相当いい女なんだ。俺じゃなくてもこれは誰もが認めるだろうよ。
 

 

ハルヒはあいかわらず俺の顔を見てなにやらニヤついていたがそれも飽きたのか
俺の手をつかんで元気に歩き出した。何も手をつかまなくても俺は逃げやしないぞ。

 

今日のハルヒははっきりいって反則だ、年に数回見るか見ないかの浴衣だけでも
魅力度が上がるのにそれにプラスしてポニーテールと来た。正直言おう、今日の
ハルヒは普段より5割り増しできれいだ。浴衣の後姿と歩くたびにもうしわけ程度に
ゆれる頑張って結んだであろうポニーテール。
誰か俺に冷静になれるアドバイスをくれ、直接俺の頭の中にテレパシーでもいいからおくってこい。

 

そんなことを考えながらハルヒに引っ張られて歩いているうちに俺はようやく気づいた。

 

「ハルヒ、今日は俺とお前だけなのか? ほかの奴らはどうした?」

 

歩みを止めないでハルヒはいう

 

「みんな電話に出ないのよ、留守電になったり圏外なの。みんな団員としての自覚が足りないわね
あとでしっかりいっとくわ。だから今日はあんたと2人よ」

 

そういってはいるもののまるで怒っている様子はない。おまえ俺が電話に出ないなんてときには
怒り狂うんじゃなかったっけ? なんでほかのみんなには甘いんだ。

 

ハルヒにせかされるように歩いたせいか、いつの間にか会場についていたようだ。
まぁそんなに遠い場所じゃないし川原の河川敷だしな。

 

「ねぇキョン、いろいろな露天があるわ。せっかくだから見て回りましょ」

 

花火開始まではまだ時間があった、それに今日のハルヒに逆らえる自信は今の俺にはない。
まるで子供のようにはしゃぐハルヒ。たこ焼きに焼きそばにバナナチョコあいかわらずよく食うね
ああ俺がおごるんだったな、すっかり忘れてた。
その後も金魚すくい、ボンボンつり、射的などなんでも器用にこなすハルヒらしくとても
楽しんでいたようだ。つうかその笑顔をさクラスメイトの前でも見せたらどうだ? 
そうすりゃおまえはたちまちクラスで人気者になれるだろうに。団員の前限定じゃ勿体ないぜ。

 

 

花火開始の時間が近づいてきた。そろそろ場所取りをなんて考えていると
またハルヒに手をつかまれた。

 

「花火が始まるじゃないか、今からどこに行くつもりだ?」
「いいから黙ってついてきて」

 

そういうとハルヒはまた元気に歩き出す、あいかわらずされるがままの俺。
もう好きにしてくれよ。言葉に出さず心の中でつぶやいた。

 

しかしどこに行こうというのか、どんどん川原からは遠ざかっていく。
心配になっている俺に気づいたのかハルヒは話しかけてきた。

 

「この先にね小高い丘があるのよ、そこからみる花火はすごくきれいだと思うの」

 

この辺にそんな所あったっけ? 考えるまもなくそれらしい場所に着いた。
丘というより山の登山道の途中にある休憩所みたいなところ。この場所からだと
前方が開けて川原が一面に見渡せるそんな所だった。

 

「いい場所でしょ、わざわざ昨日下見にきたんだから」

 

目の前に得意満面な笑みを浮かべたハルヒの顔がある。薄暗い中でもはっきり
わかるぐらいいい笑顔が。

 

「そうだな、こんないい場所じゃみんなと一緒にこれなかったのが残念だ」

 

俺の言葉を聞いたハルヒは一瞬表情が曇ったように見えたがすぐに元に戻り
俺の隣のベンチに座る。

 

『ヒュルルルル~~ バーン』
花火が始まった。色とりどりの模様だの形容しがたい形をした花火なんかもあって
結構新鮮な気持ちだ。ふと隣にいるハルヒを見てみる。
花火が打ちあがるたびにハルヒの白い顔が色に染まる、赤、緑、黄色…
俺が見ているなんて気づいていないハルヒは、花火が上がるたびに喜色満面
な様子で時折嬉しそうに女の子らしい声を出していた。

 

 

そんな様子をしばし見とれてた俺、ふいに言葉が出る。

 

「きれいだな…」

 

「え?」といった表情でハルヒが振り向いた。
当然のように目と目が合って見つめあうかたちに。

 

「…………」
「…………」

 

「いや、ほら花火がさ。俺も花火見るの久しぶりだから」
「……」

 

「ええとだな…」
「そうね、すごくきれい。あたしも花火見るの久しぶりだし」

 

そういうとハルヒはまた正面を向いて花火を見ている。

 

なんだか気まずい雰囲気だな。気づけばいつの間にか花火も終わっていた。

 

「…………」
「花火も終わったし、帰りましょ」

 

いつものハルヒだ、特に怒っている様子はない。

 

帰り道、何も会話がなくどことなく空気が重い。ハルヒは俺の1メートル前を歩いている。
まずいな、まさか閉鎖空間は作らないだろうが、このまま帰すのは恐い気がする…

 

「キョンあたしね、あんな近くで花火見たの小学校以来だったの。だから今日はほんとに楽しかったわ」

 

沈黙を破るようにハルヒが話し出す、笑顔だがまだ控えめな感じだ。
そういえばハルヒの中学時代は友達と遊ぶなんてこともなかったんだろう。
今日の花火大会をとても楽しみにしていたであろうことは、今日のハルヒの行動を見ていれば
誰だってわかる。なんか悪いことしちまったかな。俺はめずらしく反省していた。

 

 

「ハルヒ、あのさ…」

 

ハルヒがキョトンとした目で俺を見る、いやそんな目で見られても困るんだが。

 

「まぁうまくいえないんだが、今日は誘ってくれてありがとな。俺もお前と花火が見れて楽しかったぜ」
「それに今日のお前はとても…」

 

といっているのに気づいた俺はあわてて口をつぐむ。
ハルヒの表情が見る見る変わっていく、ああこっちが恐くなるぐらいいい笑顔にな。

 

「今日のあたしは何だって? ちゃんといってみなさい!」

 

ええ恐いですよハルヒさん、そんな至近距離から100ワットの笑顔で見つめないでくれ。
なんでも自白しちまいそうだ。

 

結局ハルヒは上機嫌で帰っていった。
俺はというと…
「やれやれ」もうかんべんしてくれ。

 

fin