二人は暮らし始めました(111-754)

Last-modified: 2009-06-14 (日) 03:45:25

概要

作品名作者発表日保管日
二人は暮らし始めました111-790氏09/06/1109/06/14

 

二人は暮らし始めました 1日目 (790氏)

 その朝、ハルヒは目覚めると、真っ先に俺の首にかじりつかんばかりに飛びついてきた。
「キョン! あんた、今の、見た?」
「何をだ?」
「夢よ、夢! 見てないの?」
「ああ、俺もさっき起きたが、夢は見てないな」
「そう。……よかった」
「大丈夫か。怖い目にでもあったのか?」
「ううん。……顔、洗ってくる!」
 
「何、見たんだ、ハルヒ?」
「え?」
「今朝、飛び起きた時だ。夢、見たんだろ?」
「ああ、あれ。……なんでもないわ」
「朝の様子じゃ、なんでもないことはなかったぞ。悪いが見えちまった」
「な、なに見たのよ」
「涙。おまえ、泣いてたろ?」
「……」
「拭うな、今は大丈夫だ。それで、顔を洗いに飛び出てったんだろ?」
「あたしとあんたの夢は、ときどきシンクロするから……だから、念のため、聞いたのよ」
「だから、どんな夢だって?」
「気分の悪い夢。聞いたら絶対、気分を害するわ」
「そうか。俺は今、気分を害したい気分なんだ」
「……夢ん中で、あたし、別の男に抱かれてた」
「!」
「気付いたら!……あんたと似ても似つかない奴で、ひっぱたいたら目が覚めた」
「……ハルヒ、あのな」
「夢よ!夢! あたしだって見ようと思って見たんじゃないし! だいたい見たいと思う時に限って、あんた出てこないし! それに……」
「それって、気付く前は、俺が抱いてたってことになるぞ」
「あっ……わ、悪い?」
「わるくなんか……ない」(だが、朝からちょっと持てあます)

二人は暮らし始めました 2日目 (799)

「夢、見たわ」
「そうか。今日のは、あんまり大変そうでなくてよかったな」
「というより、昔あった出来事を思い出したのよ」
「そうか」
「キョン、あんた、修学旅行で2日目に泊まった旅館、覚えてる?」
「あー、はっきり覚えてないが、廊下でおまえに会ったよな、確か」
「そう。消灯時間後にね」
「部屋を出るとき、なんか冷やかされた気がするな、そういえば」
「あんた、あんな時間に何してたのよ?」
「いや、単にのどが乾いて、飲み物を買いにだな。……おまえの分も、ちゃんと買っただろ?」
「余計なことだけ覚えてるのね。あんた、あたしとどこで会ったか覚えてない?」
「だから、廊下だろ」
「生徒は泊まってない階のね」
「生徒には買い食いさせたくない教師の親心だ。どこの修学旅行もそんなもんだろ」
「確かに生徒が泊まっている階には、自動販売機はひとつも無かったわね。あっても電源が抜かれてたわ」
「よく覚えてるな」
「というか、忘れられないことがあってね」
「なんだよ?」
「本当に覚えてないようね。『明るい家族計画』って知ってる?」
「避妊具の自動販売機だよな。……あ」
「そう。どういう訳か、その階のその廊下にだけあったのよね」
「……思い出した」
「みたいね」
「その自販機の前で鉢合わせしたな」
「鉢合わせ、ね」
「おまえのセリフは確かこうだ。『あんた、こんな時間にこんなとこで何してるのよ!』。でかい声だったな」
「否定はしないわ」
「問題はその後だ。『あんた、まさか忘れてきたの?』。おまえの声に部屋から飛び出してきた教師が固まってたぞ」
「ちがうわよ。『すまん、忘れてた』って、あんたがいきなり謝ったの。それで教師は石になったのよ。あれ、どういう意味だったの? 未だに分かんないわ」
「いや、それは、なんだ……なんだろうな?」
「その自販機のところに正座させた教師のセンスもわかんないけどね」
「ところでハルヒ」
「何よ?」
「おまえこそ、あんな時間に何してたんだ?」
「お、大きなお世話よ!」

二人は暮らし始めました 3日目 (808)

「う~ん。ハルヒ、今日は夢見なかったのか?」
「夢見てんのは、キョン、今のあんたよ! あああ、時間がない。タクシー呼ぶから、その間に顔洗って着替えて!」
「いくらなんでも、そりゃ無理だろ。……今日、なんかあったっけ?」
「あんたとしゃべってると日が暮れるわ! 結婚式でしょ、結婚式!」
「ええ、もう? 暮らしてまだ3日目だぞ!」
「結婚してから、一緒に暮らす人も大勢いるの! じゃなくて! どういう訳か、あんたも呼ばれてんでしょ!」
「そうだった。あああ、寝過ごした!」
「そんなの、あんた以外はみんな、先刻承知よ!」
「ハルヒ、おれの靴下がみんな、おまえの下着に変わっちまってるぞ!」
「衣類も1人分が2人分になったんだから、入れる場所が変わったって何度も説明したでしょ!」
「見たことのない下着がある」
「そ、それは勝負下着よ!」
「何と勝負するんだ?また誰と?」
「……あ、あんたとに決まってるでしょ」
「……何の勝負だ?」
「……決まってるでしょ……」
「……」
「だから! 口を閉じたら、手を動かしなさい!!」
「……いや、勝敗はすでに決してると思うぞ」
「そこから、離れなさい! 一刻も早く!!」
「おれのに、あんなヒラヒラは付いてない」
「全然ちがーう! 勝負下着ってのはね、下着を勝負するんじゃないの!」
「わかってるさ。中身で勝負だよな」
「あんた、中身って……」
「え、おれ、なんか変なこと言ったか?」
「って、ちがうのよ!いそぐのよ! その話は、帰ったらゆっくりしてあげるから、とにかく急ぎなさい!」
「帰ったらって、……話、だけか?」
「……この、エロキョン。……って、ことやってる場合じゃないのよ!」
「あー、ハルヒ。急いでるのはよーく分かったから、……おまえも早く服を着てくれ。目に毒だ」

二人は暮らし始めました 4日目 (806氏、817氏)

そういやハルヒってネットサーフィンで何調べてるんだろ
検索履歴とか訪問履歴とかもetc・・・

 

(では>>806にreplyして)
 
「ハルヒ、いつもネットで何見てるんだ?」
「内緒」
「おいおい。『一緒に暮らす以上お互い隠し事はなし』っていったのは、おまえだぞ。といっても、俺の方は、すでに隠すような余地は何もないわけだが。『あたしと住むんだから、この手のものは必要ないわね』って随分捨てられたし(谷口すまんな)。で、今は何見てるんだ?」
「プライバシー」
「けんもほろろ、かよ。んなこと言われると、余計に見たくなるんだよ。えーい、実力行使!」
「あー、後悔するわよ」
「誰だ、このマヌケ面? って、俺かよ! というか、ライブカメラな現在の俺かよ! どこで撮ってるんだ?」
「そんなの、アングルでわかるでしょ」
「って、パソコンのディスプレイのすぐ上に乗ってるじゃないか。なんで、気付かなかった、おれ?」
「灯台下暗しってとこね」
「いや、まて。高校時代もか。部室でも、おまえ……」
「ふっ。ご想像にお任せするわ」
「い、インターネットの意味ねー」
「ふんっ、誰かさんの、MIKURUフォルダーよりは、ましよ」
「……なあ、ハルヒ」
「な、なによ?」
「ちゃんと付き合う前とか、付き合い出してからも他の団員の手前、ってとこまでは、おれにも理解できるぞ。でもな、今は、おれたち二人で暮らしてるんだ。そんなもの介さず、直接おまえの目で俺を見てくれ。その方が俺だってうれしいぞ」
「わ、わかったわよ。でも、今の言葉、二言はないでしょうね」
「もちろんだ」
「……あたしだって、普通にネットサーフィンするときだってあるし、ネットオークションで『不思議なもの』を入手したりしたわ。まあ、ほとんど『はずれ』だったけどね。webカメラは他の団員が用意してくれたの。みんなには、あたしがあんたを見てる事なんて、百も承知だったしね。結局、あんただけ、最後まで気付かなかった。……そういう『前科』があんのよ、あんたには」
「う、その、すまん」
「パソコンのウインドウにいつもあんたが映ってるだけで、どんなうっとうしい日も、いくらか気が晴れたわ。でもそのせいで、ちゃんとあんたを見るのが、おろそかになるんなら、確かに本末転倒よね。じゃあ、いくわよ、キョン!」
「お、おう」
「(じぃーーーー)」
「……ハルヒ、すまん。テクニカル・タイム・アウトをくれ」
「何よ、自分からかっこいい事、言っておいて」
「おまえは涼宮ハルヒだからわからんかもしれんがな、涼宮ハルヒに至近距離から見つめられるってのは、ちょっとした極限体験だぞ」
「なによ、それ?」
「素人には危険だ。息をするのを忘れる」
「なによ、あんたなんかキョンだから分からないんでしょうけど、あんたにじっと見られると副交感神経が刺激されて顔面特有の神経血管反射が起こって血管が拡張して……」
「いや、もういい。おまえの顔見てたら、何が起こってるか、俺にもわかる」
「……顔が……真っ赤になるんだからね……」