今日は、SOS団の花見である。 (42-601)

Last-modified: 2007-03-11 (日) 23:35:05

概要

作品名作者発表日保管日
今日は、SOS団の花見である。42-601氏07/03/1107/03/11

作品

今日は、SOS団の花見である。
桜は満開。場所は花見の名所の公園。ちなみに今日は土曜。
絶好の花見日和であり、学校は休日だった訳なのだが――
団長がまだ来ていない。何があったのか。
俺と朝比奈さんと長門と古泉は、既に公園入り口へ集合済だ。

 

公園の中は、多数の花見客で賑わっている。…あるかな、空きスペース。
そう、「公園」といっても、狭い公園などではない。この辺り一体で随一の、桜の名所である。
我らが団長様は、突然昨日になって、ここで花見を行おうと言い出した次第なのだ。

 

…それにしても遅いなハルヒの奴。遅刻かよ。
「あ、涼宮さんからです。」古泉の携帯へ着信?ハルヒから?
何故俺じゃない?…っと、それはどうでもいいか。

 

「…はい、そうですか。では、お花見は明日改めていう事にしましょう。ええ、みんなもう揃ってます。
連絡でしたら問題ありません。では、また改めて明日。失礼します。」
おいどうした古泉。ハルヒは欠席か?
「はい。そのようですよ。」そう言うと古泉は、思いっきり怪しいニヤケ面を俺へ向けた。
何だその顔は。ただでさえお前の顔は怪しさ満載なんだよ。
それに顔が近い!言いたいことがあるなら早く言え!
「花見は、これから涼宮さん抜きで始めることにしましょう。あ、明日改めて再花見は行います。
ただし、今日がこの混雑ですから、明日は集合時間を大幅に繰り上げた方がいいでしょうね。
涼宮さんには、僕の方から後でそう言っておきます。皆さん、以上はよろしいですか?」
おい、何でお前が仕切ってるんだよ?
「僕はこれでも一応SOS団副団長ですから。」

 

ま、まあ確かにそうだが…
その後古泉は、まず朝比奈さんとヒソヒソ話を始めた。うなずく朝比奈さん。
それから古泉は、長門ともヒソヒソ話を始めた。うなずく長門。
「では、始めますか。本年度第1回SOS団春の花見。
団長の涼宮さんが不在ですが、そこは副団長である僕が進めるということで。
じゃあ朝比奈さん、よろしくお願いします。」
「はい。」
ん?ん?何だ何だ?何が始まるというのだ?そもそも第1回って何だ?第2回第3回があるというのか?
あ、そうか、さっき「再花見をやる」って言ってたな。でもそもそも何で勝手に決まってるんだよ。
「待って。」
長門が、朝比奈さんへ何かを言いたい様子だ。長門が朝比奈さんへリクエスト…これは珍しい。
何を言い出すんだ?そして長門と朝比奈さんは、二人で密談を始めた。何だ何だ?
長門なら普通、ここで言いたいことがあるなら堂々と言うものだが。物理的な音量こそ小さいけどな。
おい長門――
と言った俺の前には、無言で長門の手が差し出されていた。長門は既に俺の正面を向いている。
「握って。」お、おう…
「これから私達は、朝比奈みくるの力を借りて時間遡行を行う。」
な、何!花見の場所が取れそうにないからって、そこまでするのかよ!「目を閉じて。」
長門の言葉は、例によって何がしかの超常的な事件が起きた時の、一方的なセリフだ。
…解ったよ、ああそうする。そうしないといけない訳なのかよ。
「じゃあ朝比奈さん、僕はこちらの手をお借りします。」古泉の声も聞こえた。
そして。
いつか感じたタイム・リープの感覚。

 

「もう大丈夫です。」朝比奈さんの言葉で目を開ける。
辺りは、まだ暗かった。夜明け前…朝比奈さん、ここは、「いつ」なんですか?
「一年前に来ちゃいました。」朝比奈さんが、そう説明する。
よく見ると、桜の咲き具合が違っている。
「正確に言えば、同じ時刻ではない。今はまだ未明。」
長門の補足を聞いた後で、ようやく理解できてきた。
例え日時は同じだったとしても、年によって桜の咲き具合は違う。
そりゃ暖冬だとかいろいろあるとかな。
そういえば今年は例年より桜の開花は早めだったかも知れない。
だから今年の満開の時から一年遡るとまだ満開じゃないっていうのは
まったくもってもっともな話だ。
ん?そもそも今俺達は一年ほど時間を遡った訳なんだから
「今年」とか「一年前」って説明も変な訳なのだが。

 

そんなこんなないきさつで、俺達SOS団の花見は、ハルヒ抜きで、始まっちまった訳だ。
しかも一年ばかり時間を遡ってるってんだから、全くもって毎度の事ながら驚きだよ。
しかも今は未明。周囲に他の花見客はなし。騒ぎ放題…なのかも知れない。
いや待てよ。客観的に見れば今現在の俺達というものは、
まごうことなき魑魅魍魎の類と言っても過言ではないかも知れんな…
「ささ、どうぞ。」おう、古泉…って、これ酒だろ!
「もう長門さんは召し上がってますが。」そういう問題じゃない!
そう言われて長門の方を見ると…「この瓶と同内容の情報複写を続ける限り、問題は皆無。」
って何一升瓶(未開封)見てるんだよ!!
そうだ朝比奈さんは…!!
朝比奈さんはアルコール耐性がなかったはず(※原作版「孤島」より)!
「問題ない。」そうなのか長門?
「文化祭の際映画撮影時に朝比奈みくるの体内に注入した(※原作版「溜息」より)
ナノマシンがまだ体内に残留しているのを検知。アルコール分解機能を遠隔で追加。」
じゃ、じゃあいい、と言っていいのか…?

 

かような魑魅魍魎としか見えない俺達の花見は…何と俺の予想外の盛り上りを見せたのだった!
会話の内容はそれぞれの所属先の「禁則」に及ぶところもあるので、詳しくは言えないのだが、
やはりこいつらも時空を離れての宴会となると、
色々とこいつらなりに言いたい事があったと言うべきか。…長門はセリフこそないが。

 

もう朝だな。ちょっと休憩するか。
しばし連中から離れ、近くの通り道へ出てみることにした。
俺たちのいる場所から少し離れた場所にある、斜面の上にある通り道である。

 

……
満開にはほんの少し早い桜を見上げる。
俺達が花見をしているのは斜面の下側にあたる。緩い斜面を登りつつ、上側へふと目を向ける。
桜は、上の通り道沿いに並木になっている。
道は南北へ伸びているようだ。そして俺の正面には、日の出間もない太陽。天気は晴れ。
そういえばお天道様ってこんなにまぶしかったんだっけ?なんて思いつつ、
目を逸らすついでに西側へ振り向く。
草が生い茂る、今まで登ってきた短い斜面先には
朝比奈さんや長門や古泉が、相変わらず宴会を続けている。
このお天道様の光、ついさっきまで自分があの中にいたのがウソのようだ。
おい、俺の仲間の魑魅魍魎たち、朝だぜ。
そんなすがすがしい朝の光を満喫しつつ斜面を登っている中、俺はふと見てしまったのであった。

 

この、まだ夜明けは肌寒い季節にも関わらず、上が長袖トレーナーであるのに対して、下はブルマ。
そんな素晴らしい格好の女を。
髪は長く、ポニーテールで、
朝日にも青空にも興味無さそうな目線で、口はむっつりとしたへの字口で上の通り道を歩いている。
「おい!」
俺は、その女へ思わず声を掛けていた。理由は解らない。理由なんてどうでもいい。
間違いない。一年前のハルヒだ。

 

俺は斜面を登りきり、ハルヒが歩く通りへ出る。
ばりっ、という音がした。着ているジャケットが木の枝に引っかかった音のようだ。
どうやら破れたか。…でもここでそんな理由で引っ込めないよな。

 

「…あんた、誰?」しまった。こいつがポニーテールってことは…今日は何曜日だっけ?
そういえば何かの話で聞いたな。未来の人間が過去の人間と会うとロクな事にならないとか…
いや待て。じゃあ朝比奈さんという存在の根本はどうなる?だから大丈夫だよな?俺…
「俺が解らないのか?」
「アホじゃないの?あんた。」
一年前のハルヒと俺との間には、…会話が成立しなかった。
考えてみればそうか。俺がこいつと会話を始めてたのは…
過去に「ジョン・スミス」として会話をしたのは除こう。あれは時空を跨いでた訳だし、
(あ、でも今回もそうか。でも除く。解ってくれ。すまん解っていただきたい。)
「ジョン・スミス」を名乗っていた時は、夜闇でハルヒへ顔がバレていたこともあるまい。
よって今、あれは俺の紀伝体的「過去」な会話の回数からは除外する。
そうするとだ、俺がハルヒとまともな会話を始めたのは…はっきりとは覚えちゃいないが、
5月末が「最初」か?少なくとも花見の季節じゃあなかったはずだ。
ということはだな。この時点でのハルヒにとって
俺は前の席のクラスメート、とかいう認識はなく、当時の奴の意識からして、
俺の顔その他を記憶しているかどうかは非常に疑わしいのであった。そういえば。
「…マジで訊くけど、あんた誰なのよ?」
下手な反応をしたら、それこそ蹴りをかまして警察を呼びそうな剣幕のハルヒ。
…だが何故か、俺はこう思っちまったんだ。

 

こんなハルヒを初対面の俺が見ていたなら、
もしかしたら単なるうるさい女だと思って終わってたかも知れない。
道を歩いているときにぶつかった通行人みたいに「すいません」とか謝るとか、
(何だありゃ)とか思って内心無視するとか、
そりゃいろいろ表向きの取り繕い方はあるだろうさ、もし「うるさい女に」遭遇したとして。
つまりだなあ、俺は今、魑魅魍魎ツアーにご同行していている最中で、
しかも目の前にはこんなアホまでいるんだ!
アホ…?そういえばこいつのどこがアホなんだろう?そうだ、こいつがポニーテールなところさ。
びりびりびり…
さらにジャケットが破れる音がした。いちいち振り返る暇もないが、この際構うもんか。
…きっとこれ、もう使い物にはならないだろうな。しかしこの際構わん。
おい!「…だから、あんた誰よ?ホントに警察呼ぶわよ?」
つまり、俺はこう思っちまったんだ!そして言っちまった!
「ハルヒ、一緒に花見をしよう。」…全ては、お前のポニーテールが悪い!

 

「ハァ?あんたと花見?」ハルヒが興味がないクラスメイトを記憶していないというのは、
どうやら本当のようだ。まさしくこの時点のハルヒは、俺を記憶していない模様だった。
俺がすぐ前の席だったのにも関わらず!
「あんたねえ、いきなり出てきて『花見』?こんな朝っぱらから?何考えてんの?」
本当にクラスメイトを記憶していないらしい。
でもなあ、ハルヒ、俺は西側の斜面の下を見る。
いろいろあって、ここまで来て、今花見をやってるんだ。
近い将来、お前が作ることになるSOS団の団員達はよ。だからな…ほら来い!
俺の連れの、宇宙人と未来人と超能力者がそこにいるんだって!
そうハルヒに声を掛けた途端、長門が斜面をごろごろと転がり落ちていったように見えたが、
なあに、そんなのはたぶん誤差のうちさ。

 

「紹介しよう。こいつは俺の知り合いで宇宙人。」
「紹介しよう。このお方は俺のは知り合いのお方で未来人。」
「紹介しよう。こいつは俺の知り合いで超能力者。」

 

フツーに考えれば超あやしい会話が展開されている訳なのであるが、
ハルヒはもともとこの手の話題は大の好物である。すぐに宴会に溶け込んだ。
俺達も花見と称して飲んでいた。つまり、「何だか解らないけどうまく行っている状態」という訳だ。
驚け、喜べ、一年前のハルヒよ。これがSOS団流新歓宴会だ!…なんてな。
乾杯!

 

しかし―ー
いつかは元の時空へ戻らないといけない訳だ。俺達。当たり前だけど。

 

もうそろそろ日も暮れる。
「もうそろそろでしょうかね。」古泉がそう言って来た。
あ、ああ、そうかな。
何となく古泉の言葉の意味は俺にも察しが付いた。
「…そうかも知れませんね。」そうおっしゃる朝比奈さんの表情は、
夜桜のライトアップのせいもあってか、まるで慈母の如しに美しいです…
その朝比奈さんの側で、ハルヒはすうすうと寝息を立てている。
「時間移動は、移動したい時に行えば良いもの。」
長門はそう言いつつ、布切れを見回している。それ、どこで拾った?えらく汚い柄なんだが。
…もしかして、長門といえども酒に酔うとかあるのだろうか?
それにしても、なぜ一片の汚い柄の布切れにこだわるのか?謎だ。

 

これから俺達がしなければならないこと。それは俺にも解った。
それは、元の時間へ帰ること。まあ当然だな。
それから、今のハルヒからは俺達と会った記憶を消す必要があるだろう。
そうしないと、時間のつじつまが合わなくなっちまう。色々無茶やったからなあ。

 

「本日は非常に楽しかったです。しかしながらあなたには
これからあと二つほど大仕事をお願いしたく思っています。」
突然、古泉がそう言った。どういうことだ?何だよ「大仕事」って。

 

「お察しの通りです。なあに、時間のつじつまを合わせるための仕事ですよ。」
言ってみろ。
「ひとつは、涼宮さんが僕達と会った記憶を消去することです。」
それは解る。…さっきは酔った勢いで色々と言っちまったが、
あんな記憶はヤツの脳から消しておくに限るだろう。
「もうひとつは…僕達本来の『時間』へ戻ってからにしましょうか。
その時に改めてお願いする事でしょうから。」
言わないつもりかよ。じゃあ「もうひとつの方」ってのは、後でまた言えよ。

 

まずはハルヒの記憶の消去だ。
「ん…」
起きたか、ハルヒ。気分はどうだ?
「最悪…頭がズキズキするわ…ここどこ。」まだ酔っ払ってやってやがる。まあいいか。
「…!そうだわ!」なにかぶつくさと自我を取り戻しつつあるハルヒの前の芝生に、
どすん!
と俺は長門製のメイドイン宇宙人な一升瓶を置いた。「とにかく飲め。」
「分かった…」寝起きのせいか、ハルヒは思いのほか素直だった。
「あんたも飲んで。」っておい、俺も飲むのか?

 

「あたしが飲んでるのに、何で文句あるのよ。」
ゴネ始めた!
「なるほど…さすがは涼宮さんですね。」訳のわからん賞賛をするな古泉。
「問題ない。」長門の言葉は…こいつはただの日本酒ってことだな?
長門が頷いた…ように見えた。分かった。
飲む。よし。決まりだ。
ハルヒも飲め。
「あんたさあ…」何だ。
「ジョン・スミスって名前、知ってる?」ふん、さあな。とにかく飲め。俺も飲むから。
俺がそいつだとしてもだ。ホレ飲め。…飲むんだぞ。
「私も。」ああそうかい。じゃあ長門も飲め。

 

「この辺りが涼宮さんの家の近所のはずです。ここまで送り届ければ間違いないと思うのですが。
長門さんのご意見はいかがですか?」
「我々は現在、この時間平面上における涼宮ハルヒの居住空間に近接していると思われる。
朝比奈みくるへ確認を求める。」
「は…はい。大丈夫です。」
俺達は、すっかり眠ったハルヒを自宅そばまで送り届けた。あの後再度寝たハルヒは俺がおぶっている。
他に代役がいないってんだから、やれやれな話だぜ。…古泉?こいつに任せられるか。
そ、それにしてもナマ太股の感触がエロいな。
いくら人が見てないからってブルマで外出はするな。今後はせめて短パンにしとけよ。
そうこうしているうちに、俺達一行はハルヒの自宅近くへ到着した。
しかし、あくまでも俺達は世間一般で言うところの「魑魅魍魎」のはずである。
自宅までは送り届けられまい。許せ。ここまでだ。
俺達に関するさまざまな事実に狂喜しながら、長門製(いかにも何か入っていそうではある)の
酒を飲みまくり、すやすやとこうして安眠しているこの未来の団長様は、
どれだけいろいろ覚えているのか。いや、訂正だ。どれだけ色々忘れてくれるのか。
降ろすぞ。
道端にハルヒを降ろす。もちろん、ゆっくりと丁寧にだ。ここで起き出したらたまらんからな。
「じゃあ、私達は帰りましょうか。」はい朝比奈さん、もとの時代へですね。
またよろしくお願いします。

 

…そして、俺達が還り着いた時代…というか時間帯は、早朝だった。
場所は、同じ場所、ハルヒの家の近所と思われる場所である。
近くには、満開の桜の木。
先程までの花見の時とは異なる桜の咲き具合に、時間跳躍してきた事が改めて実感できた。
でも、しかし…朝比奈さん、な、何か間違えていませんか?
何かこう、はっきり間違っているとは言えないのですが、
花見が終了したのですから、俺は夕方か夜に帰着するものだとばかり…
「いいえ、この時間帯で合っています。むしろ、この時間帯でなければならないと言えるでしょう。」
古泉、なぜお前が答える。
「今は先程から一年経過した土曜日の早朝。これから私達は、お花見の待ち合わせを始めるはずです。」
そうなんですか?朝比奈さん?「はい。」
「さて、あなたにはこれから最後の『大仕事』へ入っていただきましょう。」
何だよ古泉…そういえばそんな話もあったな。
「じゃあ長門さん…こういうことで。」密談を始める長門と古泉。「了解した。」
何を話しているんだこいつら…っておい、何で俺の腕を掴む古泉!気色悪いぞ!
「万が一、あなたが逃走しないようにです。」
なんだそれはおい。「あなたにはこれからここで眠ってもらいます。」
古泉、その笑顔、超気色悪いんだが。
「ここは涼宮ハルヒの自宅から離れていない。涼宮ハルヒの自室を基準にすると31.8メートル。
よって眠っていても涼宮ハルヒに発見される確率は高いと思われる。」
な、何を言ってるんだ?長門。

 

「では、眠っていただく前に説明致しましょうか。僕が涼宮さんから受けた連絡の内容を。」
な、何だよ突然何を言い出すつもりだその超キモい笑顔で。
「涼宮さん曰く、あなたを看病しているから今日の花見には行けない、
花見の日程は延期にしよう、との事だったんです。」
なんだそれは?あの時俺は花見の待ち合わせ場所にいたじゃないか。
ハルヒの奴は頭がおかしくなったとでもいうのか?
「いいえ。同じ時間上にあなたが二人いた。そう考えれば説明が付く事でしょう?
じゃあ長門さん、後はよろしくお願いします。」
「大丈夫。意識を失うのは一瞬のうち。…チョップ。」べしべしびしっ。
おい長門、お前チョップの前にビンタも出しただろ!そう思いつつ、俺の意識は遠のいていった。

 

…いた…痛っ!
そして俺は、猛ビンタで再び目を覚ました。
ここはどこだ?そうか。路上か…ビンタをしているのは…ハルヒだ。
満開の桜の下、俺はハルヒに猛ビンタをされていた。
「ちょっとキョン!あんたこんなとこで何寝てんのよ!」
そ、それはだな…うっ!
突然、鈍い頭痛が襲った!
今俺は知ったぞ。日本酒の二日酔いってのは、結構後から来るものらしいって事を。
「それにキョン、何かお酒臭い…ちょっと今まで何やってたのよ!」
そ、それはだな…つまり解りやすく言うなら…花見だ。
「はあ?今日がその花見の日じゃない!何考えてんのよ。」
そ、それはだな…とにかく何か言おうと思い、俺は立ち上がろうとした。しかし…
体が上がらない!
…ぐっ…何てこった。これはつまり…腰が立たん!
二日酔いというものは、さっきとはこうも違うものなのか?
こちらを見下ろすハルヒの視線が超痛い…
「す、すまんハルヒ。」
ただそうとしか言えない言葉も、何か自分の、日本語の発音じゃないみたいに聞こえるのが自分でも解った。
つまり、ろれつが回ってねえよ俺!
「…バカ。肩、貸すから。」
へ?
「ほら。すぐそこ、あたしの家だから。」
こうして俺は、ほうぼうの体でハルヒに肩を貸してもらい、
ハルヒの家で休ませてもらう事になったのだった。
「親が旅行の日でホント良かったわ。…ほらそこに寝て。」うう…すまん…
「なあハルヒ。」「何よ。」
「覚えているか?一年前の花見。」
「はあ?何言ってんのよ。もしかして、まだ酔っ払ってる?」
どうやら完全に覚えていないようだ。幸いというべきか。不幸というべきか。
「あんたがこのザマじゃあ、今日の花見は延期しかないわね。
…もう集合時間には間に合わないみたいだし。
明日。明日にしましょう。いい、明日は絶対に来なさいよ。
もし休んだりしたら、今度こそただじゃおかないから。」
ハルヒはそう言うと、電話を掛け始めた。
「…あ、もしもし、古泉くん?ゴメン。今日なんだけど、何かキョンの具合が良くないみたいで…」

 
 
 

おしまい