土曜の夜はサスペンス (88-305)

Last-modified: 2008-05-03 (土) 22:30:25

概要

作品名作者発表日保管日
土曜の夜はサスペンス88-305氏08/05/0308/05/03

作品

土曜日の夜。
あたしが洗い物を終えてリビングに戻ると、キョンはソファーに座りながらテレビを見ていた。
ちょこちょこと寄って行くと見てるのはどうやらサスペンス物らしい。時々キョンはこの時間、テレビでサスペンスを見てる。
あれ?これってミステリーだっけ?まぁいいわどっちでも。
あたしはソファーの後ろに回り、キョンの首の後ろから手を回す。
「お疲れさんハルヒ」
「んっ…」
するとキョンは首を後ろに回しあたしに口付けする。あたしもそれを受け入れる。
長い長いキス。
『っあぁぁぁぁあ!!』
しかし、そんな甘い時間をテレビの中の悲鳴が壊した。
キョンはあたしの唇から自分の唇をすぅと離しテレビの方に向く。
消しちゃおうかしら、テレビ。
あたしもつられるようにテレビに目をやるとどうやら登場人物の一人が脇腹を刺されたみたいだった。
「痛そうだな」
あんたねぇただのドラマよ。
「いや、分かってるんだけどな」
じゃぁ見なきゃいいのに。それになんであんたまで脇腹をさすってるのよ。お腹痛いの?
「いや、大丈夫だ。そんな心配そうな顔するなよ」
苦笑いで答えるキョン。
別にお腹が痛いってわけじゃないみたい。何よ、紛らわしいわね。
それとも何か身に覚えでもあるのかしら?
時計を見ればまだ10時になったところだった。
「ねぇキョン、何か飲む?」
「ん?そうだな、」
テレビを食い入るように見るキョン。
あんた結構こういうの好きよね。
「まぁな。そこらのお笑い番組よりは好きだ」
あたしはお笑い番組とか見ないし、興味無いから全然構わないけど。
「まだあったらビール持って来てくれ」
あんた明日急な仕事が入ったとか言ってなかった?
「あぁ、お得意さんとこに行かなきゃいけないんだが、あっちだって日曜に来られたら迷惑だろうにな」
いいんじゃないの?相手も仕事なんだしそれくらい。
それよりさっきお酒飲んだんだから止めといたら?あんたあんまりお酒強くないんだし、明日車で行くんでしょ?
「それもそうだな…ハルヒがそう言うなら止めとくか。じゃぁ…水でいい、お茶だと後で眠れなくなりそうだし」
「分かった」
あたしはキョンの首に回していた手をほどき冷蔵庫のあるキッチンへ向かう。
「まだあるわね」
冷蔵庫の飲み物のところには牛乳の他にペットボトルの水が買いだめしてある。
あたしもキョンも別に水道水でも飲むけど、こういうときにキョンに飲ませてあげようと買ってある。
どうせなら美味しい水の方がいいじゃない?
…キョンはあんまり味の違いが分からないみたいだけど。
コップにペットボトルの水を注ぎ、氷を数個取り出し入れおぼんに乗せてキョンのいるリビングまで持って行く。
持って行くとまだキョンはテレビを食い入るように見ていた。
その姿が何か可愛くてあたしはクスリと笑みをもらす。
だけど見てるだけでトリックとか全然理解してなさそう。
「はい、キョン、お待たせ」
あたしはコップを手に取りキョンの頬に当てる。
「おっ、ありがとな」
キョンは冷たさに驚いたようだったけど直ぐにコップを受け取った。
「ハルヒもこっち来て一緒に見ようぜ」
サスペンスを二人で見てもロマンスのかけらも無いんだけど。
だけどそこがキョンらしくてあたしは喜んでその隣に座った。
あたしはキョンの右腕に自分の左腕を回し、左手でキョンの右手を握り、右手はキョンのふとももにおく。
キョンも自然に握り返してくる。
2時間サスペンスもそろそろ終わり。
「ハルヒ、明日は昼には帰れるから」
キョンが何処と無くすまなそうにあたしを覗き込むように言う。
いいわよ、そりゃ休みの日はキョンと一緒にいたいけど仕事なら仕方ないじゃない。
「悪いな」
「じゃ、帰って来たら何時ものスーパーに連れてってね。買い物しなきゃいけないから」
「分かった」
キョンはあたしの腕から自分の腕を引き抜きあたしの肩を抱き寄せる。
ギュッとしたキョンの腕の感触がとても暖かい。
「…仕事に行くのに事故にあったりしたら許さないわよ」
「分かってるさ。心配するならもう一度明日の朝に言ってくれ。そうすりゃ俺は特に何にも問題なく帰ってくるから」
良く分かんないけど…
「うん、明日もう一回言ってあげる」
「是非そうしてくれ」
その声はとても暖かくあたしは何かにやられたように体が弛緩する。
「ハルヒ、」
「なに?キョン」
「好きだぞ」
「あたしも…あっ…んっ…」
キョンはさらにギュッとあたしを抱きしめ、再びあたしの唇に唇をおとした。
舌の感触を確かめるように、お互いを確かめるように、深く深くキスをする。
いつの間にかあたしはキョンの胸に抱かれていて、優しく髪を撫でられていた。
「…んっ…ぷは…」
長いキスをおえ荒い息をし息を整え、
「…あたしも愛してる」
言えなかった言葉の続きを囁く。
「ああ……って、ああ!」
そうして気付いた時にはドラマは終わっていてキョンは最後を見過ごした。
いいじゃないテレビなんてもう。それよりも続きしましょうよキョン。
あたしはテレビを消したキョンにお姫様抱っこでベッドに連れていかれた。
明日遅刻しても知らないんだから、エロキョン♪