子猫物語 (130-787)

Last-modified: 2010-07-20 (火) 22:16:03

概要

作品名作者発表日保管日
「子猫物語」130-787氏10//071510/07/21

 

作品

女の子ってのは何故か猫好きが多い、我らが偉大なる団長様もその例には漏れず先日公園で子猫を見つけ文字通り猫可愛がりをしていた。
「キョン、あんたもう一匹猫欲しいでしょ?」
子猫は公園に住み着く野良のようで親猫からペロペロと舐められミャアミャアと嬉しそうに声をあげる
「俺の家はシャミセンだけで充分だ、それにこの親子を引き離すのは可哀想だろ?」
と説得しなんとか諦めさせた。
それから幾度となく公園に足を運び子猫をみつけてはミルクをあげたりしており、普通の女の子の一面を見せ俺を安堵させていたが
数日経って保健所が野良猫狩りを行い、俺達が公園に行った時には例の子猫も親猫も姿を消していた。
今から保健所に殴りこむと暴走をし始めたハルヒを俺と古泉が必死に止めて事なきを得たがその時のハルヒの悲しい顔を俺は一生忘れないだろう
「あたし、一日でいいから子猫と一緒に過ごしたかった・・・」
 
ある日の朝の事だった。その日は親父とお袋が旅行に出かけており、幼い妹を1人にするわけにもいかず、初めて不思議探索を欠席することに決めていた。
事情が事情なのでハルヒもなんとか了承し朝を迎えた訳だが・・・
 
朝、目が覚めるとベッドが異常にでかくなっていた、それだけではない部屋そのものが巨大化していた。
まだ寝ぼけているのかと右手で目をこするが、何故か右手を舐めてしまう俺、って言うか思いっきり猫の手が俺の眼前にあった。
お約束と言うべきかなんと言うか俺は子猫になってしまった。
慌てた俺は傍らに丸まって眠るシャミセンを叩き起こす
「起きろシャミセン!どうなってんだ!?」
すると奴はむっくりと眼を覚まし俺を一瞥する
「なんだ?おお!我が主か、人が猫に進化するとはワシも長生きするものだのう」
「うるせーよ化け猫、どんなスピードで進化すれば人間が一晩で猫に進化すんだよ!?火縄銃が一気にコロニーレーザーってレベルだぞ!」
「スマン冗談だ、おそらくはあの不思議な力を持つ女の影響であろう、いい機会であるから猫の生活を楽しんだらどうだ?」
そう言い残し開いていた窓からふらりと出かけていった。
 
しばらくして豪快にドアが開くと「キョンくん、あさだよ~」との掛け声と共に妹が部屋にやってきた、そして室内を見渡すと
「あれ?キョンくんいない・・あっ」
俺をみつけた妹は兄が消失したショックを微塵も感じさせず目を輝かせ俺を抱き上げる
「わ~子猫ちゃんだ!シャミのおともだち?」
俺は必死に「俺だ、おまえの兄だ」と叫んだが全てミューミューと可愛らしい子猫の声に変換されてしまう
妹に抱かれた俺は自室から必死の抵抗もむなしく引き釣り出されリビングへと連行される
 
それからは平凡な日常であった。俺は妹からミルクを貰い一緒に遊んだりお昼寝をしたりであっという間に夕方になっていた。
まずい、妹の夕食をどうしよう?大体休みの日は俺は一日中ハルヒ達に付き合い夕飯も食べて帰ることが多いので妹は心配していないが
親が不在のこの状況では誰も食事の準備もできないし妹が可哀想だ
そんな事を毛づくろいしながら考えているとインターフォンが鳴り妹は出迎えに行き、客と共にリビングに戻ってきた。
「わあ~可愛いね、どうしたの?この猫ちゃん」
「うん、あさからキョンくんのへやにいたの」
「そういえばお兄さんは?」
「わかんない、あさからでかけてるの、ばんごはんどうしよう?」
「大丈夫、私が作るわ」
そう言って吉村美代子ことミヨキチは買い物袋から食材を取り出す
なるほど、両親の不在を前もって妹はミヨキチに伝えていたのか、妹と違いあらゆる意味で大人びているミヨキチは料理も上手い
「今、晩御飯作るわね、カレーでいいでしょ?あと子猫ちゃんはミルクで良い?」
「ミヨキチっておねえちゃんみたいだね、おねえちゃんになってよ」
「それじゃ、お兄さんはどうするの?私のお兄さんになるの?」
カタカタと包丁で野菜を刻むミヨキチ
「う~ん、そうだ!キョンくんのおよめさんになってよ、あっでもハルにゃんが怒るねぜったい」
そうだ、伝説の従者を失った魔王は世界を滅ぼすぞ、俺が嫁さん貰えるのはハルヒが極普通の女の子にも戻ってからだ
顔を真っ赤にして野菜を刻むミヨキチ、何故照れる?そしてそれをニヤニヤと見つめる妹
 
ここまで書くと「ここはハルヒスレだ!いい加減ハルヒを出せ」との要望が強まるのは必死である、安心したまえ
ちょうどその頃インターフォンが再び鳴り、ズカズカとした足音と共に奴がやってきた。
「バカキョン!不思議探索休んだ挙句にあたしからの電話にも出ないって何事よ!あんたの料理じゃ妹ちゃんが悲惨だから晩御飯作るわ!感謝しなさい!」
 
「ハルにゃんいらっしゃーい、どうしたの?」
「あれ?キョンはどこにいるの?」
「うん、あさからいないのハルにゃんといっしょじゃなかったの?」
「今日は妹ちゃんの面倒をみるから休むって言ってたわ、バカキョンどこほっつき歩いているのよ、ところでその子猫はなんなの?」
「あさからキョンくんのおへやにいたの、かわいいでしょ?」
嫌がる俺を抱き上げるハルヒ
「かわいいじゃないの!どうしたのあんた、迷子なの?」
俺には滅多に見せぬ優しげな眼差しだ
ちょうどその時台所からミヨキチがやってくる
「お兄さん帰ってきたの?えっ、あのどちら様でしょうか?」
ばったりとハルヒと出くわす
「あんたこそ誰よ?」
いきなり喧嘩腰ではあるが俺が何を言っても子猫の鳴き声にしかならない、妹が仲介して
「あたしのおともだちのミヨキチだよ、キョンくんとあたしにごはんを作ってくれるの」
「はい、初めまして吉村美代子です、あのもしかしたら涼宮ハルヒさんでしょうか?」
「あたしのこと知ってるの?」
「はい、お兄さんがいつも涼宮さんの事を話してましたから」
「あたしもあんたを知ってるわ、前にキョンに恋愛小説かかせたら妹の友達とデートしたって内容だったから」
「いえ、デートだなんて・・・」
そしてハルヒは
「キョンが居なくて妹ちゃんが心配だわ、吉村さんにも迷惑かけるし団員の不始末の責任を取ってあたしが夕飯つくるから大丈夫よ」
「いえ、迷惑なんて、それに私が勝手に夕飯作ってるだけですし、いつもお兄さんには勉強を教えて貰ったり遊んでもらってりしてますからそのお礼です」
両者ともに譲る気はない、その状況を見ていた妹が楽しそうに
「わ~いわ~い、修羅場だ修羅場だ、おもしろいね子猫ちゃん」
面白くもなんともないわ!だいたいおまえの台詞は極力ひらがななのになんで修羅場だけ漢字なんだよ!
「ハルにゃんもミヨキチもけんかしないでよ、あたしのへやにはさみがあるからキョンくんをふたつに斬ってはんぶんこすればいいんだよ」
なんでそんな物騒なハサミが部屋にあるんだよ、しかも斬るってなんだ?斬るって・・・それに妹よお前が思うほど俺は女にもてないぞ、勘違いだ
その時電話が鳴り妹が受話器を取った。
「もしもし、うんおぼえてるよ、ごめんねキョンくんはおでかけしてて今はいないの」
そして電話を切る
「妹ちゃん、今の電話ってキョンからじゃないわよね?」
「うん、むかしキョンくんといっしょにじゅくにかよってたおんなのひと、ママは元彼女って言ってた。こんどどうそうかいのお話したいからまた電話するって」
 
・・その電話の主が誰なのかはおよそ検討がつく、しかしお袋はかなりの勘違いをしている、つーか最悪の状況でよりによった奴が電話してきたな
何故俺がハルヒとミヨキチが鉢合わせしている状況で「アイツ」から電話がかかってくることが最悪の状況と思ってしまうのかはわからんが
するとミヨキチが
「あの涼宮さん、一緒に夕飯つくりませんか?もうじきお兄さんも帰ってくると思いますから3人でじっくりとお話しましょう」
「それはいいアイディアね、キョンが帰ってきたらゆっくりと拷問・・・お話をしましょう」
ミヨキチは包丁を、そしてハルヒはスリコギをヒタヒタと手で弄び殆ど表情が無い、おいおい絶対帰れないだろ、まあどっちみち今の俺は子猫のまんまだが・・・
再びインターフォンが鳴りまたしても招かれざる客が来た。
突然我が家のダイニングに映画「バックドラフト」のメインテーマが鳴り響き鹿賀丈史チックな衣装を来た古泉が黄色いパプリカを右手に持ち入ってくる
http://www.youtube.com/watch?v=9o6I6OOPlTc 
そして古泉はハルヒとミヨキチを一瞥してからおもむろにパプリカにかぶりつきニヤリと笑うと声を張り上げた
 
「アレッ、キュイジーヌ!!!!」
 
しばし呆然としていたハルヒであったが我に帰ると古泉に問いかける
「どっどうしたのよ古泉君!?」
「僕の記憶が確かならば、今日彼は妹さんの夕飯を作る予定になっていたはずそこでお手伝いでもしようとおもいましたが、こっちのほうが面白そうなので」
「なるほど、あたしと吉村さんの料理対決を煽りに来たのね」
「はい、特別審査員も呼んでいます紹介しましょう」
古泉はおもむろに子猫と化した俺を抱き上げるとキラッと歯をひからせる、おまえ絶対に今の俺が子猫と化していることに気づいてるだろ
古泉に呼ばれて一人の男が姿を現す、年齢はおそらく60前後、白髪交じりの総髪で和服の着こなしがまた渋く、ライオンのような怖い顔をしていた
「雄山先生、今日は審査をよろしくお願いします」
「まあ、息子の頼みだ仕方ない、しかしこの雄山、美食に関しては一点の妥協もないと心得ろ」
不思議そうにハルヒが
「古泉君、この人古泉君のお父さん?」
「いえ、多丸さん(兄)が新聞記者をしていた時に交流のあった美食家で有名な陶芸家の先生です」
おい!マニアックなネタふるな、つーかこの先生の中の人ってガチで新川さんの中の人の親父じゃねーか、一体どっちのコネで呼んだんだ!?
「では、涼宮さん吉村さん、アレッキュイジーヌ!!!」
 
面倒くさいので調理過程は省略させて頂くが、ミヨキチは先述の通りカレーを、そしてハルヒはシンプルなうどんを作っている
いよいよ制限時間が終わりハルヒはどんぶりにうどんをよそる、ミヨキチがカレーを盛り付けようと炊飯器をあけると「キャーッ」と悲鳴をあげた
「炊飯器のスイッチ間違えました・・・」
勝ち誇るハルヒ、妹と雄山先生の前にうどんを差し出す、ミヨキチはルーの入った鍋を涙目になりながらテーブルに置く
「じゃあ、あたしからね妹ちゃん、先生も食べてみて」
雄山は黙って食べ始めたが妹は箸をつけようとしない、心配したハルヒが
「どうしたの妹ちゃん?」
「ごめんねハルにゃん・・・あたしおうどんキライなの」
そんなはずはない、妹はピーマンは嫌いだがうどんは平気なはずだ
「でも、カレーうどんはだいすきなの!」
そう言ってミヨキチの作ったカレーをハルヒの作ったうどんにぶっかける
「おいし~い、ハルにゃんのおうどんもミヨキチのカレーもいっしょになってすごくおいしい、そうだよね?ゆうざんせんせい」
雄山先生は箸を置くと「これより判定を下す」宣言した
 
「勝者!妹ちゃん」
 
「理由はタダひとつ、吉村さんの作ったカレーもご飯さえあればうどんと甲乙つけがたかったであろう、しかし米がなければ勝負にならい、だからこそ平等にするためにカレーうどんにする妹ちゃんの優しさがこの雄山の心を捉えた」
 
その後古泉と雄山先生は引き上げ、ハルヒ、ミヨキチ、妹の3人と子猫一匹はカレーうどんに舌鼓を打って夕飯を楽しんだ。
 
そして時刻は九時過ぎ
「キョンくんおそいね、ぜんぶカレーうどんたべちゃった、もう九時過ぎたよハルにゃん帰らなくていいの?」
「大丈夫よ、キョンが帰って来ないと妹ちゃんも寂しいし1人じゃ怖いでしょ?あっ吉村さんは帰っていいわよ、あたしは念のためにお泊りグッズ持ってきてるから」
「わ~ハルにゃんダイターン3カムヒアってかんじだね」
「涼宮さんこそいいんですか?私は最初から泊まるつもりで親から許可貰ってますけど」
バチバチと眼に見えないはずの火花が見えた
「じゃあ、ハルにゃんもミヨキチも泊まってよ、そうだ3人でいっしょにお風呂に入って背中流しっこしようよ」
ほっとした、一応空気は和み和気藹々と風呂に行こうとする3人、その時ハルヒは俺を抱き上げ
「せっかくだからこの子猫ちゃんもいっしょに入浴ってのはどう?」
世界が凍った、おいおいおいおいおいおいおいコレはマズイって、勘弁してくれよ
入浴時の詳細についてはほとんど禁足事項である
妹はしょっちゅう一緒に風呂に入ってるから(妹からせがむ場合のみ)問題無いがミヨキチの発育状況は高校生と大差ないしハルヒはもっとやばい
っつかハルヒの体の隅々まで見てしまい、ミヨキチの発育状況に「驚愕」し
下世話な表現ではあるが「あと10年は戦える」ほどの副食材をタダで仕入れかねない状況であった。
「ハルにゃんのおっぱいおっきいね、でもみくるちゃんはもっとおっきいよね」
「みくるちゃんは大きすぎよ、あと有希のまえでそう言う話は絶対ダメよ、それにしても吉村さんって本当にスタイルいいわね、エロキョンが褒めるはずだわ注意しなさい」
「お兄さんって・・・そんな人じゃないと思いますけど・・・」
「甘いわね!部室であいつがみくるちゃんをどんな目でみてるのか見せたいくらいよ」
・・いやそんな目が今お前の目の前にあるんだがな
 
風呂から上がると
「吉村さんも妹ちゃんももう寝なさい、あたしはキョンを待ってるわ絶対説教してやるんだから!!」
2人が部屋に消えるとハルヒはリビングではなく俺の部屋へと向う、もちろん子猫と化した俺を抱いて
そして
「聞いてよ子猫ちゃん、今日はせっかく勝負下着で来たのにバカキョンが帰って来ないの」
 
勝負下着っておまえは一体俺と何の勝負をするつもりだったんだ?
 
「時と場合によっては時間無制限一本勝負も覚悟してたのにさ・・・」
 
だからどんな勝負なんだよ?
 
「だから、罰としてあいつのベッドに潜り込んで帰ってきたところでびっくりさせてやるわ!」
俺のベッドに潜り込むハルヒ
「枕が親父臭いわね、こんど買ってやんなきゃ、子猫ちゃん一緒にベッドに潜ってキョンを待つわよ」
電気を消し俺を抱え込む
逃げ出さなきゃやばいのだが、子猫の体は猛烈な睡魔に襲われ、また柔らかい隆起にはさまれているとどうも体が動かず眠ってしまった。どうやらハルヒは先に寝てしまったらしい
 
眩しくて目が覚めた、どうやら奇妙な夢をみたようだ
部屋の窓から外をみるとシャミセンが例の公園の子猫を口にくわえて隣の屋根の上を歩き母猫がそれに続いている
「仕方ねえ、里親探すとするか阪中に頼めば探してくれるだろ、シャミの奴も意外にもてるんだな」
ベッドの大きさも元に戻っている、どうやらアレは夢だったらしい
しかし何かがおかしい、布団の中にある右腕は感覚を失い義手のように動かない左手はふとんの中で柔らかい「何か」を鷲づかみにしている「何か」には小豆ぐらいの小さな突起がある
俺は足には誰かの足が絡みついているその時「うーんバカキョン暑い・・・」と声が聞こえ掛け布団が床に落ちた
ちょうどその時ドアが開く
「キョンく~んあさだよ~」
俺の右腕に乗っていたのは女の首であり、いわゆる腕枕って奴になっていた
そして女のTシャツの下から突っ込まれ柔らかいものを鷲づかみにする我が左手
ふと女の顔に目をやると真っ赤な顔で呆然としている
 
さあ、怒り出すカウントダウン開始、しかも妹とミヨキチは凍りつくような視線を俺に浴びせる
 
「あっあああ、このエロキョオオオオオオオオオオンンンン!!!!!!」
 
「ミギャーアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
 
 
おしまい
 
だれかこのハルヒと俺の状況をイラストにしてくれ