寒いから (100-980)

Last-modified: 2008-11-01 (土) 00:31:17

概要

作品名作者発表日保管日
寒いから100-980氏08/10/3108/10/31

作品

「寒い」
と言われても俺がどうこうできるわけがないだろう、大体俺も寒い。だが次に来るハルヒの言葉は決まっているようなものだ。
「寒いわよ、キョン! どうにかしなさい!」
……ほらな。
 
そろそろ北風も吹こうという11月。
部室になら去年俺が受け取りに行った電気ストーブがあるが教室にはそういった暖房器具はなく、窓際という好条件な位置にある席も曇っている生憎の天気では逆に悪条件の位置と化す。
まぁつまりは寒いということだ。
「そんなに寒い寒いといわれても俺だって寒いさ。だが周りを見ろ、みんな寒いのにお前みたいに愚痴ばっかこぼしてるやつなんかいないだろ」
「知らないわよ、人は人、あたしはあたしよ。寒いものを寒いといって何が悪いの?」
あまり寒いと言われると寒くなくても寒く感じるんだよ、暑いときと同じようなもんだ。
「少し前までまだ暖かかったのに一気に寒くなったわね」
せめて晴れてくれたらいいのに、と呟いてハルヒは背中を丸めて縮こまる。寒いのならカーディガンでも着てきたらいいだろう、長門はカーディガンまで制服にしているのかとっくに着て来ていることだ。
寒いとは思うが俺は下に着ているからそれほど寒さは感じない、でもハルヒたち女子はスカートだもんな。むき出しの足を見ているだけで震えを感じるぞ。
「そういえばあんたはあんまり寒そうじゃないわね、なんで?」
ここで気のせいだろうと答えていたらよかったのに、俺の馬鹿野郎。
「そりゃ下に着てるからな、おかげで温かい」
……きらりとハルヒの目が光ったように見えた。
 
「んー、温かい♪」
「そりゃよかったな……」
俺は寒いけどな。予想できるとおりハルヒにブレザーを取られてしまった、寒いぞ、ハルヒ。
「周り見なさいよ、寒くってもあんたみたいに文句言ってる子なんていないわよ♪」
それはさっき俺が言ったことだろ。先ほどまでハルヒがしてように縮こまる、ちくしょう、人のブレザーを返しやがれ。
「女の子から奪い取るの? サイテー」
「最低って俺から力ずくで奪い取ったのは誰だ」
「ふふん、あんたのものはあたしのもの、あたしのものはあたしのものよ」
まさにハルヒのためにあるといっても過言ではない台詞だな、とここでまともにハルヒを見たのだが慌てて目を逸らした理由は分かってもらえるだろう。
やっぱりYシャツにしろパーカーにしろ、男物を女の子が着るというのはかなりクるものがある。体の大きさの違いというものがはっきりと分かるからな。
丈が合ってないのは当然、すっぽり覆われてしまっている肩幅、余っている袖。これ以上見ていられないのも当たり前だろう、抑え切れなくなりそうだ。
ハルヒはそれを知ってか知らずかきゃいきゃいと大きさの違いを楽しんでいる。
ああ、もう誰か……このハルヒを写真に残してください。
 
おわり