捨てられた私を拾う貴方 (118-32)

Last-modified: 2009-09-27 (日) 03:13:36

概要

作品名作者発表日保管日
捨てられた私を拾う貴方117-32氏09/09/2309/09/27

捨てられた私を拾う貴方

高校卒業と同時にSOS団の皆とはばらばらになった
それでも今の私なら新しい場所でやっていけると思っていた。自惚れじゃない
でも現実は正直で、退屈な日々が続いた。大学でもSOS団を作ろうと考えたけど、止めたわ。SOS団は唯一絶対のものだし、新しく立ち上げても、それは偽物にしかならない。
それにあんな最高の団員達に代わる人材なんているわけないじゃない。
中学時代なら一人で居るほうが楽だった。
でも今は違う、仲間と居る楽しさを知ってしまった。私には心の隙間が出来てしまったのね、顔だけ見て言い寄ってくる男ども、くだらない話しをしてくる女子達、誰も私の隙間を埋めることはできない。
これが出来るのはSOS団の皆だけ。会いたい、皆に会いたい、でも皆にもそれぞれの生活があって、私のわがままにいつまでも付き合わせる訳にはいかない。
私は皆が居たから強い涼宮ハルヒでいられたのかもしれない。皆がいないと私はこんなに弱くなるなんだ。
今のままじゃ駄目、私は皆に依存していた。このままじゃ会えない。変わらなきゃ皆に胸を張って再会するために、具体的にどうしたらいいか考えるとまずは、やっぱり社会的地位が必要ね?勉強して、一流の企業に就職すれば良いのよ、やってやるわよ。
結果を言うと楽勝で超一流企業に就職できた。私はつまらない大学生活に区切りをつけ、仕事漬けの日々を送り出した。仕事が面白いわけでは無かったのよ、でも何も無かった大学生活よりかはいくらかマシだったわね。
私はそれから日々仕事に明け暮れた会社での地位をより高いものにするために頑張った。でも、そんな日々も長くは続かなかったの。
昨今の経済情勢により、一流と呼ばれていた、私の会社もあっさり不況の波に呑まれて潰れてしまった。 仕事が失くなって途方に暮れていた私にさらに追い撃ちをかける事が起きた。
 
両親が買い物の途中に交通事故にあった。私が病院に駆け付けた時には二人とももう駄目だったみたい。
ひき逃げだったらしいけど犯人は捕まら無かった。 私はいっぺんに家族も社会的地位も失った。
もう何もない、空虚な日々が続いた。これじゃあ皆には会えない、こんな姿見せられない、そう思った瞬間絶望が心を覆った。もう会えないなら、生きていても辛いだけね、死にたい。疲れちゃった。
私はいつのまにか両親が死んだ場所に来ていた。交通量の多い時間帯、私は楽になりたかったの。『バイバイ皆』と呟き、車に飛び込もうとした瞬間、誰かが私の体を引き止めた。
『何やってんだ』『はやまんな』『親が泣くぞ』
何も知らない癖に安い正義感を振りかざして止めないでよ、私は振り返りそいつの顔を睨みつけてやった。でもね、その顔を見た途端眼に涙が溢れたのよ。
今一番会いたくなかった人でも会いたかった人キョン
キョンだ、少し大人になったけど、相変わらずの間抜け面で心配そうにこちらの顔を見ている。
キョンも、ようやく私にきずいた見たいで、『ハルヒ』『ハルヒか久し振りだな』と笑顔で再会を喜んでいるみたい。
勝手なヤツね私はこぼれ落ちる涙を抑えて
『うるさいバカキョン』
笑顔と震える声で言ってやった。

愉しい世界を壊したお前に感謝

いきなりだが俺は今、高校で日本史を教えている
ようするに、俺は先生になったのだ驚いたろ、
高校時代まったく勉強するきがなかった俺をSOS団団長もとい超家庭教師、涼宮ハルヒ様による地獄のマンツーマン授業により
俺の成績がとんでもない伸びを見せつけ、地元の国立大に合格するという奇跡を起こした。
まあ~この奇跡を起こさせた団長様には本当に感謝している本当だ。
その団長も地元から離れた超一流大に合格して『落ちる訳ないじゃない、あんたじゃあるまいし』とほざいていた。
そんな訳で高校卒業と同時にSOS団は晴れて、自然解散と相成った。
実はハルヒの能力は朝比奈さんが卒業してすぐに失くなっていたのだ。
それでも古泉と長門は事後の観測と称して卒業までSOS団に残ってくれた。
真意は解らんが俺は嬉しかった。卒業後、古泉は機関が解散したのを良いことに森さんと海外にトンズラこきやがった。
あ~忌ま忌ましい、まあリアルヒーローごっこも、やっと終わって二人の偽りない幸せな笑顔を見ていたらこの二人には幸せになってほしいものだと心から想えた。羨ましいぞ古泉
 
長門は卒業と同時に宇宙人から独立して人間になったらしい、突然世界中を見てみたくなったらしく、朝倉と黄緑さんを引きずって旅に出た。
今頃は何処にいるのやら、まったくやれやれだ、でも旅立つ前の長門の楽しそうな顔は、生涯、忘れないだろう。がんばれよ長門
 
皆、それぞれ自分の人生を歩きだしたみたいだった。かくゆう、俺も俺で大学生活を怠慢に過ごして、高校時代の疲れをとっていた。
大学に入ってもハルヒには多少苦しめられると思っていたが俺の杞憂でありハルヒからの連絡は無かった。
少し寂しい気もしたが、便りが無いのは元気の証拠であり、あいつにも新しい生活が有りのだろう、俺がそれを邪魔するのも、あれなので、得にこちらから連絡はしなかった。
変な力が失くなってもハルヒはハルヒであり、大学でもSOS団を作って愉しくやっているのだろう。
 
という訳で
ダラダラと大学生活を送った俺は何とか卒業して母校北高の先生になった訳だ。
学校での俺の呼び名が先生にも関わらず、キョンなのは多分、北高に入学していた妹のせいだろう、先生の威厳を返せ、やれやれ~
 
そういえばミヨキチも北高に入学しており、北高一の美少女になっていた。
告白してくる男どもを次々に振りまくっていたらしいスゲ~俺の詰まらん授業もしっかり聞いてくれるのだか何故か俺と目が合うと、顔を赤くして下を向いてしまう俺って嫌われてんのかなとか考えていた。
 
そんなこんなで妹とミヨキチも一流大学に一緒に合格して北高を卒業して行ったしかし俺の名前は完全に北高ではキョンに統一されてしまったのだやれやれ~恨むぞ妹よ
俺はそれからも、何人もの生徒を北高から送り出し、高校時代とは違った愉しさを俺は先生という仕事に見いだしていた。
 
そんなところで今に至る、今日も何時通り授業をして平々凡々に教師生活を送り珍しく少し速めに帰宅することが出来たことを喜びながら歩いていた。
 
ちなみに俺は今一人で生活しているだから家に帰っても飯食って、仕事して、寝るだけ、結婚なんて全然というか恋人すらいねえよ、
悪かったなそんな事を考えながら、チンタラ歩いていると道路をフラフラ歩いている変な女を見かけた。
 
酔っ払っているのかと思ったがどうやら違うみたいだ俺は嫌な予感がして、その女に駆け寄った。案の定、その女は車道に飛び込こもうとしていた。
 
俺は『なにやってんだ』と叫びながら、ギリギリの所で女の手を掴み、『はやまるんじゃねーよ』『親が泣くぞ』そういう輩を止める常套文句を吐いてやった。
女は凄い顔で俺を睨みつけたが、俺の顔を見た途端、突然、泣き出してしまった俺なんかしました。
 
俺はオロオロしながら女の顔をもう一度見直した。そこで俺は驚愕と共に懐かしさが込み上げてきた。
 
コイツ、ハルヒだ
髪が伸びて、めちゃくちゃ大人の女になってるけど俺がハルヒを見間違う訳がね~だろ、
コイツは間違いなくSOS団の団長、涼宮ハルヒだ。俺はハルヒに会えたのがとにかく嬉しくていろんな事を忘れてはしゃいでいた。
『ハルヒ?』『ハルヒ~久し振りだな』少し興奮ぎみに俺が問い掛ける
するとハルヒが顔を上げてうるさいバカキョン』少し震えた声と高校時代と変わらない、最高の笑顔で俺に答えてくれた。

見えない暖かさ

俺はハルヒに会えたことに興奮していて何も見えていなかった。ハルヒの顔からはいつの間にか笑みは消えうせ、虚ろなものに変わっていた。
おい、俺よ冷静になれ、現実を見ろ、ハルヒは一体何を使用としていた。何故俺は此処にいるんだ。考えるより、口を動かせ、何か言うことがあるだろ、しっかりしろヘタレ野郎、
訳の解らん思考を巡らしているうちに、ハルヒが喋りだしちまった。
 
『まずい所を見られちゃったわねキョン』『私もう駄目みたい』『なんか嫌な事が重なって』『疲れちゃったのよ』『楽になりたかった』
『こんな弱い私をキョンに見られたく無かった』『私は変わってしまったのよ』『もうあんたの知ってる涼宮ハルヒはいないの』だから
 
私はキョンの腕を振り払って歩きだした。これでいいのよこれでバイバイキョン
ハルヒ?何を言ってるんだ
『弱い私』『変わってしまった』『俺の知ってるハルヒはもういない』訳が解らん何なんだこれは、誰か説明できる奴がいるなら今すぐ此処にきやがれ
俺がまたもや思考の世界をさ迷っていると、ハルヒは俺の腕を振り払ってさっさと歩きだしちまった。
 
何故かハルヒが歩きだした先を真っ暗な闇が覆っている、まだ夕方だぞ何なんだあれ、ヤバイなんか知らんがあれは絶対ヤバイ
ハルヒが行っちまう、此処で別れたらもうハルヒには会えない気がする、嫌だ、そんなのは駄目だ。そっちは駄目だ、行くな、行くな、行くな、『行くな~ハルヒ』俺は叫んでいた。
ハルヒは一瞬ビクッとなって振り返らず立ち止まった俺は動かないハルヒにゆっくり歩み寄って行った。
 
私は振り返らず歩いた、私の先には何もない、もうなにもいらない。この闇に包まれて消えてしまいたい。
『行くな~ハルヒ』キョンの声、歩みが止まる、何故どうして、動けない、キョンの足音が近づいてくる、私は振り向けない、というか身体が動かないこんな時に金縛り、何なのよこれ。
足音が止んだ、振り向けない、キョンの腕がそっと私の身体を後ろから包んだ。暖かい
キョンが耳元で囁いた『ゴメン』、『何が』『電話でもメールでも』『逢いに行くでも』『何かすればよかった』『ハルヒから連絡ないから』『新しい仲間ができて』『ハルヒにはもう俺なんて必要ないんだろうなと思ってた』
 
キョン、『違うの』『私はSOS団を離れて始めて仲間の大切さ』『キョンや他の皆と居られた時間が幸せだったことを実感出来たの』『だから何時か皆でまた集まった時』『一回り大きくなった私を見てほしかった』
『弱音を吐く私なんて見られたく無かったし』『見せたくも無かった』『また皆と会う時まで頑張れると思ってた』
『でもね嫌な事がいっぱいありすぎて』『疲れちゃった』『こんなんじゃ皆には会えないし』『私にはなんにも失くなったの』『だから死のうとした』『皆に会えないならもう』
 
俺はまたハルヒを少し強めに抱きしめた。
『大丈夫』『ハルヒはハルヒだろ』『俺はどんなハルヒでも嫌いにはならない』『SOS団の皆も同じだと思うぜ』『皆お前とまた会える時を待ってるさ』
『だからどんな辛い事でも』『自分だけで抱え込むのは止めろ』『お前、俺の肩書きを忘れちまったのか?』『SOS団の元祖雑用係だぜ』『団長のアフターケアもバッチリ任せなさい』
キョンの暖かい言葉が優しさが伝わってきて涙が止まらなかった。キョン

離れない手

ずっとこうしていたい、キョンの温もりに包まれていたい。
しばらくしたら私を抱きしめていたキョンの手が離れた。少し寂しい
そしてキョンは私の手を取って歩きだした。
 
『ちょっとキョン』『何処に行くのよ』『何を言ってんだハルヒさん』『団長様のアフターケアだよ』。
『アフターケア?』『まさか私を変な場所に連れて行って』『あんなことやこんなことをするきじゃないでしょうね』この『変態エロキョン』
 
『アホか』『身の上相談だよ』『ソウダン』『嫌なことは酒と一緒に吐き出しちまえばいいんだよ』『わかったか』
 
成る程、『キョンにしては気が利くじゃない』『もちろん全部あんたの奢りよねで何処に行くの』
 
『わかってますよ団長』『しかし生憎、今月は金欠気味なので』『俺が知る中で一番安上がりな場所にするぞ』
 
『ふぅ~ん』『まあ~あんたの奢りだからしょうがないわね』『さっさと行きましょ』
歩くこと20分くらい
『おし着いたぞ』
 
『あんた嘗めてんの』『此処ただのマンションじゃない』『正解』『此処は俺ん家だ』『つまみくらい俺が作ってやるし』『酒も買い置きがあるしな』『う~ん安上がり』
 
『あんた』『やっぱし私に変なことするきでしょ』『酔った勢いみたいな~』『この変態エロキョンが死ね』
 
『グエェゥ゙~バァ~』
久し振りのハルヒの蹴りは高校時代の嫌な記憶を存分に思い出させるものであった。
勘弁してくれよ。やれやれ

エプロンと笑顔

『お邪魔するわよ』
『あぁ~もう好きにしてくれ』
『案外綺麗にしてるわね、感心、感心』
『お前はお母さんか』
『結構広いし気に入ったわ合格ね』
『そりゃどうも』
『俺は着替えて、つまみ作るから、冷蔵庫から酒だして適当にしといてくれ』
『なんか悪いわね色々と』『気にするなよ、こうゆうのは雑用の仕事だしな』
 
そう言ってキョンは奥の部屋に行ってしまった。ハァ~何でキョンの家に居るんだろう、さっきまで死のうとしてたのに、訳わかんない。しかしこの家、随分と居心地が良いわね、何でかしら?
そんな事を考えながら、ちびちび酒を飲んでたら、キョンがつまみを持ってきた『どうぞ』
『ありがとうキョン』
振り向いてキョンを見た瞬間、私の世界が停止した。
キョンがエプロン着けてるヤバイ、ヤバイわよこれは破壊力ありすぎよ、私にそんな属性無いわよ、というかエプロン属性ってなによそれにしても無駄に似合ってるわね、キョンの癖に何なのよ眼の保養、眼の保養
私がキョンのエプロン姿に見とれていると、キョンが
『やっぱし男がエプロンは変だよな』
なんて言ってますけど、嫌々、最高ですよ最高、もうずっと見てたいくらいよ、でもキョンはさっさとエプロンを脱いじゃった。残念無念
『ハルヒ~なんか顔が赤いぞ大丈夫か』
『な!』
『何でも無いわよバカキョン~さっさと食べるわよ』『美味しく無かったら死刑よ死刑。』
『知らん』
『人にものを作るなんて久し振りだからな。』
キョンが作ったのはソース味の野菜炒めね、どれどれあれ美味しいじゃないキョンて以外と料理上手なんだ
『どうだ美味いかハルヒ』何でそんなに楽しそうに感想を聞くのよ、
『美味しわよ、合格。』
 
止めて~キョン、その笑顔は反則よヤバイわよこれは何?なんなのこれは、なんで私がキョンなんかに、こんなにあたふた、しないといけないの。あぁ~誰か助けて~

夢から醒める時

ハルヒの様子がどうもおかしい、顔が赤くなったり、俺のことをボ~っと見ていたり、眼が合うと突然そっぽを向いたり、まさか病気じゃないよな、ないな、病人はあんなに食ったり飲んだりできない。
やはり精神的にかなり疲れているんだろう、
俺がハルヒにできることをしっかりしてやろう、いやしてやりたいんだ。
 
『ハルヒ』
『何よキョン』、
『お前は高校を卒業しSOS団が解散してから、どうしていたんだ。』
『俺の知らないお前を知りたい、話したくない部分は話さなくてもよいぞ』
『お前の不安が少しでも軽くなるなら俺に話してほしいんだよハルヒ』
『うざいかもしれん、俺には関係ないかもしれんだけど』
『俺はハルヒには笑顔でいてほしいんだ』
『ダメかハルヒ』
 
キョンが突然、真剣に話しだした。
どんなタイミングよこれ、しかもセリフが物凄く臭い思わず赤面したくなるセリフが混ざっていたのは忘れましょう。
でもこんなやつだから私は全て話したくなった。
 
『いいわよキョン、全部話したげる。』
私はキョンに全部を話した大学生活がつまらなかったこと、またSOS団の皆に合うために、凄い勉強したこと、某有名企業に就職したこと、バリバリ仕事をしてたこと、会社が失くなったこと、両親が事故で死んでしまったこと、
全てに絶望を覚えて、車に飛び込もうとしたこと、そしてキョンに助けてもらったこと。
 
『こんなところかしら、どうキョンわかったかしら』
私は弱くなった。もう貴方の知ってる涼宮ハルヒはいない。これが真実よ、お別れねキョン、酔いも醒めてしまった。楽しい時間は終しまい。なにもない現実が帰ってくる。

幸せを感じる瞬間

俺はまたハルヒを抱きしめた。今度は正面からしっかりと、しかし、ハルヒは俯いたままだった。
わかってる、俺はハルヒの顔を見て言った。
『俺がいる』
『ハルヒの側にいたいんだずっと一緒に』
 
キョンの声が心に響くでもダメ、ダメなのよ、
私もキョンとずっと一緒にいたいでも、結局それは同情であり哀れみでしかないのよキョン、
そんなものが欲しくてキョンに話しをしたわけじゃない。
『私のことは忘れてほしいのキョン、幸せになって、ただそれだけ』
 
『ハルヒ』
『お前はなんにもわかってないな』
『ハルヒとあの時、会わなかったらきっと俺は幸せになれただろう』
『でも俺はお前とまた合っちまったんだよ』
『もう俺だけじゃ幸せにはなれない。』
『ハルヒが必要なんだ』
『俺はお前と幸せになりたい。』
『嫌かハルヒ?』
 
『私、無職よ』
『問題ない俺がしっかり働くし、お前も仕事を探したらいい。』
『お金も持ってないわよ、今住んでる所も引っ越ししなきゃいけないし、家無き子よ、いいの?』、
『一緒に此処に住めばいい引越しくらい手伝ってやるよ。』
『私は変わったのよ』
『弱い私でもいいの?いっぱい甘えるし迷惑だってかけるわよ』
『関係ないな』
『ハルヒはハルヒだろ、それで充分だろ。』
『むしろ甘えてほしいくらいだな』
 
私はキョンを抱きしめた。今日はやられてばかりだったから仕返しよ。
キョンの胸に顔をうずめていつの間にか泣いていた。そんな私をキョンが暖かく包んでくれた。
 
顔を上げてキョンと見つめ合って、少しだけ唇が重なる。私はまたキョンの胸に顔をうずめて泣いていた。幸せだよキョン

完璧なポニーテール

そのまま寝ちまったみたいだな
『ハルヒ?』
ハルヒがいない、腕の中に居たはずのハルヒが、不安が過ぎる。
なんだ、何か匂いがするな台所をみる、
『ハルヒ』
そこにはエプロンを着て料理をしているハルヒがいた。何故かポニーテールですよ髪伸びてましたから、完全版だよ完全版、正直溜まりません。
『おはようキョン』
朝からこの笑顔が見られるなんて、しかもエプロンでポニテ、俺の理性が吹っ飛ぶぞ
『どうしたのキョン』
『何してんですかハルヒさん』
『朝ご飯作ってたのよ』
『食べるでしょ、もうすぐできるから先に顔洗って来なさい』
すぐに顔を洗い、戻ってくると、テーブルに朝ごはんが並んでいた。
『早く座りなさい食べるわよ』
俺はハルヒを対にして座った。
『いただきます』
とりあえず、おみそ汁を食べて見ましょうか、美味い、凄い美味しい
『どうかなキョン』
そのモジモジした感じ溜まりません。
『美味い』
『当たり前でしょ私が作ったんだから』
と言いながらも凄い嬉しそうだった。
朝から食い過ぎるくらい食ったな
『ごちそうさまでした』
『お粗末さま』、
食器を二人で洗って、コーヒーを飲んでいた時、ハルヒが
『私、一度家に帰るは、お風呂入ったり着替えたりしたいし』
そうだよなハルヒも女だし『わかった』
『今日休日だし準備出来たら電話してくれどっか行こうぜハルヒ』
『うん』
ハルヒは楽しそうに帰って行った。
さあ~何処に連れて行ってやろうかと考えながら俺も何だか楽しみになってきていた。

不安を拭い去るのよ

は~キョンとお出かけ楽しみだな~、どの服に使用かな髪型は勿論ポニテよね、その前にお風呂入ってこよ何となく念入りに身体を洗ってしまうわね、スッキリしたわ。
キョンは何処に連れて行ってくれるんだろうな~と
色々考えてたら私はある重大な問題にきずいてしまった。
私は高校時代のキョンしか知らないのよ。キョンが今何の仕事をしているかも知らない。
交友関係も趣味もなんにも知らないじゃない。
もしかしてポニテ萌えじゃ失くなってるかも、どうしよう、私のことばかり話してキョンがどんな生活を送っているのか聞かなかったわね、迂闊だったわ、でも部屋は綺麗だったし、
まさか別の女が掃除をしてたりして、いやいや、キョンに限ってそんなことはないはずよね?
まちなさいよ、高校時代は案外モテてたような、でも鈍キョンだしフラクラだし皆に優しいし、以外と頼りになるし、昨日のキョンにはさすがの私もメロメロになっちゃったしな、
キスもしたし、あの後すぐ寝ちゃったけど、どうしよう、他に女がいたら私もうダメかも、
よし決めたわ、今日はキョンに色んなことを聴こう、私と離れてから、大学生活はどうだったのか、今はどんな生活をしてるのか、交友関係、女関係、キョン~正直に答えないと死刑よ、
なんかやる気出て来たわね待ち合わせ場所はあそこがいいわね、SOS団の皆とよく行った喫茶店、
そうと決まれば早速電話、キョン待ってなさいよ。あんたを丸裸にしてやるからね。

経験を補う思い出

ハルヒが家に帰ってから、さてどうするかな、何処に連れて行けばいいのやら、さっぱり解らん。
俺にはこういう経験値がほとんどないに等しい、困った。
動物園?遊園地?いや歳を考えろ歳を、映画?今の時期は良いのがないな、ボツだ。ドライブ?車なんて持ってね~いやレンタカーを借りれば、免許だけは持ってるし、いやいやどんだけ遠出するきだよ、明日は仕事があるだろうが仕事、金もかかるしボツで、
本格的に手詰まりだな、ヤバイな~俺がこんな感じで唸っていると携帯が鳴りだした。
ハルヒだな準備ができたらしい、
『もしもし』
『キョン、あんた高校の時に皆でよくいった喫茶店覚えてる?』
当たり前だ忘れる訳ないだろ、俺があそこの喫茶店にどんだけお金の奉仕をしたか、今考えただけでも涙が自然とこぼれ落ちるよ。
『あぁ~覚えてる』
『じゃあ今からそこで待ち合わせで良いわね、勿論私より遅かったら、どうなるかわかってるわよね!じゃあねバイ』
やれやれ、
久し振りだなあの喫茶店もまあ俺がハルヒより、早く喫茶店に着くことはないだろう。
ということは、久々にあのセリフが聞ける訳だ。なんか急に楽しみになってきたな、
俺は最高の笑顔とポニテであのセリフを言うハルヒを想像しながら、足速に懐かしい喫茶店に向かって行った。

貴方を知りたい

此処に来るのもホントに久し振りね、あの頃となんにも変わっていない。懐かしさが込み上げてくる、変わってしまったのは大人になった私たちだけ。
キョンは相変わらずの遅刻魔で、私は何時もの用にこう言うの
「キョン遅い遅刻、罰金」
「待たせたなハルヒ」
「遅いわよキョン、団長を待たせるなんて団員失格」「ん?何か変ね」
「あんたなんで遅刻したのに楽しそうなのよ」
「お前だって笑顔で悪態ついても効果はないぞ」
「うるさい、早くあんたに会いたかったのよ」
「スマン、最後の方がよく聞き取れなかったんだが」「バカ」
「嘘だ全部聞こえてた、俺も会いたかったよハルヒ」キョンがそういって私を抱きしめた。
「!!キョン?」
「なんだ」
「他の人たちの視線を物凄く感じてるんですけど」
「そうか?俺はハルヒしか感じてないけど」
「!!私は恥ずかしいの」「そっか」
キョンは残念そうに私から離れて椅子に座った。
そんなあからさまに落ち込まなくても良いでしょう。「二人の時ならいいけど、公衆の面前では駄目よ、わかった?」
「了解しました」
だからその笑顔は反則よ、どんだけ嬉しいのよ、まったくこのエロキョン。
 
「それで今日は何処に行きたい?俺は結構考えたがさっぱりだった、お前に任せる」
「自分で誘っといてそれはないでしょ、相変わらずねキョン」
「面目ない」
「まあ~いいわ、今日は調度あんたの話しを聞くつもりだったの」
「俺の話し?」
「そう、あんたの話し、私はあんたが私と離れてからどうしてたのか知りたい」「私は私のことを話したでしょ、キョンもさっさと自分のことを話しなさい、嘘ついたら死刑ね。」
「あ~成る程、確かに俺がハルヒと離れてからどうしてたか言ってなかったな」「そうよ、さっさと白状しなさい」
「白状しろと言われても何問、隠し事はないぞ」
「嘘」
「嘘じゃねえよ、俺がハルヒに隠し事できると思うか?」
「部屋よ?」
「部屋?」
「随分片付いていたじゃない、誰か別の女が掃除してるんじゃないの?」
「部屋が綺麗な理由か、成る程ね、お前案外細かいな。」
「どうでもいいでしょさっさと答えなさい」
「ま~落ち着け、そこを答えるには、まず俺の仕事を知って貰わんとならん」
「そうよ、それも知りたかったの、あんた一体どんな場所でどんな仕事してんのさっさと言いなさい。」
「言うのは簡単だがせっかくだから俺の仕事場に連れて行ってやるよ、聞くより直接見たほうが良いだろ」「そうね、それが一番良いは、そうと決まれば早速行くわよ、キョン案内しなさいあんたの職場に」
「了解しました団長」
 
キョンは随分楽しそうね、何なの、掃除してるのはやっぱり職場の女なのかしらでもそれが本当ならどうしよう。
私の心配を余所にキョンは楽しそうに私の手を引っ張って歩く。何なのかしら。

手に入れた幸せ

キョンに引っ張られて懐かしい坂道を登った、着いた場所はやっぱり北高だった。
「着いたぞ」
「北高に来てどうすんのよあんたの職場に連れて行きなさいって言ったでしょ」「だから、此処が職場」
「マジ?」
「マジですよハルヒさん」「信じられないあんたが先生なんて、しかも北高の」「そう、その顔が見たかったんだよ俺は、驚愕ハルヒだな」
成る程ねキョンが楽しそうにしていた理由がわかったわ、確かに驚愕ね。
 
「仕事が結構忙しくてな家に帰るのが夜遅くになりがちで、家には寝に帰ってる感じなんだ、だから汚れ用がないのだ。」
「心配したか?」
「するわけなぃ・・・したわよ、キョンにもし別の女がいたら私、、、もう」
「いるわけないだろ、俺はハルヒ一筋なんだ。文句あるか」
「ない」
「よろしい」
「キョン」
「なんだ?」
「私、行きたい場所があるの」
「わかってるよ、SOS団の部室だろ」
「うん」
「休日でも来てる先生がいるから、職員室に鍵借りにいこうぜ」
 
久々の部室、年月と共にあそこも変わっているのだろうか。
パソコン、有希の本、みくるちゃんの服、古泉君のゲーム、私達は全てを残してあの部屋をでた。
理由なんてない、これらのものはすでに部室の一部になっていたんだろう。多分全て学校が処分してる、もうあそこはSOS団の部室ではなくなっている。
少ししんみりしながら扉を開く私はそこで有り得ない光景をみた。
「どうゆうことなの?」
全てあの頃のまま残ってる掃除もしてるみたい。
「一体誰がこんな」
「俺しかいないだろ」
「実は此処は今、文芸部の部室なんだ」
「最初は妹とミヨキチが遊び場にしてたんだがあいつらも卒業して、いよいよ廃部かなといってたら、ある女子生徒が文芸部に入部したいって俺に言ってきたんだよ」
「何故か文芸部顧問になってた俺は、その娘と一緒に部員集めに走り何とか廃部にはならなかった。」
「その娘も卒業して行って、やれ今度こそ終わりかと思ったら」
「今度は喧しい女子生徒とそいつに引きずられてる男子生徒が部室に現れて、来るなり『文芸部に入れなさい』だもんよ、ちょっとしたデジャヴュだったな」
 
「という訳で俺は今そいつらと文芸部をやってんだ」「俺達みたいに無茶苦茶はしないが、こいつらは見てて飽きないからな結構楽しんでる。」
 
「ふぅ~んキョンも以外と頑張ってたんだ」
「まあ、この部室には俺達の高校生活のほとんどが詰まってるしな」
「SOS団の雑用の一環だなこれも」
「ありがとうキョン」
「感謝は言葉より行動で示してくれた方がわかりやすいぞハルヒ」
「しょうがないわね、今は私たちしかいないから特別よキョン」
 
そういって、私たちは少し長めのキスをした。
 
SOS団にいた時も楽しかったけど、キョンと一緒にいるとあの頃とは違う楽しさを感じることができた。きっとこれが幸せってことね。

大切にしたい今とこれから

私たちは部室を出て坂道を下っていた。
「これからどうする」
「もう結構良い時間だし、ご飯にしましょ」
「そうだな」
「キョンは何か食べたいものある」
「ハルヒが作ったカレー」「ハァ~外で食べる気はないの?」
「ないな」
「もう、しょうがないわねじゃあキョンの家に行く前に買い物して行きましょ」「了解」
スーパーで適当にカレーの材料を買って、キョンの家に到着。
「キョン待ってなさい、美味しいカレーを作ってあげるからね」
「手伝っても良いか?」
「大丈夫よカレーなんて簡単よ簡単」
「一緒に作ったほうが楽しいだろ」
「それもそうね、じゃあキョンは野菜を切ってちょうだい」。1時間後
「できたわね」
「美味そうだな」
「当たり前よ、あんたと私で作ったんだから美味しいに決まっるじゃない」
「そうだな」
「そうよ、さっさとテーブルに並べて、食べるわよ」カレーはやっばり美味しかったけど、私はキョンと一緒に作ったという過程で満足だったかな。
「ごちそうさま」
また二人で洗いものをして食後のコーヒーを飲んでいた。
「なあ、ハルヒ」
「なに?キョン」
「お前、何時引越して来るんだ?」
「そうね、なんやかんやで一ヶ月くらい先かな」
「ハァ~一ヶ月か」
「キョン、もしかして寂しの?」
「正解」
「何言ってんの、一ヶ月なんてすぐよすぐ」
「そうだな~」
「何、まだ不満があるの」「不満じゃないが、一ヶ月会えないかもしれんから、なんか、前借りがほしい」「前借りってなによ?」
「部室での続きかな」
「ハァ~あんたはどんだけエロキョンなのよ、まったく」
「駄目か?」
「くぅ!また、卑怯よその顔は反則よ、何なのよ、わかったわよ、今日は泊まってく」
キョンの顔が切なそうな表情から凄い笑顔になった。ハァ~やれやれね。
これから先は禁則事項よ禁則事項、恥ずかしいし
妄想も禁止ね
 
朝、キョンの手を優しく離し、私は服を着て台所に向かった。朝ごはんの支度をしなきゃ、キョン、今日は学校だし、ここで私は良いことを思い付いた。
 
そんなところでキョンが起きてきた。
「おはようハルヒ」
「おはよう」
「私は朝ごはん作ってるから、あんたはシャワーを浴びて来なさい。」
「了解」
キョンがシャワーしてる間に朝ごはんと例のものを作った。
「キョンさっさとご飯食べて学校に行く準備をしなさい」
「わかってますよ」
「いただきます」
 
キョンが食事を終えて、部屋で着替えている間に、私は後片付けをして、キョンを待った。
「ハルヒ、準備出来たぞ、行こうぜ」
「ちょっと待ってキョン、これ作ったんだけど」
「お弁当?」
「そうよ、これも前借りの一環ね」
「ありがとう、ハルヒ」
「別にたいしたことないわよ」
「嬉しい」
「ハイハイ、こんなことしてたら遅刻よ遅刻、さっさと行くわよ、途中までは一緒でしょ」
「おう」
キョンも喜んでるし、よかった。
 
「ハルヒ」
「なに?」
「楽しかったな、この二日間」
「そうね、でもこれからもずっと一緒よ」
「そうだな、ずっと一緒にいよう」
「長く一緒に居れば色んな弊害があるでしょうね」
「当たり前だな、喧嘩もするだろうし、お互いの嫌な部分も見えちまう」
「でもね、私は確信してるのキョンと一緒ならそれ以上の幸せを感じることが出来るって」
「責任は重大だな」
「そうよキョン、だから私を幸せにしなさい」
「善処します」
「よろしい」
 
分かれ道に差し掛かる
「キョン」
「!!」
「またね」
私は別れ際にキョンに軽いキスをした。一時の別れ、べつに寂しくはない、むしろこれからのことを考えると楽しくなってくる。
 
あの時、キョンが私の手を掴んでくれたから今がある。
この幸せな時をずっと大切にしたい、大事な人と共。
「ずっと一緒よキョン」