朝比奈みくるの陰謀 (89-614)

Last-modified: 2008-05-15 (木) 02:24:51

概要

作品名作者発表日保管日
朝比奈みくるの陰謀89-614氏08/05/1508/05/15

作品

ここはSOS団の部室前の廊下だ。しかも扉のすぐ横にいる。なんでここにいるかと言うと、朝比奈さんが俺の右腕を掴んで離さないのだ。その朝比奈さんは見るものをすべて恋に落とすような笑顔でいる。普段ならこれは最高の状況なのだが、残念ながらそうは問屋がおろさない……むしろ最悪な状況だというのが嘆かわしい。ああ、なんてこった。
 
まぁその前に俺がこんなとこに突っ立っていたか説明したほうがいいだろう。だから話は少し前に戻るから、皆の衆よ少し我慢して聞いてくれ。俺は掃除当番で少し遅く部室に向かっていたんだ。ハルヒの奴は「サボって早く来なさい!」と軽く言ったが、俺は真面目に掃除してきたわけだ。まぁサボると後で面倒な事になるというだけで、別に褒めてもらおうとおもってやったわけじゃないぞ。まぁそんなこんなで部室の扉付近に来たときに…
 
「SOS団作るきっかけ?」
 
…という、ハルヒの大声が耳に入っちまったもんで、つい足を止めてしまったわけだ。いや、ちょっとまて、盗み聞きなんて事言うなよ。ハルヒの声が大きすぎるから廊下でも十分聞こえるんだよ。
 
「はい、あたしたちが来る前の話ですし、あたしたちは皆知らないんですよ♪」この声は朝比奈さんだな。まぁ長門がこんな台詞を言うわけないし、古泉がこんなかわいい声で”あたし”なんて言うわけないから当たり前なんだが……
「きっかけはキョンの一言よね~。無いなら作ればいいんじゃない、ってすぐひらめいたのよ!」
ちょっと待てハルヒ、すぐじゃないだろ、すぐじゃ…。だいぶしばらくして、授業中にひらめいたんだろう?。まぁこの調子じゃあのとき俺をいきなり後ろにひっぱって机にぶつけた事もきっと忘れてるんだろうな。あれ、痛かったんだぞ。
「あのあとキョンも協力するって言ってくれて、早速部員集め始めたのよね~」
ちょっとちょっと待てハルヒ、俺を階段上まで引っ張っていって強引に協力させたんだろう?まぁこの調子じゃあのとき俺が”なんで協力しないといけないんだ?”と聞き返したのも全く覚えていないんだろうな。あれ、カツアゲされてる感じだったんだぞ。
「それで早速、有希とみくるちゃんを引っ張ってきたってわけよ。キョンなんてみくるちゃんのそのやわらかくて大きな胸を触りそうだったから大変だったわよねぇ」
ちょっとちょっとちょっと待てハルヒ、あのときはお前が率先して朝比奈さんの胸を触ってたから俺が止めたんだろうが!
どうして俺が朝比奈さんにセクハラしてた事になってるんだ!? まぁ本当にここまで都合よく記憶を改ざんしてるとは恐れ入った……というかハルヒの事だから本気でそう思ってるかもしれんが。 
いや、さすがにここまで欠席裁判で”有る事無い事”……じゃないな、”無い事無い事”だな……を一方的に言われたら冤罪で死刑判決出されそうなので、部室に入って疑いを晴らそうと扉に手をかけようとした俺を朝比奈さんの一言が硬直させた。
「でもどうしてキョンくんだったんですか?」
「え?」
え?
いみじくも、ハルヒの声と俺の心の中の声がハミングした。ああ、ここまでハルヒと一緒の反応をするのはもうパブロフの犬みたいな条件反射なんだな。
「まず、あたしたちよりも先にキョンくんを選んだんですよね?なぜだったんですか?」
さて、なぜなんでしょうね? それは俺はハルヒじゃないのでわかりません。というか朝比奈さん、その質問をハルヒにする前に僕があなたの胸をもんだというハルヒの記憶間違いをマジ訂正してほしかったんですが……朝比奈さんもいろいろおもちゃにされてるから忘れてるんだろうな。ああ、こうやって俺がみんな悪いことにされていくのだろうか……という俺の心の中の声がむなしく響く中、部室では段々と恐ろしい方向に話が行っている事に不覚にも全く気がつかなかった……
 
 
 
「なぜって、言われても、みくるちゃん、キョンが協力するって言ったから…」
だからそんな事はあの時は一言も言ってないぞ、ハルヒ、記憶捏造しやがって……と思ってたとこで、余計な一言を言う奴の存在を失念していた。
「いや、それは僕も先ほど聞きましたが、その前にどうしてあなたが彼と一緒に行動しようと思ったのかを朝比奈さんは知りたがっているみたいですよ。」
おや、これはこれは。ハルヒのイエスマンの古泉の声じゃないか、珍しいな。お前がハルヒに意見をするとは。
「ん~なんでかしらね?」
そこに間髪居れず朝比奈さんのツッコミが入った!
「ずっと前からキョンくんが気になってた、とかですかぁ?」
「そ、そ、そんな事ないわよ、み、みくるちゃん! 何言うのよ?」
「うふふ♪ だってキョンくんと話すようになってすぐSOS団結成ですよね? よほどキョンくんが気に入ったって事で…」
「ち、違うわよ! キョンはね……キョンは…なんだか今までの男と違って…何かその…」
「キョンくんはどこが他の男の人と違ったんですか?」
ああ、朝比奈さんノリノリで質問してるな…なんかいつもと別人みたいだ。というかハルヒが俺についてしどろもどろになって語るなんて事あるんだな…と思ったら意外な事を言い出した。
「キョンの……その…目に邪心が感じられなかったの。あのときまで、男子はあたしを見る目はなんて言うか…いやらしいのか、変なものを見るようなのばっかりだったから。でもキョンは違った。キョンの目は…なんというかやさしさに満ちてた感じしたの。」
へ?ハルヒ、お前変なもの食べたんじゃないか?
「だから、キョンと一緒なら何やってもいいんじゃないか、って思ったのもあるわ。」
ふーん、そうだったのか、ハルヒ?
 
「でも、最近のキョンはあたしと話すときに目をそらすのよ。だとすると、きっとあたしによからぬ感情を抱くようになったんだわ!ホント、エロキョンなんだから…」
ああ、ひどい言われようだな。というか、最近はハルヒのその綺麗な目と100Wの笑顔を正面から見れないんだよ…と思ってたとこに朝比奈さんの爆弾発言がハルヒに炸裂した!
「それはきっとあなたに対する恋心が芽生えたんですよ♪ キョンくんの中に」
ちょ、おま……朝比奈さん、何を言うんですか、何を! 俺がハルヒに恋心なんて抱いてるなんて、ハルヒが全力で否定するに…
「そ、そうなの?」
あ、あれ? お、おいハルヒ、お前、朝比奈さんの言葉を否定しないのか?
「そうですよ。人は好きになった相手の目を最初は恥ずかしがって見れなくなるものですよ。男の人だってそうですよね?」
あ、朝比奈さん、古泉に質問を振らないでください、あいつはきっと肯定しかしない…
「朝比奈さんの言うとおりですよ。それに彼は恋心抱いてもまだ今は必死にそれを表に出さないようにするでしょうね。」
ちょっとまて古泉、肯定どころかどさくさにまぎれて何を言ってるんだ!?
「それ、どういうこと?」
「あなたが彼の心を否定したら彼はここに来なくなる。それを彼は恐れてるから心を隠そうとする。」
間髪いれず回答したのは……長門!? というか、俺がハルヒに恋心抱いてることは規定事項になってるのかよ、やれやれ…と思ったらハルヒが意外な事を言い出した。
「あ、あたしが…キョンを否定するわけ……できるわけないわよ。そ、そうよ、もしキョンがあたしと付き合いたい、とか言い出したら考えてあげないこともないわよ!」
そ、そうなのか?ハルヒ? お前、俺を単なる下僕くらいにしか思ってたんじゃないのか?もうなんだか訳わからないな。
「いい! ここであたしが言ったことはキョンに話しちゃだめよ!」
いや、全部聞いちゃってたりするんだが……って、あれ、部室が静かになったな……まぁハルヒがだんまりすればあの3人でおしゃべりするはずがないから自然と静かになるんだが…
 
そう、ここで俺はさっさと逃げ出せばよかったんだが、それと気がついたときにはもう遅かった。
 
いきなり部室の扉が開いて、腕を掴まれた…しまったハルヒか!! と思って見てみれば…あれ、朝比奈さん??どういうことですか?
「キョンく~~ん♪盗み聞きはよくないですよぉ♪」
え?え?え? あ、朝比奈さん、その笑顔はなんですか……??
 
 
 
さて、ここで冒頭の場面に戻るわけだ。で、ここで問題だ!もしこのままいればハルヒに気づかれること間違いない!
そうなると部室が修羅場になることは間違いないわけで、だがハルヒさえ気づかなかければ何とかなる。
”三十六計逃げるに如かず”ということだが、ここでどうやってこの場を逃げ出すか?
 
3択 - ひとつだけ選ぶ!
 
答え① かわいい朝比奈さんが俺を逃がしてくれる。
答え② ハルヒが俺に気がつかない
答え③ ハルヒが俺に気がついて、俺はハルヒに一方的に怒鳴られる。現実は非情である。
 
おれが〇をつけたいのは答え②だが、あのハルヒがこの朝比奈さんの行動を見て気がつかないほど間抜けなわけはない。ハルヒを何かほかの事に気をそらせればいいかもしれないが、後の二人、長門と古泉がそこまで気のきいた事をしてくれるはずがない。やはり答えは・・・①しかない!
 
ということで、俺は古泉みたいに朝比奈さんの耳元でささやいた!
「朝比奈さん、手を離してくれませんか?」
「うん、それ無理♪」
即答かよ! ってそれってあの朝倉涼子の台詞じゃないか!?
「じゃ、じゃぁ時を戻って…」
「うん、それも無理♪ 結果はどうせ同じなんだし♪」
ああ、以前教室で聞いた恐ろしい台詞を笑顔で言う朝比奈さん、あなたは何者なんだ……というか、だ、だめだ!
 
答え - ③  
 
答え ③  
 
答え③
 
「ちょっと!!!!キョン!!!そこにいたの!!!!」
うわ!ば、ばれた!? ああ、ハルヒの足音が近づいてくる…
「ま、まさか、キョン、さっきの会話聞いてなかったでしょうね!!」
 
 
 
「じゃ、あたしたちは外に出てますね~」
わたしと長門さん、古泉くんの3人は涼宮さんに引っ張られて中に入っていったキョンくんと入れ替わりで外に出ました。
なにやら涼宮さんの大声とキョンくんの小さく反論する声が聞こえてきますけど、”夫婦喧嘩は犬も食わぬ”と言いますから、しばらくすれば落ち着きますよね。あら、古泉くんが何かわたしに聞きたそうです……
「いや、朝比奈さん、あなた本当に策士ですね。」
「えぇぇ~そんな事ありませんよ、古泉くん♪」
「僕たちが話したわけじゃありませんし、あれくらい刺激しておかないとあの二人は進展しませんから、いい薬かもしれませんが……ところでいつ彼が部屋の外にいると気がついたんですか。僕は少し前くらいに外で音がするのを聞いてなんとなく気がついたのですが?」
「禁則事項です♪ …というのは冗談で、窓に一瞬キョンくんらしい影が映ったので。」
「ああ、なるほど。しかし涼宮さんをあまり刺激しないほうがいいですよ。」
「大丈夫ですよ、それに何も変化しない観察対象にあたしはあきあきしてましたし♪」
バサッ! ドサドサ!!!
あらら、長門さんが本を落としたみたいです。私を見て少し呆然としてるみたいですね……なぜなんでしょう?