本屋にて 後日談 (87-744)

Last-modified: 2008-04-27 (日) 05:02:38

概要

作品名作者発表日保管日
本屋にて 後日談87-744氏、761氏08/04/2608/04/27

 

作品

ハルヒに付き合わされて色々連れて行かれた騒がしい日曜日から、日は変わり月曜日。
昨日の疲れを大いに残したまま坂を登っている途中で少し先を黄色いリボンを揺らしながら歩いている我らが団長様を見つけた。
「ハルヒ」
後ろ姿にそう声を掛けるとピクッとして後ろを振り向く。
「キョン!珍しく早いんじゃない?」
朝っぱらから元気だなお前は。一年中元気な気もするが。
「まぁな。たまにはこういう日もあるんだよ」
「ふ~ん…あ」
「どうした?」
肩を並べる位置まで追いついたところハルヒが何かに気が付いたように声をあげた。
「朝の挨拶してないでしょあんた!」
お前もしてないだろうが。
「おはようハルヒ」
これで満足か?
「えっ、あ、おはよキョン」
すると何処か恥ずかしそうに下を向いてしまった。
おい、急に俯いてどうした、大丈夫か?
そう下から顔を覗こうとするが、
「あ、当たり前でしょ!」
とバッと顔を上げ俺の手を取り歩き出した。
「おいそんな早く歩かなくてもいいだろ、おっと」
「急がなきゃ遅刻するじゃないの!ばか!」
この時間帯で遅刻はないだろ。この時間で遅刻にされたら岡部に断固抗議するぜ。
そのまま手を掴まれたまま引きずられるように登校することになった。
下駄箱でもハルヒが手を離さないものだから履き替えにくいったらなかった。
やれやれ、俺が何をしたっていうんだろうね全く。
そしてそのままの状態で教室のドアを開けると―――
 
パンッパンッパンッパン!!
 
銃声が、なんてわけでもなく大量のクラッカーが鳴らされた。
「なっ…」
俺もハルヒも手を繋いだまま口を開け固まっている。
ここ、教室だよな?
そんな俺たちに一斉に声がかけられる。
「「「おめでとう!!キョン(くん)に涼宮(さん)!」」」
おいおい何のドッキリだこれは。
また古泉の野郎の仕業か?と目で探してみるがそこにいるのは紛れもないうちのクラスの連中であった。
クラスの外を見れば他のクラスの連中がわらわらと集まってきているのが見えた。
おい、ハルヒも、
「良く分からないけど、皆ありがと!」
とか言ってるんじゃない。
お前らワイワイ言ってないで誰かちゃんと説明しやがれ。
それを悟ったのか国木田が寄ってきた。
「とりあえずおめでとうキョン。でもそれならそうとちゃんと言ってくれれば良いのに」
そんなニコニコ顔で言われてもな全然意味が分からないのだが。
「で?いつ挙式なの?会場は何処?勿論呼んでくれるよね?」
「………はぁ?」
大丈夫か?国木田。
「おいちょっと待て。それは一体…」
「えっ?だって涼宮さんと結婚するんでしょ?」
「「はぁ!?」」
俺とハルヒの驚きの声が重なる。
「なんで、あ、あたしが、こんなバカキョンと…まぁ、で、でも?キョンがしたいってんならやってあげない…」
「待て待て待て!!国木田!どういうことか説明しろ!」
つうかハルヒ、お前まで何を言ってやがるんだ。
「えっ?違うの?谷口からそう聞いたんだけど」
「谷口!!」
「うっせぇ!」
何がだ。お前の方が声大きいぞ、アホ。
「お前ら昨日仲良く本屋で『結婚式場の選び方』って本と、『初めての出産』って本買っていったろうが!!」
「………あ」
これはハルヒの「あ」である。
俺が何か反論してやろうとしたのだが、
「それだけじゃないのね!」
ハルヒに何やら言っていた阪中が急に声を上げた。
「あたし見たのね!」
何をだよ。また幽霊か?
「昨日キョンくんが涼宮さんと手を繋ぎながら楽しそうにデートしてるのを!」
「いや、昨日のは違っ…」
「二人で指輪みたり子ども服みたりしてたのね!」
そこまで見られていたのか。いや、それには色々意味があるんだが。というよりそもそもあれはデートなんかじゃなくてだな…
「と言うわけでおめでとうなのね!」
どうすんだこの状況!
明らかに全員誤解してるし、ここまで広がってしまっては収拾もつかない。
それに朝一番からこの祭騒ぎはマズイだろう色々。
と言うかお前らただ単に楽しんでるだけだろ。
はぁ…全く、やれやれだ。
 
…もう既に手遅れかもしれないが一応説明をしておこう。
ハルヒがその例の二冊を買ったのと子ども服売り場を見ていたのは、何でも親戚だかが出来ちゃった結婚するらしいのだが、そのお祝い代わりにそれらを買ったらしい。
服はサイズが分からないから止めとけと俺が助言して止めさせた。
指輪はハルヒが見たいと言うので二人でちょっと見ただけで決して結婚指輪がどうのこうのと言うわけではない。
つまりは俺たちが今結婚するわけではないし、ハルヒが俺の子どもを身ごもったわけでも無い、と言うことである。
つうか気付けお前ら!
俺はまだ結婚出来る年齢じゃねえっての!
 
さて、話を戻して俺とハルヒがその後どうしたかと言うと…ま、それは禁則事項ってことで、一つよろしく頼む。
そうだな変わったことと言えば、俺とハルヒの左手の薬指に対になる指輪がはめてあるってことくらいか。
 
やれやれ、だな。

イラスト (761氏)

 
87-761 honya.jpg