本棚のスキマに (26-484)

Last-modified: 2007-03-18 (日) 15:32:53

概要

作品名作者発表日保管日(初)
本棚のスキマに26-484氏、536氏06/11/1306/11/15

作品

ではいきます。ハルヒ愛が感じられる内容であれば良いのですが。
(注)ハルヒとキョンは結婚しているという設定です。

 

 

『本棚のスキマに』

 
 

あたし達の結婚生活もついに二年目に突入よ!

 

さっそく今日も一日が始まるわ!
キョンをさっさと送り出し、洗濯開始。
そのうちに食器を洗って、台所をお掃除よ。

 

ふぅ、お茶を飲んでちょっと一息。
自分で言うのもなんだけど、結構お茶を入れるのが上手くなってきたのよ。
まだまだみくるちゃんにはかなわないけどね。

 

さっ、洗濯物を干して、買い物に行くわよ。
と行きつけのスーパーで有希とばったり。
「おはよう」と相変わらず静かにうなずく有希。
「おはよ。有希も買い物? 奇遇ね」
「……奇遇」
と言いつつ、いつも会うのよね。
あたしが一人で出かけるときに限ってよく遭遇するような気がする。

 
 

今日もいつもの喫茶店でお茶しながら雑談。
たわいのないほのぼのした時間……。
また皆で集まってわいわいするわよ!
結婚したからってあたしが落ち着くと思ったら大間違いなんだからっ。
ってことで有希と分かれて帰路につく。

 

お昼を軽くこなして、のんびりと休憩タイム。
街にでも出ようかと思ったけど、なんか今日はいいわ。
今後の予定でも考えておきましょう。

 

ふと気が付くと夕方が近づいて来た。洗濯物を取り込む。
ポカポカの毛布が気持ちいい。
──いけない。眠っちゃうところだった。

 

そうだ。キョンの部屋を掃除するのを忘れていた。
すぐ終わらすから良いわよね?

 

──いくらラブラブで、おまけに正式に夫婦になったとはいえど、あたしはプライバシーは尊重するタイプなのよ。
そこんとこ線引きはシッカリとしておかないといけないわ。

 

だから普段、あたしは床を掃除機でかけること以外は避けている。
部屋の中やキョンの机を、漁ったり、触ったり、覗いたりしないようにね。

 

……ホントよ? 気にならないと言えばウソになるけど。

 

あたしもキョンに見られたら困るようなモノ持ってるしね。
学生のころに作ったキョンぬいぐるみとか、キョンのより抜き写真集とか……。
もう! これ以上は言えないわっ。恥ずかしいんだから。

 

と、一人でクネクネしてたのがイケなかった。
キョンの本棚の角に足の小指がアタック!
わたたたたっとよろめくあたし。
ん、もう!

 

そのとき気付いた。
本棚が微妙にズレている……。

 

モチロン中身ではなく、本棚自身がよ。
片方が前に出てて、ちょっとスキマが出来ているみたいね。
小指をぶつけたのはこのせいよっ。まったく。

 

それにしても……メチャメチャ気になるわね。これは不思議の匂いがするわっ。
──そういえばここ暫く不思議探索をしてないわね。今度の休みにでもどこか連れてってもらいましょう。
などと考えながら、そっと本棚の後ろ、スキマを覗きこむ。
何か落ちている。雑誌、かな? 影になっててよく見えない。
なんとなくスクラップ帳やアルバムに見えなくもない。

 

どうしよう……。

 

こっそり本棚を元の位置に戻したほうがいいのかな?
それとも、このままにしておこうかしら。
でもでもあたしが掃除したのは分かるんだし、このままってのは……。
それに……いかにもアヤシイ。

 

これはもう、あきらかにイヤラシイ本だわ。
わざわざ本棚の後ろに隠してるなんて、もうそれだけでいやらしいわ。
あたしの頭に、普段は想像さえもしたくないような卑猥な映像が駆け巡った。
──キョンのやつ。
むぅ~、とあたしはアヒルになる。

 

これはもう立派な浮気ね! 他の女の肢体をジロジロ見つめてるなんてっ!
破棄よ破棄! こんなもん捨てちゃうんだからっ。
そうと決めたらさっそく……ってあれ? 手が届かない。
むむぅ~、とあたしはペリカンになる。

 

キョンの本棚はこれがまた重くて、なかなか動かせない。
これを毎回動かしてるなんて、キョンったら結構力持ちなのね。
さすがあたしの旦那さまねっ。

 

って、駄目よ。甘やかしてはダメ。
断固抗議するわ。これはあたしに対する裏切りなんだからっ。
あたしはキョン以外の男には見向きもしないのにっ!
もう完全に、いやらしい本、と決め付けているあたし。

 

机の上にこれ見よがしにでも置いておこうかしら。
キョンの慌てふためく顔が目に浮かぶ。
『捨ててくれないと家出するんだからっ』
なんてね。
あの事件以来、コレがあたしのキョンに対する切り札なの。
あんまり使うとキョンが泣きそうになるから、ほどほどにね。
なんだかんだ言ってキョンの笑顔があたしの心の清涼剤だもん。泣き顔は見たくないわ。
……泣かすのはいつもあたしなんだけどね。

 

──ガチャッ。
『ただいま~。今日はお土産を……ってあれ? ハルヒ~』

 

取り敢えず本棚を動かすのは無理だわ。棒かなんか無いかしら。
そうだ! 掃除機を使えばいいじゃない。
……駄目ね。スキマが狭くて入らないわ。

 

『お~い────ハルヒ? ……転寝でもしてんのかな?』

 

キョンの部屋の押入れになんかないかしら?
っとイケナイ。勝手に開けちゃ駄目ね。
……でも考えてみれば遠慮する必要なんてないわ。
これはホントにあたしを裏切ってないのか、それを確認するためなんだから! 大事の前の小事よ!
ススっと押入れを開ける。……う~ん使えそうなのはないわね。
金庫みたいなのが気になるけど、今は後回しよ。次は机の周りね。
もうここまで来たら遠慮しないわ。さあ次は──

 

「ハルヒ。何やってんだ?」
「わきゃぁっ!」

 

とっさに振り向きながらファイティングポーズをとる。
何よ? やる気!? キョンのくせに! ……あれ?

 

「な、なんであんたがここにいんのよ!」
「ただいまハルヒ。今日はちょっと早く終わったんでな」
ほら、とビニール袋に入った箱を右手でぶら下げて差し出す。お土産かしら。
クンクンと鼻をならす。なんか甘いにおいがする。ケーキ、じゃないわね。何かしら。
「たまにはこういうのも良いかと思ってな。ん? 掃除中だったのか?」
キョンが不思議そうな顔で言った。
「そ、そうよ! 掃除よ、見たら分かるでしょっ」
とっさになぜか言い訳をするあたし。事実、掃除しに来たんだから問題はないはず。
「そうか、ありがとさん。ワッフル買って来たんだ。食べようぜ」
うん、と頷きながらキョンと台所に向かう。
──危ないところだったわ。キョンはニブイところがあるし、気付いてないわよね?

 

「うん。おいしい」
ワッフルを頬張りながらあたしはしあわせになる。
テーブルの向かい側からキョンがにこやかに微笑んでいる。
「おい落ち着けよ。逃げやしないぞ」
そう言ってあたしの口の周りについたシロップを指ですくいそのまま口に運ぶ。
「甘いな、ハルヒの味だ」
なななななななななに言ってんの!? こいつ!
多分、いま、あたしの顔は真っ赤だ。
「と、当然よ!」
……あたしも何を言ってるんだろう。すごく恥ずかしい。

 

わたわたしてるあたしを、キョンはじっと見つめてくる。
あたしはなんだか金縛りにあったみたい。……じっとしてキョンを見つめ返す。

 

「──ハルヒ」
キョンの目にはあたしが映っている。
「──キョン」
あたしの目にもキョンが映っている。

 

キョンがテーブルに手をついて顔を近づけてくる。
あたしもキョンの方に唇を突き出す。

 

──ちゅっ。

 

一瞬だったと思う。
もうあたし達は夫婦で、これくらい当たり前のことなのに……。
それでもこの一瞬がいつまでも続けばいいと──そう思った。
キョン……大好き。

 
 
 

「ところでハルヒ。さっきは何かイイモノでも見つけたのか?」
「……な、なんの話かしら?」
「俺の部屋で何を探してたんだ?」
「掃除よ……別になにも」ごにょごにょと歯切れが悪くなるあたし。
「お互いの部屋は漁らないって決めたのハルヒだよな?」
うぅ、キョンの視線が痛いわ。でもアレは不可抗力みたいなもんよ!
「だってキョンが悪いんだから!」
「え……俺が?」
「本棚の後ろにえっちぃ本を隠してるでしょ!」
もうね、あれよ。小一時間問い詰めるイキオイよ。
「さあ白状しなさいっ!」
するとキョンは不思議な顔で、
「そんな本は付き合い始めたときに全部処分したじゃないか。なんのことだ?」
え……じゃあアレは何なのかしら?

 

あたし達はキョンの部屋に向かった。
現場を見せた方が手っ取り早いもの。

 

「あ~これか……」
キョンが言うにはもともと本棚の上に置いてあったのだが、
何かの拍子で本棚がズレて、そのスキマに落ちた、ということらしい。
でもそんなことはどうでもいい。問題はそのアルバムの中身よ!
そう、よく見えてなかったけど、アレはアルバムだった。写真とかをしまうアレよ。
「さ? キョン。開示してもらうわよ」
「あんまり見せたくないんだが」今度はキョンが歯切れが悪い。
「見せなさい」とあたし。拒否権なんてないわ。

 

「うあ」
何コレ……。おもわずマヌケな声を出してしまった。
信じらんない。こんなものをキョンが持っていたなんて。

 

そのアルバムにはあたしの寝顔が所狭しと貼ってあった。
まだ高校生の頃の写真──団長机に突っ伏してる姿。教室の机で居眠りしてる姿。
結婚してからの──パジャマを少しだけはだけさせたあられもない寝姿やお昼寝中の丸まってる姿……などなど。
「何よコレ……隠し撮りじゃない!」
「ちゃんと聞いたぞ。撮っていいかってさ。寝てるときに」
キョンが笑いを堪えるように口元に手を当てている。
「『んう……キョン』って返事も貰ったし」
なななななななああああああ!
「このバカキョン! エロキョン! それは寝言よっ。返事じゃないわ!」
キョンの襟首を掴んでガクガクと揺らす。
「おおお落ち着けハルヒ。なんていうかお前の寝顔があまりに可愛くてだな」
「コレは没収!」
「……分かったよ」
あら? えらく聞き分けが良いわね。
「ハルヒが嫌っていうならしょうがないさ(……PCにデータは保存してあるしな)」
「なんか言った?」
「いんや」

 

聞き分けが良すぎるキョンに何か感じないでもなかったけど、今はそれどころじゃなかった。
寝顔だなんて……恥ずかし過ぎるもん。

 

あたしが恥ずかしさのあまりどうしてやろうかと考えていると、キョンが静かに話しかけてきた。
「なあハルヒ。部屋を漁ったりしたら罰ゲームだって以前言ってたよな?」
あ……忘れてた。
もうしつこいわねキョン。確かに悪いのはあたしだけど……。
ここは聞こえないフリね。

 

「ハルヒ?」

 

(∩ ゚д゚)アーアーきこえなーい

 

「おいこらハルヒ」

 

(∩ ゚д゚)きーこーえーなーい

 

「ごまかすなぁ~」キョンがあたしを組み伏せてくる。
「きゃあぁぁ~」あたしは組み伏せられる。

 
 
 
 

わっふるわっふる、なんて
(∩ ゚д゚)アーアーきこえなーい

 
 

…………(∩ ゚∀゚)おしまい

 
 

スレの流れ

電波を受信した。

 

キョン「てな訳で、俺の秘蔵コレクション没収されちまった。」
●〈「隠し撮りの類は我々の分野で貴方の趣味では無いと思っていたのですが…
どのような心境の変化ですか?」
キョン「ハルヒの寝顔を見てると幸せな気分になれるからだ。」