概要
作品名 | 作者 | 発表日 | 保管日 |
果たして変わったのは? | 97-934氏 | 08/09/11 | 08/09/11 |
作品
「コラー、キョン! なにしてんのよ? 早く来なさいったら」
「おいハルヒ、昼休みなんだし、俺にだって飯を喰う時間ぐらいは寄越してくれよ」
「まったく……役立たずなんだからこのバカキョンは。もう知らないっ! 先に行っちゃうんだからね」
「おう、後でちゃんと行くから、ちょっとだけ待ってろ」
俺の声が果たして聞こえてるのかどうか、ハルヒはプリプリ怒って教室から出て行ってしまった
はあ、やれやれ。ハルヒの相変わらずの行動の早さは敵わんな――ってなんだ国木田に谷口? 俺の顔に何か付いてるのか?
「いーや、別に何も付いてないぜ、このノッペラボウめが」
「ああ、キョンはやっぱりさすがだなーって思ってたのさ」
谷口の寒いギャグは脇に置いておいて、何がさすがなんだって、国木田よ?
「ほら、以前だったら涼宮さんって、キョンがどんなに抗議しても、ネクタイ掴まえて無理矢理にでも引っ張って行ってたじゃない? でも最近は、何だかそうでもないからさ」
確かに言われてみれば、無茶の度合いも以前ほどではなくなってる気がしないでもない。しかし、よくそんなことに気付いたな。
「ああ、だってこの頃のキョンは前に比べて、ちょっと余裕があるっていうか、堂々としてるような気がするよ」
余裕ね、果たして今の俺にそんなものが残っているなんて話は俄かに信じられないんだがな。
「変わったって言えば、涼宮の奴も中学の頃と比べたらえらい違いだって思うぜ、俺は」
ん? 谷口、そりゃ一体どういうことなんだ?
「どうもこうもねーよ。まず第一に、あいつの喋り声が教室で毎日のように聞こえる、なんてのは考えられなかったぜ。嘘だと思うんなら、その辺の東中出身の奴らにでも訊いてみろよ」
喋り声が珍しいって、それも何か俺にはよく解らんな。まあ、俺みたいに毎日後ろの席からうるさくちょっかいを出されていては想像が付かないのも無理はないだろう。
「第一、涼宮はよく笑うようになったからな。まあ、それもキョンが傍にいるとき限定ってところが癪に障るんだぜ、チクショウ」
「そういえばそうだね。キョンが席を外してるときの涼宮さんって、ちょっと別人みたいに雰囲気が違うときもあるから、用事があっても何か声掛けられなかったりするし」
そうだったのか? ってまさか、みんなからハルヒにコレ渡して、とか頼まれるってのは……。
「前にも言っただろ、キョン。お前はもうずっと涼宮係ってのは確定なんだからな、今更文句は言わせねーぜ」
「ははは、そういえばずっと前にあの朝倉さんがそんなこと言ってたよね」
国木田の口から思い出したくない名前が飛び出したため、ちょっと食欲がなくなりそうになるところを、無理して残りの弁当を詰め込み、早々に席を立つ。
「おいおいキョン、お前早速、涼宮のところに行っちまうのか?」
「ほんと、お疲れさんだね、キョン」
抗議――いや、確かに俺はこれからハルヒの元に行くわけだから何も間違ってはないんだが、何か腑に落ちないのはどうしてだろう?
「待たせたな、ハルヒ」
「遅いわよ、キョン!」
まあ言われてみれば、今みたいに怒ってるんだかなんだか解らんような感じではあるものの、ハルヒがよく笑うようになったってことには、俺も同意しておこう。
「どしたの、キョン? ニヤニヤしちゃって……あんた、最近変よ」
「別に、何でもねーよ」