涼宮ハルヒの絶交/涼宮ハルヒの絶交

Last-modified: 2007-01-21 (日) 00:22:43

概要

作品名作者保管日(2代目)
涼宮ハルヒの絶交/涼宮ハルヒの絶交24-400氏06/11/30

作品

終了式も終わり明日から春休みのこの日、ハルヒはびっしりとスケジュールの詰まった計画表を持って部室に入ってきた。
ほぼ真っ白になったオセロ盤から目を離し部室の入り口に顔を向けると太陽より眩しい笑顔が飛び込んできた。
で、誰の計画表なんだ、それは。
「決まってるじゃない!SOS団の春休みのよ!
 春休みは夏休みと違って短いから、しっかり計画を立てないと何もしないうちに終わっちゃうでしょ。だから作ったの。明日からは毎日これに従って過ごすコト!いいわね!」
ハルヒはそう言いながら俺、古泉、朝比奈さん、長門にそれぞれの計画表を押し付けた。
えーと明日は『駅南側の探索』、明後日は『キョンの部屋で会議』、その次は・・・ちくしょう、週末まで毎日詰まってやがる。
しかしよく見ると俺とハルヒ以外の計画表には週末の予定しか入っていない。
「おい、ハルヒ。古泉たちの平日の予定はどうなってるんだよ」
「ああ、春休みなんだし、全員が集まるまではしなくていいと思うのよね。だからみくるちゃんたちは平日は自由でいいわ。
 でもキョン。あんたは別よ。放っておいたらだらだら過ごすんでしょうから、この団長直々に毎日の予定を立ててあげたわ。感謝しなさい!
 言っとくけど、予定表通りに来なかったら死刑だから!」
ハルヒは得意げな顔で俺を指差しながらそう宣言した。
・・・というコトは明後日は俺の部屋で二人きりで会議するつもりなのか?何考えてるんだか全く。
「断る」
「はっ?!何言ってんの。」
「だから断るって言ってるんだ」
「そんなの許されないわ。団長自らこんなに素晴らしい計画を立ててあげたのに何が不満なのよ。こんな完璧な計画誰も立てられないわよ。ただでさえ団長の命令は絶対なのに」
ハルヒはまだ何か言おうとしていたが俺はここで遮った。
「とにかく俺だって休みくらい欲しいんだよ。古泉たちと同じように週末は参加するから 平日くらいは休ませてくれ。じゃそういうことで今日はもう帰らせてもらうぞ」
別にまだ帰る気は無かったのだが部室にいたら言い争いが終わりそうになかったので帰ることにした。まだ朝比奈さんのお茶も飲んでないっていうのにな。
廊下を歩いていると後ろのほうから、
「キョンの大バカー!!もうあんたなんて知らない!!!」
とか叫んでる声が聞こえたが無視しておこう。
閉鎖空間は・・・すまんな、古泉。恨むなら俺じゃなくてハルヒを恨めよ。

 

しかし人の習慣ってのは怖い。
いつもハルヒに振り回されてたせいで、たった三日自由な休みが取れただけだってのに、もう休みに飽きてきた。
別にまかり間違ってもハルヒに会いたいなんて思っちゃいないぞ。
ただ朝比奈さんに会いたいだけなんだ、きっとそうだ。そうに違いない。
まあそれも明後日は土曜日で不思議探索の日だし、すぐ会える。そう思っていた。
ハルヒだって自分が悪いのくらい分かるだろうしな。
しかしその日の昼前に突然鳴ったケータイから流れてきた古泉の声が俺の心をぶち壊した。
「・・・春休みのSOS団の予定は全部キャンセルだそうです。」
他にも何か閉鎖空間がどうとか言っていたような気はするが全く頭に入ってこなかった。
キャンセル?なぜ?分からない。
考えても分からないなら聞いてみよう・・・と思ったわけじゃないが手は無意識ににハルヒの電話番号を押していた。
『プルルルルルプルルルルルプルル・・プツン、プープープープー』
もう一度かける。
『・・・留守番電話サービスです。』
ダメだ、繋がらない。
というか冷静に考えると一回目の電話は明らかにハルヒに繋がっていた。
しかし切られた。
つまり終了式の日のケンカは続いてるってことだな。
しょうがないから朝比奈さんに聞いてみるか。
『プルルルル・・・プッ「キョンくん?」
なぜだか分からない。しかし確かに朝比奈さんは少し怒っていた。
「あなた自分が何をしたか分かってるんですか?」
「・・・いえ・・・」
「・・・私から言えることは何もありません。理由なら涼宮さんから直接聞いてください」
そう言って切られてしまった。
だが・・・俺はどうしたらいいのだろう。
ハルヒに聞け?ああ、聞こうとしたさ。だが切られた。これ以上どうしろと?
どうしようも無いじゃないか。そんなことを考えているうちに夜になっていた。
ぼーっとしていて昼食や夕食を食べたり、風呂に入ったりした覚えが全く無い。
ああ頭が痛い。とりあえず寝よう。
そして俺は寝た。

 

翌朝目覚ましの音で起きた。ここは・・・俺の部屋だ、分からんがおそらく世界は改変されていないようだ。
そして頭が冴えてきてはっとした。
昨日は呆然として分からなかったが、昨日の俺の行動のおかしさに。
まず電話をかけるべきは長門にじゃなかったのか?
しかし手はハルヒのケータイの番号を押していた。
さらに俺は朝比奈さんに電話をかけるときどう思った?
『しょうがないから』?
なんだよ、それ。おかしいだろ、俺。
ハルヒには自然に電話したのに。切られたけどな。
・・・ハルヒ・・・ハルヒ・・・会いたい。

 

俺は朝食も食べずに家を飛び出しハルヒの家へと自転車を走らせた。
途中の道は覚えていない。気がついたら目の前にハルヒの家があった。
自転車を止め、呼び鈴を鳴らす。
しばらくして遠くから聞こえてきたのは、ずっと聞きたいと思っていた声だった。
「はぁ~~・・・い?!」
ハルヒは俺の顔を見るなり、開きかけていた戸をぴしゃっと閉めてしまった。
カチャリと鍵の閉まる音とともにハルヒの、ハルヒらしからぬ小さな声が響いた。
「・・・帰って」
「帰らない」
「もう・・・あんたなんて知らないって言ったでしょ?!じゃあ・・・ね」
ハルヒが奥に行ってしまうのが分かる。何か言わないと終わってしまう。何か・・・口から出た言葉は当然と言えば当然の、しかし今までの俺なら絶対に言わない正直な気持ちだった。
「ハルヒ・・・好きだ!やっと気づけた、だから・・・だからお前とこのまま別れたくないんだ!」
しかし帰ってきたのは沈黙・・・だったような気がした。

 

疲れて眠っていたのだろう。
ほのかにシャンプーのいい匂いが・・・
気づいたときには俺はハルヒの家で・・・その、なんだ、ハルヒの膝を借りて寝ていた。
ハルヒは俺が起きたのに気づくと、
「・・・おはよう、バカキョン」
と言って頭を撫でてきた。その顔はいつもの、いやそれ以上の輝きを放っていた。
「俺・・・」
「はいはい、まずはあたしに言わせなさいよ。
 あんたね、無茶しすぎ!こんなトコで倒れて・・・
 それとね、突然こんな朝早くに訪ねてこないの!もう・・・両親がたまたまいなかったからよかったものの・・・」
ハルヒはいつものペースで話し続ける。俺の精一杯の告白なんて無かったかのように。
いや、待てよ。もしかして俺告白したと思ってたが・・・その前に倒れたのか?
そこで思考が切られた。
「ねえ、キョン!ちゃんと聞いてるの?!
 あとはね・・・あんた、顔赤過ぎ。その・・・膝枕程度で」
お前だって似たようなもんだろ。
俺がハルヒの真っ赤な顔をじっと見つめていると、ハルヒは手で俺に目隠しをした。
しばらくして手が離されたとき、ハルヒの顔はさらに赤くなっているように見えた。
「それとね、最後に!一回しか言わないからよく聞きなさいよ!
 あたしも・・・あんたが好き。大好き。
 だからね、もう絶交なんて言わないから、そばにいて」
やばい。ハルヒが泣いてる。
ていうか視界がぼやける。どうやら俺も不覚にも泣いてるようだ。
「分かったよ」
そう言って俺は起き上がりハルヒの頭を撫でた。
「ずっとそばにいてやる。だから泣くなよな」
ハルヒは泣きながら無理やり笑い顔を作って、
「あんたも泣いてるくせに。・・・いなくなったら死刑だからね!」
と言いやがった。
言われなくても離れる気なんて無いがな。
そして俺たちはこの世界でははじめてのキスをした・・・

 

ハルヒには『みんなには内緒ね』と言われたが、宇宙人以下に隠し通せる訳も無く、後日俺は、ハルヒのまだ来ない部室でニヤケ顔に『おめでとうございます』と言われ、残りの二人にも好奇の視線を向けられた。
「うまくいったのは知っていますが、実際あなたと涼宮さんはどこまでの関係になったんですか?」
・・・(∩ ゜д゜)アーアーきこえなーい

 

エピローグ

 

そして始業式の日。
午前中で学校から開放され、俺たち二人はSOS団を自主休部した。
出かけるためにな。
デートじゃないぞ、谷口。・・・いやデートだな。
うらやましいか?そうか。
なんとでもからかってくれ。
俺はハルヒがいりゃそれで十分だ。
でも何でSOS団を休んでまでデートかって?
決まってるだろ。
だって今日は俺たちが出会って一周年の記念日なんだからな。
ま、とりあえず春休み二日目の予定と同じコトをしたとだけ言っておく。
何するのかって?深くはツっこむな。
じゃあな、谷口。
あいつを待たせると死刑になるからな。