異世界人の陰謀 (102-692)

Last-modified: 2008-12-07 (日) 22:20:22

概要

作品名作者発表日保管日
異世界人の陰謀102-692氏08/12/0708/12/07

作品

おいおい、このSSのタイトルだけ見たら何かものすごい事件が起きたみたいじゃないかよ。そんなに大した話じゃないから、俺の語りを楽に聞いてくれ。なに、いつもそうじゃないかって? まぁそういうなよ。
 
さてさて、放課後俺はいつものように部室に向かっていた。ハルヒはと言えば、掃除当番ということで少し遅れてくるらしい。ここんところ機嫌がよかったハルヒだったが、なぜか今日は妙にそわそわしてた上に、鉛筆で俺の背中を刺してくる回数が激増したんだが、何があったんだか…まあいい。とりあえずはハルヒの邪魔なしに朝比奈さんの美味しいお茶を頂くという至福の時間を過ごせるわけで、俺の気分も小春日和のようによかったわけだ。いろいろ考えてる間に部室前に着いたので、俺はいつものように部室のドアをノックし鈴の音のような可愛らしい朝比奈さんの返事を待つことにした。
 
コンコン!
「入っていいですか?」
「は、はい、キョンくん、どうぞ~」
うむ、これは朝比奈さんの声に間違いないのだが、どことなく当惑した感じに聞こえた。何だか以前に同じ様な事があった気がするが、いちいち考えていてもきりが無いし朝比奈さんは入ってOKと言ってるんだから素直にドアをそーっと開けて入ることにした。
 
意外な事に部屋には宇宙人と未来人と超能力者が揃っていたわけだが、何か3人の様子がどことなく妙だった。いや何がって、3人で団長席を取り囲むように立っていて目線がパソコンのディスプレイに向いているという
光景を見て妙だと感じない方が可笑しいだろう?朝比奈さんや古泉はともかく、長門までじーっとパソコン覗き込んでるのは不思議な光景だ。いや、ちょっと待て、この光景以前見た事あるぞ。ディスプレイをこの3人が見てるという事は、このパソコンに何か映ってる訳で、それが…まさか…
「ちょっと何してんのよキョン、さっさとこっち来なさい!」
「うあぁぁぁ!!」
「ちょっと何よ、あたしに驚くってどういうことよ!」
やっぱりパソコンの中に住んでるあのハルヒじゃないかよ。
 
さぁさぁ皆の衆、説明しよう。この部室のパソコンには電脳世界があるらしく、なんとそこにはハルヒそっくりな奴が住みついているんだ。そして俺に理不尽な命令を一杯してくるんだが、詳しくはこっち見てくれ。
参照URL「涼宮ハルヒのPC」
http://wikiwiki.jp/harruhi~~16-861
参照URL「しゃっくりの止め方」
http://wikiwiki.jp/haruhi/~~98-128
以上、説明終わりだ。
 
「キョン、誰に説明してんのよ。さっさとこっちに来るの!」
パソコンのディスプレイの中にはいつものデフォルメされたハルヒがプンプン怒ってる姿が映っていた。よお久しぶりだな、お前。ま、こいつに逆らったら色んな意味で怖い事が起こるとわかってるので、素直に従おう。
「急かすな。今度は何だよ?」
「あ~らキョン、あたしに対してその横柄な口調。いい度胸してるわね」
ディスプレイの中のハルヒがニヤッと笑った。う、しまった、いきなりこいつの機嫌を損ねてしまったらしい。何か悪だくみを考えている時の表情だぞ、これは。
「じゃあこのあんたが削除したはずのみくるちゃん悩殺写真をこのパソコンのトップページに置いて、涼宮ハルヒが直ぐ発見できるようにと…」
「わ~ちょっと待て待て悪かった、さっきの口の利き方は私が悪かった。何でも言うこと聞くから」
「そうよ、わかればよろしい」
  
こうして俺はまたまた涼宮ハルヒが憑依したような”パソコンハルヒ”の奴隷に落ちぶれたわけだ。
 
「ところでキョンくん、あたしの悩殺写真って何の事ですか?」
朝比奈さんは頭の上にはてなマークを一杯立ててる感じで俺に聞いてきた。もうどうにでもなれって感じだから素直に説明しますが…その前に確認したい事があるんです、朝比奈さん。
「それは後で説明します。ところで朝比奈さん、このハルヒの存在を不思議に思わないんですか?」
「禁則事項です♪」
見る者すべてを恋に落とすような笑顔をする朝比奈さん。むむ、あなた何か隠してませんか…と問う前にパソコンの中のハルヒが命令してきた。
「こら、キョン、みくるちゃんと遊んでんじゃないわよ!」
「いや別に遊んでるわけじゃないぞ。というか今度は何をするんだ?」
「ものわかりいいわね。じゃあ言うわよ。今度の週末はキョン、あんたから不思議探索を提案すんのよ」
 
はい?
 
「おいおい、俺からそんな提案したらハルヒの奴が怒りだすぞ」
「はぁ?何馬鹿な事言ってんのよ」
ディスプレイの中のハルヒは呆れた表情でいる。デフォルメされた姿なのに、そういうのはすぐわかるのはハルヒの表情を見なれた俺の条件反射なんだと悲しくなってくる。まぁそれはさておき俺は説明を続けた。
「あの不思議探索はハルヒの気分転換でやってるようなもんだ。あいつがやりたいと思った時にやるからストレス解消になってるのに、俺から提案なんかしたら機嫌損ねるだけだぞ」
「あのね、そんな受け身になってるから進展しないのよ、バカキョン」
人をバカバカ言うんじゃありません、って教えてもらわなかったのか、お前は。あ、パソコンの中のこいつは人じゃないんだっけか…
「そもそも受け身とか進展とかって何の話だ?」
「キョン、あんた涼宮ハルヒに愛の告白したでしょ!」
「ああ、そんな事もあったな」
 
何の事かと思えば、この前しゃっくりを止まらないハルヒに真剣に愛の告白をして驚かせてろと…というかそれはこのパソコンの中のハルヒに命令されて言わされた事じゃないかよ。結局あの時はハルヒは喜んだ表情を見せたかと思ったら急に怒り出したりして、最後にはぶんなぐられたんだよな。でもハルヒはあの日から妙に機嫌がいいんだ。何でだろう?
 
「キョン、あれからあんた何にもしないでしょ?」
「何もしてないって何をしろと。まぁここんところハルヒとは毎日一緒に帰ったりしてるが…」
俺のセリフを聞いてディスプレイの中のデフォルメハルヒは怒りだした。
「あのね、涼宮ハルヒは女の子だし、ロマンチストなのよ!」
ああ、確かにハルヒも女だし、宇宙人やら未来人やら超能力者やら異世界人とかを追求するロマンチストには違いない。だがそれがどうした?
「告白してきた相手がいつもと同じじゃ疑心暗鬼になってイライラもしてくるに決まってるじゃない」
そういえば、今日は何だかハルヒの奴そわそわしてたな…と思ってる所に横から余計な事を言ってくる奴がいたのを忘れていた。
「あの、ちょっといいですか」
「なんだ古泉?」
「実は今朝から閉鎖空間の予兆が感知されているんですよ。まだ出現してはいませんが、今のままでは時間の問題だと思われます」
ふとその横にいる長門とも目があった。
「…」
数ミクロン単位で長門の首が縦に動いた。という事はハルヒが不満を抱えてるのは古泉も長門も確認済みという事か。
「だから、あんたが先にデート…じゃない、不思議探索を言いだすのよ!」
 
 
結局俺はパソコンハルヒに屈して、ハルヒに不思議探索の提案をする事になった。いや、させられた。しかしあのハルヒが俺の進言を簡単に聞くとは思えんが、この3人プラス1パソコンは全く心配なさそうだ、why?
 
「じゃあ、キョン、もうすぐ涼宮ハルヒが来るからね。頼むわよ!」
パソコンの中のディフォルメハルヒはクルクルっと回り、ディスプレイの中に消えた。頼むって、さっき命令しておいてそれかよ。
「先ほども言った通り今朝から閉鎖空間の予兆がありましたから、これですべて解決できますね」
おい古泉、またお前はこの前みたいに自分の為にパソコンハルヒと結託してたんだな。
「キョンくん、大丈夫です。禁則事項ですけど心配いりませんよ」
笑顔で俺に語りかける朝比奈さん。あなた何か隠してませんか?まぁいいや。それよりも前々から長門に確認したい事があったので、この機会に聞いてみよう。
「ところで長門、このパソコンの中のハルヒって何なんだ?」
「涼宮ハルヒの異世界同位体。この電脳装置の中の世界にいる」
「ということは、ハルヒの言う異世界人って奴か?」
「違う、でもそれに近い概念」
「うーむ何だかよくわからんな。こいつもハルヒの力が生み出したものなのか?」
「そう。ただし間接的」
長門に更に詳細を聞こうとした時、廊下をドタドタ!と走ってくる音がした。どうやらハルヒが来たらしい。
仕方が無い。俺は納得がいかないが覚悟を決めた。
 
 

---
さてその週末の事だ。
 
俺は結局いつもの集合場所にいた。
 
なんと記念すべき俺提案の第一回目の不思議探索なのだ。意外な事にハルヒはあっさり俺の提案に乗り、開催が決まってしまった。しかしどういう偶然だろう、朝比奈さんと長門と古泉は用事があるとの事で行けないとの事だった。どうしても外せない用事があるとか言い出し、というわけで俺は今、駅の改札口で一人、ハルヒを待っているのだ。
 
あの三人にハルヒの監視以外の重要任務があるとは思えないから、おそらく何かの気を利かせたつもりなんだろう。もしかしたらあのパソコンの中にいるハルヒのお願いかもしれない。朝比奈さんが隠してたのは、この欠席の意識合わせの事なんだろう。でもそんなにハルヒと俺を一緒にさせてどうするんだ、まったく。
 
俺は腕時計に目をやった。集合時間まではあと三十分もある。時計から目を上げると、すぐに遠くから歩いて来る見覚えのある私服姿が目に入った。よもや三十分前に来たのに俺がもう待っていると思わなかったのか、ぎくりとしたように立ち止まり、また憤然と歩き始めた。ハルヒの奴、俺を確認する前はニヤニヤ顔してたが、俺を確認した途端に眉根を寄せてしかめ面したのはどういう事なのやら。後でゆっくり聞いてやろう。ハルヒの奢りの喫茶店で。
 
その際に俺は色々なことを話してやりたいとおもう。SOS団の今後の活動方針について、などなど。しかしまぁ、結局のところ、最初に話す事を決めていた。そう、まず…
 
宇宙人と未来人と超能力者の他に、お望みの異世界人もとうとう出現した事について話してやろうと俺は思っている。

おまけ

やあ、古泉です。
彼はデートで涼宮ハルヒに夢中ですので、僕が代わりに語りましょう。
 
「あのあの~あのですけどぉ、2人は喫茶店にもう2時間もいませんか?」
「正確には席に着いてから2時間1分25秒経過」
「しかし宇宙人と未来人と超能力者と異世界人の彼の話を聞いても全く信じてませんでしたね」
「そりゃそうよ。そんなものがいないるはずがないって常識論がハルヒの中であるんだから!」
 
いつもなら3勢力の3人のはずなのですが、今回はなぜか4人目がいます。
 
「あの~パソコンの中の涼宮さん、僕のネットブックというかWILLCOMのD4の中にいるのは結構ですし、こうやってリアルタイムで彼らの会話を映像で見せて頂けるのはありがたいんですが、バッテリーの方が心配で…」
「大丈夫よ古泉くん。有希が映像を送りつつ充電しててくれるから、心配いらないわ!」
「え、そうなんですが、長門さん?」
「…そう」
「しかしパソコンからパソコンへと飛び移れるとは、まるでジョジョ第3部の”吊られた男”みたいです」
「あれは鏡の世界だからあたしとは違うわよ、古泉くん」
 
古いマンガの話題をふったのに、このパソコンの中の涼宮さんに即答されてしまいました。なんでこんな事を知ってるのでしょうか?そうこうしてるうちに動きがあったようです。
 
「あのあの~皆さん、ほらほら涼宮さんとキョンくん、席から立ち上がりましたよ。あ、涼宮さんすっごい笑顔ですね♪」
「おや、先に来たはずの彼に支払わせてますね。さすがです」
「あ、でも、キョンくんに向いた瞬間にちょこっとツンツンした顔になりましたよ」
 
これが文字通りの”ツンデレ”なんでしょう。
 
「じゃあみんな、移動よ!有希、みくるちゃん、古泉くん、行くわよ!」
「了解…」
「わかりました♪」
 
まぁこれで世界が平和であるならそれでいいでしょう。じゃあ行きましょうか!
 
「了解です。喜んでお供しますよ」