30倍の楽しみ (84-960)

Last-modified: 2008-03-25 (火) 01:55:24

概要

作品名作者発表日保管日
30倍の楽しみ84-960氏08/03/2408/03/25

作品

「…それなんかどうだ? 結構いいと思うんだが」
 ショーケースに飾られている菓子を指差し、俺は問いかけた。
「どうでしょうか。あまりおすすめはできませんね。値段も少々張りそうですよ」
 横にいる女性店員が、さっきからこっちを見ているのが気になる。くそ、妹でも連れてくればよかった。
「そうでしょうか? その割には楽しんでおられるように見えますが」
 まあ確かに、現代の女神であられる朝比奈さんへの献上品を選ぶのはとても光栄なことだし、長門についても同様で、
 日頃お世話になっていることを考えればこれくらいしてやらんでもない。しかし、それだけならこんなに悩むことはない。
「涼宮さん…ですね。たしかに、本人のご希望はあれの30倍ですから、その分悩む時間が増えるのは当然でしょう。
 普通の贈物では間違いなく満足されないでしょうからね」
 こいつの言うとおり、普通の店で選んでいても、先程から普通のものしか見つからない。
 どうもここにはあいつが喜びそうなものはなさそうだぞ。と、思っていたら古泉も同じことを考えていたらしい。
 あれやこれやと1時間も費やした結果(店員には悪いが)俺たちは何も買わず店を出た。
 
 
 向かった先は いつもSOS団が使用する喫茶店だ。
 既に午前に2回来ているから、これで3回目になるわけだ。悲しいことに全てこいつと二人っきりで。
 席につき、コーヒーを一口飲んだ俺に、「実は…」と切り出して古泉は顔を近づけてきた。
「悪いとは思ったのですが、機関に頼んで色々と用意をしています。あなたさえよければ、それでいこうかと思うのですが」
「…………」
 長門ばりの三点リーダーしか出てこない。これこそまさに放心状態だ。
 せっかくの休日を返上して、朝から歩きまくったんだ、そうなるのが当然だ。
「いえ、やはりこういったものはご自分で選ばれたほうが、貰った相手も喜ぶと思いましたから。
 涼宮さんたちが、あれほどバレンタインデーの準備をされたのです。やはり我々としても同じ程度の努力をしないと。
 それに、いいではないですか。ホワイトデーのお返しを友達と探すなんて、実に高校生らしいとは思いませんか?」
 思わんね。だいたいお前の願望になんか付き合ってられるか。
 ただでさえ、とんでもないのにつき合わされてる毎日なんだ。自分のことくらい自分でやってくれ。
「おや、これは手厳しい」
 爽やかに微笑む古泉の顔は、どこか嘘っぽい。しかし、ここで古泉の提案にそう簡単に乗ってもいいものか。
 そう考えた俺だったが、これといった妙案が浮かぶわけでもないので、渋々ながら古泉の話に乗る事にした。
「助かります。では当日の予定は空けておいてください。詳細は追って連絡しますから」
 そういって立ち上がると、古泉はさりげなく伝票を俺のほうへ置いてきた。って、ちょっと待て。何故俺が払うんだ。
「軽い冗談ですよ」
 心配になってきたな。やはり何か買っておいたほうがいいのかもしれんぞ。
 そんな不安にかられながら、俺は、帰路につく古泉の姿を見送ってやった。
 
 とまあ、こんな感じで春休みの貴重な一日を最悪な気分で過ごした俺だったが、
 その後、古泉からの連絡はなく、どういうわけかハルヒからの連絡も一回もなかったわけだが、
 いたって平穏無事な日々を過ごしていた。もっとも後で聞いた話によると、古泉は例のアルバイトがほぼ連日だったそうだ。
 
 3月13日の夜中、つまり当日になって、待ちに待っていた古泉からの電話があった。
『遅くなってすみません。少々準備に手間取ってしましまして。お詫びします』
「まったくだ。あんまり遅いんで、朝一番で駅前まで行くところだったぞ」
『ええ、本当に申し訳ありません。しかし、おかげで準備万端です。明日は大成功させますから心配しないでください』
 電話越しに聞く古泉の声には悪びれた感じがない。徐々にむかついてくる気持ちを抑えつつ、俺は肝心なことを聞いた。
「俺は一体何をすればいいんだ?」
『それについては明日の朝、正確には6時間後ですが、それまでには分かります』
 何も聞かされていない俺は不安なのだが、機関の計画では何も知らないほうが都合がいいらしく、
『とにかく明日の朝になれば分かります。それまでゆっくりしていてください』
 と言って古泉は口を割ろうとしない。まあいざとなったら、全てこいつのせいにしてやればいいか。
『そう言われるとますます責任重大ですね。とにかくご安心ください。それではまだ準備が残っていますので、これで』
 おい、さっき準備万端とか言ってなかったか? という俺の言葉が言い終わる前に古泉は電話を切りやがった。
 とにかく今は待つしかない。それとも、やはり何か買っておいたほうがいいのか?
 
 
 今更ながら何を買うべきか悩みながらも、気が付けば布団の中で寝ていた。ああ人間って偉大だ。
 そんな幸せな気分を味わっている俺を待ち受けているのは、いつもあいつだ。
「……っとキョン! いつ…で寝て…のよ! ……っ早く起きなさいっ!!」
 驚いて飛び起きる。ハルヒが目の前にいる。何故? 一体何が起こった?
「古泉くんが、あんたの家に行けば分かるっていうから来てあげたのに。どこの世界に団長を寝て迎える団員がいるのよ!」
 古泉のやろう、なにが安心してくださいだ。
 一気に目がさめた俺は、とりあえず着替えるからとハルヒを部屋から追い出すと、急いで携帯電話を取り出した。
 すると、待ってましたと言わんばかりに呼び出し音が鳴り出しやがった。
『もしもし? 起きていましたか?』
「たった今、ハルヒによってな」
『おや、朝から仲がいいですね。掛けなおしたほうがいいですか?』
「ふざけるな。お前がけしかけたんだろうが」
『確かにあなたの家に行くように言ったのは僕ですが、涼宮さんに伝えた時刻より30分も早いですよ』
「そうかい。じゃあ今度伝えるときは30分遅く伝えるようにしてくれ。じゃないとまた俺が怒鳴られる羽目になるからな」
『分かりました。今度からそうすることにしましょう。ところで、これからの予定ですが…』
 そういって古泉は俺に今日のスケジュールを伝えてきた。だが、そんな内容なら昨日伝えてくれても良かったんじゃないのか?
『これも演出の一つです。ではまた後ほど』
 そういって電話を切る。早く着替えないと、さっきから部屋のドアがガンガンとうるさい。
 どうやら二度寝したと思われているらしい。残念ながら俺はお前を前にして二度寝するほどの度胸を持ち合わせていない。
 ドアが壊れる前に着替えを終わらせ部屋から出ると、よっぽど今日を待ち望んでいたのであろう、
 100Wの笑顔をしているハルヒが、早く連れて行けと言わんばかりに待っていた。いや、実際言われたのだが。
 俺は古泉の指示の通り、一路駅へ向かい、その後バスに乗りこんで、しばらくたってから目的の停留所で降りた。
「ここって…」
 そういってハルヒはおれをジトッと睨む。そうやって見るなよ。俺だって聞いたときはびっくりしたんだ。
「何考えているのよ、キョン! まさか私たちと同じ場所に隠したんじゃないでしょうね?」
 ハルヒの意見ももっともだ。なんせ今から向かうのは、おれが団長様からチョコをいただいたあの鶴屋さん所有の山なんだからな。
 しかもご丁寧に、入り口にはシャベルが二本、ってもしかして俺も掘るのか、これ?
「ちょっとますます同じじゃない。どうなってるのよ!」
 古泉に言ってくれ、と言いたいがそんなこと言えるはずもなく、第一、当の本人が未だ顔を出さない。
 そりゃ確かにあまり会いたくはないが、そろそろ出てきていいぞ。
 
 その後、古泉が出てくる事もなく、朝の笑顔が嘘のように険しい顔つきのハルヒを相手に、先程から永遠と、
 俺はあの石のあった場所を掘り返している。もっとも今回はハルヒも一緒だがな。
「ちょっと、そろそろいいんじゃないの? 大体なんであたしが掘るのよ。意味わかんない」
「まあまて。家宝は掘ってでも見つけるんだろ?」
「そりゃ、そう言ったけど、それはそれよ。さっきからずっっと掘ってるけど、全然見つからないじゃない」
 ハルヒの言うとおりあれから、俺たちは掘れそうな場所は全て掘り起こし、おかげで種を植えたらいい畑になるな、これじゃあ。
「さすがに疲れたわ。ちょっと休憩」
 そういってハルヒはその場に倒れこんだ。もうちょっと別の座り方があるだろう。
「だって昼からずっっと掘りっぱなしなのよ。さすがのあたしも疲れたわ」
 たしかにそうだ。俺の体も悲鳴から絶叫へと変貌している。さすがに少し悪い気がするので、一つねぎらってやるか。
「そろそろ見つかってもいいと思うんだが」
「ちょっと、キョン。今のどういう意味? まさか、埋めた場所が分からないんじゃないでしょうね」
 しまった! が、時すでに遅し。
「その顔を見ると図星みたいね。どうせ、今日のことも古泉くんにまかせっぱなしなんでしょ?」
 何故こいつはこういうとこに鋭いのだろう。
「信じらんない。朝から楽しみにしていたあたしがバカみたい。大体これのどこが30倍なのよ!
 いきなりこんな山に連れてこられて、半日以上穴掘りさせられて、しかも何も出てこない? どうなってるのよキョン!!!」
 勢いよく俺の首を捕まえると、そのまま直で絞めてきやがった。ちょっと待て。話せば分かる。
 そのまま絞められたら、今掘った穴の有効的な使い道が一つ出来てしまうぞ。
「それはいい考えね。いっそ本当に埋めてやろうかしら」
 そういいながら手に入れる力を徐々に強めて行く。これはまずい。目が本気だ。
 古泉、今なら大拍手で迎えてやる。早く出てこい。今を逃すと、もう俺と会えなくなるかもしれんぞ。
 だが、そんな俺の願いが叶うこともなく、目の前にいるのは本気で怒っているハルヒだけだ。
 あー、やばい意識が飛びそうだ。目の前に流れ星が見え始めて…
「っ!!!」
 俺はハルヒの肩を懸命に揺する。ハルヒも俺の(文字通りの)必死さのおかげか、素直に手を放してくれた。
「なによっ! 辞世の句なら今すぐ詠みなさい! さあ早く!!!」
 もはや言葉が通じる状態ではないことを悟った俺は、震えながら腕を伸ばし、上を指差した。
「なんなのよっ。何があるっ……」
 上を見上げたハルヒは言葉を失った。そりゃそうだろう。こんなに偉大なもんを見せられたら誰だって、言葉を失うさ。
 もっとも俺の場合は、出したくても出せなかったんだがな。
「きれい…」
「だな…」
 俺たちが見上げた先には、これでもかってくらいに輝く満天の星たちがいた。
 それはもうあまりもきれいで、きっと世界中の宝物を集めたって、これほどきれいに輝く事はないだろう。
 ちっぽけな俺たちを遥かに彼方へ見下ろすかのように輝く星たち。ちきしょう一個くらい笑ってやがるかもしれん。
 
 俺はハルヒへと目をやる。するとハルヒは俺のほうを見ていたらしく、慌てて視線を夜空に戻す。
「キョ、キョンのプレゼントって、これだったの?」
「あ、ああ。中々いいだろ?」
「そう、ね、ま、まあいいじゃない。85点ってとこかしらね。キョンにしてはこったこと思いついたじゃない」
 何時の間にか俺の横に来ていたハルヒは、寒いらしく、体を寄せてくる。
「勘違いするんじゃないわよ、今日はみくるちゃんがいないから代用よ、代用。光栄に思いなさい。ふんっ」
 そういいながらも、横にいるハルヒは、普段と違った笑顔を俺に見せてくれて、たぶん星空を見て感化されたんだろうが、
 朝からの重労働で疲れていたせいか、それがまあなんだ。…とても可愛く見えた。それも、とびっきりのやつが。
 
 …どれくらいの時間がたったのだろう。気が付けば俺はハルヒくっつきながら夜空を見て楽しげに話していた。
 何を話したか覚えていないが、とにかく楽しい時間だった。こんな時間なら永遠に繰り返してもいいな、そう思ったときだ。
「お楽しみのところ申し訳ありません」
「うおっ!!!!」「っ!!!!」
 いきなり声をかけられおどろく俺とハルヒ。おい。今更何しに出てきやがった。
「ついさきほど、晩餐会の準備が出来ましたので。それにまだ3月ですから風邪をひかれても困りますし」
 にやけた顔で、本日の黒幕が説明する。お前には散々言いたいことがあるんだが、俺がよりも先に、
「晩餐会? どういうこと? 説明してくれるのよね、古泉くん?」
 ハルヒが反応していた。確かに腹は減った。先月と違って、朝比奈さんのサンドイッチも食べられなかったしな。
「どういうこ…」
 そういいかけた俺に古泉は視線で合図する。危なくすべてを駄目にするところだった。
 さっきまで古泉を見ていたハルヒの目が、例の調子で俺の顔を観察している。
「いえ、ですから晩餐会です。皆さん待たれていますよ。さあこちらです」
 訳が分からないという顔つきのハルヒだが、あいにく俺も分からない。とにかく今は古泉について行くしかなさそうだな。
 
 
 意外なことに山の頂上で待っていたのはSOS団のマスコットキャラクターと読書係、それに名誉顧問だった。
「大分遅くなってしまってすみません。予想より暗くて道を探すのに時間がかかってしまいました」
 俺たちを案内していた古泉が謝っている。もしかして、ずっとあそこにいたのか、こいつ。
「こうして無事に会えたんだっ、それでいいじゃないかなー? どうかなっ、ハルにゃん?」
「えっ? あ、ああ、そうね。あたしも皆にあえて嬉しいわ。それよりどうして皆こんなところにいるの?」
 どうやらハルヒも同じ事を考えていたらしい。この暗闇でも分かるほど顔を赤くしている。と、ここで古泉はエスコート役らしく
「さあ、女性の方はあちらへどうぞ」
 そういって女性陣を、比較的平らなほうへ連れて行く。そこには野外用のテーブルと椅子が用意してあった。
 ライトがあるのでかなり明るい。おかげで奥のほうで誰かが鉄板を使って料理をしているのが見える。
 どうやら森さんと荒川さんのようだ。よく見ると多丸兄弟もいる。
 
 全員が席に着くのを確認すると、俺の横に座っていた古泉はおもむろに立ち、語り始めた。、
「長らくお待たせしました。今日は年に一度のホワイトデー。本日のメニューは、皆さんがお気づきの通り
 バーベキュー形式となっております。わがSOS団団長の期待通りに30倍とはいきませんが、
 それでもたくさんのメニューをご用意しております。お好きなだけご堪能ください」
 えらくいい調子で古泉が挨拶を進める。段々と眠くなってくる。どうやらハルヒもうっつらうっつらしているようだ。
「それでは、乾杯の音頭を本日の企画者からお願いいたします」
 そういって古泉は俺のほうを向き、立つように進めてきた。え? 俺なのか?
「待ってましたっ!!!」そういう鶴屋さんが盛大な拍手をして迎えてくれた。それにつられて他からも拍手が起こる。どうやらハルヒも今のでおきたらしい。
 こうなると引き下がれそうも無いと踏んだ俺は、覚悟を決めて立ち上がる。
「え、えーと、バレンタインデーのときは、その、皆様にお世話になって、ってまあ、普段からお世話になっているんだが…」
「長いわよ! 早くしなさい!」
 シマウマを前にした肉食獣のように、ハルヒが俺を睨んでくる。本当にさっきまで寝てたのか?
「と、とにかくっ!! ありがとうございます!! 乾杯!!」
「かんぱーい!!!」
 
 食事の模様は同じ調子で、ハルヒと長門がそのブラックホールとも言える胃袋にどんどん食物を運んでいたが、
 鶴屋さんもそれに負けない勢いだった。朝比奈さんはというと相変わらず森さんの動きを観察しているし、後は、まあいつもどおりだ。
 
「そろそろ俺にも教えてもらいたいもんだがな」
 天下の黒幕に俺は聞いた。
「敵を騙すには、というでしょう」
「…本気で言っているのか」
「いえ、冗談です。しかし、あなたにお伝えして、万が一涼宮さんに気づかれれば、今回の作戦は失敗でしたから」
「だったら、最初から皆をここに連れてくれば良かったんだじゃないのか?
 おかげで今日だけで一年分の仕事をすることになったんだ」
「それは申し訳なく思っております。しかし涼宮さんは予想もできないことを期待されていたみたいでしたので。
 もし最初から晩餐会をやると言ってしまえば、おそらく涼宮さんの期待を満足させることは出来なかったと思います」
「そりゃまあそうだが、しかし他にも色々あっただろう。だいたい夜空の星なんて気づけたからよかったものの、
 もし気づかなかったら今頃どうなっていたことか」
 ここまで話して古泉がおどろいた顔をした。
「夜空の星…ですか。それは随分とロマンチックですね。あなたにもそのような感性があったとは驚きです」
「…どういうことだ」
「いえ、僕の計画は、涼宮さんがあなたに愛想をつかしたところで、『実は晩餐会が用意してある』と告げる事によって
 おどろかせようと考えていたものですから」
 ということは、ハルヒに言ったことは全くの偶然だったってことになる。中々あぶなかったんだな、俺。
「気になる発言ですね。涼宮さんに対してなんらかの特別な感情がうまれたと考えてもよろしいのでしょうか」
「バカ言うな。なんで俺があんなじゃじゃ馬と…」
 ハルヒのほうを見ながらそう言ったとたん、
「こらっキョン!! 今あたしのこと言ってたでしょう!」
 こいつの五感はどうなっているんだよ。そう言ってハルヒが俺に向かって来るのをみて、古泉は叫んだ
「さあ、もうすぐですよ。準備はいいですか? いきますよ、5・4・3…」
 一体なんのカウントダウンだ? 大体わけも分からないのに準備もくそもないだろうが。
「・2・1…」
 0と言ったのと、ほぼ同時のタイミングだった。さすがは機関だ。しかし今はそんなことを思っている暇はない。
 何と言っても俺たちの目の前に大きく美しい日本の芸術、まあ時期はずれだが細かい事はこのさいなしにしよう、
 春を目前にした夜空に、さっきから連続して打ち上げられている花火が美しく輝いている。
 
「たっまやーー!!!」
「わーすごくきれいですねー」
「………華麗」
「あっはっは。楽しいねっ!!!」
 
 
 まあこの際、大目に見てやるか。なんつってもうちの団長をあれだけの笑顔にさせるっつったら、中々のものだからな。
「ありがとうございます。準備のかいがありました」
「まあ、来年はもう少し肉体労働のないやつで頼むぞ」
「かしこまりました」
 そういう俺と古泉もまんざらではない顔だ、いやここは素直に言うべきか。
 
 ありがとよ。