16-226 無題

Last-modified: 2007-02-15 (木) 23:29:19

概要

作品名作者発表日保管日(初)
無題(消しゴム)16-226氏06/08/2606/09/08

作品

今日も真面目な学生を自負している俺は、学生の本分である勉学に勤しんでいた。
授業の内容は良くわからんが、教師が黒板に書き連ねる謎の数列をノートに書き写す単純作業だけは一応やっておこう。
あ、書き間違えた。消しゴム消しゴム……ん、おかしいな、机の上にもペンケースの中にも消しゴムが見当たらないぞ?
……仕方がない、ハルヒに借りるか。振り返るとハルヒはノートにペンを走らせている最中だった。
今声をかけていいものか。いや、背に腹は変えられん。後でどんな目にあわされるかの心配は未来の俺に任せたぞ。
ハルヒ、ちょっといいか。
「ん、どうしたのキョン」
授業中に悪いが、10秒ほど消しゴムを貸してくれないか。俺のはどっか行っちまったんだ。
「え、でも……んー、キョンにならいっか。はい、大事に使いなさいよ」
ハルヒが貸してくれた消しゴムは右半分だけが使用され、左半分は新品同様だった。
大事に使えって言うのは、左半分は使うな、って意味だろうか。それにしてもこの消しゴムのカバー、昔を思い出すな。
真ん中で切って上下を入れ替えて、「トルネード消しゴム」とか言って遊んだっけ。
おっと、早く消して返さないとハルヒに怒られちまう。黒板の文字も早く書かないと教師に消されかねん。
そうだ、たまにはあいつに仕返しするのもいいな。よし、こっちの綺麗な方の角で消すか。
感謝の念を込めながら、しかし少々の悪戯心を持って、大事に、優しく、丁寧に、ノートに消しゴムを書けると、
俺の書き間違えた数字はきれいさっぱり消え去った。
「えー、ありがとうございました」
ありったけの感謝の念とともに、両手で捧げ物を謙譲するかの如くハルヒに消しゴムを返す。
ハルヒは消しゴムを受け取ると机の上にすぐ置いた。まだ消しゴムの角を使った事には気付いてないみたいだな。
「どういたしまして。あ、今度何か奢りなさいよ」
おいおい、いつも不思議探索の時に奢ってるんだぜ、たまには大目に見てくれよ。
俺は前に向き直り、ちゃっちゃと書き写しますかと意気込んだその時、
いつぞやのように俺の襟首が掴まれたかと思うと、おそろしい勢いで机の角に頭をぶつけられていた。
「何しやがる!」
当然の疑問と怒りを持って振り返った俺が見たものは、激しい怒りに目覚めた超戦士の如き表情のハルヒであった。
「あああ、あんたなな何してんのよ!信じらんないわ!!」
顔が近い、どもってる、唾を飛ばすな。
「大事に使いなさい、って言ったのに何で使ったのよ!」
――お前は何を言っているんだ。意味わからんし、消しゴムなら心を込めて大事に使ったさ。多少の悪戯心はあったがな。
「そういう事を言ってるんじゃないのよ!これ見なさいこれ!!」
クラス中が注目してる中、ハルヒが立ち上がって右手で俺が先ほど借りた消しゴムを突きつけてきた。
ちなみに左手はその消しゴムの左半分を指差している。
「あんたホントに何で“角”使ってんのよ!!あたしだってまだ使ってなかったのに!!」
うわっ、すげー怒ってる。これは閉鎖空間が発生したかもしれないな……ん、今廊下を走って行ったのは古泉?
「ちょっとキョンどこ見てんのよ!あたしの話を聞いてるの!?」
「聞いてるさ。ちょっと悪戯心が働いてついやっちまったんだ。これは全面的に俺が悪いし、本当にすまないと思ってる。
今度何か奢るのも約束する。ただ、一つだけ言わせてくれ」
「なによ?」

 

「消しゴムの角使ったくらいで怒るなよ」

 
 
 

プルルルルル、ポチ。
「もしもし、どうしまし――」
「古泉!まだか!早く来てくれ!急に神人が強くなったと思っ…ザザ…奴等…ザ…増えやが…ザー…っちに向かっ…ザザ…ザ……もうダメだ!!う、うわぁぁぁぁぁ……ザザザ…ザー……」
「……もしもし?もしもし!どうしました!?返事をして下さい!!」