47-571 無題

Last-modified: 2007-05-01 (火) 22:24:55

概要

作品名作者発表日保管日
無題(家捜しするハルヒ)47-571氏07/05/0107/05/01

作品

犬が外で喜び駆け回り、猫はこたつで丸くなる季節。猫派の俺としてはこたつ
で丸くなり、ゆったりと過ごしていたいと思う今日この頃。
だが、そう上手くはいかないのが世の中ってもんなのだろうか、俺は
相も変わらず、この糞寒い街中に不思議探索という名の無意味な時間
浪費をしに来ていたのであった。
しかしその一時間後、俺は自宅に帰ってきていた。
SOS団の面々を引き連れてな。
全てのきっかけはあいつ以外に存在するわけが無く、今回も当然の如く、
あいつの一言から始まった。

 

「バカキョン!遅いじゃない!すっかり体が冷え切ったじゃないの!」
冬の寒さなんてそのな怒りを撒き散らす我らが団長様は、見てる方が寒くなる
ミニスカートを履いておきながらんなことをぬかしやがった。
そのことを指摘してやると、「どんな服着ようと私の勝手でしょ!」と、
俺が来る前に作っていたのであろう雪球を、俺の顔面目掛けて放ってきた。
ハルヒのアホみたいな豪腕から放り出される剛速球を野球少年ではない俺が
見切れるはずもなく、見事に俺の顔にジャストミート。
たいして雪が降り積もっているわけでもないので、雪球は泥が混じっており、
ベチャベチャだった。
そんなもんを顔面に食らった俺は当然、泥に汚れ、服にも甚大な被害を受けていた。
「大丈夫ですか、キョン君?」
と、朝比奈さんは言うと、ポーチからハンドタオルを取り出し、俺に渡してくれた。
俺は素直に朝比奈さんの厚意を享受し、とりあえず泥まみれの顔を拭いた。
朝比奈さんのタオルは泥まみれになって良かったと思わせるぐらい何とも
良い匂いがし、そんなタオルを汚してしまうことに罪悪感を覚えた。
そんなことになった原因に俺は、濡れてしまいタオルでどうこうできない
服を着替えに一度帰ることを言ってやった。お前が悪いんだからそれ
ぐらい許可しろよという思いを十二分に含めて。
その念が通じたのか知らないが、ハルヒはあっさり許可してくれた。
「何言ってんのよ。そんなことしてる時間なんてないわ!」とでも言うかと
思った俺は自分で言っておきながら戸惑ってしまった。
そんな俺にハルヒはこう続けた。
「あんたのせいで、こっちは風邪ひきそうだしね。今日は特別に室内活動にするわ」
じゃあそんなミニスカート履くなよと小一時間……なんですと?
「さぁとっとと行くわよ!」
「おい待て一体どういうことだ」
「だから今日はあんたの家で活動するの」
おいおい、家に不思議がごろごろ転がっているわけないだろ。まぁかつて
不思議存在だった猫はいるが。だが、そんなものでぐらいでハルヒの好奇心を
くすぐるもんなんて一切ない自信が俺にはあるね。
そのことをハルヒに告げたら、今日は寒いからそういう輩も外を出歩いて
可能性は低い。なので今日は室内で今後のために備えておこうということらしい。
何に備えるのだか。
団長様が一度言ったことを取り下げるなんてことは有り得ないので、どうせ
帰らなきゃいかんのだし、それにこんな寒い中歩き回りたくなんかなかった
ので、しぶしぶながらも承諾した。で、今に至るわけだ。

 

俺はとりあえず皆を部屋に連れて行き、さすがにハルヒ達の目の前で着替える
のもあれなので、部屋を出て着替えた。部屋に戻っているといつの間にかに
妹がもその中に含まれており、俺の部屋の定員を超えていることは明らかだった。
特にやるべきことない俺らは、各々好き勝手なことし始めた。
ハルヒは妹と共にゲームをし、朝比奈さんはそれを観戦。長門はどこからか
本を取り出し読み更け、古泉はニヤニヤしていた。
そしてベッドで寝転がっていた俺は、いつの間にかに眠りについていた。
「………………………のよ!」
おぼろげながらに聞こえてきた声に目を覚ました俺は、ベッドのすぐ下にいた
声の主に問いかける。
「どうしたんだハルヒ、やかましいぞ」
「あっキョン、何で起きんのよ!」
そんなこと言われてもな。で、何してんだお前は。
「古泉君!キョンを捕まえてて」
「はい、わかりました」
「何をする古泉」
「申し訳ありません。ですが団長命令なもので」
近い近いぞ古泉。吐息が耳に当たって気持ち悪いことこの上ない。
「みくるちゃんもキョンを捕まえておくのよ!」
「は、はい」
朝比奈さんそんなに近づかれると胸がその当たったりとか。あぁなんだこの幸せな感触は。
「おいハルヒ、これはどういうことだ」
「団員に公的不良俗がないか確かめんのよ!」
いきなり何を喚きだすと思えば……安心しろ、俺はいたって真面目な男だ。
酒はあの時以来飲んぢゃいないし、煙草何てもってのほかだ。
それにそんなもんあったとしてベッドの下に隠したりなんかしな……
その時俺の頭の中で全ての出来事が繋がった。古泉のいつもより30%増の
ニヤケ面、朝比奈さんの頬にほんのり浮かんだ朱色、長門の興味有りげな瞳。
そしてハルヒの行動。そう全ては一直線に繋がる。
しかしこいつなんてアホなこと考えるんだ。健康な男子高校生の部屋に来た
女子がやることじゃあねぇだろ。
「どんだけ探したって無駄だハルヒ。そんなとこにエロ本なんて存在しない。するわけがない」
ベッドの下を覗き込んでたハルヒがこちらを向く。
「そんな嘘、信じるわけないでしょ!」
ほんとなのだから俺はどうしようもない。
不気味に笑うハルヒ。
「はは~ん、ここにはないってことは他の場所に隠してるってことね」
迂闊!なんて迂闊なんだ俺は。朝比奈さんに頼んで過去の俺にこのことを
告げてやりたいもんだよこんちくしょう
「古泉くん、みくるちゃん、有希も手伝うのよ!」
ハルヒに命じられるがままに人の部屋をあさくり始める人外集団。
こんなことするためにここに現れたのではなかろうに。
というか、長門。お前もか。頼むから宇宙の神秘パワーを使うのだけは勘弁してくれ。
それからハルヒ達は十分間探し続けたが、目当てのものは発見することは叶わなかった。
「もう!どうしてないのよ!」
俺は笑いを堪えるのに必死だった。馬鹿め、家には好奇心旺盛な妹がいるせいで
こういう隠しもんには慣れてんだよ。
「見つからないですね」
何だ古泉。ハルヒの手先のお前に情報を与えるような馬鹿な真似はせんぞ。
「いえいえ、僕自体あまり興味ないもので」
ところで古泉、離れろ。今すぐ俺の半径20m以内に近づくな。
「そういう意味ではなく。プライバシーを侵害するのはあまり良いこととは
言えませんからね」
ほぅよく言う。
「ですが僕個人としては貴方に強い興味を持っていますよ。あちら三人と同じくね」
それ以上顔を近づけるな。本気で殴るぞ。
「冗談ですよ」
お前の冗談は冗談と思えん。二度とするな
「心がけます。さて、どうして涼宮さんの探し物は見つからないのでしょか?」
何言っているんだ?俺が上手く隠したからだろ。
「恐らく、その回答は否でしょう。涼宮さんの力があればそんなもの見つけるのは簡単なことですから」
確かに。お前らみたいな探しもんとは違うからな。じゃあ何故だ。
「簡単なことですよ。そんなもの貴方に持っていて欲しくないからですよ」
は?全然分からんな
「貴方のその態度、わざとではないんですか。それはさておき、女性というものは
男性にそんなものを持っていて欲しくない方が大多数ですからね。そして一般的な
思考形態の涼宮さんもまたしかり」
よくわからんが、まぁ見つからないにこしたことはないさ。その方が平和的だしな。
「いえ、そう穏便に話が終わるとは限りません」
なんだもったいぶって
「いいですか、涼宮さんはあなたにそんなものを持っていて欲しくないと考えている。見つからないで、見つかるはずがない。
涼宮さんは強くそう望んでいます」
だからどうした。
「では、涼宮さんの力とはどのようなものかということです」
ほんとにまわりくどい奴だ。つまり、ハルヒは俺がエロ本を持っていないと思っている。そしてハルヒの変態パワーはそれを現実にしてしまう訳だ
……ってちょっと待て。
ようするにその存在そのものを消してしまったってことか?ふざけんな。
谷口から借りたのもあるんだぞ。まぁ借りパクする気満々だったが。
それを抜きにしてもそんなこと非常に困る。お前はあれか、勝手に人のものを捨てる教育ママか。
「もぅ、ないじゃない!一体どういうことよこれは!」
そりゃ見つかるはずもないだろう。ないものを探すことなんてできるわけないからな。
「仕方ない、買いに行くわよキョン」
わかった、わかった。……はぁ?
「待てハルヒ。一体何を買いに行くんだ?」
「決まってるじゃない、エロい本よ!」
こいつの突拍子もないぶっ飛んだ思考にはいつも驚愕を禁じえないが、
今回はそれも並大抵ではなかった。
「おい、何をほざいてやがる。お前自分で言っていることがわかってるのか?」
俺の部屋になかったから買いに行く?どういう方程式だよ。つか消したのお前だろうが。
「SOS団はお約束というものを非常に重要なものと考えているわけ。それなのに
一介の一般的な男子高校生のあんたがそのお約束に従っていないなんてSOS団の歴史に残る赤っ恥だわ!」
なんだ、これが開いた口が塞がらない状況なのか。訳が分からない。意味不明にもほどがある。
その後、SOS団は今日はこれで解散することになった。……俺とハルヒを除いて。
ハルヒ曰く「大人数でぞろぞろとエロい本に買いに行くってどういう集団よ」とのことで、
まぁそりゃそうだ。と思いつつ、かと言って二人で買いに行くってのもどうかと思うぞ。
去り際に古泉は真夏の太陽の如くいやらしい笑顔で、
「恐らく涼宮さんはあなたにその類の本を所持してもらいたくないと思う一方で
こう考えたのでしょう。あなたがその類のことに興味がない、突っ込むと異性に
興味を持っていない……なんてことをね」
またハルヒらしいぶっとんだ思考だ。どうしてあいつはこう両極端にしか物事を
考えられないのかね。
「そう思うけども持って貰いたくない……こうした涼宮さんの自己矛盾を自分の
手で買わせるという行為で解消しようとしたのでしょう」
なんで思春期真っ盛りの男子高校生の性事情にそこまで干渉されなきゃいかんのか。
「まぁ涼宮さんに選ばれたとことで諦めてください。それにいずれかは……
これ以上長居は無用ですね。ここら辺で失礼することにしますよ。
最後まで糞憎たらしい笑顔で古泉は去って行った。そして残ったのは俺と……
「んじゃ行くわよ!」
へいへい、どこまで行きますよ、団長様。
道中、ハルヒに「一応あんたの趣向も考慮して選ぶから」ということでその趣向とやら
根掘り葉掘り聞かれたのだが、そんなことに真面目に答えるほど俺も馬鹿でなはいので
適当に答えていたら、さすがに目敏い団長様には通じなかったようで、「なら、あたし
が選ぶわよ!」とキレられた。
エロ本を選ぶ女子高生などこの地球にどれぐらい存在するのか、その統計を是非知りたいものだ。
長門にでも頼んでみるか。
そんなこんなで、という便利な日本語で出来事を省略し、結果だけを話すと、ハルヒはその持ち前
の行動力でほんとにエロ本を買ってきやがった。
コスプレの衣装といいどんな流通経路があるんだこいつは。
そのエロ本を渡すハルヒの顔はこころなしか赤みを帯びていたような気がするが気のせいだろう。
ハルヒが買ってきたのはいわゆるエロ漫画で、おおまかなストーリーは気の強い女の子が、
分かりやすいほどの、というかあり得ないほどの鈍感な男の子に恋していおり、
いろいろとアプローチをかけるのだが、前述通り鈍感なのでまったく気づいて
貰えない(俺だったら速攻でフラグ立てるのにな)。
しかしふとしたきっかけで女の子の恋心が知れることなり、そして男の子もその
女の子を好きであり、めだたく二人は結ばれたというものだった。
ハルヒと別れ、帰宅した俺はそいつをその類を隠しておいた場所に隠しておいた
(古泉の推測どおり俺の所持していたブツは綺麗さっぱり消失していた。谷口すまん)。
そして俺は何事なく平穏に過ごし眠りついた。

 
 

そしてその日に見た夢を墓まで持っていくことを俺は堅く誓うことになる。

 

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