500年後からの来訪者After Future10-13(163-39)

Last-modified: 2017-03-25 (土) 14:16:28

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future10-13163-39氏

作品

北高バレー部のコーチも滞りなく終え、翌日の新聞にも取り上げられずに終わった。有希が提案したアンコール曲で色々と相談事もあったが、妥協案として解決することができ、ダンスの練習も始まった。OG達の活躍により、アメリカ支部の女性誌が2000万部中1400万部まで製本作業を終え、明日の朝には作り終えているころだろう。青ハルヒにはこちらの世界の国民的アイドルに毎月第二週と第四週の金曜と土曜はライブとコンサートがあることを告げ、もしその日に野球の試合が入るようであれば早めに連絡が欲しいことを伝えてもらうことになった。子供たちが保育園、小学校に向かったところで、人事部以外にもドーナツを振る舞いに行くと告げて解散した。

 

 支給する料理ができたと、保育園から戻ってきた青有希と佐々木を未来へ送り、ディナーの仕込みとパン作りを始めたところでジョンからあまり嬉しくない報告。朝食の片付け当番が佐々木だったのはそのためか。
『キョン、過去の時間平面に藤原と名乗る男が涼宮ハルヒの能力を狙って時間跳躍している。俺のいた時間平面上の人類ではないが、この時間平面上で当時の連中が壊滅させられた情報は得ているようだ。危険を伴うより、何の能力もないキョンや古泉一樹、涼宮ハルヒに近づいた方が得策と判断したらしい』
やれやれ、未来の自分が全員殺されていたと知ってもシスコンは相変わらずか。前回滅ぼしてから数年経過しているし、そろそろ来てもおかしくない頃だとは思っていたが……どうやって未来の自分は全員俺たちに殺されたと知ったんだ?
『アジトにこの時間平面上のことを調べ上げた資料が残っていたせいだろう。あのとき、俺は自称藤原の一派と金庫しか時間跳躍していない。いくら待っても誰も現れる気配が無ければ、既に殺されたと考えるのが普通だ』
ハルヒ達に報告したところで、気分を害するだけだな。ジョンも参戦するとして、二人でやるとどのくらいで終わりそうだ?
『他のメンバーに気付かれずにやろうとすれば一週間以上だ。キョンが練習に出向く前の時間で片付けようとするならな』
前に、藤原一派を抹殺したときは、未来のみくるは規定事項が満たされないなどということは言わなかった。佐々木の周りに、藤原や九曜が現れない時間平面も当然数多くあったはずだ。橘だけなら何もできないし、何の害もない。朝倉も「殺す価値も無いわ」なんて言いかねん。あんなバカを相手にするのに10%程度の意識さえあれば十分だ。残りの意識でパン作りと仕込みを終わらせてしまおう。あのバカのアジトに直接送ってくれ。
『分かった。俺も出る』
マフィア同様、閉鎖空間の檻に閉じ込めて、ジョンのかめ○め波で吹き飛ばせばそれで済む。ところで、どのくらい過去まで遡ってきたんだ?
『キョンが高二になってすぐの頃だ』
それはなんとも頃合いのいい時間平面に連れてきてくれたもんだ。春休み中にそれをやると、佐々木と再会するきっかけが生まれない。まずはここより未来の連中ってことになりそうだ。

 

「はっは!やはり古代人。言葉が通じないらしい」
ジョンとのテレパシーを終えて、ようやく藤原のバカの声が聞こえてきた。自分たちの方が立場は上だとアピールするには少し遅かったようだ。未来銃を放って勝手に自滅した人間が数名。閉鎖空間を展開したところでジョンが現れた。
「“シャンブルズ!!”」
手下の持っていた銃と藤原の首が入れ替わる。生暖かい感触と藤原の首に驚いて、シスコン野郎の頭部を放り投げた。そこまで高さは無かったが、床に転がって俺の足元へとやってくる。コイツの頭部を使ってゲートボールをするのも悪くない。藤原の頭部を軽く踏み付けてやった。
「がっ!貴様、何をする!くそっ!一体どうなっているのか説明しろ!!」
「未来人の言葉は俺には分からんらしい。とりあえず、一人ずつ木端微塵にしよう」
天井を吹き飛ばすと、自分で攻撃を喰らった奴から宙に浮いていく。500年後まであの漫画が残っているんだ。この中の一人や二人、覚えていても不思議ではない。
「そういえば、500年後から来たジョンからすれば、コイツ等は過去の遺物になるんだったな。さて、このあとどうなるか知っている奴はいるか?500年先まで残っているそうだからな。おまえ等でも知っている奴がいるんじゃないのか?」
「まさか……まさか………っ!」
強烈な爆破音と共に、粉々になった仲間の残骸も何もない空を見上げて青冷めているのが数名。
「あぁ、TPDを使って未来へ帰ろうとしても無駄だと言っておく。この……藤原と名乗る男を数千人と滅ぼしたときは、TPDDでは脱出不可能な閉鎖空間を張った。今もその条件で閉鎖空間が張られている。当然、この男に加担した連中も全員木端微塵にした。どういう意味か分かるな?」
「やめっ、やめてくれええぇぇぇぇぇ………」
「この男によれば、俺にはおまえ等の言葉が通じないそうだ。おまえ等と違って俺は忙しいんだ。コイツのようなバカをさっさと吹き飛ばして本来の仕事に戻りたい。というわけだ、じゃあな」
「にっ、逃げろ――――――――――――――――っ!!」
「うん、それ、無理。TPDでも脱出できないんだ。出られるわけがないだろう?自分の出番がくるまでそこで見物していろ」
『キョン、俺にもやらせてくれ』
「ああ、俺はこのバカの胴体を牢屋に閉じ込めて金庫の金を奪う役に徹する。たまに攻撃を仕掛けることもあるだろうが、後は好きに暴れてくれ」
まったく、人事部で電話対応しているの大差がないな。許しを請う悲鳴が廃屋のあちこちから聞こえてきたが、知ったことか。人類滅亡なら断固阻止するが、このバカの一派なら滅亡しても構わん。現金だけを奪って金庫と一緒に牢屋にテレポートさせると、ヘリや車など邪魔なものはすべて吹き飛ばした。ヘリや車ならもう十分足りている。
「さて、そろそろ俺は戻らないといかん。明日また来てやるから、それまで待ってろ」
ジョンが次々と送り込んできた時間平面上の藤原のバカの首だけが床に転がり、この状態になってさえも『おい、貴様!』とか言ってくる始末。つくづく自分勝手で傲慢でちょっと武器を持っただけですぐつけあがる。あのアホも急進派もコイツ等も同類だってことだ。

 

「どうやら、例の新聞社の社長も土下座をするつもりは無いようですね。バレーの取材許可を願う電話もきていましたが、例の新聞社の人間からの電話に社員も呆れ果てていましたよ。圭一さんも『いくら社長のパフォーマンスでも他人の夢にまで関与できるはずがない。悪いが、切らせてもらうよ。君のような人間を相手にしていられるほど、こちらも暇じゃないからね』などと応対していたくらいですよ。『バレー以外の取材は一切しないから入れてくれ』などという電話もありましたが、まずはその風邪と花粉症を治してから出直してくるよう伝えておきました。練習場所を提供する側として選手や監督、コーチ陣の健康面の配慮は当然のことですからね」
「それに加えてキミのパンを目的とした低層階のホテルの予約、新川のディナーの予約はいつものことなんだが……取材と別で許可をもらいたいと電話が来た。SOS団の曲を踊ったり、演奏したりしたいそうだ。青チームの朝比奈さんのバラード曲もその中に入っている。それから、昨日サイトにアップした動画を見て、オーケストラの伴奏だけのものはないのかと、中学校の音楽教員からの問い合わせがあったよ。生徒に何度もせがまれたらしい。卒業式で歌うのならもうほとんど時間がないからね」
「著作権関連で許可が欲しいってことか?いつも黄有希が申請しているのと一緒で……」
「圭一さん、ダンスはハレ晴レユカイで間違いないでしょうけど、あたし達の楽曲で何を演奏したいって言ってきてるの!?」
「God knows…とLost my musicだ。サイコメトリーの情報によると、彼女と同程度までギターの特訓をしたらしい。あとはこちらの許可さえあれば、ライブでいつでもカバーできるようだ」
『面白いじゃない!』
ENOZが作った曲だけに、四人ともハルヒ達と似た表情だ。OKということでいいだろうが、問題は音源のこと。
「圭一さん、楽団の演奏の件は何件連絡が来たか教えていただけませんか?」
「今のところ四件だが、このあとも間違いなく電話がくるだろう。歌詞は動画にUPされているからね。卒業式前日に間に合えばいいはずだ」
「くっくっ、オーケストラの演奏で歌うのもいいだろうけれど、ピアノの伴奏の練習をしていた生徒もいるんじゃないのかい?指揮も出だしは合わせ辛いだろう?」
「あら、指揮なら曲に合わせて振り始めれば、あとは声の強弱をつけるだけでいいわよ。ピアノの伴奏者に対する配慮は学校側に任せていいんじゃないかしら?」
「この際だ。楽団で演奏した曲をまとめてCD販売しないか?クラシック以外でも、God knows…、Lost my music、ハレ晴レユカイ、フレ降レミライ、旅立ちの日に(日本語版、英語版)、音楽鑑賞教室で演奏した時の旅人もそうだ。レット・イット・ゴーとWe Are The Worldは次のCDに収録すればいい。ハルヒと有希の許可があればいつでも可能になる。どうだ?」
「それいいわね!これで楽団員の士気も高まるってもんよ!」
「分かった。楽団員には水曜にその旨を伝える。楽団の演奏を録音したCDなら前にもあなたが渡してきているはず。同じものを配って回って」
「なら、圭一さんから情報を受け取ってすぐに行ってくる。四校回ったら人事部に行くから追加があったら教えてくれ。それに、どのアーティストがSOS団の曲をカバーしたいのか聞いてみたい。有希や中西さんのギターテクニックに対抗できるアーティストなんてほとんどいないはずだ」
「God knows…とLost my musicなら○`Arc~en~Ciel、○ackt、Acid ○lack Cherry。バラード曲が中島美○、ハレ晴レユカイはももいろクローバー○、○AA。これまで君たちがカバーしてきたアーティスト達からの逆指名だと思ってくれればいい。私もどうして今日になって急に何件も……とは思っいたんだけどね。昨日、一昨日もかけてきていたようだ。どうせ取材許可を請う電話ばかりだからと電話対応をしていなかった分、今日になって一気に舞い込んできたらしい」
「どんな演奏になるのか見てみたくなりました! 折角OKをもらってライブで演らせてもらっているのに、わたし達がOKしないわけにはいきません!」
「フフン、みくるちゃんも言うようになったじゃない!逆指名されてあたし達がOKしないわけにはいかないわ!ところであんた!CDを届けにってあんた一人で行くつもり!?また授業をやってくれなんて話になるわよ!?」
「俺が行けば何の件かすぐに分かるし、今回はアポイント無しだ。音楽科の教員が授業中でも、三学年の教員か管理職に渡せばいい。伴奏者との兼ね合いは朝倉の言う通り、学校側に任せる。要は、使うかどうかは学校裁量ってことだ。渡したところで授業を断ってテレポートすればそれで済む。影分身一体で十分だ」
「いい機会ですし、次のライブでGod knows…とLost my musicを英語Ver.で歌ってみるというのはいかがです?」
「あんたもたまにはいいこと言うじゃない!有希、ライブの曲を絞って構成し直すわよ!」
「分かった。でも、最初の三曲とGlamorous ○kyは確定」
「なら、俺から一応報告だ。ツインタワーの方はまだパートが出揃っていない分、こちらから人員を割く必要があるが、俺一人で対応できる。残りの意識で例の催眠をかけてまわるつもりだ」
「我々の世界での面接については夕食で報告という形になるでしょう」
「パンフレットを届けたときは音源だけだったが、今回は混声三部合唱、各パートごと、音源だけの計五曲にする。ジャケットもハルヒが指揮棒を持っている姿で配ってくるがそれでいいか?」
『問題ない』
「えっ!?ってことはキョン、アルトパートは演奏と私の声だけ流れるの!?」
「オーケストラならそういうことになるな。男声は古泉、ソプラノは青みくるだ」
「えー…それはさすがに恥ずかしいよ」
「各芸能プロダクションから勧誘が来て、アイドルデビューしないかと言われるくらいなんだ。心配いらん」

 

 強引に押し切った分、今夜にでもゆっくり相手をしてやればいい。しかし、アイツは至って普通の顔で昼食を食べていたが、どういうつもりなんだか。こればっかりはOG12人だけでないと話すに話せやしない。連絡があった中学校をまわり人事部に戻る頃には更に二校から追加連絡が入っていた。しかし、最近の中学校も警備が厳しくなったもんだ。インターホンを鳴らしてロックを解除してもらわないと入れんとは……パート練習の必要はないだろうが、楽譜はあった方がいいかもしれん。これ以降連絡が来るようなら追加することにしよう。そのまま経理課、編集部、デザイン課にドーナツを持って赴き、異世界支部の方も鈴木四郎の催眠をかけて出向いた。おやつ代わりには丁度よかったらしい。鈴木四郎としてフロアに出向いただけで黄色い歓声が上がったところもあったくらいだ。このくらいなら定期的に届けに行くのも悪くない。
「ようやく社員募集の垂れ幕を取り外すことができそうです!電話の段階でOUTだった者以外は全員採用することになりました。デザイン課も社員が集まってきましたので、募集は大画面で行うことにして垂れ幕は取り外してしまう予定です。ところで涼宮さん、明日以降、天空スタジアムでパーティでも開きませんか?涼宮さんが作った料理と鈴木四郎のパンと絶景を見せるパフォーマンスがあれば、より口コミも広がるかと。合格者には明日受付に集まった時点で、本店でフルコーディネートをさせるつもりです。ここは『新入社員歓迎会』と称しておきましょう」
「それいいわね!ん~~~~できれば明日、店舗の社員も呼んでやりたいところなんだけど、例の催眠の件もあるし……困ったわね」
「では、ジョンの世界で仕込みをするというのはいかがです?彼は試合中でもバックダンサーとして踊れるようにと必要最低限の意識で零式改(アラタメ)を撃つ練習をしていますが、僕は夜練に割く分の影分身は暇になってしまいますからね。そういうことであれば手伝わせてください」
「あぁ、それで昨日、黄キョン先輩が一人でサーブ練習をしていたんですか。ようやく納得できました」
「大会ならまだ先だし、青古泉の提案通りでいくと俺もパンをいつもより割増で作る必要がありそうだ。俺も調理にまわる」
「決めた!二人がそう言ってくれるのなら、明日やるわ!古泉君、各店舗に急いでFAXを送って出欠を取ってきて!社員全員集まってもいいくらいのビュッフェを用意するわよ!」
「すぐに手配します。こちらから迎えに行くことと、直前に連絡を入れても構わないことを伝えておきましょう」
『すぐに手配します』なんて、使わなくなったなどということはないが、この台詞を聞くのもいつ以来になるんだか。高校時代に新川さんや園生さんによく迎えに来てもらっていたんだったな。
「すまん、昼間は色々と報告事項があったから言わなかったんだが、俺たちの世界のENOZについてだ。黄俺の言っていた通り、榎本さんと中西さんが出られなくなったせいで軽音楽部としての演奏は出来なかったらしい。四人が俺たちと合流する前に務めていたところと同じ会社で勤務している。楽曲はすべてお蔵入りだそうだ」
青俺の報告を聞いたENOZ四人の表情が一瞬にして曇った。こちらの世界では、ハルヒと有希がいたからよかった。今なら、青有希はサイコメトリーで演奏することができたかもしれんが、当時は至って普通の人間。その時の青ハルヒは青古泉と一緒に光陽院学園に在学中。中西さんの代わりにギターを担当できる人間なんていやしない。
「困ったね。異世界のENOZの苦い記憶を思い出させることになりかねないよ。いくら本人たちが説得したとしてもね。誰も彼女たち四人と接点がないのなら、本人が異世界人だと明かす他に手は残されていない。ENOZの手掛けたもの以外の曲もあるんだ。僕はそっちだけで十分だと思うよ」
「しかし、就職はしていても、本人たちの強い望みがあるのなら、話してみてもいいのではありませんか?」
「あんたバカ?そんな話をしたら『苦い記憶を思い出させることになる』って、今佐々木さんが言ったばかりじゃない!」
「ここにいる本人たちに聞いてみるべき。あの時、わたしと涼宮ハルヒが臨時で出なかったらどうなっていたか」
「そう、あのときは本当に二人に助けられた。ハルヒさんがステージで他の楽曲のことまで話をしてくれて、ENOZとしての演奏を聴きたいって何人も集まってきて、供給の方が追いつかなかったくらいだった。あのまま披露できずに終わっていたら……受験勉強になんて身が入らないよ!親にも猛反対されていただろうし、深い傷が残っているんじゃないかな。私と貴子は特に……」
「浪人しているかもしれないけれど、それでも私たちが務めていた会社に入ったんでしょ?私たちから話せば、デビューしようと思うんじゃないかな」
「でも、異世界のENOZ四人がわたし達と行動を共にするようになると、毎食料理を作っているキョン君の負担が更に大きくなります!」
「これだけの大所帯なんだ。四人増えたくらいでほとんど変わらん。これはもう本人たち次第。まずENOZが異世界の自分たちに話すかどうか。デビューできるとしたらデビューしたいのかどうか。デビューはせずともこっちのライブに見に来てもらったって構わないし、楽曲を貰うことができれば青ハルヒ達が日本全国に広めればいい。こっちと異世界とじゃ、違う曲もあるかもしれん。どうしますか?」
「うー…ん、この場で決められそうにないな。四人で話す時間が欲しいんだけど、いい?」
『問題ない』

 

もし、デビューをすることになったとしても、この現状を受け入れられるかどうかで困ることになるだろうな。異世界人が勢揃いしている上に、どこ○もドアにタイタニックまであるんじゃ、呆れる以外の反応はありえない。藤原のバカの相手は明日の朝食後にでも再開するとして、子供たちは自転車の練習に夢中になっているし、後で絵本を読んでやればいいだろう。夜練が終わる頃には木曜のディナーの仕込みも終えていた。問題は変態セッターのこと。スパで服を脱がすついでに、履かせていたアンスコをテレポートしてコレクションに加え、全身マッサージを終えて客室で待機していた影分身に後を任せた。
「それで、今日一日過ごしてみてどうだったんだ?」
「前のと違って硬すぎることも無かったですし、凄くよかったですよ?お尻の方は奥の奥まで入り込んで、歩くたびに身体が敏感に反応してました。歩きづらいなんてことも無かったです。アレ対策用のナプキンが残っていてよかったです。でないとアンスコどころか服も濡れてました。黄私と交代する日以外は、今日と同じようにしてくれませんか?アレ用のナプキンも今度買ってくるので。みんなが持っている余りをもらいたいくらいですけど、流石にそれだとバレちゃいますし」
「やれやれ……案の定そうなるのかよ。おまえがアンスコを履いている時点で、周りに気付かれてハルヒ達まで聞こえてしまうぞ」
「そこは、今日みたいにアンスコだけテレポートしてもらえればいいです。ところで、どこにテレポートしたんですか?」
「69階だが、テレポートしてすぐに情報結合を解除することにした。あんなものを残しておくわけにはいかん。洗濯しなくともアンスコを情報結合すればいい話だ」
「あっ、そういうことならアレ用のナプキンも買わずに情報結合で問題なさそうですね。でも、一番はやっぱり黄キョン先輩に抱かれるのがいいです。今日も抱いてください」
やれやれ、それとこれとはやはり別か。だが、有希や青ハルヒにも同じことをしてみるのも悪くない。ジョンの世界に少しでも早く向かいたいからな。同期で情報を共有して眠りについた。妻の方は『毎日私を抱いて!』と約束を取り付けられたらしい。やれやれ……
 『瞬間最高視聴率46.1%!半沢直樹を超えた!』、『ダブルミリオン突破!英語版「旅立ちの日に」で卒業式を!』
『超難関密室トリック!キョン社長からの挑戦状!』、『全国民の約半数による争奪戦!古泉一樹のシャンプー&カット!! 』等々、予定していた通り、ドラマの第九話とライブやコンサートで歌った旅立ちの日にで一面、二面を飾り、青ハルヒも満足気な顔で朝食の支度をしながらニュースを見ていた。今夜の歓迎会の仕込みはジョンの世界で既に終えている。店舗の社員たちは……青俺が鈴木四郎の催眠をかけて連れてくるだろう。しかし、瞬間最高視聴率46.1%か。宣伝した甲斐があったってもんだ。動画の方もダブルミリオンを突破したのはオーケストラの方。ライブの方もアクセス数がミリオンを突破していたが、伴奏がハルヒのピアノだけだったことが要因になりそうだな。オーケストラのCDを渡した方も、そうでないところも、何度も動画を繰り返し見て歌詞と発音の練習をしたんだろう。人事部が丸一日忙しくなりそうだが、『オーケストラの伴奏のみのものが欲しい』という依頼なら社員も意気揚々と対応できるだろう。
「くっくっ、まさか日本国民のおよそ半数が見ていたとは僕も驚いたよ。トリックを解いた人間が人事部に電話をしてくるんじゃないかい?」
「それに加えて、我々からヒントを得ようとする輩も出てくるでしょう。彼が告知に行っている間に『社長は今そちらにいらっしゃるんですか?』と聞いてきたのと何ら変わりません。社員は答えられないでしょうが、僕と圭一さんは影分身で電話対応をしていますし、園生に記憶操作を頼んだ方がいいかもしれませんね」
「『証拠は○○ですよね!?』なんて電話が来てもおかしくなさそうね」
「私もついうっかり喋ってしまいそうでならない。すまないが、頼めないかね?」
「分かりました。『真相が知られてしまわないように記憶を操作した』と書き換えます」
「それでも、例の新聞社もわたし達に関連することで一面を飾っているのよね?また催眠の件で電話がかかってくるんじゃ……」
「社長の謝罪より、こちらを一面として選んだ新聞社側の責任です。今夜も我が社の別館のシートが設置されますし、他の新聞社に遅れをとるような真似はできないでしょう」
「それで、ENOZの皆さんはどうすることにしたんですか?」
「天空スタジアムでのライブのことも含めて四人で相談したんだけど、いくら私たちと交代でライブをしても、異世界でデビューしたとしても、『もう一度あの頃からやり直したい』って思いだけは拭えそうにないって話になった。異世界の私たちをデビューさせる目的も不純だし、そんなやり方でデビューはしたくないかな」
「では、時期を見てENOZの楽曲以外でということになりそうですね。野球のことを加味すれば、ギターは有希さんよりも鶴屋さんの方が適任かと思いますが、いかがです?年末年始は影分身に催眠をかければいいだけですよ」
「それいいわね!サイコメトリーで十分だわ!鶴ちゃん、出られそう?」
「それはいいにょろが、みくる達は影分身できるようになったにょろ?アメリカ支部の製本作業は終わったっさが、みんなの前で見せるって話になってたはずっさ!」

 

 みくる達が箸を置いて意識を集中……しばしの間をおいて影分身が一体ずつ現れた。意識が朦朧としているせいで自席の後ろに情報結合された影分身が立っていられなくなっていた。
『みっ、皆さん、こ…こんな状態で仕事をしていたんですかぁ?』
「超能力に長けた古泉やエージェント達だって似たような状態から始めたんだ。今日のところは皿洗いと段ボール作りをしたらどうだ?それに、自由に振る舞えない、毎年恒例でつまらない行事に出るくらいなら、鶴屋さんも影分身を覚えればいい。年末年始のしきたりは影分身に任せて、本体はこっちで年越しパーティだ。笑いを堪える必要も、喋り方を制限されることも無くなる」
『それは名案にょろ!!あたしにもみくると一緒に段ボール作りをさせて欲しいっさ!!!』
「も~~~~~っ!このバカキョン!!あたしもそうだけど、どうして今までそれに気がつかなかったのよ!!書き初めのランキング発表も翌日にできたってことじゃない!!」
「彼が影分身を使い始めたのもつい半年前ですからね。しかし、これで日にちを気にせずに済みそうです。青僕のセリフではありませんが、来年の書き初めのトップは僕がいただきます!」
「くっくっ、今回はキミも大きく出たじゃないか。園生さんとのマリッジリングに入れた刻印でも書くつもりかい?」
「とりあえず、みくる達の修練の成果が出たことも含めて、ちょっとしたお祝いだ」
『お祝い!?キョン(伊織)パパ、ケーキ!』
『お祝い=ケーキ』という方程式を覆すにはまだまだ時間がかかりそうだ。今日もそうだしな。
「なるほど。今日がホワイトデーだとすっかり忘れていましたよ。先月はチョコレートケーキでしたし、ホワイトデーにあやかって苺のショートケーキですか」
「ああ、すまないが有希たちで切り分けてくれるか?みくる達は主賓だ」
『分かった』
『ケーキっ!ケーキっ!』
バレンタインデーとホワイトデーのことを話すのは一体いつになるのやら。三人ともケーキが食べられれば、それでいいらしい。まぁ、今説明しているほどの余裕はないか。与えられたショートケーキに満足して、保育園、小学校へ向かって行った。

 

 深夜でなくとも頃合いを見計らってシートを張ることもあると伝えて今朝の会議は終了。視点が視聴率やトリックにばかり集まっていて、最終回の登場人物について触れた記事は無かったな。このくらいなら木曜日の生番組で話してもいいかもしれん。みくるや鶴屋さん達四人は81階で段ボールの情報結合に入り、みくる達の影分身にはしばらくは皿洗いを任せるのが良いだろう。ビラ配りは青ハルヒがみくるの催眠をかけて出ることになるはずだ。俺は俺の仕事をしよう。あいつらを蹴散らすのに5%の意識で十分だ。特に条件はつけてはいなかったが、昨日と同じ時間平面上に赴くと廃屋の片隅に藤原のバカの首が山積みのままになっていた。
「なんだ、この時間平面上の橘や九曜に助けてもらえなかったのか?それとも見放されたか?」
「ぐっ……くそっ!僕はお前たちの時間平面上には何もしていないだろう!何故邪魔をする!!」
「この中に埋もれている首の一つがな、おまえらの言葉は俺には通じないとか言っていたらしい。今も何を言っているのかさっぱり分からん。だが、この様子を見る限り助けは来ていないようだ。ジョンの準備が整うまでボーリングでも楽しむことにしよう。おまえらの時間平面上にあるのかどうかは知らんがな」
『俺ならいつでもOKだ』
「ワー○ド―――――――――!シェイキング!!」
成田空港前を占拠した中国マフィア同様、爆発に巻き込まれた程度の威力に抑えた一発が廃屋の一角を破壊。藤原たちの髪の毛が焦げて見るも無残な顔になっていた。コイツ等には催眠をかけるわけでも、首をはねるわけでもなく、餓死という最もみじめな死に方で生涯を終えてもらう。強制的に連れて来られた藤原一派をジョンが薙ぎ払い、藤原のバカの首を部分テレポート。他の時間平面の連中のところまで生首を蹴り飛ばし、胴体は糞尿だらけであろう牢屋へと送還。現金も全て奪い取ってやった。しかし、今の俺たちなら、いくら涼宮体が相手でもこれと似たようなことができる気がするぞ。俺たちの時間平面が狙われたとしても、青俺や青古泉たちがいる。
『過去の俺自身や仲間たちを助けたいと思う気持ちがないわけじゃない。この連中や各国のマフィア程度なら大したことはないが、相手が情報統合思念体ではリスクが高すぎる。推奨はできない』
やはり無理なものは無理か。例のシェルターに超サ○ヤ人の閉鎖空間とテレポート膜だけでもと思ったが、ガードばかりで攻撃ができないんじゃどうしようもないな。巨大隕石の落下で地球ごと吹っ飛ぶ。急進派が攻めてくる要因になったのが何だったのか、あの組織は予知していたんじゃないのか?
『高校に入学してたった二ヶ月でキョンの命を狙ってきた朝倉涼子と大して変わりはない。どの道、急進派が攻めて来たはずだ』
アイツの場合は同じクラスにいる自分ではなく、隣のクラスの有希が選ばれたことに嫉妬して、有希と同じ宇宙人であるにも関わらず、自分には目を向けてもらえなかった。有希と同様、早いか遅いかの違いだけで、どちらも暴走したことは事実だ。まぁ、急進派の親玉なら、ジョンの言った通りの結論になるだろうな。ジョンとテレパシーで会話している間も、藤原のバカ共から許しを請う声が発せられていた。
「頼む!僕はもうお前たちに関わらない!『言葉が通じない』と言ったことも謝る!見逃してくれ!!」
「どうして未来のおまえが消されたのか、まだ理解していないらしいな。この場を逃れたところで、おまえらはまた過去へとやってくる。この程度で諦めるようなシスコンじゃないだろう?俺の時間平面上には来なくとも、過去の俺やハルヒ、みくる、古泉を巻き込み、それに佐々木を器と定義してアプローチをしてくる。未来の自分を消されて復讐に駆られるかと思っていたが、以前の藤原の方がまだマシだ。『負け犬』、『チキン野郎』と言われても何の反論もできまい。俺たちから逃げたおまえらが、どうして上から目線でものが言えるのか教えて欲しいもんだ。ガキ大将と何ら変わりがない。おまえらには最もみじめな死に方で生涯を終えさせてやる。このままここに放置されたらどうなるかくらい分かるはずだ。TPDを使って過去に来た時点でおまえらの運命は決まっていたも同然だ」
『キョン、時間だ』
「というわけだ。じゃあな」
今頃悔いたところでもう遅い。死ぬ直前までいくら悔やんでも悔みきれない程の懺悔をさせてやるよ。

 

「園生に記憶の操作を頼んで正解でしたよ。少しでもヒントを得ようとする一般人からの……特に女性からの電話が鳴りっぱなしです」
「くっくっ、それをキミが応対しているというのも可笑しな話だね。そんな人間のシャンプー&カットは引き受けたくなくなるんじゃないのかい?」
「来週の月曜日までに送られてきたハガキをサイコメトリーして判断することにします。催眠をかけてまわるのもあとわずかですし、明日からまた指導将棋をお願いできませんか?」
「ジョンもいるならわたしはそれでも構わないけれど、あなた一体どこで何をしてきたのかしら?昨日からずっと血の臭いがして気になっていたのよ。子供たちの前で話せる内容じゃないでしょうし、本体自ら出向いているってことはジョンも関わっていそうね。どういうことなのかわたし達にも説明してくれるわよね?」
『ちょっとあんた!あたし達に内緒で何をやってるのかはっきり説明しなさいよ!!』
「やれやれ、有希はカレー、朝倉は血の匂いに敏感とは……黄緑さんは一体何の匂いに敏感なのか教えてもらいたいもんだ。話したところで参加しようとはせず、気分を害するだけだと思って話さなかっただけだ。この数年で曲がった方向に成長したシスコン野郎が過去の俺やハルヒ、みくる、古泉、佐々木に危害を加える算段をしているとジョンから報告を受けた。この時間平面上に復讐に来るものだとばかり思っていたが、とんだチキン野郎だったよ。俺たちには敵わないと知って他の時間平面上へと時間跳躍先を切り替えたんだからな」
「なるほど。確かに我々の気分を害するだけです。ですが、それが終わらないとジョンや朝倉さんが将棋を指せないということであれば話は別です。さっさと終わらせてしまいませんか?」
『フン!あんな奴の相手なんて御免だわ!あんた達でとっとと片付けてきなさいよ!』
「それじゃあわたしも楽しめそうにないわね。ベビードールのデザインの件は、両方の世界の社員にも伝えたし、早く終わらせてくれないかしら?わたしにもしばらく休息が欲しいわね」
「だから気分を害するだけだと言ったんだ。やれやれ、それならこのあとも向かうか。どうせ本体で練習試合に参加しても、他の選手と違って練習にならん。それで、電話はそれだけじゃ無かったはずだ。今度はCDと一緒に楽譜も渡してくる。今日は何校まわればいいんだ?」
「今朝の新聞の影響で午前中だけで32件。今も対応している真っ最中だが、今日、明日は同じ依頼が舞い込んでくるだろう。頼めるかね?」
「パン作りが少しの間止まるだけです。俺一人で行きます」
「では、催眠の件が終わり次第、僕も過去の時間平面に連れて行ってください。早く将棋を指したいので」
「古泉、各店舗からFAXは返ってきたのか?」
「ええ、おそらく、彼のパンの影響でしょう。全店舗出席するそうですよ?迎えに行くというのがどういうことなのか分かっていないでしょうけどね」
「こっちの世界と違ってそこまで店舗数もないし、俺が鈴木四郎の催眠をかけていく。ツインタワーの方も問題ない。テレポートと閉鎖空間の条件を変えて天空スタジアムからの景色を見せるパフォーマンスだけで十分だろ?」
「それもそうね。あたしは本体で天空スタジアムに向かうわ!あたし抜きで食べ始めてくれて構わないけど、キョンと古泉君は影分身でこっちにきてよね」
「だったらすぐにでも片付けに行くか。古泉は催眠の件が終わったらテレパシーをくれ。後のことは頼む」
『問題ない』

 

 圭一さんから中学校の情報を受け取り、パン作りをしていた影分身と同期して全国へと向かわせた。『今日、明日は』と圭一さんが言った理由がよく分かったよ。卒業式前日に依頼しているようでは、いくら速達でも間に合わない。テレポートですぐにやって来られるなんて信じていないだろうからな。やれやれ、折角セリフを吐き捨てて去ったはずが、一時間もしないうちに舞い戻ってくることになろうとはな。取材許可を請う報道陣と同様、幼稚園児のように命請いをしてくるバカ共に、強気な発言は一言も出て来なかった。元々、発言だけは一人前だが、戦闘力たったの5。要するに、ゴミだ。
「ワー○ド―――――――――!シェイキング!!」
屋根は昨日吹き飛ばしたが、二度目の爆発に廃屋が耐えきれず、藤原のバカ共の上に壁が落ちようとしていた。生憎とコイツ等は餓死させると決まっているんだ。そんな死に方をされてはこっちが困る。周囲の壁を粉々にしてから藤原たちを見据える。
「あまり騒がしいようならこうなると覚えておけ。死なない程度に『わざわざ』手加減してやっているんだ。それでもおまえらが死ぬことに変わりはないがな。すぐに他の時間平面のおまえも呼び寄せて道連れにしてやる。苦しめ。自分の人生を呪え。未来を捻じ曲げようとした自分を恨め。そして悟れ。自分の願いは叶うことなく死ぬってな」

 
 

…To be continued