500年後からの来訪者After Future10-2(163-39)

Last-modified: 2017-02-27 (月) 05:34:08

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future10-2163-39氏

作品

シャンプー&カットでは視聴者プレゼントにならない文芸部室の連中から、ボードゲームで負ける古泉を見たいという要望があり、ハルヒや鶴屋さん達だけでなく、元機関のメンバーが揃って大爆笑。報道陣に憤りを感じているのはいつものことだが、制裁を加える方法も思いついた。どのような反応を示すかについては週末のお楽しみということにして、今日やるべきことをやってしまおう。遊戯○芸人の収録が始まり、芸人をある程度弄ったトークを加えたところでAブロックの予選が始まった。正攻法では来ないであろうと予測していた対決に注目してしばらく、なんと、MCとアシメ芸人がスタジオへ戻ってきた。

 

「早っ!!もう終わったん!?……って、前も同じセリフ言うた気ぃするな」
「面っ白くも何ともない!『演出するだけ無駄に終わりそう』なんはコイツの方やった!」
「だからさっきLP0で井○の人生終わってもうてたんや。揃って出られるんやから、楽屋で待っている時間使て練習しようて誘ってたのに『俺のデッキ見られるから嫌や!』言うてるから……」
「でも、宮○さんがここまで怒るって、どんな内容だったんですか?」
「何回かは魔法カードに邪魔されたんやけど、モンスターが一匹も出てこずに直接攻撃三発で終わってしもた。しょこたん、そいつのデッキ見てやって!」
ははは………俺にはサイコメトリーでデッキをセットした瞬間にどんなデッキで構築されているか分かっていたからな。モニターを気にしている芸人は一人もおらず、案の定一回戦で敗退した芸人のデッキを全員で確認していた。さて、どんなコメントが飛び出すのやら。
「これは………」
『これは?』
「あのー…何をコンセプトにしたかはむっちゃ伝わってくるんですけど、カッコイイ系のカードばかり集め過ぎて召喚するのにコストが高すぎるモンスターばっかりなんです。四つ星以下のモンスターがほとんどいないんじゃ生贄にもできないですよ。魔法カードと罠カードのバランスは良いんですけど……神のカード三枚入れるより重いかも」
「よぅこのデッキでトーナメント勝ちぬけると思うたな!二度と遊戯○芸人を語るな!」
MCがカードゲームでここまでガチ切れするとは思わなかった。コメントも甘口だったようだし、場のベクトルを切り替えることにしよう。しかし、どうしてここまでTV慣れしているんだ?俺は。
「反省会もいいですが、二回戦の相手のことを考えてみてはいかがです?あの二人、どちらもAブロック代表に名乗りを上げてもおかしくないようですし」
「うわっ!出たよ、ヴィジャ板。○吉さんもエグいな~もう三文字目まで揃ってる。河○さんも半分諦めてますね」
「ほな、宮○の次の相手がどっちになりそうか見てみよか」
モニターの映像が切り替わり、フィールドにはブルー○イズと○グネットヴァルキリオンが写っている。ドラ○ンを呼ぶ笛が出るまで耐えしのげるかどうかが鍵になりそうだな。
「えっ!?これ、ケン○バの方がヤバイんとちゃうん!?」
「攻撃力3000と3500じゃ圧倒的に不利ですね。フィールドの効果があっても3500には届かない」
『○グネットヴァルキリオンでブルー○イズを攻撃!』
『リバースカードオープン!融合解除!!○グネットウォーリアーに分離しろ!ブルー○イズの反撃、滅びの○ーストストリーム!!』
『えぇ――――――――――――――――っ!?』
「うわぁ~前見たVTRと一緒ですよ。魔法カード一枚でケン○バさんの勝ちなんて!」
「あのカード無かったら天○っち勝ってたよね!?」
「あのー…僕たちの出番ってまだ来ないんですか!?デュエルしたくてしょうがないですよ!」
テレポートでスタジオに戻ってきた二人の激闘に、他の芸人から称賛の拍手が送られた。
「いやぁはっはっは、いいデュエルをさせてもらいましたよ!でも、あれ一回きりなんて悔しいな~!」
眼鏡をクイッと上にあげながら、今の一戦を熱く語っていた。ヴィジャ板を完成させた○吉と佐野○なこがAブロック一回戦を勝ち抜き昼休憩タイム。Bブロックに出場する芸人達が闘志を燃やしていた。
「ところで、宮○君、随分イラついているみたいだけど何かあったの?勝ったんでしょ?」
「勝ったには勝ったんすけど、アイツ、モンスター一匹も召喚できずに自滅して、クソつまらない決闘させられましたよ」
「では、お互い不満もあるようですし、お二人でここでデュエルというのはいかがです?演出なら任せてください」
「えぇっ!?そんなエキシビジョンマッチみたいなことしてもいいの!?」
「昼は大丈夫なんですか!?」
「ええ、心配いりません。準備が出来次第、始めてください」
『俺も本体で戻る。二人も楽屋に影分身を置いて昼食にしよう。ここは俺の影分身だけでいい』
『問題ない』

 

「それで、番組収録の方はどんな様子なのか教えてもらえないかい?」
「四時間の枠で放送するんだ。まだ四分の一も終わっとらん。今も『もっとデュエルを楽しみたい!』なんて言いたげな顔でスタジオに残っていた二人の決闘の演出をしている最中だ」
「しかし、あなたがあそこまでトーク慣れしているとは思いもよりませんでしたよ。わざと情報結合を失敗したかのように見せた例のシーンもお見事でした」
「毎年のようにハリウッドスター達の前でパフォーマンスをしたり、バレーのオンシーズン中は毎日インタビューに答えたりしていれば、嫌でも場慣れする。俺も何でこんなに冷静なんだと疑問に思っていたよ。こうした方が面白そうだ……とかな」
「問題ない。大半がトーナメントの様子を映すことになる。決闘前のトークの撮れ高なら十分」
「くっくっ、三人だけで情報を共有していないで、僕たちにも見せてくれないかい?そのトーク慣れしているシーンとやらを。僕にも同行させて欲しいくらいだよ」
見せるなら俺が入る前……いや、MC二人がトークを開始したところからだな。見る必要のない俺の頭上にモニターを出すと、収録開始の場面から映像が流れだした。吹き出してしまいかねないメンバーが箸を置いている。
「何て言うか、トーク慣れしているって言うより、芸人を手玉に取るって感じがするわね。弄った方が面白い芸人を敢えて番組スタッフが選んだんじゃないかしら?」
「くっくっ、そうでもなければMCがあんなに怒ることはないよ。彼にならこっちの古泉君でも勝てそうだ」
「も~~~~~っ!その話は出さないでって黄あたしが今朝言ったばかりじゃない!鶴ちゃん達が居たら笑い転げているわよ!!それよりあんた、さっきは四分の一すら収録が終わってないとか言ってたけど、明日のディナーの仕込みは終わったんでしょうね!?」
「ビュッフェは出来た。あとはディナー中に追加オーダーに応えるだけでいい。それより、タイタニックに泊まるのも今日で最後だ。明日の朝はプレートを外してシーツを取り換えておいて欲しい。それから、女子日本代表にシャンパンを配ったり、空いた皿を片づけたりする役で何人か来てもらいたいのと、部屋の鍵を渡す役も必要だ。翌日の朝食はパン以外に関しては青ハルヒの担当になる。順番通りでいくと、男子日本代表のここでのディナー担当は古泉になりそうだが、何か考えてあるのか?」
「今さら変更するわけにはいきませんが、男子の方も鉄板料理食べ放題になりそうです。女性と違って、あまりムードを楽しむようには見えませんからね」
「連絡は今日の夜練後だし、鉄板料理のビュッフェだと伝わって無ければ変更は可能だ。現状維持の閉鎖空間で男子のディナーの日まで保存しておけばいいんだからな」
「あ~~~~~っ!!すみません先輩!タイタニック号のことは言ってませんけど、鉄板料理の食べ放題のことは話しちゃいました!ごめんなさい!!」
「では、おススメ料理が出来次第、鉄板料理の仕込みに移ることにします。予定通りに事が進むだけですから、あまりお気になさらずに」
「でも……」
「問題ない。明日のシーツ交換と部屋の掃除はわたしがする。磁場で埃を吸着するだけ。あなたも手伝って」
「わっ、分かりました!ありがとうございます!!」
「ところで、ディナーの方は終わっているとしても、今日の夜練には間に合うのか?まだ四分の一なんだろ?」
「パン作りに回している影分身の手が止まるだけだ。その頃には決勝も終えて俺一人でも十分だし、芸人達も午前中からスタジオ入りしているんだ。いくら今日限りのデュエルとはいえ、芸人達もさすがに疲れる。今も敗者復活戦のルールでも取り入れようかなんて話になって、敗者同士で決闘をしている真っ最中だ。ついでに、異世界支部の方は混雑時を避けて社員が食堂に来ているが、パンの方はいつになっても行列が終わりそうにないらしい。週末には外で並んでもらうことになるかもしれん。パンの撮影は無理でも、異世界支部の方はしっかりと一面を飾ってもらわないとな?」
「まったく、どれだけ貢献してくだされば気が済むんです?本社周辺のチェーン店を本気で潰すおつもりですか?我々の世界の第三人事部として新しくフロアを設けなければならなくなりそうですよ。こちらの圭一さんも、影分身二体が第二人事部で電話対応を続けていますからね」
『あ……』
「ちょっとあんた!また軽はずみな発言してんじゃないわよ!みくるちゃん達が落ちこんでいるでしょうが!もっと言葉をえら……」
「ハルヒ、おまえがみくる達を更に追い込んでどうする。とにかく、中途半端な影分身でバレーに出られても困るし、みくるも少しは相手の攻撃を読み取れるようにならんとな。それぞれ、今の自分にできることをやればいい。俺がバレーに出られない分、頼んだぞ」
『キョン君、ありがとうございます!』

 

河○VS若○の敗者復活戦(?)も、河○が前回遊戯○芸人として出演した意地の勝利で幕を閉じ、午後の部が始まった。全力スタイルのイケメン芸人が抽選段階から空回りしていた。
「俺のターン!!!ド――――――――――――――――――――――――――ロオオォォォォ!!!」
『長いわ!!』
「俺はブラック○ジシャンガールを攻撃表示で召喚!来い、ブラック○ジシャンガール!!」
モニターには召喚したモンスターとその攻撃力、ライフポイントが映っているんだが、召喚した本人のテンションが一転して、真顔に戻ってしまった。試しにブラック○ジシャンガールを振り向かせてウィンクさせてみた。
「あっちゃんがブラック○ジシャンガールに惚れてもうたで~?」
「真顔で固まってしもた!」
「でも、むっちゃ可愛いじゃないですか!中○さんと被っちゃいました!」
「えっ!?ってことは、二人でマジシャン対決?」
「こ~と~わ~る~」
「何でおまえが入って来んねん!」
「いやでも、順番が確定するまでは、まだ分からないです」
超正統派の武○遊戯デッキと、可愛い系を集めたデッキならモンスターが被ってもおかしくない。先ほどのカッコ良すぎる系を集めたものとはバランスがまるで違う。情報結合を解除しても未だにセットのど真ん中に突っ立っていた中○を椅子に座らせると、Bブロックの芸人達が自分の選んだモンスターを召喚していく。そして、最後に残ったのはこの男。
「『ちょっと待て――――――っ!!』とか言いながら、結局、Aブロックの戦いを観てても、ワイプとして使えそうに無かったんで、デュエルで少しは活躍してくれることを祈っとるで~」
「絶対に勝ち進んで汚名返上するから、よ~見とけ!俺のターン、ドロー!俺はクリ○ーを攻撃表示で召喚!!」
ポフュン!
『は!?』
影分身の演出のような小さな煙が出たと思いきや、煙の中からはクリ○ーどころか、中から何も現れず仕舞い。
「妙ですね……ちょっとカードを確認させてください」
「さっきの俺のLPもそうやったけど、何か調子悪いんとちゃうん?」
「ちゃうちゃうちゃう、あれは井○の本当のライフポイントが表示されてもうたから仕方がないねん!」
「どういう意味や!?」
「ダイレクトアタックでホンマにぶった斬ってしまえば良かったわ」
「………どんな扱い方をしたら、カードがこうなるんです?」
「普通にデッキを組んだだけなんだけど?」
「一体どないしたん?」
「……局違いで申し訳ないんですが……『顔が腐って力が出ない』そうで、モンスターには悪いんですが、ちょっと強引に召喚してしまいましょう。見ていただいた方が早いと思うので」
『顔が腐って力が出ない!?』
カビや苔だらけのクリ○ーが全員の前に姿を現した。
「え~~~~っ!こんなクリ○ー可愛くない……」
「カビだらけでホンマに腐っとるみたいやね」
「うわっ!名前まで『腐ったクリ○ー』になってるやん!しかも、攻撃力たったの3て」
「児○さん、元気取り戻してあげないと駄目ッスよ!元気100倍にして攻撃力を戻してあげないと」
「あぁっはっはっは!それで攻撃力が3だったんだ!」
「児○さん、顔を変えてあげてください!このままじゃクリ○ーがむっちゃ可哀想です!」
「こんな顔が本体みたいな奴の顔を、どうやって変えろっちゅうんじゃボケ――――――っ!!」
「あぁ~~~~っ、児○さんがそんなんだから、クリ○ーがこうなったんじゃないですか!もっと愛情を注いであげないと!」
「何か、元気の出る一発ギャグすればええんとちゃうん?」
「元気の出る一発ギャグ?……………クリ○ーマン新しい顔よ~~~~~~っ!」
効果音が鳴って元気……もとい、攻撃力が300に戻るはずもなく、敵の攻撃を受けたときと同じ音を立てて、粉々に砕け散った。
『あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!』
「自分で自分のモンスター破壊してしまいよった!」
「クリパンマンならまだしも、クリ○ーマンって……」
「くくくくく……ネーミングセンスが悪すぎる」
「とりあえず、児○の攻撃力は『破壊』ということで、これでBブロックの対戦相手が決まりました!」
やれやれ、折角機会を提供したのに結局ブーイングで終わったか。この件は通常枠行きか編集カットだな。一時はモンスターがかぶったことによるマジシャン対決という声もあがったが、Bブロックの対戦カードは品○VS蛍○、ワッ○ーVS中○、中川○子VS矢口○理、○田VS児○。この企画初の女性芸能人同士の対決となり、草原をフィールドに選んだワッ○ーに周りからネタ振り。
「ワッ○ー、今度は草原に芝刈りに行くん?」
「ヴィ―――――ン」
これで笑いを取れるのも………もう寿命かもしれん。

 

 どの道攻撃力としては最下位だったが、デッキ自体はオ○リスを主軸とした、バランスのとれた良いものだった。勝利を得たにも関わらず苛立ちを隠しきれなかったMCからは、
「俺、児○が相手の方が良かったわ!」
と言われる始末。確かに演出としてならこちらの方がやりがいはあった。しかし、青古泉VSジョンを思い出させる○田の手札抹殺の魔法カードにより形成が逆転。VTRもしっかり確認されていたらしいな。漫才やコントのネタを作る芸人はやはり頭がいい。予定調和というわりには善戦したと言うべきデュエルを見せ、他の芸人たちからも賛辞を受けていた。品○VS蛍○は前回よりも更にデュエルタクティクスを磨いた品○が勝利をおさめ、女性芸能人対決では、どちらも攻撃力1900のヂェ○ナイ・エルフを最初のターンで呼び込み、装備カードでの増強、魔法カード、罠カードでの相手モンスターの破壊や手札に戻す戦略で、ほぼ互角の闘いに持ち込んだ。勝敗を分けたのはドローしたカード。ハー○ィの羽箒で、魔法カード、罠カード、装備カードをすべて取り除いた中川○子が自軍のモンスター達による総攻撃が通り、中川○子に軍配が上がった。最後まで一進一退を繰り返していたワッ○ーVS中○のデュエルでは、互いに手札も底を尽き、次のターンでワッ○ーの攻撃を喰らった時点で中○の負けが決まるところだったのだが、ドローした○よりの宝札により、場に出ていたサイ○ントマジシャンの攻撃力が飛躍的にUP。奇跡のドローにより中○の二回戦進出が確定した。
「いや……あの、これがオ○ラジの全力スタイルなんで」
一回戦で完全燃焼してしまった感は否めなかったが、どのデュエルも見ごたえのあるものだったことは確かだ。
「これでベスト8が決まったわけなんやけども、ケン○バ、対戦カードは決まっとるし、抽選はいらんのとちゃう?」
「いえ、この八人でもう一度、カードの抽選を行います。一回戦との違いは、抽選で出したカードは使えないことと、二人の出したカードのうち攻撃力の高い方がフィールドか先攻・後攻のどちらかを選ぶと」
「ということは、この八人の中で一番攻撃力の高いカードを出した人が、フィールドをどこにするか最初に選べるいうわけやね!」
「蛍○さん、前回と何か雰囲気が違うっていうか、自分でデッキも作ってますし、遊戯○の世界に凄い詳しくなってる。品○さんとどんなデュエルをしていたのかあとでVTR見せてください!」
「あのー…VTRで見るよりも、実際に対戦してみた方が面白いですし、蛍○さんの実力もより分かりやすいです」
「じゃあ、Bブロックも敗者復活戦やってみる?児○もデュエル『は』凄かったし」
「あっはっは、やっぱりそこは強調するんですね!」
とはいえ、準々決勝にワイプ無しというわけにもいかず、決勝戦を終えて余裕があれば……という話になった。Bブロックはどのデュエルも白熱したものだったし、この後誰が勝ち残るのか俺にも見当もつかん。

 

 抽選の結果、トップはレッド○イズを出したケン○バ。当然の如く山のフィールドを選んだのだが、残る三組はどのフィールドでも大差が無く、対戦相手と相談してフィールドを決めるという暴挙に出た。『まだこのフィールドで闘ったことないから』という理由で決定し各フィールドへテレポート。もはや目の前で人が消えても誰も驚かない状況というのも凄いな。
『クレイジーゴッドの異名が付くほど浸透しているんだ。耐性が付いていて当たり前だ』
やけに静かだと思っていたが、やはり気になって見ていたか。誰が決勝に出てくると思う?
『俺にもまだ読めない。だが、極端なデッキを組んだ奴はここで脱落する』
相手に手の内を読まれて対策を立てられてしまう……か。スタジオ内でもどの対戦を見るかで意見が割れたが、準決勝に現れる可能性の高いケン○バ、品○より他とは違ったデッキを構築してきた○吉と佐野○なこのデュエルを観戦することになった。開幕と共に序盤は佐野○なこの圧倒的優勢で事が運び、○吉のLPも風前の灯火。しかし、ポーカーフェイスが似合わないというか、こういう勝負事では表情に出てしまうらしい。準備は万端とばかりに○吉の口角が上がった。ゾーンですらない俺でも分かるんだ。相手の状況は逐一見つめているはず。ここぞとばかりに手札抹殺のカードにより、墓地のモンスターを呼び出せなくなったところで、罠カードを無効にする人造人間サ○コショッカーがフィールドに現れた。手札には墓地の魔法カードを手札に戻す特殊能力を秘めた、セ○ントマジシャンが控えていたが、壁を失った○吉にサ○コショッカーのダイレクトアタックが決まり勝敗が確定。
「えぇ~~~~っ!河○さんが手も足も出なかったあのデッキに簡単に勝っちゃった!」
「手札と墓地が満たされた時点で口角が上がっていましたからね。ずっと○吉さんの表情を見て手札抹殺のタイミングを計っていたんだと思いますよ?」
「えっ!?例の采配を読む集中力ですか?○吉さんの口角が上がったなんて全然気がつきませんでした」
「気にしていなかっただけで、そこまで集中力を使う必要もありません。こういうことに関しては、顔に出てしまうタイプのようですね」
「そういえば、自分の思いついたネタが面白くて、笑いながらフリップを見せとったな。宮○の方ちょっと見てもいい?」
相方として戦況が気になるらしい。だが、こちらも相手の手の内は用意に想像できる。ブルー○イズ二体を相手になんとか堪えていた状態だったが、ついに引き当てたクロ○・ソウルでブルー○イズ二体を生贄とし、○スター・ブレイダーを召喚、リバースしていた死者蘇生でブルー○イズを自分の場に呼び寄せ見事に逆転勝利を収めた。

 

 先にデュエルを終えたAブロック四人がスタジオ内に戻ってきた。残りの決闘が終われば、後は俺一人で十分だ。
「負け惜しみとかじゃないんですけど、自分の冠番組でトーナメント準決勝進出ってアリなんですか?Aブロックだけで考えたら決勝進出ですよ!?」
「俺もまさか宮○がここまで勝ち上がるとは思わんかったわ~」
「実力ですよ、実力!ほんで、俺の次の相手誰なん?」
「私です」
「えぇっ!?○吉負けたん!?」
「ここから反撃に出ようかと思ってたところで、手札抹殺にやられました。俺そんなに表情に出る?」
俺が番組出演なんてほとんどしないから共演なんてほとんどありえないが、周りの芸人たちには思い当たる節があるらしい。その場にいた芸人全員が首を縦に振り、Bブロックも品○、○田が勝利を収め、ベスト4が出揃った。
『あとは俺一人で十分だ。有希はここまで撮影したものをスタッフに渡しておいてくれ』
『問題ない』
『あまり要望に応えすぎないようにしてくださいよ?ハルヒさんからすれば、あなたがパンを作っているだけでも大きな負担だと感じているんですから』
『ああ、もう四時間の枠では収まりきらないほどの量とクオリティになっているし、決勝まで終わってしまえばあとはお遊びのようなもんだ』
「それにしても、コンビで出演しておいてこの歴然とした差は何なん?片やBブロック決勝進出、片や『演出するだけ無駄に終わった』言うて宮○からガチ切れされとったし……」
「そうなんですよ。さっきもその話になってましたけど、コイツとはもう縁を切ってソロで活動していこうかな~~~~と。でも、縁どころかライフポイントも切れてるんで、そっちの方が先やと思います。えぇ」
「まぁ、あのー…○田君とは以前、別の局でコンビを組ませてもらって漫才したときは優勝まで辿り着けたんで、お互い相方を見捨ててなんて、ね?」
『エヘヘヘヘ……』
動画サイトでちょっと検索するだけで出てくるあのネタで間違いなさそうだ。もう何年も経っているってのに、アイコンタクトだけで合わせられるとは思わなかった。『オー○リーと言えばコレ!』とも言うべきあの独特の笑い方で互いを見合っていた。ここで相方が突っ込んでくれば、MCに何を言われるか分かったもんじゃない。まぁ、そのトークもこれで終わりだ。
「さて、デュエル中というわけではありませんが、ここは敢えて『俺のターン』と言わせていただきます!」
「デュエルディスクも装着せずに『俺のターン』って、一体どういうことですのん!?」
「ベスト4が揃いし今、バトルフィールドの場所も変更になります。今月末から始まる大会の……ファイナリスト達の集まる場に皆さんをご招待致します」
「て、ことは……俺たちがこのあと闘うんは」
「我が社最上階の更に上、天空スタジアム……いえ、ここは天空決闘闘技場(デュエルコロシアム)と申し上げておきましょう。モニターをご覧ください」
『天空デュエルコロシアム!?』
「すげぇ……神と神がぶつかり合ったあのステージで、僕たちが闘えるんですか!?」
モニターに映ったのはこちらの世界の天空スタジアム内の様子。夕方前のこの時間でも一般客は来ているだろうが、新たに展開させた閉鎖空間にはこのスタジオ内の人間しか入れないし、その条件下には、ハルヒ達も含まれていない。透明になったスタジアムの客席を囲むように闘技場を情報結合。中央には青古泉とジョンが闘った決闘場が浮上した。原作とほぼ同じ演出に、感動のあまり品○と中○が涙を堪えている。
「大会の決勝当日は、天空決闘闘技場中が観客で埋め尽くされることになりますが、残念ながら今回はこのスタジオ内にいる皆さんのみということになります。二回戦をご覧になった方はお分かりかと思いますが、それぞれが相手の戦術に合わせてカードを入れ替えていますので、休憩の後、Aブロック、Bブロックの決勝戦、最後に決闘王の称号を賭けたデュエルを行うということでいかがでしょう?」
「俺もあそこで闘いてぇ~~~!」
「私はここから観戦しているだけなのに、今からむっちゃ興奮してきました!早くデュエルが見たいです!」
「ほんなら宮○、おまえが時間決めぇや。何分で準備できるん?」
「えっ!?俺が決めるん?あんな大舞台でデュエルすんのに、時間なんて決められるわけないやん!」
「ここは公平に蛍ちゃんの方がいいと思うよ?」
「そうやねぇ~、じゃあ15分程でいい?」
MCの指定した時間に、ファイナリスト達が沈黙のまま頷いた。
「先に申し上げておきますが、バトルフィールドが広くなった分、演出の方ももうちょっと盛り上げていく予定ですのでよろしくお願いします。もっとも、俺の『ちょっとの演出』は『ちょっと』の枠で収まったことがほとんどないとよく言われるんですけどね」
「今そんなこと言われたら、俺もこわ~なってきたわ……ダイレクトアタックとか絶対に喰らいたくない。ホンマにぶった斬られそうやもん」
「じゃあ、15分後にAブロック決勝戦ってことで!」

 

 スタッフの声が上がり、そこで一旦撮影が止まった。ファイナリスト四人はそれぞれの楽屋へ戻り、デッキの再構築。残った芸人達はトイレ休憩や水分補給を挟んで、スタジオ内で蛍○VS矢口○理のデュエルを始まった。15分で勝負がつくとは到底思えないが、カメラマンは休憩する間も与えてもらえないまま、その決闘の行く末を撮影。俺も影分身だけ残して本体は本社へと戻り、スカ○ターで収録の様子を確認しながら、週末のおススメ料理の仕込みに取り掛かっていた。結局、スタジオに四人が揃ってもデュエルの決着はつかなかったが、大舞台での闘いに精神を集中させている様子が見て取れる。接戦の末、矢口○理に軍配が上がり、ようやく本編(?)の撮影が再開。とはいえ、撮影をするのはほとんどが俺になるわけで、ワイプ芸人として機能しそうにない連中をどう扱うのかは、MCと他の芸人を弄ることのできるメンバーに任せることにしよう。
『只今より、Aブロック決勝戦、宮○博之VS佐野○なこのデュエルを開始する!!』
「うわっ、海○の部下まで原作そのまんまやん!コイツの名前何やったっけ?」
「確か、磯○だったと思います。このあと自分のデュエルだと思うと……僕もう見てられないですよ」
その部下に化けて堂々と演出ができるんだから、これほど楽なことはない。この後の二人もおそらくそのつもりなんだろうが、決勝後の武○遊戯とのエキシビジョンマッチのことまで考えた上で、デッキを組んでいるらしい。手札抹殺の話を聞いていた宮○の方はオ○リスク、対して佐野○なこの方はオ○リスを主軸に構築されていたが、互いに生贄にするモンスターは揃えても、肝心の神のカードは呼び寄せられず。生贄召喚で上級モンスターを呼びつつも、ついに我慢の限界に達した宮○が、場に出揃ったモンスターによる総攻撃を仕掛けた。だが、それも聖な○バリアミラーフォースによって全滅。反撃の術を無くした宮○に佐野○なこのしもべ達による直接攻撃。「ダイレクトアタックは絶対に喰らいたくない」とか言ってなかったか?まぁ、その分、モンスターに襲われる恐怖に怯えたMCの姿と悲鳴が撮影できたから良しとしよう。スタジオに舞い戻ってきた二人に賛辞と笑いが沸き起こる。
「あっはっは、面白~い。あんな宮○さんが見られるとは思わなかったですよ~」
「あんなん大人でもビビるわ!」
「もう少し慎重に行けば良かったんじゃないの?宮○君も神のカード持ってたんでしょ?」
「実際にあの場所に立ってみれば分かります!あんな緊張感が張りつめた中で、いくらドローしても神のカードが来る気配が現れないって、誰だって焦りますやん!」
「まぁ、宮○の敗因はそこにありそうやね。相手はそれでもジッと耐えて待ってたんやから」
「うわ~~~~!その緊張感に耐えられるかな……俺」
品○の一人称が『僕』から『俺』に変わった。どうやらこちらも、これが番組収録だとはもはや考えて無いらしい。先ほど散々バカにされたせいか、黙りこくったままの○田に相方からの声かけも一切なく、天空決闘闘技場で二人が向かい合った。
『只今より、Bブロック決勝戦、品○祐VS○田明のデュエルを開始する!!』
「この二人も神のカード入れてるんかな?」
「そら、入れてますよ~でなきゃ、○田が一ターン目からあんなに手札を入れ替えるような真似しませんって」
「宮○さん達の対決を見て……ですかね?早く神のカードを引いてしまいたいとか?」
「それはあるかもしれないけど、天使の○しであんなにカード捨てて大丈夫?」
「神のカードまで捨てているかも分からんしね。○吉のデッキと似たようなもんとちゃうの?」
『俺はサイ○ントマジシャンを召喚!リバースカードを二枚セットしてターンエンド!』
『えぇ!?』
「散々カード入れ替えておいて、結局それなん!?」
「しかも攻撃表示やで!?」
「でも、これは品○も手出しできないでしょ!?何が起こるか分かったもんちゃうやん!」
やれやれ、俺もワイプとしては活躍できそうにない。同期してしまえば、リバースカードが何か分かっているんだからな。確かにデッキにはオ○リスのカードが眠っているが、本来の狙いはこっち。次の品○のターンでサイ○ントマジシャンの攻撃力は1500にUPする。コイツは相手がカードを一枚ドローするたびに攻撃力を500ポイント上げる特殊能力を持つ。その能力を最大限に活かしたカードがリバースされている。キーカードを引けるかどうかが勝負の分かれ目になりそうだ。

 

 ○田の目論みは手札抹殺のカードで相手の手札を0にしたあと、○よりの宝札でカードを六枚引かせる作戦。品○がモンスターを召喚し、攻撃を仕掛けていれば次のターンで勝負が決まっていた。カードを引かせることで、サイ○ントマジシャンの攻撃力が4500にUP。神と対等どころか、それ以上だからな。だが、品○の方も手札にハー○ィの羽箒を持っていた。リバースした魔法カードが簡単に処理されてしまい、天使の○しで重要なカードも捨ててしまっていた分の差が出てしまった。○吉のように墓地のカードを復活することができず、品○がオ○リスクを召喚したところで勝敗は喫した。
『お疲れ様~』
「結局、○田の最初のアレは一体何やったん?」
「神のカードを手札に呼び込むのもそうだったんでしょうけど、今から考えたら僕の方がカードに恵まれていたからこそ防げたようなもんですよ。多分、手札抹殺と○よりの宝札がリバースされていたんだと思います」
「えっ!?ってことは、あっちゃんのあの最後の大逆転と同じことやろうとしてたってこと!?」
「そのコンボだと、一ターンで神以上のモンスターが出来上がりそうですね。ハー○ィの羽箒が無かったら、品○さんの方が負けていたと思います。最初から攻撃力4500のモンスターを出されたら勝ち目なんて無いですよ」
『攻撃力4500!?』
「オ○リスクより攻撃力が上のモンスターにいきなり出られたら、勝てるわけないやん!」
「もしかすると、この収録がオンエアされたら、○田と同じコンボでデッキに入れてくるかも分からんね?」
「どっちの魔法カードもデッキには必須って言ってもおかしくないですから、サイ○ントマジシャンが加わるだけで、そんなコンボが完成するなんて考えたこともなかったです!」
「でも、あのオベリスクのでかさ半端じゃないっすよ!確かに原作もそうでしたけど、プレイヤーの前に現れないどころか、コロシアムに入りきれずに闘技場の外側から攻撃を繰り出すなんて滅茶苦茶興奮しました!品○さんのデュエルディスクにも電撃が走っていたじゃないですか!俺、今全身に鳥肌立ってます!」
「さっきの宮○さんじゃないですけど、自分で召喚しておいてちょっとビビりました。生贄三体が空に消えていったと思ったら、雷が何本も落ちてくるんですもん。いくら天空デュエルコロシアムとはいえ、あの巨体ならオベリスクを見た人いるんじゃないですかね?」
そういえば、天空スタジアムに訪れる一般客やハルヒ達には入れないという条件で閉鎖空間を張ったが、周りから見られることについては考えていなかった。まぁ、この後も出てくるだろうが、撮影できてもUFOのように小さなものだろうし、明日の記事の一面を飾ることは絶対にない。
「じゃあ、いよいよ……決闘王の称号を賭けた闘いということで、どうですか?今の心境は」
「いや、もう……全力でぶつかるのみです!」
「ずっと全力で闘ってきたので、最後くらいはデュエルを楽しみたいですね!」

 
 

…To be continued