500年後からの来訪者After Future10-3(163-39)

Last-modified: 2017-03-01 (水) 19:56:05

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future10-3163-39氏

作品

二回目の遊戯○芸人の収録もいよいよトーナメントの四強が出揃った。今月末から始まる大会の告知も兼ね、天空スタジアムを天空デュエルコロシアムと称して、原作そのままの闘技場を用意した。準決勝二回戦を終え、ついにファイナルが始まる。

 

『只今より、決闘王の称号を賭けた、佐野○なこVS品○祐のデュエルを開始する!!』
『デュエル!』
「品○の方はオ○リスクやったけど、ラーの○神竜とか持ってたりするん?」
「前回の決勝戦見せられたら、ヒエ○ティックテキストを唱えられなきゃ、あのカードは入れられませんよ!」
「あ……でも、中○さんの言う通りかも。そういえば、キョン社長はどこに行ったんですか?」
『あれっ!?』
「気ぃついたら、俺の隣から居なくなっとった!」
「まぁ、でも、宮○さんも、それを見越して決勝のデッキ組んだんじゃないんですか?」
「ケン○バに勝った時点で、あのセリフは俺が言うつもりやってん!」
「あまりの緊張感に負けたけどね」
「児○に言われる筋合いないわ!」
「でも、互いにデッキが似通っているだけに、どう戦うのか見当がつかない。両方ともサ○コショッカー持ってたし、矢ぐっちゃん達と違って可愛い系を集めたとかじゃなくて、勝ちに来るデッキ組んでるからね」
「また魔法カード一枚で勝敗が決まることになりそうやね……」
序盤は互いに攻撃力1900のブラッド・ヴォ○ス、守備力2000のホーリーエルフなど、相手に破壊されないカードを出し合い、神の生贄にする準備を整えていく二人。品○のハー○ィの羽箒を気にしてか、リバースカードをあまり伏せずにデュエルを続ける算段らしい。墓地に行ってもいいカードを囮にハー○ィの羽箒を使わせることも可能だが、神を先に呼び出したのは佐野○なこの方。
『私のターン、ドロー!私は手札からマジックカード、ソ○ルテイカーを発動!品○さんのライフを1000回復する代わりに、相手モンスター一体を生贄にすることができる!モンスター三体を生贄にオ○リスの天空竜を召喚!!』
「出た――――――――――っ!!こっちの演出も半端ないっすね!しかも、品○さんのモンスターを生贄にしている分、オ○リスクを出すのは難しいんじゃないですか?」
「オ○リスが先手を取ったのはでかいよ。これで品○は攻撃力2000以下のモンスターを召喚出来なくなった」
「えっ!?天○っち、それどういうこと?」
「オ○リスには相手がモンスターを召喚するたびに2000のダメージを与える召雷弾を放つ特殊能力があるから、攻撃力2000以下のモンスターを召喚してもすぐ倒される。攻撃力が2000より大きくてもその分マイナスされちゃう」
「えぇっ!?そんなんでどうやって闘うん!?」
『リバースカードを二枚セットしてターンエンド!』
『えぇ~~~~~~~~~~~っ!?』
「オ○リスで攻撃もしないで、攻撃力を自分で1000まで下げた!?これじゃ、通常モンスターにも勝てないですよ!」
「若○さん、原作本をもっと読み深めくちゃ!これと同じシーンがありましたよ!?」
「強欲な壺か○よりの宝札がリバースされていると見て間違いなさそうです!一気に勝負をつける気ですよ!」
「品○ならその程度のことは分かっているやろ。でも、ここで倒せなかったら苦しいな」
『俺のターン、ドロー!リバースカードを一枚セットして、ブラッド・ヴォ○スでオ○リスへ攻撃!』
『リバースカードオープン!○よりの宝札!私の手札がこれで六枚になり、オ○リスの攻撃力は6000にアップ!』
『そうはさせません。リバースカードオープン!魔法解除!これで○よりの宝札を無効にします!そして、オ○リスへの攻撃はそのまま続行!』
『リバーストラップ発動!聖な○バリアミラーフォース!品○さんのモンスターはこれで全滅です!』

 

「凄ぇ!こんな攻防、滅多に見られるもんじゃないよ!品○の方がこれでまた劣勢になった!」
「こんな状況で打つ手があるん!?」
「もし、品○さんが場に死者蘇生のカードを伏せて、オ○リスクが墓地にいるようなら、次のターンでオ○リスは倒せると思います。でも、それも出来ないようだと、不利になる一方ですね……何か他に策はありますか?」
「俺もそれしか思いつかないですね。このあと手札がどんどん増えていくと、勝機が見えてこないです」
残念ながら、品○の手札に死者蘇生のカードはなく、墓地にもオ○リスクが眠っているようなこともない。両者とも生贄を揃えて最短で神を呼ぶはずだったんだ。墓地に捨てるなんてことはありえない。その後、着々と攻撃力を上げていくオ○リスに品○が魔法カードで耐えしのぐものの、キーカードを引くことができず撃沈。
『勝者、佐野○なこ!決闘王の称号は佐野○なこに授与され……』
『そいつはまだ早いぜ!』
ライブ、コンサート用のステージに立った俺にスポットが当たる。無論、武○遊戯の催眠に加え、声帯を弄った状態。決闘場が次第に降り始め、場所を譲った品○をスタジオ内へとテレポートさせた。
『お疲れ様~!』
「いやぁ、あそこで聖な○バリアミラーフォースまで出てくるなんて予想外ですよ。てっきり、オ○リスが倒された後の防御カードだと思っていました。でも、これで佐野さんとアテムのデュエルが気楽に見られそうです!」
「でも、天○っちも二人のデュエル見ながら『こんな攻防、滅多に見られるもんじゃない!』なんて言うてたよ?」
「たとえそうでも、負けは負けです!アテムのデュエルタクティクスにどれだけ対抗できるか見物ですよ!」
天空デュエルコロシアムの情報結合が消え、辺りが暗闇で覆い尽くされる。冥界の扉が情報結合され、ヴジャドの眼が光った。七つの千年アイテムをはめこまれた石板の前で佐野○なこと相対した。
『決闘王の称号を手にしたいのなら、この俺を倒してからにしな!』
『私がアテムを冥界に送り返します!』
「うわ~~~~っ!俺のセリフ丸々取られてしもた!」
「さっきの発言も編集でカットしてもらった方が良いんとちゃうん?」
「トーナメント優勝者にこそ与えられる特権ですし、勝利者だからこそ言えるセリフですよ!もうこの後のデュエルの展開が気になって仕方がないです!」
スタジオ内でトークが飛び交っている間に互いのデッキをシャッフル。この番組最後のエキシビジョンマッチが始まった。
『デュエル!』
『俺の先攻、ドロー!俺は手札を一枚捨て、ザ・○リッキーを攻撃表示で特殊召喚。更に、手札より強欲な壺を発動。カードを二枚手札に加え、リバースカードを一枚伏せてターンエンド』
「えっ!?いきなり攻撃力2000!?防御力なら2000はあったけど、今まで1900が上限じゃなかった!?」
「だから、手札を一枚捨てるリスクを伴うんです。まぁ、○吉さんみたいに墓地にカードが多い方がいいなんてデッキでは有効活用されたりしますけど」
『私のターン、ドロー!手札より光の護封剣を発動!これで三ターン、あなたの攻撃を封じます!ブラッド・ヴォ○スを攻撃表示で召喚してターンエンド』
『俺のターン、ドロー!俺はサ○レントソードマンLv0を攻撃表示で召喚し、カードを二枚セット。そして、リバースカードオープン!○声の服従!このカードは、八つ星以上の上級モンスターの名前を宣言し、相手のデッキにそれが入っている場合、1000のライフポイントを支払うことで自分の手札に加えることができる。俺が指定するモンスターは、オ○リスの天空竜!』
『くっ……』
「えぇ!?こんなカードあった!?」
「デュエルコロシアムのときに海○が使ったカードで間違いないです。相手のデッキに入っているカードを知らない限り、こんなカードは使えないです!」
「しょこたんも漫画の一コマ、一コマ良く覚えてるなぁ~」
「このデュエルがもう一回出来るって聞いて、何度も読み返しました!」
「もう、一人だけ浮いとるやん!俺に負けた時点で井○の顔にモザイクかけといて!他のメンバーもそうやろうけど、しょこたんがここまでしてこのトーナメントに出てるんやから、そのくらいが丁度いい!」
「うわ――――――――っ!井○一人だけ枠から外れてモザイク芸人になってしもた!まぁ、その方が素顔晒さんで済むやろうけど!」
「うっさいわ、ボケ!デュエルに集中せぇ!」
くくく……周り全員、井○の言えるような発言でないことは分かってはいるが、もう誰も相手にしてくれんらしい。しかし、負けた時点でモザイクをかけたら視聴者から『何で!?』と思われそうだ。やるなら、今のセリフからだろうな。オ○リスのカードが俺に渡った時点でターンエンドを告げた。

 

『私のターン、ドロー!私は○ーリーエルフを守備表示で召喚!ブラッド・ヴォ○スでサ○レントソードマンLv0を攻撃!』
『リバースカードオープン!○ーンジャンプ!このバトルフェイズを強制終了し、何もしないまま三ターンが経過する。光の護封剣の効果は切れ、サ○レントソードマンはLv3にレベルアップ!』
『カードを二枚リバースしてターンエンド!』
『俺のターン、ドロー!俺のターンを迎えたことにより、サ○レントソードマンはLv4にレベルアップ。手札より天使の○しを発動。デッキから三枚引いて二枚を墓地に送る。更に場のリバースカードをオープン!召喚時計!このカードとモンスター一体を生贄に捧げることで、リバースしてから経過した四ターン分、手札よりモンスターを生贄無しで特殊召喚することができる。ザ・○リッキーを生贄に捧げ、出でよオ○リスクの巨神兵、オ○リスの天空竜、ク○ーンズナイト、キン○スナイト!更に、キン○スナイトの効果により、ジャック○ナイトを特殊召喚!』
「嘘やん!これで手札にラーの○神竜があったら三幻神が揃てまうで!」
「でも、残りの手札がラーの○神竜だったとしたら、オシリスの攻撃力が0になってしまいます!」
『いくぜ!オ○リスクの巨神兵でブラッド・ヴォ○スに攻撃!ゴッド○ンドクラッシャー!』
『リバースカードオープン!スケープゴート!四匹の羊を攻撃の盾にします!』
『なら、ク○ーンズナイト、キン○スナイト、ジャック○ナイトで残り三体を破壊する。そして俺の手札の最後の一枚はこれだ!手札より○よりの宝札を発動!互いの手札が六枚になるようにカードを引く!』
『私のター……』
『まだ俺のターンは終わっていないぜ!俺はこのターン、もう一体モンスターを召喚することができる!』
「ヒエ○ティックテキストってことはやっぱり……」
「これで三幻神が出揃います。オ○リスの攻撃力も5000にアップしたままだし、アニメの遊戯との最後の闘いと何も変わらないですよ」
『出でよ、ラーの○神竜!』
「アニメで遊戯がやっていた、オ○リスの召雷弾を跳ね返すコンボ以外に手立ては無いんですか!?」
「無いこともないです!もしこれで三幻神を束ねるようなことがあれば、手札抹殺で形勢が逆転します!」
「えっ!?この状況を打破できるんですか!?ケン○バさん!どんな方法なのか教えてください!」
「三幻神を融合させることで生まれる光の創造神の攻撃力は、手札の枚数×2000。つまり、オ○リスと同様の対策が使えるってことです!加えて召雷弾が無くなれば、モンスターも普通に場に出すことができる」
「それにしても、こんな光景見せられたら、呆れるしかないですね。ワイプとして役に立てそうにないですよ」
「若○もそこまで心配せんでもええやん。元々役に立たない芸人なら二人もおるねんから」
「私もペースが早すぎて理解が追いつきそうにないです!二人とも、ドローしてからすぐカードを出すなんて……考える時間とか無いんですか?」
「もう互いに、何をしたらどうなるか見当がついてしもうとるからやろ」
『三幻神が揃った今、ファラオの名のもとに神を束ねる!リバースカードを一枚セットして手札より融合を発動!光臨せよ!光の創造神ホ○アクティ!!………ついて来られるか!?これが俺の全力だ!!!』

 

「も~~っ、デュエルも演出も凄すぎてむっちゃ興奮します!ホ○アクティまで出てくるなんて!」
「前回、いかにケン○バさんがあっさりやられたかこれで分かったね。アテムが全力を出す前に終わったんだから」
「もうちょっと魔法カードを増強しておけば良かったと今になって後悔してます。あの時はドラ○ンを呼ぶ笛をリバースして脅しに使っていただけなんで……」
「脅しにもならずにラーを召喚されてそれで終わってもうてたやん!」
「これで、佐野さんがどう出るかですよね。手札抹殺は引いて来られるのかな……」
『私のターン、ドロー!ヂェ○ナイ・エルフを守備表示で召喚。リバースカードを更に二枚セット。ターンエンド』
『俺のターン、ドロー!リバースカードを一枚セット。サ○レントソードマンLv5でブラッド・ヴォ○スに攻撃!』
『リバースカードオープン!聖な○バリアミラーフォース!これで相手フィールド上のモンスターをすべて破壊します!』
『神にトラップは通用しないぜ!リバースカードオープン!死者蘇生!蘇れ、ラーの○神竜!』
「ここでラーが蘇った!?一体どうするつもりなん!?」
「そりゃぁ、モンスターをすべて焼き払うでしょ!ホ○アクティだけで守備モンスターを蹴散らしていくわけにもいかないし」
「そうか、それでさっきはサ○レントソードマンで攻撃しなかったんだ。アテムは佐野さんの聖な○バリアミラーフォースを読んでいたんですよ!あれでもし攻撃していたら、絵札の戦士たちまで倒されてラーは召喚できなかったはずです!」
「またヒエ○ティックテキスト……天○さんの言う通りなら、○ッドフェニックスのはずです!」
『相手フィールド上のモンスターを焼き払え!○ッドフェニックス!』
三体の壁モンスターが焼き尽くされ、今の○ッドフェニックスで俺のLPが2000にまで下がった。ホ○アクティによる直接攻撃!
『ホ○アクティでプレイヤーにダイレクトアタック!』
『リバースカードオープン!手札抹殺!これでホ○アクティの攻撃力は0!』
『そいつはどうかな?リバースカードオープン!魔法解除!こいつで手札抹殺の効果を無効にするぜ!』
『あぁ――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!!』
「最後の望みが……絶たれてしもうた」
『なら、こちらもリバースカードオープン!攻撃の無○化!このターンの攻撃で受けるダメージを無効にします!』
「上手い!自分の場にかけるトラップなら神の攻撃でも無かったことにできる!でも、リバースカードを使いきった。攻撃力6000のホルアクティにどうやって……」
「今のターンもようやく凌いだって感じでしたね」
『ターンエンドだ!惜しかったな。だが俺は、おまえの一歩も二歩も先を行くぜ!』
『私のターン、ドロー!私はブラッド・ヴォ○スを召喚!更に強欲な壺を発動!手札にカードを二枚追加します!そして、手札から魔法石の採○を発動。手札を二枚捨てる代わりに墓地に眠る魔法カード手札抹殺を手札に加えます!リバースカードを一枚セット。さらに手札から手札抹殺を発動!これでホ○アクティの攻撃力は0!ブラッド・ヴォ○スでホルアクティに攻撃!』
「今度こそ倒せるか!?」
「防ぐ手が無い以上、攻撃は通るでしょ?」
「お願い!!」
ブラッド・ヴォ○スの攻撃がホルアクティに命中する刹那、モンスター達の間に○グネットヴァルキリオンが割って入ってきた。
『えぇ~~~~~~~っ!!』
「そんなん、嘘やん!!一体どっから出てきたん!?」
『………○グネットヴァルキリオン?どうして!?』
『ただ無駄にカードを捨てていなかったってことだ。俺の墓地には○グネットウォーリアーα、β、γの三体が眠っていた。この三体を墓地に置くことで○グネットヴァルキリオンを特殊召喚した。今の手札抹殺でその条件を満たすことができたのさ。○グネットヴァルキリオンの反撃により、おまえのライフが1600ポイント削られるぜ!』
「捨てたカードまで全部計算の上だったってこと?これが、アテムのデュエルタクティクス……」
「アニメでもアテムは引くべきカードをドローしてましたけど、こんな戦略、デッキのカードの順番を全部把握してないとできませんよ!」
順番ならサイコメトリーですべて承知の上だ。このくらいでないと大会が盛り上がらんからな。佐野○なこのLP表示が2400まで下がった。
『くっ……ターンエンド』
『俺のターン、ドロー!○グネットヴァルキリオンでプレイヤーにダイレクトアタック!』
『リバースカードオープン!死者蘇生!私が蘇らせるのはオ○リスクの巨神兵!一ターンしか維持できないけれど、このターンの攻撃は通しません!』
『おぉ――――――――っ!!』
「すごい!たとえ劣勢でも、アテムに喰らいついています!」
「でも、次のターンは……」
『私のターン、ドロー!モンスターを裏守備表示で召喚……………ターンエンド』
『俺のターン、ドロー!これで俺の手札は二枚!よって、ホ○アクティの攻撃力は4000!○グネットヴァルキリオンで裏守備表示のモンスターに攻撃!』
魔法カードの尽きた今、裏守備表示で召喚するモンスターと言えば、二回戦で使わずに終わったセイント○ジシャン。手札抹殺のカードを三度手札に入れたがもう遅い。これが最後の攻撃だ。
『ホ○アクティでプレイヤーにダイレクトアタック!!』

 

 武○遊戯の状態で佐野○なこと握手を交わした後、天空スタジアムの状態を元に戻してスタジオへと帰ってきた。俺たちの……特に彼女の闘いぶりに拍手が送られた。深くおじぎをした佐野○なこが一言。
「ごめんなさい、アテムを冥界へ送ることができませんでした」
「いや、でも十分ですよ!三幻神が揃うどころかホ○アクティまで出てきたのにあそこまで闘えるなんて!」
「これはもう、五時間枠とかに今からでも変えないと、収まりきらんのとちゃう?」
「あっ、もう今からスタッフが交渉に行くみたいやで?」
「あのー…もう一度デッキを組み直すんで、誰か相手をしてもらえないですかね?」
「モザイク芸人がトークに入ってくるな!おまえの相手なんか誰もしたないわ!」
「でも、気持ち『だけ』は分かりますよ!あんなに興奮したあとでデュエルができないなんて嫌です!オンエアされなくてもいいので、どなたか私と闘ってください!」
「このセット内でのデュエルでしたら、演出は俺に任せてください!」
「えぇっ!?昼も俺と宮○君の試合の演出をしてくれていたのにいいの!?」
「ええ、決勝前の15分で軽く食べましたから。何よりもこのオンエアでデュエルがしたいと思えるような番組にしたいじゃないですか。エキシビジョンマッチが終わった後も、デュエルを楽しんでいたっていうのは大事だと思いますよ?」
「それなら僕、宮○さんと闘ってみたいです!」
「ほんなら、演出のいらんおまえのデュエルは『元』コンビの俺が付きおうたるわ!セット裏の机の上で、ただのカードゲームで満足しとけ!」
「中○さん、私と闘ってもらえませんか?ブラック○ジシャンガール使い同士でデュエルがしたかったんです!」
「えっ?俺なんかでいいんですか!?滅茶苦茶嬉しいです!是非お願いします!」
やれやれ……俺は影分身だから構わんが、今後のスケジュールは大丈夫なのか?まぁいい、芸人達がデュエルに満足したところでMC二人のエンドトーク。俺が撮影した分をスタッフに渡してTV局を後にした。運転は……もういいだろう。

 

 こっちはタイタニックでの最後の夕食。明日の水泳教室はお休みだと子供たちに伝えておかないとな。
「結局、どうなったんです?番組収録の方は」
「決勝戦後のエキシビジョンマッチも終わって、芸人同士でスタジオを使ってデュエルをしているだけだ。俺はその演出のみ。撮影はすべてカメラマンに任せてある。そのための影分身を置いてきただけで、後は全部こっちだ。デュエルが盛り上がったからとはいえ、午前中から飽きもせずよくやるよ。エンドトークは撮影したが、MCの『今からでも五時間枠に変えないと収まりきらない』というセリフを真に受けて、スタッフが交渉しに行った。だが、俺も四時間の枠に収まりそうにないとは思っていたし、他の芸人たちも納得していたからいいんじゃないか?」
「くっくっ、その盛り上がったデュエルとやらを僕にも見せてくれないかい?それを見た芸人達が興奮してデュエルを続けるほどなんだろう?デュエルなら食べながらでも見られそうだし、どういう編集がされるかは僕にも見当がつかないけれど、九日の番組放送まで待てなんて言わないでくれたまえ」
なら、決勝戦を終えて、武○遊戯が現れたところからでいいか。デュエルの最中もスタジオが盛り上がっていたが、特に笑いどころもあるまい。再び俺の頭上にモニターが現れ、デュエル前の様子から映像が流れ始めた。
『キョンパパ!わたしも見たい!!』
おっと、昼と違ってこの二人がいるのを忘れていた。全員の前にもモニターを出すことにしよう。
「ちょっとあんた!あたし達の世界の天空スタジアムを、あたしの許可なしに勝手に使うってどういうことよ!?」
「これは一般人やハルヒ達を入れない様に新たな閉鎖空間を展開したこちらの天空スタジアム。遊戯○芸人の放送もこれで最後だからな。大会のファイナリスト達がどんな場所でデュエルするのかだけは見せておきたかったんだ」
「くっくっ、キミとデュエルをしているってことは、彼女がトーナメントの覇者なんだろう?どんな対戦をしたら優勝者が彼女になるのか教えてくれたまえ」
「そんなもん、このデュエルを見るだけで分かる。危うく神を倒されるところだったんだ」
「多少なりともイカサマをしたあなたの圧勝で終わるかと思いましたが、どうやら苦戦を強いられたようですね。この後どうなるかゆっくりと拝見させてもらいましょう」
「夜練が始まる前には終わるだろうが、今のうちに渡してしまおう。一部だけ渡すから同じものを情報結合して各部屋に配って回ってくれ。これも修行の一環だ」
『キョン君、その修行、わたしにやらせてください!』
「立候補するほどのことでもない。しばらくはジョンの世界で段ボール作り、冊子ができたら青朝倉や青有希の代わりに製本作業に励めばいい。このくらい譲ってやれ。それに、青みくるは明日のディナーで歌う練習もあるだろ?」
青OGの前にはプレートとサインペン、招待状にも似た二つ折りの厚紙一枚が現れ、『豪華客船ビュッフェディナーのお知らせ』と表題が書かれていた。その中には報道陣や男子日本代表には話さずに、練習試合終了後自分の名前を書いたプレートを持って体育館に再集合すること。ディナーは鉄板料理食べ放題をビュッフェ形式で行うこと。料理が無くなれば勿論追加されること。その日は豪華客船に宿泊し、翌日の朝食も同じ場所で食べること。自分の名前を書いたプレートは部屋の扉にはめ、その階にいるスタッフから鍵を受け取ること。一等客室だけでも100部屋以上もあるので、同じ部屋の取り合いになるようなことはないこと。温水プール等の施設は利用しても構わないこと。水着等は無料になること。………まぁ、こんなところか。疑問点があればそのときに対応すればいいだろう。みくる達も承諾したようだし、デュエルを映したモニターに夢中になっていたメンバーがようやく喋り出した。
「くっくっ、キミの言いたい事が良く分かったよ。彼女がトーナメントの覇者である理由もね。こんなデュエルを見せられてはスタジオに集まった芸人達もさぞ興奮しただろうね。最初から最後まで眼が離せなかったよ」
「あの場面で○グネットヴァルキリオンが特殊召喚で現れるとは僕も驚きました。確かに手札を墓地に送る場面が三回ありましたから、説明を受けてようやく納得がいきましたが……少々キャラになりきり過ぎたのではありませんか?エキシビジョンマッチの開始前から名ゼリフの連発でしたよ」
「その方が見ている方も興奮するだろ?まぁ、青古泉の言い分も間違いではないな。俺もちょっとやり過ぎた感はある。というわけで、自分で蒔いた種は自分で摘み取る。十日(金)の人事部には番組出演の依頼が殺到するだろうから、俺が第三人事部を占領する。古泉達は音楽鑑賞教室の方に専念してくれればいい。そういや、異世界支部の人事部はどんな状況なんだ?」
「十日はこちらもホテルのオープン日ですからね。それまでは宿泊の予約が殺到するでしょう。特に報道陣からのスイートルーム予約がね。週明けからは社員食堂の取材依頼も来るでしょうし、電話対応で大忙しになりそうです」
「それじゃあ三人とも。明日の夜は女子の日本代表がここを使うから水泳の練習ができない。明日の分も今日練習するぞ!」
『ぶー…分かったわよ』

 

 渋々受け入れた割には、水泳の練習をしている最中は至って笑顔。今日はもう一段階上げてみてもいいだろう。クロールの腕の動きを立ったまま練習して、プールサイドに手を置いて息継ぎやバタ足も含めた練習、ビート板を持って泳ぐ過程を経て、最後にビート板無しで15mを泳ぐ練習。カラーヘルパーもなし、途中で手足が沈んでしまうところは、一人ずつ手で支えてやっていた。
「ほら、もっと水面でバタ足しないとどんどん沈んでいくぞ?」
アドバイスを入れながら何本も続けていくうちに次第にコツを掴み始めたが、その分手の動きが乱れている。今日の勝負はビート板無しのクロール15mをどれだけ綺麗に泳げるかで勝負をすることにしよう。クロールで25m泳ぐことよりもこっちの方が優先だ。妙なクセが付いてしまっては困る。子供たちの体力面も考慮に入れて少しだけ長めに練習時間を取ってみたものの、まだまだ余裕と言いたげな表情だ。こんな状態で明日の授業は大丈夫なんだろうな?おい。双子も来月からそうなるから心配でならん。今日の勝負の軍配は美姫に上がった。同じ勝負を続けていくうちに綺麗なフォームを身につけるようになるだろう。青有希と青俺に『たまに幸の授業での様子を見に行ってみてくれ』と告げてその日の練習を終えた。
 翌朝、天空デュエルコロシアムに現れたオ○リスクやオ○リスを撮影した記事があるはずもなく、俺たちとは無縁の至って普通のニュース。異世界の方ももう少ししないと一面を飾るまでには至らないらしい。こんな記事が続いてくれればストレスを溜めずに済むんだが……これでもう一回パンで一面を飾るようなら、今シーズンはレストラン内の取材は許可しないでおこう。
「これがタイタニックでの最後の晩餐だ。昼食からはテーブルを81階に戻すし、北高からの連絡待ちと女子日本代表がここでディナーをする以外は通常通りだ。俺もバレーとおススメ料理の仕込みに集中できる……って、何もそんなに嫌そうな顔をしなくてもいいだろう?今度は偉大なる航路にでも向かうつもりか?おまえらは」
『ちょっとあんた!黙って聞いていれば、ディナーと子供の水泳教室にしかあたしを利用しないつもりじゃないでしょうね!?折角若返ったんだから、残り六つの海を航海するくらいのことはしなさいよ!!』
「やれやれ……口調だけでなくやることまでハルヒらしくなってしまったな。北極や南極で、また氷山にぶつかることになっても知らんぞ?」
『それは………あんた達で何とかしなさいよ!』
「分かった。今日と来週の火曜を除いて、これから残り六つの海の航海に出かける。現在地はシンガポール付近。来週の火曜まではこの周辺で停泊する。来週水曜以降、シンガポールからインド、南アフリカ、アルゼンチン、南極大陸周辺をまわって、ニュージーランド、オーストラリア、日本、ロシア、グリーンランド、アラスカ、最後に日本に戻ってくれば七大海を制覇することができる」
「船長自ら航路を決めてくれるとはありがたい。だが、それも全部自分の負担になるんだぞ?」
「それでいい。わたしも制覇してみたくなった。空調も紫外線対策も万全なら問題ない」
『面白いじゃない!あたしも混ぜなさい』
今のはハルヒ達の発言であると注釈を入れておこう。ここまでの流れで、もはや手遅れだと、誰も止めることは出来ないと青俺と二人で悟っていた。ひとつなぎの大秘宝を見つけてから大海賊時代……もとい、大航海時代が始まるとは思わんかった。
「じゃ、いつまでかかるか分からんが、大航海時代の幕開けってことで。先に言っとくが、やるからには挫折は絶対にさせんからな?夏場に氷山が目の前にあっても知らんぞ?」
『問題ない』
『良く分からないけど、それがあんた達の満場一致の合図みたいね。それならあたしも文句はないわ。たったの一週間くらいなら、いくらでも待ってやるわよ』

 

 とにかく、来週水曜の昼食までは81階にテーブルを戻すことを約束させて、各々の仕事にバラけた。『バレーとおススメ料理』としか言わなかった分、ハルヒを乗せてしまったのかもしれん。こんなことなら堂々と『パン作りに集中できる』と言えばよかったな。シャミセンにも事情を説明したところ『良く分からないけど、僕も色んな景色を見てみたいな』とか言い出す始末。魚が泳いでいる所を見つけても絶対に船から飛び出すなとは警告しておいたが、今までその心配は無かったしシャンプー以外で濡れることは嫌がるはず。人参を目の前に吊り下げられた馬じゃあるまいし、大丈夫だろう。80階で朝食を摂っていた女子日本代表は、終始笑顔で朝食を食べていたと同期で情報が入ってきたし、やることをさっさと終わらせることにしよう。
「北高から明日の授業についての連絡が入った。詳細は実際に触れて伝えた方が早そうだが、何の因果かは私にも分からないが、授業をするクラスは1-5だそうだ。君とハルヒさんがいた教室で間違いない」
「あら?たった二ヶ月間だけだったけれど、わたしも学級委員としてクラスにいたんだから忘れないで欲しいわね」
「こっちは一、二年合わせて18クラスもあるんだろ?2-5を入れても確率九分の一で良く当たりを引いたな」
「あぁ、やれやれだ。クラスの生徒より、教室中から来るテレパシーの方がうるさそうだ。ところで、昨日話した件、確認はできたのか?幸の奴、バレーや水泳にかまけて授業態度が悪かったりしないだろうな?」
「念のため小学校に行って確認はしてきた。でも、もしそうだったらサイコメトリーが自動で発動してるはず。わたしが見た限りでは何の問題もない。少しでも長くバレーをするのに、宿題も学校の休み時間中に終わらせているみたい」
「優秀で羨ましいもんだ。まぁ、双子もそれに続いてくれるだろう。午前の練習に出たOG達も気付いたとは思うが、女子日本代表チームは朝食の段階からご機嫌だったよ。報道陣には気付かれていないようだし、プレートを持って集まる頃には別の閉鎖空間で囲ってしまうつもりだ。それで、ホールスタッフと各階の案内役は決まったのか?青新川さんには夕食は軽めにと頼んでおいたし、シャミセンも肉を食べる気満々だからな」
「わたしと青OGの皆さんで催眠をかけて対応することにしました。青わたし達も何度も演奏を頼まれそうですし」
「みくるのソロバラードベストの候補として入れておけばいいっさ!でも、あの主題歌の著作権なんてどこに問い合わせればいいっさ?もう一曲の方は日本の曲だから分かりやすいにょろが……」
「問題ない。映画のエンドロールを見て問い合わせた。二曲目も含めてもう解決済み」
「二曲目というのは気になりますね。あの主題歌以外に、場の雰囲気に合う曲を見つけたというんですか?」
「Z○RD 夏を待つセイ○のように」
「やれやれ、どっちも豪華客船が海に沈む映画の主題歌で間違いないが、そこで合わせなくたっていいだろ?まったく、時期も微妙だし、日本代表チームにあの映画の主題歌だと伝わればいいんだが……」
『あの映画!?』
「名探偵コ○ン 水平○上の陰謀の主題歌」
「今後、俺が務めることになるヘボ探偵が、事件の真相に辿りついてしまう話だ。最終的に爆弾で豪華客船が海に沈む」
「あとちょっとのところまで出かかっているんだけどね、どうも思い出せないみたいだ。特に議題もないのなら聞かせてくれないかい?」
コイツ、折角テーブルや椅子を81階に戻したのに、またタイタニックに移動しろっていうのか?と考えていたのもつかの間、前奏も大して無いせいか青みくるがアカペラで歌い出した。しかし、この曲を演奏するとなると……楽器の担当はそれぞれどうなるんだか。まぁ、どの道サイコメトリーだろうけどな。アカペラで歌いあげた青みくるに自然と拍手が鳴り、『タイタニック号の上で聞きたかった』などと声が上がる始末。だが、どちらも豪華客船が沈没する映画の主題歌だと知ったらタイタニックも文句を言い出すに違いない。『おまえのことを基にして作られた映画だ』と言えばまだ納得するだろうが、二曲目もそれじゃあな……。その映画を見せろとでも言い出すかもしれん。やれやれ、モニターをどこに設置すればいいのやら。とにかく、ディナーのスタッフとして参加すればいくらでも聞くことが可能だ。今度は伴奏有りでな。
「くっくっ、ようやく思い出したよ。確か、シリーズ初のデュアルサスペンスだったかい?告知は大袈裟だったけれど、結局は犯人が二人いるだけで推理物としてはそこまで面白味が無かった記憶があるよ。そんなことより、例の探偵が、犯人に殴られ続けて衣装がボロボロになるシーンの方がよっぽど印象的だったと思うけどね。しかし、彼女の歌を聞く限り、雰囲気に合わないこともなさそうだ。青僕たちも準備を整えているだろうし、キミが気にするほどのことでもないんじゃないのかい?」
「他に異論が無ければ、よろしいのではありませんか?折角、有希さんが楽曲を探してきたんです。こちらは圭一さんが報告した件を除いて朗報はありませんでしたよ。パンの取材依頼と、出張授業依頼、バレーのコーチ等々、要するにあなたに関するものばかりだったというだけです」
「こちらも似たようなものだ。パンの取材依頼はまだだが、スイートルームを予約しようとする報道陣ばかりでね。軒並み断ってはいるんだが、同じ人間が何度もかけてきている。『その日は予約でいっぱいになった』と話しても、『空いている日ならいつでも良い』と言ってきているからね。沈静化するにはもうしばらく時間がかかるだろう」
「俺からは土曜のおススメの仕込みが終わって、このあとはバレーとパン作りに集中できる。異世界のパンの方は土曜日のランチタイム前には異世界支部の敷地外にSPを立たせるつもりだ。ディナーの撮影に来るカメラマンには、撮影を終えて本社から出てきたと催眠をかける。当然、カメラの映像は何も映っておらず、ニュースで取り上げることもできん。80階に探しに来られても困るんでな。雰囲気がぶち壊しだ。俺たちの方がストレスを溜めた状態でいると女子日本代表にもそれが伝わってしまいかねん。まずは今夜のディナーを成功させるところからだ」
『問題ない』

 
 

…To be continued