500年後からの来訪者After Future10-4(163-39)

Last-modified: 2017-03-05 (日) 05:05:01

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future10-4163-39氏

作品

丸一日かけて撮影した遊戯○芸人の収録も終え、よりデュエルがしたいと視聴者に思わせるためとはいえ、少々やり過ぎたかもしれん。エキシビジョンマッチでは俺もトーナメントの覇者も精選されたカードしか使ってなかったし、特に手札抹殺のカードは……来週の放送後に中古ゲーム店で値段が跳ね上がるような気がしてならない。カードの件でまた一悶着なければいいのだが……口調はハルヒでも、タイタニックからテレパシーで聞こえてくる声は、若かりし頃の幻○婆さんそのもの。七大海を制覇したいというハルヒにも似た要望に有希が乗り、日本代表のディナー後、俺たちだけの世界一周旅行が始まろうとしていた。

 

 練習試合を終え、体育館の中央でどこ○もドアを用意して待っていると、記名したプレートを持った女子日本代表チームがエレベーターで現れた。五階の社員食堂にも設置しているし、そこまで驚くようなことはなく全員が揃ったのを確認して説明を開始した。
「お疲れのところ、再度体育館にお集まりいただきありがとうございます。今宵のディナーは豪華客船での鉄板料理ビュッフェディナーです。すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、このどこ○もドアを開けた先はまだ夕刻。例のシーンを演じてみたいという方は船首へお集まりください。それでは、一泊二日の船旅を存分にご堪能ください」
場所は敢えて言わなかったが、夕刻だと告げたあたりで黄色い声が上がった。さっさと体験してもらうことにしよう。日が沈まないうちにな。扉を開けた先に見える夕日を見て、『豪華客船=タイタニック』だと確信している選手から順にくぐり抜けていった。どこ○もドアの後ろにはビュッフェ料理が出揃い、いくら食べても食べ尽くせない程の量の仕込みは終えている。というより、食べ尽くしてもらってはこっちが困る。この後は俺たちが食べる番なんだからな。俺がドアをくぐり抜ける頃には、例のシーンを女同士で演じ、それを見つめながら順番待ちをしているペアが並んでいた。有希がバイオリン、青佐々木がコントラバス、ハルヒがキーボード、朝倉がドラムを担当し、映画タイタニックの主題歌の演奏が始まった。監督やコーチ達は辺りの景色を一望すると、小皿を持ってビュッフェ料理に手をつけ始めていた。選手たちとの年の差はあれど、男女間での反応の違いはまぁこんなもんだろうな。男子日本代表も同じとみてよさそうだ。ビュッフェ料理が並んだテーブルの周りには、料理の匂いを残すための遮臭膜。その外側に社員食堂と同じテーブルと椅子が配置され、料理の追加はタイタニックのキッチンで行う。今回は俺一人で十分だ。演奏を盛り上げ、より優雅な時間を楽しんでもらうための閉鎖空間を張り、調理の音は遮音膜でかき消した。あとはムードを満喫してもらえればそれでいい。例の二曲を何度演奏したかは数えそびれてしまったが、最後のペアが船首から去った後、曲の終わりと共に青みくるが一礼。SOS団の演奏と青みくるの歌声に拍手が鳴り、各テーブルには一人ずつシャンパンが配られていた。
『みくる達は一旦戻って軽食を摂ってくれ。しばらくは俺と青OG達の影分身で十分だ』
『分かりました』
81階では、文字通り猫舌のシャミセンにだけ先に肉が与えられ、軽食を摂ってはいるものの、その匂いに思わず腹の音が鳴るメンバーも。こんな状態では次の火曜が思いやられる。まぁ、船首であのシーンを二つの意味でやろう(野郎)とはしないだろうし、時間としては男女ともほぼ同じだろうが、気になるのはやはりビュッフェの量。
「古泉、火曜日の男子の方は大丈夫か?」
「最初に用意する量を、女子の倍近くにする必要がありそうですね。我々が食べる分が残るかどうか不安になってきましたよ。おそらく不可能だとは思いますが、追加で作るつもりだった分が余るようなら、譲っていただけませんか?」
「俺の影分身数体で残った食材も調理しないと無理だろうな。出し尽くしたとしても、有希の腹を満足させることができるとは到底思えない」
「明日のおススメ料理は終わっていますし、今のうちから準備にかかることにしましょう。今日はシャンパン一杯で止めておいた方が無難のようですね。あなたもそれを見越して『俺の』と発言しているようですし」
「ちょっと!二人揃って、あたしは手伝わずに食べる方にまわるって言いたいわけ!?」
「いくら夜練とライブがあったからとはいえ、先月は二週にわたって三ヶ所のレストランで火入れをしてくれていたんだ。その分休んでくれればいい。今後もライブのときは頼むことになりそうだからな」
「僕がまだまだ未熟なばかりに、おススメ料理の火入れを涼宮さん一人にお願いすることになってしまったんです。こういう機会でもない限り休めませんからね。今日と火曜日は我々に任せていただけませんか?」
「もう!それを先に言いなさいよ!まったく……」

 

 古泉がそのセリフを言ってしまうと、自分はどうなるんだと言いたげに表情を曇らせているメンバーも見受けられたが、それも時間の問題。女子日本代表も例のシーンを演じていただけあって、脱落者はまだ一人もおらず。話題を切り替えたいところだが、確認することを聞いてからだ。
「それで、明日以降のレストランについてなんだが、TBSだけは許可してもいいと思っている。パンの記事を飾ったわけでもVTRを放送したわけでもないからな。もっとも、『やりたくてもできなかった』というのが正しいが、他の新聞社や週刊誌を発刊しているところよりはマシだ」
「そのようですね。確かにパンの取材についてはどの局からも依頼がありましたし、僕は異論ありません」
「くっくっ、強引な取材を試みて苛立っていても、それが良い方向に進むのなら、あの局の人間も少しはマシになるんじゃないのかい?この機会を逃すとどうなるか分からないようなら他のメディアと同じ扱いになるだけさ。それに反論しなくても、『やっぱりダメだった』と思えばそれで規制をかければいい。キミの判断に従うよ」
青佐々木のセリフにその場に居たメンバーが納得の表情をしていた。なら、この件はもういいな。
「分かった。その方向で進めることにする。ところで涼宮社長、青OG達は今後どういう扱いになるのか教えてくれないか?一人は経理課課長、一人はデザイン課、一人は調理場だが、調理スタッフが慣れてしまえば必要が無くなる。青有希の影分身や俺の母親も同じ扱いでな。役職のはっきりしていない四人を今後どうしていくのか聞かせて欲しい。本人たちもその方が分かりやすいだろ?」
「それもそうなんだけど、時期によるのよね……みくるちゃん達がビラ配りに出られなければ代わりに出てもらいたいし、古泉君も今後は人事部に張りつくことになるでしょ?それに、日本代表入りした六人より化粧慣れしているから、ヘアメイクのヘルプとして店舗に入ってもらいたいのよ。今後、本社が安定してきたら、店舗の店員を務めてもらう期間だって出てくるし、そっちの六人とバレーの練習を交代することだってあるじゃない?本人の希望があるのならそれで良いと思うけど、今のところはそんな感じかな。前のシーズンで日本代表入りが決まる前までの四人と一緒よ!」
「だそうだが、どうする?」
「あんた、あたしは当分異世界の方に行くわよ?あの子のことも気になるし、こっちの方は何年も働いているからあたしがいなくてもいいでしょうけど、いくら調理スタッフが慣れたとしても500kcalランチとか、それに栄養満点ランチは毎日違うメニューにしなくちゃいけないでしょう?」
「あっ、そっか。わたしは調理スタッフが慣れるまででいいと思ってたけど、今の話を聞いたら当分抜けられそうにないかも。もし大丈夫なら、それまで手伝って欲しい」
「毎日違うメニューを作るところが見られるのなら、私は平気です!是非厨房に入れてください!」
「自分の化粧ならまだしも、ヘアメイクのヘルプとして店舗に入るのはちょっと自信がないです。黄有希先輩、ヘアメイクのDVDを私にも作ってもらえませんか?」
『私もお願いします!』
「分かった。練習しておいて」
残り三人は社長の判断に従うと見てよさそうだな。三人分のDVDが情報結合された。シャミセンも含めて、用意されたものは食べ尽くしたようだし、そろそろいいだろう。
「なら、六人とも決まりでいいな?メイクの取り方は前にも見せたはずだし、試しにやってみただけで出来る。ようやくタイタニックにいる影分身から連絡が届いた。折角の機会だから、温水プールで泳ぎたい選手が多いらしい。いくら身内だけで撮影されることは無いとはいえ、食べ過ぎて腹が出ている状態を見られるのはさすがに嫌だそうだ。水着の販売の方はこっちのOGに任せたからビュッフェ料理をすべてこっちにテレポートする。女子日本代表にはまた機会を作る必要がありそうだが、待たせてすまなかった。今度は俺たちの番だ」
『問題ない』

 

 案の定、食材が尽きるまで鉄板料理を作らされ、シャミセンも満足のいくまで食べることができたらしい。しかし、現状維持の閉鎖空間もシャミセンにとっては逆効果だったようだ。取り分けた肉を大分冷ましてから渡したはずなんだが、それでも何度もミネラルウォーターで舌を冷やしていた。『シャミセンが食べられる温度にまで急速冷却する』なんて閉鎖空間も必要かもしれん。久方ぶりに時間の空いた双子は録画しておいたアニメを見にハルヒの影分身と一緒に99階に向かい、幸の方も似たようなものか。まだタイタニックの方に影分身を向かわせているメンバーがいたようだが、タイタニック号と体育館を繋ぐどこ○もドアは設置したままだし、必要なものがあればドアをくぐり抜けてそれぞれで客室から持ってくるだろう。69階にはOG12人の本体が揃っていた。例の三人は交代でヘアメイクの練習中、残りはシャンプー&全身マッサージの最中。折角の機会だし、青みくるに事情を説明して、今日は本体で妻のシャンプーをしていた。
「よかったのか?世界一周旅行をOKして。この12人でしか話せないような内容もあるだろうに。来週からまたハルヒ達と一緒にスパってことになるんだぞ?」
「無いこともないですけど、先輩たちに聞かれてまずいような話なんて例を挙げろって言われても、出てこないです!そんなことより、あんな豪華な部屋でキョン先輩と二人っきりの時間が過ごせることの方がよっぽど嬉しいです!影分身でも同期してもらえているのなら全然いいですよ!」
『異議な~し!』
やれやれ、側室とはいえ、実の夫に未だに敬語を使って『先輩』と呼んでくるもう一人の妻もどうかとおもうが、そこまで気にしていないのなら何よりだ。
「でも、結局私以外、『つるぺた』にはならなかったね」
「ここにいる全員、一度はどうしようか考えて相談してきたけどな。みくる達はまだしも、残り三人にあんなに堂々とされていたら当たり前だ」
『三人とも堂々としすぎです!』
「でもまぁ、そのことだけ気になっていたんだ。スパをもう一か所設置することも考えたが、心配せずに済むのならそれでいい」
「それより先輩、明日の昼からまたタイタニック号で食事したいです!」
「食事も含まれてはいるだろうが、おまえらの場合は例のシーンを思う存分やりたいだけだろう?可能なら、青みくるの歌ありで」
『エヘヘヘヘ……』
「オー○リーか!おまえ等は!!ったく、昨日の収録でもお互いのコンビを解消して、若○と○田でコンビ再結成なんて話になっていたし、話を振られただけで息ピッタリだったぞ」
『キョン、その件で来週の放送枠が決まった。四時間+通常放送になるそうだ』
「嘘……家電芸人ですら二時間以上もったことがないのに、遊戯○芸人だけで四時間+一時間なんて。どんな内容だったんですか?」
「いい対戦が多かったんだよ。カード一枚の差で勝敗が分かれたものもいくつもあった。ケン○バ相手にMCが大逆転してブロックトーナメントの決勝戦まで進出したくらいだ。ついでに、例のアシメ芸人のデッキが酷くて、そのMCにガチ切れされていたしな」
「えぇっ!?MCで決勝戦進出って宮○の方ですか!?」
「そうだ。天空スタジアムを決勝戦の会場にしたら、あまりの緊張に耐えきれずに、焦って総攻撃をかけたところで返り討ちにあった。ダイレクトアタックを喰らったときの映像を見て、他の芸人達全員に笑われていたくらいだ」
『そのときの映像、見せてください!!』
「時間に余裕もあるし、見るなら決勝戦前からの方が良さそうだ。隠す程のものでもないし、九日の放送のときはこれにどんな編集が加わるか楽しみにしていればいい」
ファイナリストが出揃って古泉たちとテレパシーした後からでいいだろう。例の笑いのシーンも入っているしな。

 

「え~~~っ!これと同じ演出を大会の決勝戦でやるんですか!?子供たちがトラウマにならなきゃいいけど……私も怖くて悲鳴を上げちゃいそうです」
スタジオでデュエルを見ていたメンバーと似たように笑っているのは約三分の二。ここにいるのが俺以外女性ということもあるだろうし、このあとの編集でより面白おかしくするんだろうが、やはりダイレクトアタックは怖いか。特に物理攻撃系はモンスターが直接襲ってくるからな。天下一武道会の子供の部と違って泣いたら負けなどというルールはないが、どういう人間が勝ち抜いてくるかにもよりそうだ。翌日の一面がMCの悲鳴を上げている姿で飾られるかもしれん。
「黄キョン先輩、このあとどうなったのかも見せてください!」
ヘアメイクの練習も今日はこれで終わりらしい。トーナメントの覇者が佐野○なこだということは知っていても、このあと現れるオ○リスクやオ○リスの演出までは見せていないし、視聴者の反応を見るには丁度いい。妻の全身マッサージも終わったことだし、モニターだけ出して青みくるのところへ向かうことにしよう。あとで同期で得た情報によると、特にこちら側のOG六人は『私たちが練習試合をしている間に、天空スタジアムがこんなことになっていたなんて』と、雷が何本も落ちて神が降臨したというのに、まったく気がつかなかったと呆れ果てていたようだが、司令塔抜きで相手の攻撃を読むことに集中していたのなら気がつかなくて当然だ。そうでなくても報道陣やOG達のファンですら気付いていないだろうからな。ファイナル終結までの映像を見終えると、影分身に抱きついたまま眠っていった。変態セッター+若干名と円形ベッドで抱き合う羽目になったのは言うまでもない。こちらからは様子が手に取るように見えてしまうが、遮音膜の内側に入らなければ声も聞こえない。
最近はジョンの世界に行くのは最後、出るのは最初というのが当たり前になっていた。有希の『できた』ではないが、異世界でのランチタイムのパンを青ハルヒ辺りに任せて『寝る』と宣言してみようかと悩んでしまう。前に全員の前で告げてから期間も空いたし、三度目でもズッコケてくれそうだ。この週末のことを考えれば、明日の昼食後から夕食の直前まで睡眠を挟むのが丁度いい。ジョンの世界に飛び込んですぐ眼に映るものと言えば、零式改(アラタメ)を安定させた妻を入れたOG達六人が、ハルヒ達ダイレクトドライブゾーン一軍メンバーを相手に練習試合を挑んでいるシーン。その横で、青俺や古泉たちの投球を、我先にとミットを構えているみくる達。段ボールの情報結合は続けているが、いくら集中力を高めても、それに伴う防御力と度胸が無ければダイレクトドライブゾーンとしてはまだ二流。青みくるの場合は来月上旬に控えた野球の試合に向けた特訓でもあるけどな。その横でみくる達と同じように構えていたのは、零式習得まであと少しのところまできている青OG。白帯に当てる位置をより安定させようと、少し前から集中力を高める練習に切り替えていた。みくる達三人が先陣を切ってボールを受け、青有希や青佐々木、変態セッターがバットを構えているというのが、近頃よく見るようになった光景だ。ある程度受け続けると、みくる達三人は段ボールの情報結合の練習に入り、ENOZ四人が交代でミットやバットを構えると、変態セッターはコート内のOGとメンバーチェンジ。前々から話していた、OG間でのセッター入れ替えがようやく実現した。セッターとしての精度を上げるのもそうだが、変態セッターと交代して采配がどう変わるのか、どんなトリックプレーが見られるのか今一番の楽しみでもある。しかし、みくる達二人とENOZはまだ影分身を作るまでに至っていないからだが、既に影分身が可能になった青圭一さんまで情報結合の修行に励んでいるというのは正直どうなんだ?こっちの圭一さんのように、あとは昼間の電話対応に慣れながら数を増やしていけば申し分ないと思うんだが。まぁ、本人が上達したいと思うのならそれを無碍にするわけにもいかん。遅れてENOZも段ボールの情報結合を開始。夜練と同程度のメニューを終えた青チーム+幸VS青OG達の試合がようやく始まり、足りないところは鶴屋さんが入ったり、相手を入れ替えて試合をしてみたり、メンバーが多ければ古泉がセッターの采配を読もうと抜けてみたり、自らセッターを務めたり。どうしてそうなるかと言えば、その時々の気分でやる事を決める朝倉がいるからであり、最近はバトルより将棋やバレーの方が多くなってきている。青ハルヒは次の試合に向けたピッチング練習に夢中だし、ジョンが居れば二人でバトルを繰り広げているんだが、『気のコントロールは?』と聞かれるとまだまだ修行が足りん。
 翌朝、『地球上のどこに居ても日本のニュースが見られるように』と以前から懸念していたのだが、いざ当日を迎えてみると、そこまで考慮しなくとも良かった程度のものしか扱われてはいなかった。昨日の練習試合も淡々としたものだったし、ディナーの様子が撮影できなかったなどという話題が挙がるはずもなく、俺たちとは関わりのないニュースばかり報道されていた。一泊二日というには短すぎる船旅の終焉を惜しむ気持ちもあってか、選手たちが朝食を摂るペースは遅かったものの、優雅なひとときを満喫している様子は選手たちの表情から読み取ることができたし、また企画すれば喜ぶだろう。俺のパンと青ハルヒのビュッフェを朝から堪能できるということもあってか、『昨日あまり食べられなかった分』とばかりに料理に手を伸ばしていた。客室の扉からプレートを外して集まってきたのを見て、急いで客室に取りに戻ろうとする選手もいたが「次に使用するときまで、こちらで預からせていただきます」と説明すると、歓喜の声を上げていた。

 

「おや?スーツではないのですか?確か、HR後すぐの授業だったはずでは?」
「北高に行く直前に着替えればいい。告知中もそうだったが、どうも堅苦しい服装は苦手になってしまったらしい。今も各所に影分身を送っている最中だしな。女子日本代表がタイタニックにいる分、79階に予約席を作らずに済む。今日は一般客をそこまで待たせなくてもいいかもしれん」
「あら?入学式と卒業式を除いて、あなたが北高の制服をまともに着こなしたことがあったかしら?そういうセリフは、高校時代ちゃんとネクタイを締めていた人にしか言えないわよ」
『ぷっ!!』
「くっくっ、ダンスのバックバンド以外でキミがちゃんと制服を着こなしているシーンなんて僕も見たことがないよ。こっちのキョンにも同じことが言えそうだ。『苦手になってしまった』という部分は訂正してくれたまえ」
「そういえば、式典を除いて北高時代あなたがYシャツをしまっていたところは、僕もお見受けしたことがないような気がします。ブレザーのボタンを止めている姿もまるで記憶にありませんよ」
「シャツくらい冬の時期はしまっていただろうが!とにかく、色々と作業をしている最中なんだ。スーツに着替えるのは北高にいる間だけで十分だ!それで、OG達から要請があったが、今日の昼食はどこに用意すればいいんだ?ここか?それともタイタニックか?」
「そう言われてみればそうね。男子日本代表のディナーと朝食が終わるまで、ここで待っている必要なんてないわよ!ずっと同じ客室だったし、気分を変えてみようかな」
「問題ない。客室の清掃とシーツの取り換えはわたしがする。彼女も影分身で手伝うと名乗り出るはず。女子日本代表のプレートは次に使う機会までしまっておいて」
「最初からそのつもりだよ。それなら、昼食からタイタニックで異論はないな?日本代表が戻ってきた時点でどこ○もドアの場所をここに移しておく」
『問題ない』
「えっ!?でも、キョン君。女子日本代表チームが戻って来るまで、体育館にドアを設置したままで大丈夫なんですか?選手の皆さんも、練習開始直前まで向こうに居たいと思ってるんじゃ……?」
「今も優雅な朝食を満喫している真っ最中だよ。そんなことなら、女子日本代表チームと報道陣やファンの両方に催眠がかかるように仕向けてある。体育館で練習を開始して不自然のないところで閉鎖空間が解除されるように設定した。どこ○もドアをくぐり抜けてタイタニックから戻ってくるところを見られる心配はない。もっとも、報道陣は朝食タイムが終わるまで敷地内に入れるつもりはないがな」
「報道陣で思い出した。今日は人事部の社員を一時間早く帰して、こちらの電話は放置するんだったね。異世界の方も忙しいのであれば、私もそちらにまわることにする。夕食まで暇になってしまうからね」
「お気持ちはありがたいのですが、僕とこちらの圭一さんで十分まかなえていますので、折角の機会ですからお休みになってください。今も昼食時からタイタニック号でという話が出たばかりですからね。温水プールでひと泳ぎしているのも悪くないのではありませんか?今度は僕の方が影分身を持て余してしまいそうですので」
「それなら、バゲットは切り分けておくから、誰か鈴木四郎の催眠をかけて異世界支部の三階でパンを振る舞ってくれないか?昼食後からだけでもいい」
「配るだけでいいのならいくらでもやるが、北高の授業以外で黄俺が影分身を割くような行事なんてあったか?」
「いや、すべての作業を一旦停止するだけだ。昼食後から夕食直前まで俺は……」
『俺は?』
「寝る」
「ちょっとあんた!また、クマを催眠で隠しているんじゃないでしょうね!?」
さすがに三回目は無謀だったようだ。コケるどころか、周りの不安を増長させてしまったらしい。
「問題ない。今はネックレスやピアスをわたし達にしか見えない様にしているだけ。それ以外で催眠は使ってない」
「なぁに、休めるときに休んでおこうというだけだ。ジョンの世界に行くのも俺が最後、ジョンの世界から出るのも俺が最初じゃ、いつまたクマが現れるか分からん。明日以降はまた色々と忙しくなりそうなんでな」
「だったら、たまには朝食のパンを休みにすればいいだけじゃない!ホテルが予約で埋まっていても関係ないわよ!」
「どの道、異世界支部のホテルの運営が始まった段階で、ここにいるメンバーの食事担当は俺に戻る。今日みたいな日に休息の時間をもらえればそれで十分だ」
「くっくっ、今日のキミのシャンプー担当は僕だったね。日本代表の練習が始まった時点で個室を選んでおくから、キミはそこで休んでいたまえ。ついでに、キミの授業を生で見に行きたいんだけどね。生徒だけでなく、教室中がキミにどんな反応を示すのか聞いてみたいんだ」
「おまえの場合、連中とテレパシーで会話を続けるだけで授業の妨げにしかならん。どうせ有希が撮影しているだろうし、モニターで我慢しろ」
「僕もあの教室にはたびたび顔を出していましたし、佐々木さんと同様、気になって仕方がないんですが、今日のところは授業風景を見るだけということで手を打ちませんか?明日の合同練習後にでも寄ればいいだけです」
「合同練習後って、おまえらまで来る気か!?まぁ、古泉が来る分には生徒も喜びそうなもんだが……」
「あんた、次に行くときは日曜にしなさい!土曜の午前中じゃ、あたし達は楽団の練習で行けないでしょうが!」
「まぁ、俺も一回で終わるとは思ってなかったし、その辺は現バレー部顧問と相談してくる。それで、休ませてもらえるのか?」
「パンを振る舞うだけなら問題はないでしょうが、午前のフォーメーション練習には参加するのに、午後から休むというのは、彼女や男子日本代表の監督の承諾は得ているんですか?あなた一人いなくなっただけで練習試合の内容が大きく変わってしまいそうですが……」
「青古泉に指摘されるまで、そのことを考えていなかった。アイツにも監督にも何も話していない。……仕方がない、また機会を改めることにする」
「これは手痛いですね。采配を読むだけなら、僕があなたの催眠をかけて……とも考えましたが、フォームレススパイクとして零式を見せている以上、流石にそこまでは真似できそうにありません」
「特に男子の方は三枚ブロックとダイレクトドライブゾーンを流動的に使えるようにと練習し始めたばかりだ。対応策を講じるところまでにはいかないだろうが、選択肢があまりないときの対応としてフォームレススパイクを撃つ機会が出てくる。いくらゾーン状態の青俺や古泉でも、あのスパイクをぶっつけ本番で成功させるのは流石に厳しいな」
「というより、零式自体撃てそうにない。ゾーン状態の黄俺でさえ、修得するのにあれだけの時間がかかったんだ。その応用技をあんな体勢で撃てと言われてもな……」
「あのときは完成形がはっきりしていなかったのもあるんだが……とにかく、この話はまた別の機会にさせてくれ」

 

 やれやれ、『寝る』と告げてどうなるか反応をちょっと見るだけのつもりだったのが、双子にまで『キョンパパ、お昼寝しなくていいの?』と心配をかけた上に、みくる達にも不安だけ与えることになってしまった。近日中に休みを取りたいところだが、休みを取るならやはり午後がベスト。しかし、男子日本代表の現状を考えると、本当にどうしようもないときを除いて休めそうにない。どうやら、余計な種をまた一つ、俺自身の手で蒔いてしまったらしい。ハルヒやみくる達の不安を早急に払拭しないといかんのだが、今やるべきことは他にある。双子に遅れること十数分、スーツに身を包んで北高の職員室を訪れ、英語科教諭との今日の授業の打ち合わせ。俺の知る当時の北高の教諭は誰一人としていなかったが、職員室に居た連中は俺を覚えていたらしい。俺はハルヒと違って職員室に呼び出されたり、訪れたりすることなんてほとんど無かったと思うんだが……これは教室に行ってからが思いやられる。文芸部室には頻繁に顔を出していたが、こちらの校舎の階段を上がるのも……いつ以来か思い出そうとしたところで藤原のバカの顔が浮かんできた。そういやOGがまだ高校三年生の頃、北高ごとあのバカ共に占拠されて教室にいた連中をグラウンドに蹴り飛ばしていたな。俺の記憶にある限り、それ以来と言えそうだ。運動会をジャックしに来たときは屋上には立ったが校舎内には入っていなかったはず。やれやれ……記憶から抹消してやりたいが、末梢できそうにない。まったく、あのバカも、どこの国のマフィアも、急進派も、どうしようもない奴の塊だという点でしか共通項がないところが頭にくる。ありがたいのは、他クラスの生徒たちが教室の扉からこっそりと俺を見て『私たちのクラスでも授業してください!!』などと言ってくれることくらい。1-5の教室に入った瞬間、生徒の歓声や拍手よりも馬鹿デカイ声で
『久しぶり――――――――――――――――――――――――!!』
とテレパシーが飛んできた。机や椅子、教卓、壁紙等はすべて変わっているが、黒板や床、天井、壁は当時のままらしい。まぁ、それが当然か。幼稚園児の集まりでなかったことに少々ホッとしたが、危うく耳を塞ぐところだったぞ!テレパシーでその行為が意味をなさないのは重々承知の上だが、生理的反応といっても過言ではないことだけは確かだ。とりあえず、ハルヒ達も引き連れてまた話に来る。頼むから今日は授業に集中させてくれ。
「まさか、自分が一年間通い続けた母校のこの教室に、こういう立ち位置で足を踏み入れることになるとは思いませんでしたが、一時間宜しくお願いします」
「起立、礼!」
『よろしくお願いします!』
高校の教科書で授業をするのはドラマの第七話を撮影して以来、まだ二度目だが、授業内容はドラマとほとんど変わらず。今回の内容も含めて範読した後、新出単語や発音の難しい単語を全員に復唱させ、前回の授業の復習、この授業で扱う長文を和訳するにあたって必要になってくる文法を板書したあと、どのような内容が書かれているのか一つずつチェック。その間、座席表も見ずに指名したり、サイコメトリーで伝わってきた生徒の習熟度に合わせて発問したりする度に、生徒や、その後ろで授業を見ていた教諭陣に驚かれるばかり。古泉以上かどうかまでは分からんが、どちらもサイコメトラーであることだけは確かだからな。まぁ、その事実を告げても信じてはもらえまい。進度として速いか遅いかは職員室や教室から情報が伝わってきたが、そこは俺のでしゃばるところではないし、打ち合わせをした内容を終えて、生徒に指名しながら確認していたところでようやくチャイムが鳴った。
「どうやら次は体育のようですね。早めに着替えて次の授業に向かうようにしてください」
「起立、礼!」
『ありがとうございました!』
英語の次が体育というのは、時間割として不自然でも何でもないのだが、ドラマとここまで酷似していると偶然にしては出来過ぎのような気もするな。しかし、『早めに着替えて次の授業に……』などと言ったところで効果があるはずもなく、他のクラスの生徒が扉の前を塞ぐように陣取り、クラスの生徒からは当時のことを教えて欲しいと質問の嵐。正直、体育前の休み時間にはあまり良い思い出がないんだが……。ハルヒと俺の座席のこと、朝倉がこのクラスの学級委員を務めていたこと、1-6に有希がいたこと、1-9から「すみません、ちょっとよろしいですか?」などと古泉が頻繁に現れていたこと、今朝も「様子が気になって仕方がないんですが……」と話していたこと、ハルヒ達とENOZとの縁について、最後に他クラスの生徒で塞がれた通路の後ろにテレポートするパフォーマンスを見せて教室をあとにした。ハルヒが男子のいる前でも平気で着替えを始め、体育前の休み時間は『男子は体育着を持って教室からすぐさま出るように』と朝倉から指示されていたなどと話すわけにもいかんしな。どこまで撮影されているか分かったもんじゃない。職員室で教諭陣と話を終え、現バレー部顧問と明日の件で簡単なミーティングを済ませて本社へと戻ってきた。

 

「すまん。一つ、困ったことになった」
『困ったこと?』
こちらのOG六人も揃い、タイタニックで昼食を摂りながら、俺の授業風景をみんなで見ようと暗黙の了解を得る直前でそれを制した。朝も周りの不安を煽るような発言をしてしまったし、疑問を抱かれる前にさっさと説明してしまおう。
「もしこれで、俺が母校で授業をしていたと明日の一面を飾るようなことがあれば……いや、もしそうでなかったとしても、明日のバレー部の練習にOG達を連れて行けなくなった。俺や古泉だけならまだしも、六人とも影分身が可能だと世間に広まるようなことがあれば、最悪の場合、世界大会出場にまで大きく影響してしまう。監督から許可が出るのならそれに越したことはないが、理由が理由だし、明後日の新聞記事の一面にもなりかねん。レストランの取材ができず、ネタに困っているところに、俺たち自ら提供するようなもんだ」
「なるほど、そこで嘘を吐いてしまえば、監督と選手間での信頼関係を悪化させてしまう結果にも繋がりかねませんね。監督に願い出るのも報道陣の前では避けた方が良さそうですし、夜練の間にということになりそうですが、このような事由では、OKしてくださるかどうか僕も疑問が残ります。他の選手に練習させておいて、自分たちは母校のバレー部のコーチに出向くとなれば、印象が悪くなる一方かと」
「昨日のようなことがあっても駄目ってことかい?」
「今だからこそ。各メディアの眼が六人に向き、レギュラー総入れ替えもあり得ると見られている。この時期にそれが表沙汰になれば彼女たちにとって悪影響にしかならない。監督に相談するのも避けた方がいい」
「黄有希さんが『問題ない』と言わないどころか、そこまで主張するなんて吃驚。でも、それぐらい大事な時期ってことでいいんじゃないかしら?自分たちの未来を棒に振ることになるかもしれないんでしょう?」
「俺一人出向いてあんな様子じゃ、明日は体育館のギャラリーが満席になってもおかしくない。スマホで撮影した動画をサイトにUPすることで、情報が簡単に拡散するようになってしまったからな。楽団の練習をしているハルヒ達や古泉の影分身を連れて行く方がまだいい。俺一人ゾーンに入れれば、影分身だろうがダイレクトドライブゾーンを見せることは可能だ。今の北高バレー部がどの程度の実力なのかは俺にも良く分からんが、練習試合で実際に見せて欲しいくらいのことは言われてもおかしくない」
「要は、この子たちの代わりにあたし達が行けばいいってだけじゃない!来週はライブやコンサートもあるし、楽団の練習の方にも集中しなきゃいけないから、影分身の方もそこまで意識は割けないでしょうけど、あんたが司令塔として入るのなら何も問題ないわよ!それより、あたし達が一年間過ごしたあの教室で、あんたがどんな授業してきたのか、さっさと見せなさい!」
OG達の表情は硬く、監督に直談判することすらできないことに顔を曇らせていたが、こればっかりは仕方がない。ハルヒのセリフを受けて全員の目の前にモニターが出現。職員室に入る前から撮影されていたとは思わなかった。
「くっくっ、キミの表情が強張る度にテレパシーが飛んできたと見て間違い無さそうだ。教室に入ってすぐ、クラスの生徒から歓迎を受けているのに、この顔はないだろう?どうやら、耳を塞ぎたくなるほどのものだったようだね」
「机や椅子、教卓、壁紙はすべて変わっていたが、残りの連中に揃って『久しぶり―――!!』なんて馬鹿デカイ声を上げられたら誰だってこうなる。部室の連中と違って、幼稚園児の集まりでは無かっただけまだマシだ。『ハルヒ達も引き連れてまた話に来る』と告げたらすぐに静かになったから正直ホッとした。職員室にいるときは、当時のハルヒのように職員室に呼び出されたわけでも、そこまで頻繁に訪れていたわけでもないのに、どうして俺のことをここまで覚えている連中があそこにいたのか疑問だったからだ。階段を登っているときのしかめっ面はテレパシーじゃない。この階段を登るのもいつ以来かと思いだしていたら、藤原のバカの顔が浮かんできただけだ。俺の記憶が確かなら、あのバカ共が北高を占拠したとき以来だからな。三、四階をまわってアイツ等を一人ずつグラウンドに蹴り飛ばしていたときのことを思い出してしまったんだよ」
「ちょっと待ちなさいよ!あたしが職員室に呼び出されたことなんてほとんどないわよ!」
「ああ、すまん。生徒指導室の間違いだった。古泉のSOS団加入前にみくると二人でバニーガールの衣装でビラ配りをしていたのが最初だったか?当時はまだ猫かぶっていた朝倉から『わたしもこれはやりすぎだと思うな』なんて言われたのを思い出したよ」
『黄涼子先輩が猫かぶっていた!?』
「青OG達だってこの半年で大体分かるだろう?殺気が漏れ出す前ってことだ。そうでもなきゃ『殺し屋より愛をこめて』だの『11人目の暗殺者(イレイサー)』なんて発言が出てくるわけがない」
『あ”……なるほど』
「今夜はジョンと一対一でバトルをさせてもらえないかしら?初めてジョンとバトルしたときの記憶が蘇ってきたわよ」
『そいつは面白そうだ。やろう』
「しかし、それでも職員室であなたのことが話題になるほど、ハルヒさんとセットで教員間の話題になっていたようですね。一向に変わる気配が無かったあなたとハルヒさんの座席も含めて」
「授業自体は至って普通……というより、クオリティが高すぎます。範読の差で時間が余っていたんでしょうが、残りの時間は生徒からの質問タイムでも良かったのではありませんか?偶然にしては僕も出来過ぎだと思いますが、英語の次が体育とは驚きましたよ」
「習熟度の低い奴を少しでもLVUPさせることが目的だ。50分ギリギリまで有効活用させてもらった。体育前の休み時間にはあまりいい思い出がないんでな。口が滑らない様に、当たり障りのないことを話して教室を去っただけだ」
「黄キョン先輩、いい思い出がないって一体どんなことがあったんですか?」
「ハルヒが恥ずかしくなるような内容だ。全体の場では話さないことにする。明日の練習に参加する奴は宜しく頼む」
「ライブの件が話題に挙がったから、私の方から一件報告をさせてくれ。先週のライブのアンコールとして踊ったダンスについてなんだが、こちらのライブの日程を先に決めてしまった関係で、十七日の金曜日に出演して欲しいと例の生放送番組から依頼が届いた。ENOZの方もアンコールで演奏した曲を披露して欲しいそうだ」
「ライブはありませんが、夜練とおススメ料理の火入れくらいは出来るようにしておきましょう。これ以上涼宮さんに負担をかけさせるわけにはいきませんからね」
「おまえ、ダンスのバックバンドとして演奏することを忘れてないか?」
「これは手厳しいですね。ですが、リハーサルと本番だけなら少ない意識で何とかなるはずです!」
「リハで駄目だったら、おススメ料理の方は俺が出る。生放送で古泉に失敗させるわけにはいかん。それと、早ければ明日、遅くても月曜には北高が報道陣からの電話で迷惑するはずだ。本社の人事部と同じように、報道陣からの電話は一切通じないよう閉鎖空間で条件付けてくる」
「あら、やけに対応が早いわね。でも、学校のサイトに載せないように催眠をかけてしまった方が早いんじゃないかしら?それに、生徒の中で両親が両方とも報道関係者なんてこともあり得るわよ?」
「職員室に居たときにサイコメトリーで伝わってきたよ。先日の新聞を教訓に、サイトには記載しないと職員会議で決定したそうだ。しかし、そういう可能性まで考えなきゃならんのか。閉鎖空間の条件を『取材目的の電話は一切通じない』に変更しておくよ」
「そこまでしても、明日の一面を飾る可能性があるっていうわけ!?呆れた………日曜は圭一さんも休みだし、あたしも電話対応に混ぜなさい!ここまでやっておいてレストランを取材しようなんて問答無用よ!一つ残らず、切り捨ててやるわ!」

 
 

…To be continued