500年後からの来訪者After Future4-17(163-39)

Last-modified: 2016-09-27 (火) 23:34:09

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future4-17163-39氏

作品

九月も残すところSOS交響楽団のオーディションを行うのみ……と思っていたのだが、青朝倉から熊本や大分の復興支援もという案が出され、更に一夫多妻制をハルヒがOKした件を聞き、OGの一人が俺の妻にとプロポーズされてしまった。ハルヒも二つ返事でOKしたようだし、俺に対する思いはこれまで痛いほど伝わっていた。だからこそ妻として迎え入れようと心に決め、色々と順序が逆転してしまっているが、それも今日までだ。合格者との面談も終え、いよいよSOS交響楽団の正規メンバーが決定されようとしていた。

 

81階に戻ると、既に各楽器毎の楽譜が用意されていた。聞く必要もないだろうが、一応聞いてみよう。
「で、どうなった?」
「問題ない。決まった。合格者には各楽器の楽譜を送って、十月に入ってから引っ越し作業を行う。楽曲はGod knows…とLost my musicの二曲。後の楽曲は全員が揃ってから決めることになる。所々でミスをしていた人間には不合格の通知を送るだけ」
「有希、俺から一つ提案していいか?」
「何?言って」
「青みくるが歌う古泉のドラマの主題歌があるだろ?あれを年末の生放送番組のときはオーケストラでやりたい。天空スタジアムから中継でな。各楽器の楽譜を用意してもらえるか?」
「分かった。クリスマスイブのライブとは別にその日にもう一度ライブをやる。古泉一樹、チケットの販売業者に連絡して」
「それは構いませんが、アリーナ席が何席になるのか一度見せていただけませんか?音の響き具合を確認する必要もあるはずです」
「分かった。団員全員揃ったところでステージを作って確認する」
「ちょっと待ちなさいよ!指揮者はこのあたしよ!?ピアノの伴奏はあたしがやるわ!青あたしにも伝えておかなきゃ!」
「そう、あなたがピアノを弾く楽曲も入れたいと思っていた。演奏したい曲があったら教えて」
「フフン、あたしに任せなさい!」

 

 夕食時、有希から団員決定の報告とそれ以降の方針についての話があり、青ハルヒもそういうことならと納得してハルヒに伴奏を譲った。
「では、楽譜と通知の送付は人事部の方で行うことにする。それから、例の挑戦状を受けて十月一日に試合を申し込みたいそうだ。夜景も見せるだろうから午後七時からと伝えておいたが大丈夫かね?」
『問題ない』
「いいえ、流石にそれは全員一致で『問題ない』とは言い切れません。彼の180km/h台投球の映像も含めて挑戦状を送ったんです。彼がいなくては試合ができても、その後困ることになります」
「インタビューの最中でもない限りはおそらく心配いらない。インタビューも同じことばっかりで応えるのも疲れてきたくらいだ。まだ四分の一も終わってないってのに……まったく、やれやれだ」
「試合の途中でも黄キョン君が戻ってきたときに例の投球をすればいい。すぐ戻る必要があると告げれば向こうも納得してくれる」
「青有希ちゃん、それよ!TV局を回ってる時間ならそれで行きましょ!」
『じゃあ、鶴屋さんの都合はわたしが聞いておきますね』
「俺もそれで異論はない。ただ、九月三十日の深夜になった時点で天空スタジアムのシートを外す。まぁ、外すというより、そのまま透明にして閉鎖空間として使うことになるんだが、注意してもらいたいのは十月一日の朝に各TV局のヘリが飛び回ることになるはずだ。69階で寝ているメンバーはいいが、特にOGは気をつけてくれ。大胆下着姿で窓の近くにいないようにしろよ?それから、全くの別件だ。100階の使い道をどうしようか悩んでいるところだ。ヒロインも精神的にもようやく回復してきたし、あの事件を逆利用して俺と一緒にTV局を脅しているくらいだ。引退の可能性はほとんどなくなったと思っている。何かいい使い方があったら教えてくれ」
「できれば、こっちのキョンや有希さんも含めて僕たち専用のフロアがいいな。OG達に見られていると思うと恥ずかしくてね」
「あたしもそれいいかな。一つ上の方が移動しやすいし」
「俺や有希もそうなりそうだな」
「僕も青僕と同じだよ」
「やることはほぼ同じでも影分身が二手に分かれて機能してくれるか疑問だが、他に何も無ければそれで用意するがいいか?」
『問題ない』

 

 その後、交響楽団の正規メンバーと補欠合格者のリストが青有希に渡り、十月分の給料から出ることになった。俺はその間に100階を69階と同じものに模様替え。69階はOGのシャンプーや全身マッサージフロア。100階は妻専用フロアとなった。あの子にも次から100階に来るように伝えないとな。みくる達の下着とアンスコは100階の中央のベッドの下に隠しておくとして、OG達のは一人につき一つあればいい。大胆な下着の中でも特に大胆で濡れ具合の良いものを一つだけ残して後は情報結合を解除した。青古泉と一緒にしないでくれよ。これはあくまで俺のコレクションだ。ところでジョン、試してみたい事があるんだが……
『その試してみたい事の内容は、俺にも伝わっている。多分大丈夫だとは思うが、一応確認してみよう。しかし、よくもまぁ色々と案が出てくるもんだと呆れるよ。団長の気持ちが分かった気がする』
とにかく、ジョンとタッチして人格交代。これで影分身が消えていないかどうかだ。
『心配する必要もなかったようだな。だが、使い方に注意しろよ?スパイクレシーブをするための投手を増やそうという考えなら、俺とキョンが入れ替わっているから人数は増えないぞ?』
あ……しまった。その事を全く考えてなかった。ジョンと青俺、ついでに俺が影分身をしてと思っていたが、それでは暴投になりかねない。せいぜい青OGのセッターの練習に付き合うのと、こっちのOG六人のテレポート練習、それに情報結合の練習、あとは他の連中と話す時間くらいか。バトルをすると影分身が消えてしまう。分かった、サンキュージョン。
『いえいえ』
100階に影分身を残して99階で双子と一緒に過ごし、明日の弁当を作っているのが一体、もう一体はヒロインに抱きつかれている状態か。因みに、ジョンはギリシャ語で話せたりするのか?
『そこまでの言語はいくらなんでも覚えきれない。俺と入れ替わるより通訳を介した方がいい』
そうか…各国の冊子をサイコメトリーとも考えたが、俺の頭がパンクする。

 

 こっちのアホの谷口の現状を確認しようと思い立ち、1%の影分身をアイツの祖父母の家へと送りこんだ。青谷口ほどではないが少し筋肉がついたらしい。不精鬚はないが、長髪は相変わらず、まだアルバイトで食い扶持を稼ぐほどには至ってないらしい。丁度いい、コイツの腹を満腹にすることにしよう。みくるや佐々木のものなら喜んで受け入れるだろう。青OGが69階に現れた時点で影分身を解き、シャンプーやマッサージに専念することにした。エレベーターのスイッチの条件も変えておいたし問題ないだろう。そういえば、青古泉と俺の父親でやることになっていた面談も、結局俺がついてしまった。あの間あいつは店舗の店員か?それとも未来古泉と将棋か?将棋しているのならせめて代わりに誰を配置したのかちゃんと報告して欲しいもんだ。
「それにしても、これで正式に異世界の私が黄キョン先輩の妻になったんですよね?」
「ああ、結婚指輪も買って刻印を入れたらジョンの世界で指輪交換なんてことになるだろう。この後あの六人がこっちに来た時点で練習メニューを聞いて、場合によっては入れ替わってもらうことになるかもしれん。髪型だけ催眠で変えてしまえば、スタイルが多少違っても同一人物だと判断される」
「だったら、黄キョン先輩、私の髪型を黄私と同じにしてもらえませんか?」
「いいのか?結婚指輪で違いが分かるとはいえ、次のバレーシーズンまでは別に合わせる必要はない。そのままの髪型でドラマの第二シーズンに出てもらいたいくらいなんだ。第一シーズンでほぼ全員殺されていることになってるからな。俺もよく死体役なんて演じる気になったもんだと思っていたよ」
『死体役!?』
「なんなら第一シーズンのドラマ最初から見てみるか?」
『是非見せてください!』

 

「そういえば、黄ハルヒ先輩が言っていた、黄私の足を治したっていうのはどういう……」
「ああ、高校三年の春の大会のときだ。北高が予選会場になったから俺たちも準備を手伝ったり、ど派手うちわで応援していたんだが……予選通過を決める最後の一戦で、ブロックに跳んだときの話だ。相手のセッターの足がパッシングにはならないが、こっちのコートに出ていてな。その足の上に着地して足を捻ったんだよ。野球の試合でみんなも知っているとは思うが、俺や青俺はジョンと培った集中力で野球ならどこに打ってくるか、バレーならセッターがどこに上げるかが微妙なズレで分かってしまう。ブロックに飛んで着地しようとした瞬間にマズイ!と思ったよ。咄嗟に『左足上げろ―――――――――!!』なんて叫んだが、誰に言っていることなのか誰も伝わらず仕舞い。結局そのせいで足を捻ってしまってな。ついでに足の痛みのせいで足をおさえたまま倒れたもんだから後頭部まで強打していた。捻り方が逆ならまだ捻挫で済んだんだが、引退試合にまで影響しかねないと思ってすぐさまベンチに行って他の五人に『俺が治すから引きずって連れて来い』とテレパシーを送った。そしたら、主審がベンチに駆け付けた俺に笛を鳴らして注意してきたんだ。『選手以外は立ち入り禁止だから戻れ』ってな。他から見れば俺が駆け寄っただけで捻った足を治すことなんてできるわけがないから当然なんだが、流石にそのセリフに俺もキレた。キレていたはずなのに、そのとき言ったセリフはなぜか一語一句違わず覚えている。『後遺症が残ったらどうする!たかが予選でガタガタ口出しするな!!!』ってな。セリフと一緒に全力の殺気を主審に浴びせて体育館内が静まり返っている間に足と後頭部を治して簡単なテーピングをしたらコートに戻っていった。まぁ、俺の殺気が相手選手まで怖がらせたみたいでそのあとは相手チームも空回りして悪いことしたなと思っていたんだが、次の日の決勝でまたその相手と対戦することになった。そのときはこっちの世界のOGたちもAクイックとレフトへのオープントス、ツーアタックくらいしか技がなかったんだが、激闘の末、三セット目で惜敗したんだ。身長170cmくらいのMBが居た高校だ。見覚えないか?」
「私たち、その子に予選でブロックの上から叩かれて大差で負けたんです。でもその相手に一度は勝ったってことですよね?」
「夏季大会もいれたら二度だな。夏季大会の時点で全クイック技とブロード。ジャンプサーブができるのにフローターサーブに変えたと思ったらハルヒの理不尽サーブまで使いこなしてきた。週ごとに見違えるほど成長していたよ。恐怖心はあったが、ブロックの真後ろでパンチングの用意をしていたのと、こっちは攻撃力で勝負した分、春の試合に勝つことができたってところだろう。夏はどこをブロックしていいのか分からない状態だったからな。ブロッカーとしての仕事をさせてもらえなかったんだ」
「その頃には、黄私はクイック技すべてのトスを上げられたってことですよね?」
「ああ、そのときは既に青古泉より厄介な存在になっていた。トスの違いがほとんど分からなかったからな」
「たった一週間でどんな練習していたのか今夜聞いてみます!」
「丁度来たみたいだし、ここで話せばいいんじゃない?私たちはお風呂に入っていれば話せるでしょ?」
「なら、私が呼んでくる」

 

 やれやれ、四つも浴室があるのに一つの浴室にOG12人全員が集まることになろうとは……相変わらず大胆下着を身につけているのは変わらずか。青古泉じゃあるまいし何の妄想をしていたらそうなるのやら。毎日のようにアンスコを濡らしていた。
「あれ?キョン先輩、ハルヒ先輩たちは?」
「来月から天空スタジアムのシートがはがせるから、100階の使い道についてさっき議論していてな。ここはこれからはOG11人がシャンプーやマッサージで使うフロア、100階が青有希を含む妻9人のためのフロアになった。シャンプーから全身マッサージまで終わったら100階の個室に二人でテレポートするからそのつもりでな」
「え、あ、うん」
「キョン先輩、この子今日一回も零式が成功しなかったんです!どんな妄想していたのか後で聞いてあげてください!」
「まぁ、それは二人っきりのときに聞くとしよう。それより俺の方から六人に聞きたい事がいくつもあるんだがいいか?シャンプーやマッサージされながらでいいから応えて欲しい。『答えて欲しい』と言ってもそんな誰にも言いたくないようなことを聞くわけじゃないから心配する必要はない。それに青OGからも色々と聞きたいそうだ」
「青チームの私たちから聞きたい事?」
「黄私が黄キョン先輩を好きになったきっかけの事件、さっき全部聞いちゃった」
「えっ!?それいつの話!?」
『「左足あげろ―――――!!」って話』
青OG達がカシューナッツのような口を手で隠していたが、隠しきれていない。
『あぁ、なるほど』
「みんな揃って納得しないでよ!」
「でも、黄私の捻った足を治しに行った黄キョン先輩が主審に注意されてキレたんでしょ?後遺症のことまで全部考えてくれていたみたいだし」
「とりあえず、二人とも揃っている今話すのが一番いいだろう。結婚指輪に刻む刻印が決まったらすぐにでも二人で指輪を買いに行く。さっき、髪型を同じにして欲しいなんていう話も出たんでな。俺たちが指輪を買いに行っている間、青チームのおまえに練習に参加してもらう予定だ。それに、他の妻八人専用のシャンプーやコンディショナーを買いに行ったんだが、どれも髪質にピッタリ合うとは言えそうになくてな。それも買いに行きたいと思っている。結婚指輪に刻む文字だからゆっくり考えてくれればいい。あとはそうだな……こっちと同じ時間に起きて向こうにテレポートすれば間に合うのかとか、サーブを練習している時間がいつなのか分からないと入れ替えができん」
「えっと、朝は皆と一緒にジョンの世界から出れば大丈夫。刻印も決めた。サーブは午前の練習の最後だから午後なら……あっ、でも午後は練習試合だった」
「なら、髪型を揃えたら、指輪を買いに行く日の朝に入れ替わればいいな。指輪はどれにするか大体の見当はついているか?行った先で迷ったらまた来ればいいだけの話だ。因みにバイクで俺の後ろに乗るのと、赤いポルシェの助手席に乗るのとどっちがいい?」

 

 二つも一気に質問した俺のせいというのもあるんだが、おそらくこの後のことを考えていて零式が成功しなかったんだろう。反応に困っているところにこっちのOG達まで口に手をあてた。
「ねぇ、今のキョン先輩のセリフ聞いた?バイクの後ろに乗るのとポルシェの助手席に乗るのとどっちがいいかなんて、そんなこと普通言えないし、どう答えていいのか分からなくなっちゃうよ」
「いいなぁ、そんな二択なら私も迫られてみたいなぁ」
「赤いポルシェって、ドラマでみくる先輩が運転していた車でしょ?」
「あれの助手席かぁ……私も乗ってみたい」
「ゆ…指輪はまだ決まってない。私も店に行ってから二人で決めたかった。それに、バイクもポルシェも両方乗ってみたい。ダメ?」
「なら、来週の土日か十月に入ってからになるかな。でないと入れ替えられないし。まぁ、他のメンバーに催眠をかけてもいいんだけどな。ハルヒたちならどんな練習をしているのか気になって、面白そうだから行くなんて言いかねん。俺も早くもう一個の指輪にチェーンを通したいんだ。明日にでもハルヒに聞いてみようか?」
「うん。私も早い方がいい!」
「羨ましいなぁ……初デートで結婚指輪を買いに行くなんて」
「じゃあ、今夜からここに泊っていけ。それから、これはOG全員に関わる話だ。昨日もどうするか考えていたんだが、シャンプー剤何使っているんだ?特にこの二人は髪のダメージが酷くてな。温泉旅館でありがちなリンスインシャンプーとかじゃないだろうな?」
「あ……キョン先輩、それです。ここと差がありすぎだって他の選手のみなさんも言ってました。ディナーはあの二週間だけでいいからここでずっと練習させて欲しいって。監督も青涼子先輩のおでんをほとんど食べられなかったってぼやいていました」
「それならもう、マネージャーに話をして考えさせておけ。俺たちは日本代表の一番のスポンサーなんだ。毎日ディナーの準備をする必要も、練習試合の相手として毎日参加しなければいけないようなこともないのなら、ずっとここで構わない。夜練もできるし、監督も二つ返事でOKするだろう。たまにディナーを振る舞うくらいが一番いい。普段の夕食は三階にハルヒや青有希を向かわせればそれで済む。夜の調理スタッフも募集をかければしばらくもしないうちに集まるだろう」
『絶対明日伝えます!!』

 

 やれやれ、もうヒロインを起こさないといけないのか。通訳さんの分も含めて朝食、昼食の弁当は用意できている。これでここに待機する影分身は1%で済む。リムジンで朝食、昼食と食べて次の国へと向かうだけだ。本社の方では全身マッサージまで終えてお姫様抱っこで抱え上げると、
「それじゃ、俺たちはこれで」
『いってらっしゃい。頑張ってね~』
二人で100階の個室へとテレポート。とりあえずここまでの情報を同期することにしよう。この子の今日と明日のランジェリーとアンスコはコレクションに追加することになりそうだ。こっちのOGたちが来る前に話になっていたセッターの練習については残った11人でやればいい。
「ここは……?」
「69階と同じものを100階にも作った。部屋の外に出ればハルヒ達がいる。今日はここは俺たちだけの部屋にしてあるから誰も入って来ない。さて、さっきまで全身マッサージしていたとはいえ、裸のままじゃ恥ずかしいだろ。照明を消すからベッドに横になって上を見ていてくれ。この部屋、ただの個室じゃないんだ」
「あ、それ、聞いた。立体映写機で天空スタジアムからの眺めを映すんだよね?」
「なんだ、知っていたか。とりあえず少し景色を楽しめ。やりたい事全部叶えてやるから」
一部のカラオケ店の個室にあるようなブラックライトを当てると星座が見えるなんてチャチな仕掛けとはわけが違う。あたかも天空スタジアムに置かれたベッドに二人で横になっているような錯覚におちいってしまいそうな見事な立体映像が前後左右上下に広がった。クールケットを被せて頭をこちらに引き寄せた。それだけで心臓の音が響いてくるほどドクン、ドクンと音が伝わってくる。
「さっきも『初デートで指輪を買いに行くなんて羨ましい』なんて話になっていたが、順番なんて気にするな。何がしたいか教えてくれれば一つずつ叶えてやる。言いにくかったら頭の中でどうしてほしいかイメージするだけでいい。俺がそれをサイコメトリーするだけだ」
「じゃあ、キスして抱いて欲しい」
「分かった。これ以上ないほど優しく抱いてやる」

 

 大学を追いかけて来たくらいだから、予想はしていたが、案の定。下腹部に触れた段階で体内に膜が張られた状態だと伝わってきた。取り去ってしまうのと痛覚を遮断するのとどちらがいいか迷ったが、痛覚遮断の方がいいか。抱いた後で膜が破れたことが分かった方がいいだろう。全身マッサージで既に把握していた弱いところを重点的に責めるとしばらくもしないうちに身体が痙攣して弛緩した。意識が朦朧としている中で頬を触り、髪を撫でたところで俺の分身が秘部へと侵入する。Wみくるのときもそうだったが、口づけや他の部分を責めながら奥へ奥へと入っていった。痛覚遮断したはずだが……なぜか涙をこぼしていた。
「嬉しい……やっとキョン先輩とこうやって繋がることができて。絶対叶わない恋だって分かっていたのに、それでも先輩のこと諦めきれなくて……ハルヒ先輩が一夫多妻制をOKしてくれたのはみくる先輩たちがハルヒ先輩にアプローチしてくれた結果で、私はそれに便乗しただけだけど、でも今、先輩に抱かれて、明日は結婚指輪を選びに行こうって提案してくれて、こんなに幸せな思いをしたの、今日が初めてです」
「あのな、先輩とつけるのも、尊敬語や丁寧語を使うのもやめろって前に話しただろ?」
「うん。ごめんね、キョン」
繋がったままでしばらく話をしていた。主に俺たちの知らないところで日本代表がどこでどういう練習をしているのか聞いてばかりになっていたが、聞けば聞くほど本社でずっと練習してくれて構わないといいたくなってきた。コイツだけでなく他のOGたちの髪のダメージもケアしていかないとな。締め付けが緩くなってきたところでようやく動き出すと秘部だけでも少しずつ快感を得られるようになってきたようだ。次第に声がまた大きくなり、二度目の痙攣を経て満足気な顔をみせたところで今日はおしまい。「繋がったままがいい」という願いをそのまま受け入れ、二の腕に頭を乗せて眠っていった。

 

ギリシャでの残りのTV局での告知を終え、最初のTV局のインタビュアーやディレクターを辞めさせずに済んだようだ。
「こんなにおいしい料理は初めて食べました。どうもありがとうございました。この後の告知もお身体にお気をつけて」
「こちらこそ、お世話になりました。どうもありがとうございました」
空港で通訳と別れを告げ、機内へと入っていった。しかし、全米でクレイジーゴッドと言われて知らない奴はいないくらいの人気ぶりらしいが、あの通訳さんは俺がどんな人間か全然知らなかったようだな。世界各国に告知にまわる意図がようやく掴めた気がする。同じことの繰り返しでも国民からすればたったの一回に過ぎない。
「キョン!次のオーストリアまですぐ着いちゃうんだから少しでも早く戻りましょ!」
「ああ、すまん。ちょっと考え事をしていた。すぐ戻ろう」
トルコからカナダに行くまでは機内にいる時間はほとんどない。少しでも抱きつきたいというのがヒロインの本音に違いない。自宅に戻るといつものように「これに着替えさせて」とランジェリーのイメージをもらったのだが、ちょっとこっちから聞いてみよう。
「それにしても、一体いくつランジェリーを持っているんだ?どんなものがあるのか見せてもらえないか?これでも一応ファッション会社の社長なんでな」
「こっちよ。私に着いてきて」
連れてこられたのはドレスルーム。まさにハリウッドスターと言うべき量の服、ドレス、下着の数々。新川さんの料理のレパートリーの量と甲乙つけがたいくらいだ。年に一回着るかどうかってところだろう。下着の方も前に見せてきたものも色違いでいくつも揃っていた。似たような形状のものもすべて……古泉ではないが、「圧巻と言う他にありませんよ」ってヤツだ。
「どう?」
「圧巻としか言いようがない。毎日違う下着をつけていた意味がようやく分かったよ」
「納得した?なら早く着替えさせて。あなたに少しでも抱きつきたいの」
「ああ、分かった」

 

 結婚した一人を除いて69階では残ったOGを抱くことはないだろうし、こちらも模様替えだな。左右に低反発の枕とベッドを用意。クリーム色のものが六つ、水色のものが六つ。要は、黄チーム、青チームってことだ。ベッドの横に洋服箪笥、窓は全面鏡になっている。フロアの奥に先ほどヒロインの自宅でサイコメトリーした中でも特に大胆なものを何色も取り揃え、玩具の方も同じものでも色とりどりのものを用意した。当然ランジェリーと玩具の横にはアンスコが備え付けられていた。中央に12人全員入っても余裕があるほどの浴槽、それを囲むようにシングルサイズのエアマット、斜め後ろにシャンプー台をそれぞれ12台っと、こんなところか。後は声が良く通るように閉鎖空間で囲って、空いたスペースに個室を作り、中には大画面TV、ソファー、クッション、等身大の姿見を用意して遮音膜と空調設備で対策は万全。試しに聞いてみるか。ジョン、OG全員にスカ○ターを渡してくれないか?69階をOG仕様に模様替えしたから、何か追加注文があったら教えてほしい。
『まったく別のフロアになってしまったんだ。スカ○ターよりも、大画面で見せた方がいいだろう』
実際に体感してみたい奴や、下着や玩具が気になる奴は起きてこのフロアに来るように伝えてくれ。
『すぐに行きます!』
そのままOG達にテレパシーを転送したらしいな。しかし、青チーム六人の声だけでは無かったような気が……
100階で目を覚ましたOGが「私も見てきます!」と言ってそのまま69階へテレポート。他のメンバーがどんな格好でいるのかは知らんが、裸でテレポートして大丈夫か?アイツ。エレベーターから69階に降りてきたのは青OG六人。みんな大胆下着をつけたままの格好で寝ていたらしい。日本代表と一緒にいるOGたちもテレポートでここまで戻ってきた。
「とりあえず全員集まったらしいな。とりあえず人数分のシャンプー台、エアマット12人全員で入っても余裕があるくらいのお風呂。それから両サイドのベッドは低反発の枕、ベッドになっている。洋服箪笥も用意した。テレポートも全員マスターしているようだし、宿泊先で眠りにくかったらこっちで寝るといい。それから奥にはランジェリーと玩具それにアンスコ。同じデザインでも違った色のものもある。新しく追加したものもあるから見てみるといい。ここで寝てジョンの世界に戻るというのも有りだ。それと、空いたスペースに個室を用意した。中はTVやソファー、クッションなど。一人で何かしたい場合は使ってくれ。遮音膜で囲ってあるから中でどんなに大声を出しても聞こえない。青チームは例のドラマを見るのもいいだろう。各自で見てまわってくれ。どこで寝るかはみんなに任せる。寝不足にだけはならないようにな」
『はい!ありがとうございます!』

 

 ベッドに興味を示したのが二、三人。残りは全員ランジェリーと玩具を見ていた。100階の方も同じものを揃えることにしよう。本体を動かして69階と同じランジェリーと玩具を情報結合。
「え~~~~!!こんなものもあるの!?これユニフォームだと絶対バレるよね!?」
「キョン先輩これ一体どこから……?」
「ついさっき、ヒロインの自宅のドレスルームを見せてもらったんだ。ランジェリーも玩具も映画のヒロインが持っていたもの全部揃えてみた。下着もそうだが服の方もドレスもアウターも年に一回使うかどうかのレベルだった。服の方はハルヒ達に情報を渡して今後の参考にしてもらおうかと思ってる。流石ハリウッドスターだと思ったよ。持っている量も物も大胆さも次元が違う」
『ヒロインが持っていた――――――――!?』
「余程ストレス抱えてないとこうはならんだろうな。特に、暴飲暴食するわけにはいかないハリウッドスターだからこそなのかもしれん。青OGたちの会社に対するストレスと大した差はない」
「早く辞めてこっちに来たいです!」
「わたしなんて三月まで働かなきゃいけないなんて……」
「まぁ、段ボール作りの修業と一緒で青俺にテレポートや異世界移動のやり方を教えてもらえばいい。会社が終わればすぐここに来られるだろ?自宅に帰るのも一瞬だ」
『ぜひ教えてください!』
「俺でも出来ないことはないが、ジョンの世界にいるメンバーに習えばいい。しばらくジョンの世界にはいけそうにないんでな。それより、あまり長く起きてると眠気が残るぞ?」
『折角なのでここで寝ます!』
「キョン、私は100階で寝たい」
「ああ、それでいい。また抱きしめてやる」
本体のいる個室に来たところで腕枕をして抱きしめた。この後も繋がっていたいという本人の希望に応じた。

 

『キョン、時間だ』
告知にあてていた分の意識を69階、100階に戻すと、本体と一緒に寝ていたOGは初めてだが、他の妻達はいつものように昨日来ていた服や下着はどうするのか、今日の服は下着も含めて着せてやるから教えてくれと伝えた。69階にいたときに今日履く大胆下着を決めていたらしい。昨日の服と今日着る服をテレポートで入れ替えると赤面していても抵抗しようとはしなかった。
「ハルヒ先輩達にも同じことをしているの?」
「そうだ。発案は有希なんだけどな。みくるや佐々木も恥ずかしがっていたんだが、最近はそうでもなくなってきた。聞いたことあるだろ?『ドレスチェンジ』と言わずに『着替えさせて』って有希が言ってたの」
「ふふっ、そういえばそうだった。それで結局、私の代わりはハルヒ先輩?」
「いや、Wハルヒだと普段やらないような行動をしかねないから、青みくるに頼んだ。朝食はその席で食べるといい」
「分かった」
当然、他のメンバーも青みくるがどうしていないのか気にしてはいたようだが、一番に声をあげたのはなんと幸。
「伊織パパ、みくるちゃんは?」
「ちょっとした理由があってな。今催眠をかけた状態でバレーの日本代表選手たちと一緒にいる」
『はぁ!?』
「ちょっとした理由って何よ!?」
「簡単だ。二人で結婚指輪を買いに行く。指輪が決まり次第刻印を頼んで青みくると交代するだけだ。とりあえず、食べ始めてくれていいから聞いてくれ。こっちの世界のOG達に昨日聞いたんだが、日本代表選手たちは今の合宿所だと午前の練習の最後にサーブ練習をして、昼食後練習試合のメニューを繰り返すらしい。だから、時間が取れるのが午前中しかなかったし、早めに買いたかったのもあって、急遽入れ替わってもらった。それで、ここからは全員に関わる話になるんだが、OG達がマネージャーに話して監督もOKするようであれば、シーズン外でもここを使ってもらおうかと思ってる」
『シーズン外でもここを使う!?』
「ちょっと待ちなさいよ!あんたも古泉君も中途半端な状態でしかいられないのに日本代表を迎え入れられるわけがないでしょうが!!」
「悪いが『ちょっと待ちなさいよ』はこっちのセリフだ。話は最後まで聞け。当然、シーズン中のように毎晩ディナーを振る舞うわけでも、練習試合の相手になるわけでもない。三階でも夜の調理スタッフを募集して運営する。OG達からの情報だと、女湯にあるのは温泉にあるのと同じような、ありきたりなリンスインシャンプー、そういう細かい面でも、ここの方がずっと待遇がいいそうだ。監督も青朝倉のおでんが食べられなくてぼやいていたと言っていた。加えてここに滞在すれば青俺とジョンで夜練が可能になる。今週は男子の日本代表が泊まりにくるから無理だが、来月以降なら体育館を使用する団体なんていやしない。OGたちもそんな状態で生活しているから髪のダメージが酷くてな。結婚指輪を買ってまだ時間がありそうならシャンプーやコンディショナーをどうするか探しに行ってくるつもりだ。メリットは自分の好きなときに体育館に行けば、練習や試合に参加できること、当然報道陣も入ってくるから、目立ちたい奴は体育館に居座ればいい。デメリットはW俺とジョンが夜練のスパイクレシーブの練習相手として出ることと、夕食のスタッフが揃うまではハルヒ、青有希、母親の誰かに居てもらいたいこと、報道陣が入ってくること、それだけだ。ディナーでないのなら監督たちはおでんと一緒に酒が飲みたいと言ってくるだろう。どうだ?」
「問題ない。バレーでもわたしが目立つ」
「監督からそこまで言われたんじゃ断れそうにないわね。三階の昼のスタッフにも夜もできないかどうか、わたしから聞いてみるわね!」
「撮影がすべて終わってしまえば、思いっきり暴れられるというわけですか。楽しみです」
「では、今日から朝倉さんには徹底的にセッターの練習を積んでもらうことにしましょう。前衛の真後ろからではセッターの位置に着くまでに時間がかかり過ぎてトスに迷いが出てしまいますからね。新生青チームで勝たせていただきます!」
「黄あたしの料理でも他の旅館より数段美味しいわよ!面白くなってきたじゃない!あたしにも出番をよこしなさい!」
「じゃあ、向こうにいる五人に連絡を取って、こっちはいつでもOKだと伝えるがそれでいいか?」
『問題ない!』

 
 

…To be continued