500年後からの来訪者After Future4-18(163-39)

Last-modified: 2016-09-29 (木) 11:30:48

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future4-18163-39氏

作品

100階を妻九人の専用フロアとして使うこととなり、69階はOGたち12人のフロアとなった。疲れた体を休めたり、大胆なランジェリーをつけて寝てみたりと有意義に使ってもらえればそれでいい。日本代表入りしたOGたちからの情報を受け、毎日ディナーの準備をしたり、練習試合に出なくてもいいという条件でOGからマネージャーに声をかけ、監督がOKすればシーズン外でも女子日本代表を我が社で受け入れることになった。

 

「それから、青チームのOGにはドラマのDVDだ。69階の個室でも見られるようにしてある。あと、ハルヒ、有希、朝倉、W佐々木はちょっと残ってくれ。渡したいものがある。みくる、鶴屋さんの都合はどうだ?青みくるからは毎月一日は駄目って話を聞いたんだが…」
「こっちも同じです。今回はW鶴屋さん無しで決めるしかありません」
「ところでキョン、僕たちに何を渡すつもりだい?」
「OGたちを69階に集める前にヒロインの自宅のドレスルームを見せてもらったんだ。年に一回着ればいいくらいの量の服やドレス、ランジェリーが並んでいてな。その情報を渡すから使えそうならデザインを考えてみて欲しい。それから異世界の本社でも設置すると言っていた100人乗りのエレベーターを建設するためのシートを張った。十月一日に同時にシートをはずす。番組収録の関係者はそこから入ってくるように誘導してくれ」
「すみません、僕も今日から同位体を作って人事部にまわります。基本的には移住したいと電話連絡してきた人から上層階を埋めていくのでいいのですが、土地を譲ってくれた方を最優先しますので、それで宜しくお願いします」
「では僕からも一つ。十月一日に来る野球チームはおそらく野球好きの芸能人だけで固めたチームに違いありません。一回でコールド勝ちをします。有希さん、朝倉さん、佐々木さんにも出ていただきますのでそのつもりで」
「私からも一ついいかね?他のTV局からも天空スタジアムを見たいという番組収録の依頼が来ているんだがどうするかね?」
と、ここで青俺の携帯のアラームが鳴った。青有希が双子を連れて会議から抜ける。
「くっくっ、番組収録はいいけど天空スタジアムを見て『凄い』という程度のものなら僕たちのライブやコンサートで見せた方がいいと思わないかい?スマホで撮影した人が動画サイトにUPするだろう。わざわざ報道陣を呼ぶ必要はないよ」
「問題ない。二週目の土曜日にコンサートを入れる。おでん屋も休み」
「じゃあ、全部断るでいいわよ!他になければこれで終わりにしましょ。ヒロインの着ている服がどんなものかも知りたいし。キョン、その情報、青あたしにも渡してもらえる?パーティのドレスで迷うでしょうから」
「ああ、分かった」
「それじゃ、これにて解散!」
『問題ない』

 

 Wハルヒ、有希、朝倉、W佐々木にドレスルームにあった服の情報を渡し、有希には残ってもらった。30%程度の意識でストレートだけでも投げられないかと思って何球か受けてもらったが、
「わずかにズレる程度。でも変化球はやめた方がいい」
「それだけ分かれば十分だ。ありがとう、有希」
「問題ない」
「ちなみにOGの偽名って決まっていたか?チアガールとして取材されたときのために確認しておきたいんだ」
「分かった、わたしが青チームのOG達に伝える」
片付け当番には青朝倉が入り、有希がエレベーターで降りていったので残るは三人。
「店がオープンするまでまだ時間がある。その間に何かやっておきたいことはあるか?」
「あ、じゃあサーブ練習したい」
「なら、俺も一緒に降りよう。準備に時間がかかってしまう」
ついでに練習用体育館も含めて掃除もしておこう。体育館に着くなり、サイコキネシスでわずか10秒。白帯もこれなら零式が打てると教えてくれた。
「凄い、こんなあっという間に」
「何事も反復練習ってヤツだ。こうやって少しずつ上達していく。それだけだ。俺は客席も含めて掃除をする。ボールのテレポートは一人で出来る筈だから、好きなだけ撃ってみろ」
「分かった」
掃除しながらサーブ練習の様子を見ていたが、何の迷いもない。見事に零式を撃ってみせた。これならコーチや監督も一安心するだろう。頼むから大胆下着で試合に出るなんて真似はしないでもらいたいもんだ。

 

 地下一階にポルシェを拡大して二人で乗り込んで一言。
「ちなみに、運転に注文はあるか?青ハルヒは『全速力に決まってるじゃない!』なんて言っていたがどうする?」
「少しでも時間が欲しい。私も全速力で」
「よし、車酔いするなよ?」
久しぶりに運転するんだ。おまえの性能見せてくれ。閉鎖空間を広げて他の車も排除。信号もすべて無視だ。全速力なだけあってドライブを楽しむ暇も無かったが充分満足してもらえたようだ。ポルシェから降りて俺に近づいてきたところで手を掴んで宝石店へと入ると、店内ではいわゆる恋人繋ぎをしていた。少しでも満足して納得がいくものが見つかればそれでいい。
「値段は気にしなくていいから、気になったものを選べ。俺もそれにする」
「う~ん……じゃあ、これ!」
「ピンクサファイアとダイヤモンドが交互に入った指輪か。やっぱり性格が出るもんだな。言い方は悪いかもしれんが、おまえらしい。これにしよう」
「刻印されますか?」
「はい!I can’t stop loving you.でお願いします!」
I can’t stop loving you.『愛さずにはいられない』か。まったく……どいつもこいつも。
『嬉しいクセに考えていることが真逆だぞ?』
うるせぇ。こんなメッセージを刻印にするって言われて、俺だって照れているんだ。
「では、三日後の木曜以降においでください。ありがとうございました」
『よろしくお願いします』
「まだ時間はたっぷりあるし、シャンプーやコンディショナーも選びに行こう。本社の大浴場もそれに切り替える。次はバイクになるだろうが、全速力で走った分、ドライブしている気分にはあんまりなれなかっただろ?また行こう」
「私はこれでも十分満足してる。キョンに指輪をはめてもらえる瞬間が今から楽しみ」
「どんな指輪にしたって他のOGから聞かれたらさっきのリングをイメージして五人に触れるといい。それで伝わる」
「分かった。早く次の場所に行こ。私もどんなものがあるのか見てみないと分からない」
「じゃあ、また急発進するから振り落とされるなよ?」

 

 シャンプーやコンディショナーもそこまで時間もかかることなく決まり、ポルシェに乗ったまま青みくると入れ替わった。
「みくる、おかえり。いきなりすまなかったな。面倒事を押し付けてしまって」
「いいえ、充実した練習ができました。キョン君このあと100階で髪と身体を洗ってもらえませんか?」
「お安い御用だ。ちょっと寄り道していこう。俺もみくるとドライブを満喫したいんだ」
「こうやってポルシェの助手席に座れるだけでも嬉しいです!キョン君ありがとうございます!あっ、あとでまたOGたちからキョン君に連絡してくると思うんですけど、マネージャーに『オフシーズンでも本社に来ないか』って言ったら、しばらくして『監督も快諾した』って言われました。ディナーがなくても夜練があるだけで十分嬉しいって」
「いつ頃来るかは言ってたか?」
「すぐにでも行きたいくらいだけど、バスも次の行き先がわたし達の会社になるので諸手続きが必要だって。でも今の合宿所が今月いっぱいまでだから十月一日には来れるそうです」
「それはいい。天空スタジアムからの夜景を満喫してもらうことにしよう」
青みくるとのドライブを満喫して本社に戻ると、二人で選んだシャンプーやコンディショナーを情報結合で増やし69階の全シャンプー台に設置、100階にも妻専用のシャンプー剤として置き、70階の大浴場にも置いた。今使っているシャンプーやコンディショナーの在庫が切れればこちらに切り替えることになりそうだ。エレベーターのスイッチもSOS団専用のものには100階のスイッチはW俺と妻九人しか見えずそれ以外はたとえ古泉や朝倉でも押せない様に、69階のスイッチは俺とOGだけという条件で100階と同じものに変更。天空スタジアムのスイッチを追加した。一般用は100階を消して天空スタジアム行きはもう少し後だな。青みくるには昼食までに急いでやるよりは食事の後ゆっくりマッサージをしてやると提案し、快諾を得た。

 

 告知の方は至って順調。オーストリアの母国語がドイツ語だったことに吃驚したくらいで、インタビュアーの話をそのまま俺が通訳してヒロインが「映画の告知に関する内容以外応える必要はないわ」と話し、俺がそれを同時通訳。次も「同じことを二度も言わせないで」と返し、「もういいわ!キョン、帰りましょ!国内のTV局一つで告知出来ないくらいで大した影響はないわ!あなたのアクションシーンがあれば心配ないわよ」と今まで俺が務めていた役をヒロインにバトンタッチ。その後のディレクターとのやりとりもヒロインの方が解雇処分や妥協案を言い放ちリムジンの中で二人で大爆笑していた。これでホテルに入ったら六時間ほどの空きができるが、未だに日本とは昼夜逆転の生活ばかり。少しは寝かせて欲しいもんだ。
 昼食時、青みくるが効いてきた情報をみんなに告げると大喜びしていた。青朝倉からも、三階の昼のスタッフがそのまま夜も入れるとの報告があり、栄養満点ランチと500kcalランチは昼と夜でメニューを切り替える必要があるものの、昼のスタッフがそのまま夜の分の準備をすることで決まった。材料は青朝倉が注文するだろう。有希と青朝倉は交互にきてもらうことになりそうだ。すぐに100階には来られない分個室でたっぷり抱いてやることにしよう。
「それで、どんな指輪にしたのよ?」
「まぁ、三日後のお楽しみってことで」
「金額くらい教えなさいよ」
「まぁ、それなら言ってもいいが、ジョンが『わたしの戦闘力は…』なんて言ってきそうだな。48万だ」
『48万!?』
『わたしの戦闘力は…』
「やれやれ、予め忠告しておいたのにそれでも言ってくるのか?おまえは。とりあえず二人でもう一回取りに行くからその間の代役を誰かに頼みたいんだが、いくら零式が撃てるからといって伊織を行かせるわけにもいかん。捕りに行くだけだから時間もそこまでかからないが、誰か行ってみたい奴はいないか?」
「黄キョン先輩!私に行かせてください!少しでも場の空気に慣れておきたいんです!」
「そういってくれると助かるよ。じゃあ、木曜日は起きてすぐ向こうだ。よろしく頼む」
青チームのOGが名乗り出てくれて助かった。また青みくるにというのも悪いしな。
「くっくっ、それにしても48万とは驚いたよ。キミが値段はいくらでも構わないと言っていたけれど、僕たちより高額になるとはね。どんな指輪か楽しみだ。僕にもぜひ見せてくれたまえ」

 

「あと、明日から来る男子の日本代表達の出迎えをしたいんだが、俺と古泉が出るわけにはいかない。案内役と夜練について男子の監督に伝えてほしい。練習用体育館に俺たちと男子日本代表チームしか入れない閉鎖空間を張る」
「それならあたしがやるわ!徹底的に捕球の練習をさせればいいわよ!」
「でもハルヒさん、キョンとジョンの二人じゃ……」
「その点についてはさっき有希と確認した。ストレートだけなら意識が30%でもそこまでズレない。鈴木四郎と今泉和樹の催眠をかけて二体の影分身が対応する。キャッチャー用の防具の付け方を説明して欲しいんだが、誰か頼めないか?」
「問題ない。情報結合も含めてわたしがやる」
「しかし、30%の影分身二体となると、告知の方は大丈夫なんですか?」
「ああ、もうパターン化されて飽きていたところだ。今はオーストリアだが、どこに行っても未だにイタリアの事件のことを聞いてくる。今日はヒロインが怒りだして帰るなんて猿芝居をしていたくらいだ。そのくらい精神的にも安定してきているってところか。一応ジョンも警戒してくれているし、これでもう大丈夫だとは思うんだが、やはり上海、香港、台湾あたりが危険だと思っている。イタリアの末端組織とその上を潰したから麻薬の取引ができなくなったと恨んでいるかもしれん」
「そういえば、韓国で手に入れたとかいう麻薬はどうしたんだい?すべて吹き飛ばしてしまったのかい?」
「韓国で手に入れた麻薬ならアホの谷口の家の中に隠してある。何かあればそれで通報して逮捕してもらうまでだ。もしアイツがそれを見つけて自分で使っても構わないと俺は思っている。自他共に認めるズタズタな人生だからな。
それと、青チームは一旦戻って向こうで使っていた携帯を確認しに行った方がいいだろう」
「分かった。キョンにも伝えておく。食べ終わったしキョンと交代してくる」
「じゃあこれで昼は解散だ。午後もよろしく頼む」
『問題ない』

 

 その後、シャンプーから全身マッサージをしにきたOG六人と青OG一人。青みくるは午後に十分堪能したから今日はいいそうだ。本体は相変わらずこっちで全身マッサージを終えた時点で妻をお姫様抱っこで100階へとテレポート。ハルヒ達に見られながらではまだ恥ずかしいからと個室で抱き合っていた。その日の大胆下着とアンスコもコレクションの仲間入りを果たした。翌日訪れた男子日本代表選手も非公開を条件に練習用体育館でスパイクレシーブの練習。古泉も気にしていたが影分身二体でもほとんどズレることもなく青俺、ジョンと四人で投球を続け、その後の試合にすぐに反映されて大差で勝利を収めた。まぁ、そのせいで報道陣が色々と記事を書いたり動き回ったりするのだが、そのたびにトラップに引っ掛かったり、バレーのついでに俺に取材をと試みているやつは敷地内にすら入れなかったりと次第に我が社に入ることのできる奴が減っていた。刻印が入った指輪を受け取り、ジョンの世界での指輪交換も無事に終わった。周りのメンバーが気にしていたのは、どんな指輪かということとどんな文面を刻印に記したか。ピンクサファイアとダイヤモンドが交互に入った指輪。後の部分はプラチナの指輪だ。当たり前ながら両方の世界のOG達から黄色い歓声をあげていた。俺のネックレスにまた一つ指輪が加わった。
「監督や他の選手たちにも見えないようにしてある」
と伝えると、練習中につけていても大丈夫だと分かったせいか、他のメンバーに飛び付いていた。

 

 男子のバレーの世界大会も終わり、ようやく迎えた十月一日。SOS天空スタジアムと、一階からスタジアムまで直結するエレベーターのシートがはがされ、早朝からバタバタとヘリが飛びまわっていた。昨日の夜から青OG三人もこちらの世界で寝泊まりしてこれでOG六人が帰ってくれば全員集合ってところか。社員の入るスペースが無さそうだな。告知から戻ってきたら…と考えていたがまたクジで回すことにするか。月、水、金で出せば社員も文句は言うまい。みくるにまたまわってもらうことにしよう。
朝食開始早々口火を切ったのは青古泉。
「それでは、本日の試合のオーダーを発表します。一番レフト黄有希さん、二番セカンド佐々木さん、三番ピッチャー涼宮さん、四番、ショートハルヒさん、五番ファースト朝比奈さん、六番サード黄佐々木さん、七番キャッチャー黄僕、八番センター有希さん、九番ライト黄朝倉さん、以上ですが、今回催眠を施すのはハルヒさんと黄朝比奈さん、チアガールのOG、そして残りの青チームです。精涼院ハルカはハルヒさん、有希さんはそのまま、佐々木紗貴は佐々木さん、月夜野くるみは黄朝比奈さんになりますので、お間違えの無いようにお願いします。朝倉さんはおでん屋か、三階でバレーの監督たちにおでんと酒を振る舞うことになるでしょう。W僕を除く三人で女子日本代表の夜練に出ていただきますのでよろしくお願いします」
「ということは、あたしが案内役になりそうね。例の景色を見せるのも最初でいい?」
「日の入りも早くなったし、最初で大丈夫だろうが、今日の捕球練習は俺とジョンの二人でよくないか?明日から四人になればいいだろうし、監督だって黄俺が世界各国を回っていると分かっているから大丈夫だろ?でないと180km/h台の玉は投げられないんじゃないか?」
「心配いらん。今日でようやくヨーロッパを回り終えられる。その時間帯はトルコからカナダへ向かう飛行機に乗るところだ。ヒロインと一緒にいるのは10%で十分だ。90%以上こっちに集中していられる。それと今日から食事の支度がさらに大変になる。青OG三人と日本代表と一緒に帰ってくるOG六人分プラスされる。全て青新川さんに任せるのは厳しいだろうし、昼だけなら俺が……と思っているんだが、今後どうなるか分からんし、やるとしたら日本代表のディナーを週に一度くらい不定期だが作ろうかと思っている」
「あんたが負担を抱える必要はないわよ!昼食なら、あたしと有希で作るわ!」
「問題ない。でも今日から楽団員の引っ越しが始める。あなたはそっちにまわって」
「では、わたくしは店舗の方に出向いてまいります。午後は夕食の準備と翌日の朝食の準備に入ります」
「それで、倉庫や店舗の方はどうなんだ?店舗は店長を任せられるような人材はいるのか?」
「いないわけではありませんが、経験不足は否めません。このメンバーの中から誰か一人向かう必要がありそうです。次の店舗はもう建ててありますので、服をおくだけでOPENすることは可能です」
「倉庫はもう鍵も渡して指揮を取る人の給料を社員と同じ扱いにしている。俺も引っ越しの方にまわる」
「ちなみに青古泉、次の店舗は都内だとどこになる?」
「原宿店になりますが、OPENさせるおつもりですか?」
「折角新戦力が加わったんだ。青OG三人と俺の影分身で店舗を開くことが可能だ。とにかく今は人材を集めて少しでも経験を積ませる必要がある。服を並べてシートを外したら一週間後にOPENだ」
 青俺のアラームが鳴り、幸は小学校、青有希が双子を連れて保育園へと向かっていった。
「とりあえず、今日は引っ越しを優先しよう。出迎えは青ハルヒ達で対応してくれ。前にも言ったが、目立ちたがりは午後の練習試合に出てくれて構わない」
「黄キョン先輩、黄私と同じ髪型にしてください!お願いします!」
『私もお願いします!』
「分かった。なら俺はそれが終わってから青OG三人を連れて原宿店に服を並べに行く。他に何かあるか?……無ければこれで解散にする。よろしく頼む」
『問題ない』

 

 青OG四人を呼び、情報結合したユニフォームにドレスチェンジ。
「体格も似てきたから髪型さえ同じにしてしまえば、これで黄チームのOGと入れ替わることが可能だ。すぐに行こう。もし横で見たいのならついてきてもいいぞ」
『絶対、行きます!』
「髪を切っているところを見ている間にデザインが浮かぶかもしれないので」と半ば強引についてきたが、とりあえず佐々木のラボへとテレポート。下層階ではW佐々木が研究に没頭中だ。前から髪を切ってくれと言っていた青OGからスタート。
「首、苦しくないか?」
「大丈夫です」
「『黄私と同じ』って言っていたが、他に細かい要望があれば頭の中でイメージしてくれ。すべて読み取って切り始める」
「分かりました」
伸ばしていた髪を一気に切り落とすと、こっちのOGと大差がない。結婚指輪でしか違いが分からなくなりそうだ。
「切り終わったぞ」
『え!?もう!?』
バックミラーで後ろを確認させて満足気な表情をしていた。シャンプーは毎日のようにやっているし、反応は似たようなもんだ。ブローやマッサージをして終了。
「超気持ち良い!これからは黄キョン先輩に切ってもらいたいです!」
「黄キョン先輩、次、私お願いします!」

 

 三人まで切り終え、本社81階へと戻ると既に黄チームのOG達が席に座っていた。髪型を同じに変えて我が社のユニフォーム姿の三人を見てOG六人とも驚いている。驚いている?違うな。何も言えなくなっている、かな?
「嘘……鏡を見ているみたい」
「私たちもバンダナをつけないと見分けがつかなくなりそう……」
「結婚指輪で区別がつくっていいなぁ…」
結婚指輪で区別がつくと言えばWみくるの区別も付けられるようになった。監督も脚本家もいるし聞いてみるか。
「みくる。ドラマの第二シーズンで髪型変えてみるか?」
『キミはどうしてそんなに突拍子もなく思ったことを口に出すんだい?脚本を変える必要だって出てくるだろう?』
「だから、総監督と脚本家が両方いるときに提案したんだ。脚本を変えなくても第二シーズンからはみくるの髪形も変わったことにでもすればいい。それに脚本ができたとはいえすべてじゃないだろう?これから古泉に切ってもらうシーンを入れたっていいはずだ。また朝倉たちとの組織とのぶつかり合いで、みくるの髪が朝倉のナイフでバッサリ切られたとかな」
『それは面白そうだ。彼女がOKならそういう演出もいいかもしれない』
「えっ?えぇっ?キョン君、それは一体どういうことですか?」
「ドラマも一区切りついたし、もしみくるが髪型を変えようと思っているのならドラマの撮影の一部として切ってもらうのはどうかって話だ。今の髪型を維持するというのなら俺は別に強制したりするわけじゃない」
「とりあえず、あんた達早く席につきなさい!食べるわよ」
『いただきます』
「世界大会に行く以外はずっとここで合宿していたいです!ホテルや宿舎で出されるものより、ハルヒ先輩の料理の方が100倍美味しいです!お風呂もリンスインシャンプーなんてありえないです!」
「他の選手たちの反応はどうだったんですか?」
「監督から伝達されたときは皆喜んでいました!監督も『これで食べ損ったおでんを食べられそうだ』って」
「じゃあ、監督やコーチは夕食って言うより飲みに来たって感じになるのかしら?」
「多分、W涼子先輩が体育館に行ったら監督から直接おでんの件で触れてくると思います!」
「ハルヒさんも黄有希さんもこのあと練習試合に出るみたいだし、片付けが終わったらわたしも行ってみようかしら?黄有希さんのスイッチ要因になれるかどうかは分からないけど……」
「問題ない。あなたのトスにわたし達が合わせるだけ」
「だったら朝倉がそっちに行くまでENOZチームで練習試合をしていたらどうだ?」
「う~ん……一応食材の仕込みの方は午前中に済ませてあるんだけど、正直まだ自信が……」
「私も、有希さんのスイッチ要因として動けるかどうか…」
「まぁ、ENOZのあの痺れるくらいの演奏と同じです。何事も経験ってことでいかがです?それに青OG三人もこっちのOGと入れ替わることができる。他の選手に交じって練習試合に参加させてもらうといい。日本代表用のユニフォームを仕立てる必要があるならいくらでも作ればいい」
「キョン、それは心配ない。私たちが赤のユニフォームを着るだけで大丈夫」
「いいなぁ、みんな頼りがいがあるようになって……そんな中にわたしなんかが入っていけるかどうか…」
「問題ない。黄キョン君の言っていた通り、何事も経験。少しずつ練習を積めば自信もついてくる」
「メンバーが出揃ったのなら早く行きましょ。先に言っておくけど、あたしと有希はコートから出るつもりはないわよ?」
「問題ない。誰が入ってきてもすべてのセットを勝ち取る」
「じゃあ、午後も各担当で宜しく頼む」
『問題ない』

 

 残り一人のシャンプー&カットを終えて、異世界の原宿店に服を並べ、オープン日のシールを張って放置。今日の夜にシートを外せばいいだろう。スカ○ターで試合状況を確認しながら、引っ越し作業へと回っていた。
10階建ての有希や朝倉のマンションと同じ作りの部屋に、女性をなるべく高層階になるようにしながら部屋を埋めていった。誰が何階の何号室になったかをすべて青有希に情報として渡し、エージェントも手伝ってくれたおかげもあり、一日で終わらせることができた。
夕食時、なぜか元気の無い子供たちが気になったが、案の定、監督の方から青朝倉にアプローチがあったらしい。青ハルヒを芸能人チームの出迎え、誘導に残して一路天空スタジアムへ。こっちの世界では、子供たちは小学校に入学するまではあまり出さない方がいい。既にユニフォームに着替え、俺はステルス状態のままスカウターを装着。天空闘技場の様子が81階のTVに映っていた。その頃、告知の方はようやくカナダに向かう機内へ乗り込んだところ。空港へ向かうリムジンの中で夕食は済ませたし、約10時間はヒロインの自宅にいることになりそうだ。
「やっとヨーロッパを制覇できたわね!早く家へ戻りましょ。あなたと一緒に寝かせてほしいわ!」
「ああ、そう考えたらさすがに俺も少し疲れたよ。先に寝てしまったら、すまない」
「いいわよそれくらい!早く行きましょ!」
「ああ、そうしよう」
ヒロインの自宅へテレポートして、ヒロインをドレスチェンジしたところでベッドに横になった。ヒロインが横から抱きついてきて俺もそれに応えたが、もうこの影分身は1%で十分だ。
本社の入口を通った段階でどんな選手が来ているのかサイコメトリーで分かってはいたが、メンバーは黒○ラの頃とほとんど変わらん。しかし、人手が足りなかったんだ。アナウンサーや実況、審判にウグイス嬢まで用意してくれているとはありがたい。こっちはチアガールが11人と、無駄に多いわけなんだが……ウグイス嬢やバレーの審判は出来ても野球の審判となると11人ともできるはずもない。青ハルヒが閉鎖空間の条件を変えて、ここからの最高の景色を堪能させた後、監督の周りに集合した。栄えある第一号にしたんだ。ちゃんとカメラにここからの景色をしっかり押さえたんだろうな?
「打順、ポジションは今朝お伝えした通りです。我々の攻撃は裏ということになりました。圧倒的大差で悔しい思いをさせてやりましょう。こちらの世界でも、海外組まで呼び寄せられるかどうかが勝負の分かれ目です。よろしいですね?」
『問題ない』

 

 案の定、一番にバッターボックスに入ったのは国民的アイドル。おそらくピッチャーもそうだろうな。俺はステルスモードでベンチから観戦。しかし、三階に青朝倉、練習用体育館にジョンと青俺、残り全員ここにいるメンバー……って子供たちと一緒にいられる奴がおらん。丁度いい、本体で99階に行って先にシャワーを浴びてこよう。スカウターを影分身につけたままキリの良いところで同期すればいいだろう。99階にテレポートすると、部屋の照明がついていない?子供たちは……と辺りを透視していると双子のベッドで幸まで一緒になってもう寝ている。さっきも元気が無かったし、一体どうしたんだか……とりあえず、シャワーだけでも浴びてこよう。三者凡退で終わらせてもおかしくない。髪を洗い終えた頃には、バッターボックスに有希が立っていた。湯船に浸かることができなくてもいいから俺が出るまでコールド勝ちで終わらせるなよ……?最も、国民的アイドルがもう一回と言ってくるのが目に見えているけどな。その後もバッターボックスに次のバッターが入る度に同期され、青佐々木が有希の盗塁。逆回転のかかったバントで、見事にランナー一、三塁という絶好のチャンスを作り上げた。続く青ハルヒはミスサブマリンの二つ名を挽回したからと、ホームランはハルヒに譲るとばかりにツーベースヒットを放ち、有希が何事もなくホームベースを踏んだ。ランナー二、三塁。それを受けてハルヒがものの見事に初球ホームラン。青みくるに出番が回ってきたところで風呂から上がりベンチへと戻った。
「青有希、子供たち三人とも99階のベッドで寝ていたが何かあったのか?」
「小学校や保育園から戻ってきて、後から上がってきたハルヒさんや黄わたしのユニフォーム姿を見たら、バレーの試合をしていることがバレたみたい。明日から練習にも試合にも出たいって我儘を言い出して……」
「前に確認していた通りか。なら、ジョンの世界でも練習させないことにしよう。今日は俺も久しぶりに寝られそうだからな」
「そんなに寝てないの?」
「ヨーロッパばっかりまわっていてこっちが夜だと向こうはほとんど昼の状態。行けないことは無いが、それでも精々一時間が限度ってところだ。食事や弁当の準備まであったからな」
「それなのにこっちの会議にまで出るなんて……」
「影分身を使うようになってから何%でどのくらいのことができるのか色々と試している最中だ。食事の支度も青新川さんがいるから任せて入るが、それでも人数が多すぎる。影分身で補助できなくもないが、俺や古泉、青ハルヒがやると青新川さんに逆に失礼にあたる。ハルヒや有希が昼食を作ると言ってくれて助かったよ」
「そう………誰か別の人が手伝えるといいんだけど…あっ、わたしの番みたい。行ってくる」
青みくる、佐々木と順調に出塁して古泉がホームラン。青有希の後は朝倉と有希のバックスクリーン直撃弾が二連発になりそうだ。ファッション雑誌のモデルがバンドだけでなく野球でも超一流となれば、番組のタイトル通り世界が仰天するだろうな。俺の予想通り、朝倉、有希がバックスクリーン直撃弾を放ち、青佐々木が塁に出ると、「今度はあたしにも打たせなさい!」とばかりに青ハルヒが本塁打を放ち、ハルヒが止めのソロホームランで俺たちのコールド勝ちが確定した。

 

「嘘~~~~~~一番から九番まで全員に俺の球打たれたってこと!?」
「中○君、俺たち全然仕事させてもらってないんだけど!?せめて一回だけでいいから打席に立たせてよ!こんなボロ負けするために来たんじゃないんだからさぁ!」
今日はユニフォーム姿だが、普段は七分丈で番組に出演している芸人がいつもの調子で大声を出していた。
「いや~~~でもあのアンダースローはそう簡単には打てないよ。涼宮さん、実際に体験させてもらってもいい?」
「大丈夫です。それより、丁度キョンも戻ってきたので、中○さん180km/h投球打ってみませんか?」
「世界回って告知に行ってるはずじゃないの!?」
「今回は内緒で戻って来たんです。そこまで時間はいられませんけど」
「皆、ごめん。アンダースローの前に180km/h投球を俺に打たせて」
ようやく出番らしいな。これが終わればチアガールの出番も終了だ。先に髪と身体を洗ってしまおう。以前告知で見せたときと同様、一球目でキャッチャーを務めていた芸能人が逃げるだろうな。後ろに閉鎖空間の壁を作ってマウンドに立った。バッターボックスには国民的アイドル。ピッチャーを代わっただけで他のポジションには芸能人チームがそのままついていた。ハルヒの力を循環させると構えたミットを狙って第一球を投げた。すぐ後ろの閉鎖空間にあたって体勢は若干崩れた程度。
「ちょっ、中○さん、俺こんな球受けられないよ!」
「無理無理無理。バットを振ろうと思ったらミットの中に収まっているんだもん。今の球、球速は?」
「ひゃ、184km/hです!」
『184km/h――――――――――――――――――!?』
「ホントに世界が仰天するよ、こんな球!」
「中○君、俺たちも後ろから見させてくれない!?」
各ポジションにいた芸能人たちがキャッチャーの後ろに集まるものの、キャッチャーは受けたくないの一点張り。告知で回っていた時とは違い、今はメンバーが揃っている。有希を呼んでキャッチャー交代。
「え~~~~~長門さん、あの球捕れるの!?」
「問題ない」
「さらりと言ってのけるところがまた凄いな……よ~し次は絶対バットを振ってやる!」

 

 国民的アイドルがバットを構えて第二球。宣言通りバットを振ったが、見事に空振り。振った頃には既に有希のミットに収まっていた。後ろで見ていた他の芸能人たちも唖然として何も言えなくなっていた。
「球速は?」
「187km/hです!」
「187km/h……!?メジャーリーガーでもこんな球打てるかどうか分からないですよ」
「中○君、投げた瞬間にバットを振るくらいのつもりでいかないと当たらないよ!?」
「俺も今そう考えていたとこ。最後の一球、絶対にバットに当ててみせる!」
これが最後の一球だ。あてられるものなら当ててみやがれ!ボールをリリースした瞬間にバットを振ったが、空を切るだけで終わり三振で幕を閉じた。三球目の球速は185km/hとの事。
「じゃあ、俺はそろそろ戻らないといけないので、これで失礼します」
『もうチアガールは必要ないだろう。81階で青新川さんが打ち上げのための料理を作ってくれているから、それまでに全身マッサージをしてしまおうぜ』
『問題ない』
「次は絶対打ってやるからな――――!!」
「ええ、いつでもお待ちしています!」

 
 

…To be continued