500年後からの来訪者After Future5-10(163-39)

Last-modified: 2016-10-17 (月) 14:58:51

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future5-10163-39氏

作品

ようやく刻印が入りOGと二人で指輪を取りにポルシェを走らせていた最中、会話の流れからウェディングドレスを着せて戻ってくると、記念にと思って撮影した写真に盛り上がっていたOG達を見て、ハルヒが嫉妬。シャミセンと最初に出会った場所でシャミセンの孫を発見し、聖地巡礼どころではなくなってしまったからなのだが、青ハルヒやみくる達もウェディングドレス姿でドライブに行きたいという話になり、午後は青みくると結婚式を行った会場までドライブすることになった。どうせならもう一回指輪の交換と誓いの口づけをしてから戻りたいもんだ。

 

 運転席に座った俺の上に青みくるを乗せてポルシェを運転すること数分、別人に見えているとはいえ、青みくるもどうやら恥ずかしがっているようだ。すれ違う車の運転手の視線が俺たちに向けばそうなるか。俺に抱きついたまま一向に顔を見せる気配がない。
「みくるもいつまで恥ずかしがっているんだ?催眠をかけて別人になっているんだからみくるだとバレるはずがないだろう。周りからの視線も、ポルシェに乗った結婚式を終えたばかりのカップルが羨ましいだけだ。ウェディングドレス姿でキーペンダントをつけたみくるをもっと見せてくれないか?このままじゃ写真撮影だって出来ないぞ」
「催眠で別人に見えていても、周りから見られているのは恥ずかしくて……」
「そんなことを言ったら、青古泉から散々視線を浴び続けた青ハルヒはどうなるんだ?」
「涼宮さんの場合は古泉君一人だけですけど、今のわたしは全く知らない人たちの視線を浴びて……」
「じゃあ、この前のコンサートのアンコール曲はどうなる。全く知らない人達の視線を浴びていただろう?ドレスだって今着ているものとほとんど変わらん」
「でも、恥ずかしいですよぅ……」
「仕方が無い。閉鎖空間で周りの車を除外しよう。それなら恥ずかしくないだろ?みくるが楽しめなきゃ、ドライブの意味がないからな」
「そうさせてください」
指を鳴らして閉鎖空間を展開。後ろの車にどう見えていようと関係ない。周りを確認してようやく一安心したみくるが身体を起こす。やっと青みくるの笑顔が見ることができた。風で顔もヴェールで隠れていることもないし、今のうちに撮影を済ませておくか。
「時間の都合上、現地に行って指輪の交換と誓いの口づけをしたら帰ってくることになるが、それでもいいか?子供たちにもシャミセンのことを説明しなきゃいかん。もっとも、その前に練習試合に出たいなんて言い出しそうだけどな。それはそれで、店舗組もいることだし夕食のときに一緒に説明するだけだ」
「えっ!?誓いの口づけって、あの教会に行くだけじゃないんですか!?」
「当たり前だ。閉鎖空間で貸し切れば、土日だろうが関係ない。俺たちだけの結婚式をするぞ」
「キョン君、そこまで考えてくれていたんですね!嬉しいです!てっきり教会に行くだけだと思っていました」
頭を俺の胸に預けるように倒れこんできた。ずっとこのままでいたいという青みくるの気持ちがサイコメトリーしなくとも表情だけで伝わってくる。俺も同じ気持ちだよ、みくる。

 

 貸し切りにしたチャペルで指輪の交換と誓いの口づけを終えて戻ってくると、ビラ配り組が既に戻っており、青俺の話によると、子供たちはシャミセンにも気付かず、すぐに試合に行ったらしい。信号待ちまでしている暇はなさそうだ。ドレスチェンジを終えたみくるのメイクを落として髪留めをすべて外すと、ペンダントを胸の谷間にしまっていた。
「何満足そうな顔をしているのよ、みくるちゃん!何してきたのか全部吐きなさい!」
「青みくるにも記念撮影した写真を渡したかったし、丁度いい。全部見せてやるよ」
青みくるの席の前にカメラで撮った写真が数枚情報結合で現れた。周りの視線に恥ずかしさを隠しきれずに抱きついていたときの写真、俺の胸に頭を預けていたときの写真、チャペルに着いて入口からゆっくりと進んでいる写真、指輪を交換している写真、誓いの口づけを交わした写真。
「え――――っ!!キョン君こんなところ撮影していたんですか!?」
「朝比奈さんが満足そうにしてたのが良く分かった。でも記念になりそう」
「キョン、あたしにもみくるちゃんと同じことしたい!」
「それはいいが、ピアスを買いに行く時とはまた別な。青みくるが周囲からの視線が恥ずかしいって言うから、途中から閉鎖空間を展開したんだが、それでも教会に行ってチャペルでたったこれだけのことをしてきてこの時間帯になるんだ。午前中じゃ、とてもじゃないが昼食まで間に合いそうにない。それでもいいか?」
「そんなの、いいに決まっているじゃない!あんたと二回もドライブできるってことでしょ?十分よ!」
「ということは、俺たちも午後に出発しないといけなくなりそうだ。どうする?有希。俺たちならそこまで急ぐことでもない。行こうと思えばいつでもいけるし、ハルヒや佐々木たちに譲ってもいいか?」
「うん、わたしもそれでいい。でも、黄キョン君みたいに運転しながら撮影できる?」
「『何事も修錬』だと何度も聞かされたからな。やってみて駄目だったら別の場所にドライブに行けばいい」
「100階に飾るのは恥ずかしいですし、自室に飾ることにします!」
「それで、青ハルヒはどんなピアスにするか決まったのか?」
「当ったり前よ!行く店も決めてあるから明日行くわよ!」
「だったら午後の方がいい。午前中は異世界でのビラ配りだ。おまえの顔が全国に知れ渡っている以上、行かないわけにはいくまい。それにこっちのみくるともチャペルとは別に行きたいところがあるしな」
「ほぇ?キョン君、わたしと行きたいところってどこのことですか?」
「まぁ、行ってみてのお楽しみってことにしておいてくれ」

 

 続々とメンバーが81階に集まる中、試合を終えたハルヒ達が戻ってきた。
『キョンパパ、おかえり!』
「おう、ただいま。二人とも髪の毛もユニフォームも汗でベタベタだな。ユニフォーム以外の練習着も作ることにしよう。色を逆転させたユニフォームと一緒にな。あとでちゃんとお風呂に入ってしっかり洗うんだぞ?」
『問題ない!』
三人の汗を磁場で吸い取って、ユニフォームも乾燥。夕食の後、風呂に入る前に脱げばいいだろ。
「キョンパパ、あれなあに?猫?」
「そうだ。ハルヒと二人で見つけてきたんだ。アイツはな、シャミセンの孫だ」
『シャミセンの……まご?まごってなあに?』
「俺とハルヒは二人のパパとママだ。それで、俺のパパとママは二人のお爺ちゃんとお婆ちゃんだ」
『おじいちゃんとおばあちゃんがどうかしたの?』
「有希お姉ちゃんは二人のお姉ちゃんだ。有希お姉ちゃんから見たら二人は何になるんだったか覚えているか?」
『妹!わたし達姉妹!』
「そうだ。そして、お爺ちゃんとお婆ちゃんから見たら二人は孫になる」
『わたし達、まご?』
「そう。だから、アイツのお爺ちゃんがシャミセンになる。名前もお爺ちゃんと同じでいいらしいから『シャミセン』と呼んでくれ。一緒に遊んでくれるだろうが、踏んだりするとどうなるか分かってるな?」
『猫踏んじゃったの?』
「踏んだらどうなるか前にも話しただろう?」
『キョンパパ、わたし、猫踏まない』

 

 子供たちへの説明を終えたところで夕食。
「シャミセン、おまえの分の夕食だ。吃驚するくらい美味いぞ!」
まだ眠っているのかと思いきや、目を瞑っただけで起きていた。よっぽど気に入ったらしいな。
『お腹いっぱいで寝ちゃったから、そんなにお腹空いていないんだけど、いい匂いだね。食べてみようかな』
『キョンパパ、今のシャミセンの声?』
「そうだ。三人よりも年上なんだぞ?小学六年生くらいかな」
『小学六年生ってなあに?』
「来年の四月から二人も小学生になる。二人の誕生日にランドセルを買っただろう?小学校で一番大きいのが小学六年生だ」
『何コレ!?お昼ご飯も美味しかったけど、さっきよりもっと美味しくて本当に吃驚したよ!』
「おまえの爺ちゃんの長生きの秘訣がそれだ。どうする?ここに住むか?今までいた場所に帰るか?」
『ここに住んだらこんなに美味しいご飯が食べられるの?』
「ああ、毎日な」
『僕、ここに住んでもいいかい?』
「勿論だ」
青新川さんの料理を食べるのに夢中になっていた。しかし、コイツの飲み物はどうしたものか……シャミセンが俺の実家にいた頃は毎日牛乳だったが……後で聞いてみよう。

 

「それにしても、本当に口調が国木田だな。声変わりしていないせいもあってか声までそっくりだ」
「くっくっ、それについては僕も認めるよ。どちらの世界でも構わない。キョン、彼を連れてきてくれないかい?」
「そういや成人式以来会ってないな。青国木田の方は七月に会ったばかりだが……って、俺が映画撮影に行っている間、青国木田と話していたんじゃないのか?今何をしているかとか」
「僕たちのことを彼に説明するだけで時間が過ぎてしまったんだ。キミの映画撮影のことも含めてね」
「有希の部屋の掃除ついでにアイツに連絡してみるか。本人は似ていないと言い張るだろうけどな」
しかし、青国木田では映画撮影のことは知らないからな……こっちの国木田にシャミセンの孫を見つけたと伝えた方が面白いと感じるかもしれん。俺も後で連絡を取ってみよう。今日の夜練は一体でいい。
『あ~~美味しかった!ご馳走様!』
『早っ!!』
「もう食べ終わったんですか!?」
「新川さんの料理を初めて食べると大体の奴は無我夢中で食べる。猫でもそれは変わらんらしい。ところでおまえ、飲み物は今までどうしてた?」
『みんなは白いのを飲んでいたけど、僕には合わなくてお腹が痛くなっていたんだ。だから水を飲むようにしてた』
「やはり餌を与えていた人間がいたようだ。しかし、そうなると牛乳じゃダメってことになるな。とりあえずミネラルウォーターで様子をみるか」
2Lのミネラルウォーターを情報結合。小鉢皿に少量入れてシャミセンの前に差し出してみると、ペロペロと舐めている。これでしばらくは大丈夫のようだ。何かあれば話しかけてくるだろう。
「どうだ?飲み物はこれで大丈夫そうか?量が少なかったりしたら教えてくれ」
『お腹もいっぱいだし、これで丁度いいくらいだよ。ありがとう』

 

 夕食も済んで子供たちがシャミセンと一緒に遊んでいた……というより子供たちから逃げていた。『他人の嫌がることはするな』と注意はしたが、人じゃなくて猫だということに後から気が付いた。みくるがシャミセンの嬉しがるところを探って子供たちに教えていた。W佐々木もその様子を見つめている。俺の家に来ていたときと同様、自分も触ってみたいようだ。結局、国木田とは連絡は取れたものの、既に妻子持ちで猫どころか赤ん坊をあやすので精一杯らしい。会話を録音しておいたから明日にでも青俺に話してみよう。佐々木たちからのお墨付きがあったことだしな。こっちも双子を風呂に入れないとな。自分の子供には自分で身体を洗えるようになれと言っておきながら、俺の方はみくる達に全身を洗ってもらっているという妙な構図ができあがってしまった。Give and Take と言えば聞こえはいいが、客観的に見れば、従順なメイドが二人できた光景に映るかもしれない。またハルヒが妬いたりしなければいいんだが……今日の担当は青みくる。青みくるの全身マッサージを終えると、今度は俺が青みくるのシャンプーから全身マッサージまでを受ける番。全身マッサージを終えたハルヒが99階に降りると、青俺と青有希もそれに倣って自分のフロアに降りた。慣れてきたとはいえ、やはり恥ずかしいらしい。そのうち98階にシャンプー台とエアマットを情報結合するかもしれん。しかし、みくる達からマッサージを受けるのはいいが、それが本体だと周り全員にバレてしまうことに今気が付いた。影分身を洗ってもらって気分だけでもと思ったが、本体は風呂に入っていないことになる。これで二人からマッサージしてもらったし、当分はやめておくことにしよう。さて、有希も今日は最初から来ているし、W佐々木も抱いて欲しいと言ってきたようだ。今日はいつもと違った方法で妻達を抱くことにしよう。影分身が妻達から離れると、閉鎖空間を解除。これでベッドに寝ている全員に声が通る。

 

「キョン君、どうかしたんですか?」
「いや、たまには刺激的なものがあってもいいかと思ったんだ。今日はちょっと趣向を変えてやってみる。かなり現実離れしているから気分が悪くなるかもしれんが……試しに一回だけやってもいいか?」
「一体何をするっていうのよ、あんた!」
みくる達は何をされても構わないと表情で訴えかけてきた。佐々木たちも良くは分からないけれど面白そうだという表情だ。有希と青ハルヒは何でもOKのようだしやってみるか。六人を浮かせて、体内の不要物をすべてアホの谷口の胃の中へとテレポート。影分身の指が伸びて六人の両手首や両膝を拘束すると、グロテスクな触手に早変わりした。残りの触手で胸や秘部を刺激していく。最初は抵抗しているようだったが、次第に刺激に身を任せるようになっていた。準備が整った秘部を貫くと、六人が一斉に声を荒げた。潤滑液を塗った触手が後ろを責め、出入りを繰り返しながら奥へと進んでいく。佐々木を除く五人には、秘部のさらに奥にある小さな穴へと触手が侵入を試みている。妊娠できなくとも、人間と同じように作られたヒューマノイドインターフェース。性欲もあれば当然子宮もある。小さな穴から触手が子宮内に侵入して暴れ始めた。後ろの方もテレポートした不要物があった一番奥にまで侵攻して出入りを繰り返している。一気に引き抜かれたときの青ハルヒの表情が、これまで体感したことの無い刺激だということを証明していた。青OGも混ぜればよかったかもしれん。それともブラインドフィールドの中で個別にやってみるか?六人を責め立てること数分、それぞれが何度も痙攣と弛緩を繰り返したところで触手の動きを止めた。
「漫画の世界観を実写化してみたんだが……どんな感じだ?」
「あんた……こんな…漫画…なんて…一体……どこに…あるって……いうのよ…」
「中学生の男子あたりが興味を示すようなものだ。それを応用してみた。六人とも良い表情をしていたから俺にとっては壮観だったんだが……」
「問題ない。たまにはこういうのも刺激的。でもあなたに抱かれている感じが全くしない」
「同感だね。キミに抱かれている気がしない上に、僕には刺激が強すぎるよ」
「でも、こんなに良いなんて思いませんでした」
「そうだね、かなり現実離れしていたけれど、こんな体験したのは初めてだよ」
「どうやら、今日はここまでにした方が良さそうだ。だが、たまにはこういうのも悪くないだろ?」
『問題ない』

 

 六人をベッドに寝かせて影分身を解除。まだみくる達は息を荒くしているが、しばらくすれば落ち着くだろう。再度五体の影分身を出現させていつものように抱きしめた。本体は今日は青みくるについた。ハルヒやOGの方はまだ続けているようだな。こっちが早すぎただけか。
「みくる、ちょっと相談したいことがあるんだが、いいか?」
「キョン君、相談って何ですか?」
「昨日と今日でみくる達にシャンプーから全身マッサージまですべてやってもらって、癒しの時間に浸ることができたんだが、どちらかのみくるが洗っている俺が本体だとしばらくもしないうちにバレてしまいそうでな。かといって影分身にやってもらっても、気分だけは伝わってくるが、それじゃ本体は風呂に入っていないってことになる。双子も風呂に入れないといけないし、みくる達に洗ってもらうのは、たまにってことにしてもらえないか?」
「わたしは毎日でもキョン君の身体を洗ってあげたいくらいですけど、そうですね。それじゃ、ハルヒさんに怒られそうです。いつでも待っていますから、キョン君の好きなときに声をかけてください」
「ああ、ありがとう。みくる」
まぁ、状況としては今と似たようなもんだが、告知が終わったら双子と一緒に本体が風呂に入り、残りの九割で夜練に参加することになりそうだ。九割もあれば変化球も投げられるだろう。鈴木四郎と今泉和樹は仕事の方に戻ったと伝えればいい。明日のことを考えると、昼食の準備とディナーの仕込みは今夜中に終わらせておく必要がありそうだ。99階でハルヒが寝ているし、今日からは81階……いや、青新川さんがくることを考えると、99階の方がいいか。ブラインドフィールド、遮音膜、遮臭膜の三点セットで調理を開始した。

 

 翌朝、青OG達のヘアメイクに納得した青佐々木を連れてピアスを買いに出かけた。昨日と同様花嫁を俺の太股に乗せて運転していた。青みくると同様、恥ずかしがるかと思ったが、そうでもなかったな。しばらく運転をして目的地へと到着。そこまで急ぐこともないだろうにと思っていたのだが、俺の腕を引っ張って目的のピアスを見つけて指差した。値段は有希のピアスよりちょっと高い程度。おそらく有希と同じ答えが返ってくるだろうから聞かないでおこう。アクアマリンスターリングシルバーピアス、お値段62640円也。互いの耳にピアスをつけて店を後にした。来週にでもチャペルに連れて行こう。昼食でまたもやシャミセンが驚いていたが、その反応で間違いはない。これからも美味しいご飯が食べられると告げると大喜びしていた。
「ところで、ハルヒ。双子も一緒にあのチャペルまで行こうと思っているんだが、困ったことになった」
「双子を連れて教会に行くだけなのにどうして困るのよ!?」
「土日に双子を連れて行こうと思っていたんだが、午前中だと昼食までに帰って来られないし、ハルヒや幸も含めて練習試合に出たいと言い出すだろう。いくつか選択肢はあるんだが、おまえがどうしたいかまず知りたい」
「じゃあ、午前中から向かって、お昼になったらポルシェを止めて戻ってくればいいわよ。チャペルでやることをやったら戻ってくればいいわ!」
「なら、明日は楽団の練習もあるし、日曜でいいな?」
「全速力じゃなきゃ承知しないわよ!」
「分かってるって」
 午後から佐々木を連れて同じくピアスを買いに二人でデート。二人とも審査基準は厳しくするようなことを口にしていたが、一回で満足のいくものになったらしい。佐々木が渡してきた情報によると、青佐々木とは店が違うようだが、はてさてどんなピアスを選んだんだか。店内に入ると青佐々木と同じく俺が引っ張られる形になった。早く二人でピアスをつけたいってことなんだろう。ダイヤモンドをあしらったスタックピアスに残りは18Kホワイトゴールド66万円也。二人とも俺が二つ身につけることを考えて選んでくれたらしい。こちらも互いにピアスをつけて店を出た。

 

 今夜のディナーの仕込みは古泉の影分身の手に渡り、あとはサイコメトリーしてくれれば問題ない。今日は夜練が無いから早めにシャンプーから全身マッサージまですべてやってしまえそうだが、例の特番も確認しないとな。俺たちにとって気分の悪いものには変わりないが、解雇の他にどんな判決が下されたのか見ておく必要がある。それから……本社前の報道陣だ。特番の前に排除しておかないとまた明日増えることになりかねない。ステルスで背後を取ると、日本語で書かれた文面を一番上に記載して報道陣に数枚投げつけた。11カ国の言語で『どうやら本当に死にたいらしいな。これ以上俺たちの邪魔をするな!』と書かれた文面を確認させると、カメラ等の機材をすべて破壊。五人に銃弾を撃ちこんで、ただの脅しではないと痛感してもらおう。案の定、倒れた五人を誰も助けようとする者はおらず、パトカーと救急車のサイレンだけが鳴っていた。結局、その程度の奴等だってことだ。
「シャミセン、夕ご飯できたぞ。……シャミセン?」
『……ん?ああ、もうご飯の時間かい?ちょっと昨日は寝不足だったんだ』
「眠れなかった?住むところが変わって寝付けなかったのか?」
『爺ちゃんの毛布もあってすぐに眠れたんだけど……音がうるさくて眼が覚めちゃったんだ』
『音!?』
「ああ、青新川さんが朝ご飯の準備をしてたからか。なら、料理を作る音や皿の音は一切届かないようにしよう」
『そんなことができるのかい?』
「心配いらん。何ならこの後の片付け作業を見ていると良い。皿の音が聞こえてこないはずだ」
逆遮音膜より閉鎖空間で対応した方がいいな。シャミセンに提示した条件の閉鎖空間で囲んでおいた。ミネラルウォーターを料理と一緒に置くと、所々で水を飲みながら青新川さんの料理に夢中になっていた。

 

「しかし、ホントに声も口調も国木田そっくりだな。アイツから連絡が来ているか後で見に行ってみるか」
「くっくっ、その必要はない。既にこっちのキョンが国木田君に連絡を取っている。彼も子供の世話で忙しいみたいだけれど、キョンの携帯に彼の声が録音されているからキミも確認してみたらどうだい?」
青俺からのアイコンタクトを受けて録音した音声を流すと青俺も納得の表情だ。
「確かに国木田ならアホの谷口と違って結婚していたとしてもおかしくはないな。携帯を確認していなかった俺にも非はあるものの、黄俺が催眠をかけなければ今頃アイツは牢獄の中だろう」
「それを言うならわたし達も一緒。キョンが悪いわけじゃない」
「そうですね。キョン君がそこまで考えることもありません」
「しかし、朝比奈さんは鶴屋さんとテレパシーで連絡をとっているからいいとして、朝倉は携帯を確認しに行かないで大丈夫なのか?他のメンバーは確認する必要もないだろうが……」
「ちょっと、青キョン!それどういう意味よ!?」
「そのままの意味だ。ハルヒに連絡しようとするのは俺たち以外におらん。同じ理由で古泉もだ。OG達が今でさえ古泉に対してあれだけのレッテルを張っている以上、同学年から来るわけが無い。朝比奈さんは鶴屋さんを除けば、あとは他の男からの誘いのメールくらいだから無視して構わないだろうし、佐々木も同じ理由で無視して構わない。休み時間も部活中もゲーム三昧だった有希に声をかける奴なんて俺と朝倉くらいだ」
「くっくっ、どうやら認めるしかなさそうだ。キミの言う通り、僕が携帯を確認しに行ったところで重要なものはほとんどないだろうね」
「雑談になってきたようだから、我々から報告したいことがあるんだが、いいかね?」

 

 圭一さんの発言を受けて空気ががらりと変わった。しかし、『我々』ということは異世界の方も何かあったのか?
「どちらも朗報になるだろうが、まず一つ目だ。彼から再戦の申し込みが届いた。時間は明後日の午後七時から天空スタジアムで勝負がしたいそうだ。TV局は日テレだそうだから、それ以外の局の人間は閉鎖空間で制限できるだろう。プロ野球選手もチームの中に何人も入っているらしいんだが、どうだね?」
『面白いじゃない!』
「くっくっ、このところストレス続きだったからね。彼女たちのそのセリフも久しぶりに聞いた気がするよ。今夜から野球の練習ってことでいいかい?」
『問題ない』
『じゃあ、鶴屋さんにも連絡しておきますね』
「くっくっ、これで年越しパーティの前に例の投球が放映されそうだね。アメリカでの映画の方も順調のようだし、アカデミー賞やゴールデングローブ賞もそうだけど、キミはギネス記録まで取るつもりかい?」
『アカデミー賞!?』
「ジョンの話だと、いまのところ全米で週間興行収入第一位、週刊映画ランキング二週連続第一位だそうだが、そのくらいなら他の映画だってこのくらいの記録を残していたとしてもおかしくない。アカデミー賞までにはならないんじゃないか?それに、ギネス記録を取ると報道陣がまたうるさそうだ。元々反則的な技なんだから記録に載せる必要はないだろう。あくまでパフォーマンスとして見せるだけだ」
『黄キョン先輩の映画、今度見せてください!』
「あれ?見せてなかったか?有希がDVDを全員にジャケット付きで配っていただろ?」
「それは披露試写会の後。青チームのOG達とはまだ会っていないはず。DVDを渡したのは、過去のわたし達」
「なら69階で今度見ることにしよう。どうせなら巨大スクリーンの方がいいだろう。今日は例の特番があるし、後日になるかな。この後、二人は仕事に戻らないといけないんだろう?」
『はい!それでお願いします!』

 

「それで、二つ目の朗報って何ですか?」
「今度はこちらからだ。CMの依頼が二本届いた。一つは朝比奈さん、もう一つは涼宮さんに依頼がきている」
「この時期にくるCMの依頼って……?」
「涼宮さんの方はアンダースローを投げてもらいたいそうだ。ボールが画面にぶつかった瞬間に宣伝内容を入れるらしい。朝比奈さんの方は……ちょっと私も説明しづらいんだが……」
「以前、僕に依頼がきたものと同じじゃないのかい?あのときはこっちの圭一さんも言いにくそうにしていたからね。朝倉さんが代わりに説明してた覚えがあるよ。実際に使うわけじゃないし、僕のときと同じなら、パジャマ姿で撮影するんじゃないかい?青朝比奈さんに見てもらった方が早そうだ」
青みくるが佐々木の一言を機に青圭一さんのメモを見る。確認したところで表情が明るくなった。予想通りか。
「黄佐々木さんの言っていた内容で間違いありません。涼宮さんの場合はユニフォームで良いと思いますけど、わたしの方はこっちの世界でのCMと同じ条件になりそうですね!」
「こちらと同じ条件というのは何のことだね?」
「CMで撮影する衣装はすべてこちらで用意するというものだ。我が社はファッション会社だからね。これまでもその条件でCM撮影をしていた。異世界支部建設にはまだ至ってないが、そのくらいの条件なら通るはずだ」
「アンダースローじゃ青ハルヒでないとダメだな。それに野球の件も監督に伝えないといけない。こっちの鶴屋さんは最近ベンチで見ていることが多いからな。メンバーに入れてもらいたい。今日、明日の練習で有希や朝倉の超光速送球をキャッチできるならキャッチャーを今回はこっちの鶴屋さんにしてもいいだろう。よし、じゃあ交代するところは交代して解散にしよう。青OGは六人揃ったら一階で無料コーディネートな。前に話していたカシミヤ100%のコー……あっ!!」

 

「急に大声を出さないでよ!カシミヤのコートがどうしたのよ、あんた!」
おまえがそれを言える立場かと言いたいところだが、今はそれどころじゃない。
「こっちの世界で初めてカシミヤ100%を出したときのことを思い出してみろ!」
『あ――――――――――-っ!!』
「先輩!カシミヤ100%のコートがどうかしたんですか!?」
「週刊誌でカシミヤ100%のコートは偽りだと出鱈目を記事にした奴等がいたんだよ。それに便乗したところもあったくらいだ。しばらくもしないうちに異世界のオフィスが大変なことになる」
「しかしそれなら、対応策を立てて回避できるんじゃないのかね?」
「対応策はあるが、どこでやるかが問題だ。こっちの世界では本社一階に報道陣を集めて確認させたが、報道陣が入りきるほど店舗は広くない」
「いいじゃない、原宿店で。店の前で確認させればいいわよ!報道陣に紛れてコートを持ち逃げしようとする奴がいたとしても、あんたの閉鎖空間でいくらでも対応ができるじゃない!」
「決まりのようね。今度は便乗した会社の資金も奪ってやろうかしら?」
「ああ、異世界の方でも同じ会社が便乗してきたら、今度はすべて奪ってやるよ。とりあえず、青OGは六人揃った段階で一階にきてくれ。カシミヤのコートとそれに合ったコーディネートをする」
『問題ない!』
本体は双子と風呂の方に出向き、影分身を残してW古泉と青ハルヒ、青朝倉が戻って来るのを待った。青チームの森さん、裕さんも含めて、戻ってきた全員に夕食で上がった議題を話した。
「いい度胸してるじゃない!便乗した奴も全部潰すわよ!」
「ようやくお二人に依頼が届きましたか。僕も試合のメンバーを考え直すことにします」
「しかし、こちらの世界であの事件が起きた際に、異世界の方の資金をすべて強奪していませんでしたか?同じ会社が未だに存続しているとは思えないのですが」
「ああ、あのとき異世界で百億弱を奪っておいたのが今になって効果が現れた。あの会社のある場所に出向いて確認してくる。それだけの時間は十分にあるからな。その分ジョンの世界で野球の練習に励んでいてくれ」
「了解しました」

 

颯爽と戻ってきた青OG二人を連れて本店へと移動。カシミヤ100%はコートだけじゃないからな。全品カシミヤでも構わないくらいだ。値札を切って満足気な表情を見せたところで69階へとテレポートした。こういうところでも使い慣れておかないと上達しないからな。運動は毎日ちゃんとやっているし、太ることはないだろう。69階や100階で、いつものシャンプーから全身マッサージまでをそれぞれでやっているところで時刻は九時。全員の目の前にモニターを出して、俺もスカウターでチャンネルを切り替える。某番組のセットそのまんまだな。確かに日テレで裁判をするならこのセットが一番ふさわしい。しばしの間をおいてタイトルが表示された。『中○正広の行○のできる法律相談所スペシャル』って、ほとんどそのまんまかよ。
ゲストは事前に聞いていた通り大御所だらけ。SOS団やENOZがお世話になっている某Music番組の名司会者や雑巾をぐるぐるに巻いたようなスカーフがトレードマークのタレント、軽く1000万円は超えるであろう指輪やドレスを着ている婦人、クシャミが特徴的な往年の大御所芸人、トーク番組ではお馴染みの、娘も芸能活動をしているお笑いタレント、国民的アイドルと以前音楽番組でコンビを組んでいた某芸能事務所社長。このセットではお馴染みのチリチリパーマ芸人、この前俺たちとの試合を放送していた番組でコンビを組んでいる芸人など、あの短期間でよくここまで揃えたなというメンツが揃っていた。
「さぁ!というわけで某番組のセットをお借りしまして、今日はお忙しい中集まってもらって皆様本当にありがとうございます」
「いや~でも、中○君さぁ、集まって当然じゃないの?あれは許せないよ。全局、全新聞社でしょ?今このスタジオにいる人間だってもう信用できないでしょ。どんな影口叩かれているか分からないもん、俺」
「ちなみにどうしてこの局だったのか教えてくれないか?このセットがあるからか?」
「あら、ヤダ、私もそれが気になっていたのよ。どうして?」
「正直、僕もどこでもよかったんです。あの連中に制裁を加えられるのならどこでも。たまたま、最初に僕にアプローチしてきたのがこの局だっただけです。それならこのセットが使えるんじゃないかとTV局側が用意したに過ぎません」
「ってことはさぁ、他の局からもアプローチがあったってこと?」
「全TV局から僕にアプローチがありました。でもね、自局の人間が映ってでも、少しでもいいから自局の評判を取り戻したいだけっていうのが良く分かりました。ただのご機嫌取りだって。だって、そうでもなきゃ、SOS団からのアプローチが僕のところまで届かないなんてありえないっすよ。番組収録の内容が、僕がかき集めたチームとSOS団の試合ならOKだって全部の局に連絡が来ているのに、僕がそれ知ったの、あのVTRが流れた後なんですもん」
おいおい、こんな爆弾発言、編集でカットしなくていいのか?
『カットしてしまえば非難を浴びるのはこの局だ。編集にも立ち会っているはずだ』
なるほど、そういうことか。
「それにしてもこれは酷いよね。今回は中○君のことについてだけど、自分が言われているみたいで腹が立ってくる。これからまたそういうVTR見なきゃいけないと思うと、今からイライラしてくる」
「あんたのイライラも分かるけども、俺もVTRでしか中○君の試合見てないのよ。あの180km/h投球は驚いたけども、SOS団チームそんなに強かったの?」
「そう……ですね。あのVTRだとちょっと伝わりにくかったかもしれません」
「じゃあさぁ、中○君さぁ、今度俺も混ぜてくれない?」
「タカさんも試合に出るってことですか?」
「うん……でないとやっぱり分かんないって。どのくらい強いのか」
「べーさんはどうします?あの夜景を見るだけでも行ってみる価値あると思いますよ?」
「見学だけさせてもらってもいい?」
「じゃあ、俺も一緒に行かせてくれない?」
「そうすると、僕とタカさんとべーさんと関○さんと……タモさんはどうします?」
「中○君がそこまで言う夜景だったら是非俺も見てみたい」
「それならさっさと終わらせてしまいましょう。今日判定をしていただく弁護士軍団の皆さんで~~す!」
『よろしくお願いします』
「あの~弁護士と言っても、これから出てくる奴等の弁護をするわけじゃないんですよ。SOS Creative社側の弁護についていただいて、解雇だけでいいか、それ以上の罪が被ってくるのか判定をしていただきます。元時点で既に盗撮の罪があるわけですから、VTRも含めて、解雇だけでいいのか、それとも服役や罰金を支払う必要があるのか判断していただきます。でもまぁ、今のあの会社に罰金を支払ったところでたかが知れていると思うんですよ。今から一人ずつ出てきますけども、全員服役で僕はいいとさえ思っていますので、よろしくお願いします。それじゃあまずは、一人目、さっさと入って来い」
場の空気が一瞬にして変わったな。しかし、プロ野球選手だけでなく、大御所芸人がこれだけ集まるのか。面白くなってきた。

 
 

…To be continued