500年後からの来訪者After Future5-12(163-39)

Last-modified: 2016-10-18 (火) 17:43:28

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future5-12163-39氏

作品

全TV局、全新聞社の人間に裁きを下す特番がついに放送され、弁護士軍団から全員に懲役の判断が下された。あとは裁判所がどう判断するかで何年の服役になるか判決が下るだろう。みくるとの聖地巡礼も、ドライブはそこまで楽しむことができなかったが、北高の文芸部室のみんなは相変わらずいつまでたっても幼稚園児って感じが拭えないが、みくるのつけたピアスが可愛いと言われ、みくるともう一度ピアスを選びに行くことにした。ドラマ仕様のみくるにあいつらがどんな反応をするのかは謎だが、例の椅子についてだけは報告する必要がありそうだ。

 

 青ハルヒと一緒にポルシェに乗り込み、閉鎖空間を展開した。先ほどとは違い、ポルシェの性能を十分に活かせられる。颯爽と出発して目的地を目指した。
「ところで、あんたさ。知ってたら教えて欲しいことがあるんだけど……」
「ハルヒがそんな風に切り出すのも珍しいな。一体どうしたんだ?」
「ピアスをどれにしようか見ていたら『18Kゴールドリング』とかって書いてあったのよ。『18K』って言うのが何のことか未だに良く分からないんだけど、あんた知ってる?」
「ああ、それなら俺も分からなくて調べた。数字は置いといて、Kは『カラット』のことだ」
「カラットってダイヤモンドとかに使うものじゃないの?」
「そのダイヤモンドのカラットと区別するためにKとしか書かれていないだけで、あれは『純度』を現す単語だ。24Kって書いてあるのがシャミセンの黄金像と同じ99.99%の純金。18Kってのは24分の18で四分の三。つまり75%は金でできているって意味らしい。デザインが同じものでも18Kより24Kの方が値段が高いのはそのせいだ。昨日の話じゃないが100%カシミヤのものとそうでないものの違いだと思ってくれればいい」
「ふーん、そういうことだったんだ。ってことは、あんたが黄涼子達に話していたアクセサリーも、金はすべて24Kになりそうね」
「そういうことになるな。しかし、ウェディングドレスにゴールドリングって合わなくないか?」
「そんなこと分かっているわよ!探している最中にそれが気になっただけよ!」
「それなら、ハルヒがどんなものを選んだのか早く見せてもらわないとな」

 

青ハルヒが指定した店に到着して二人で降りると、今頃になって恥ずかしくなってきたらしい。
「店員からはドレスじゃなくて普通の服にしか見えないんだから、そこまで恥ずかしがらなくてもいいだろ!」
「うるさいわね!周りに聞こえるじゃない!早く行くわよ!」
青ハルヒにしては口調の割に小声だったな。青ハルヒに引っ張られるかのように店内に入ると、いつものハルヒ達の足取りで目的の品物がすぐに見つかった。なるほど、これならウェディングドレスにぴったりだ。時間が合いさえすれば、すぐにでもチャペルに向かいたいと思える代物だな。みくるが常時つけているものとしてはちょっとどうかと思うが、こういう目的で使うのならこれ以上のものはない。サウスシーパールにダイヤモンドとプラチナの装飾がついてお値段103万円也。すぐに店員を呼んでカードで一括払い。現金で支払ったら店員も困惑しそうだな。姿見を見て、青ハルヒも納得の表情だ。これなら夕食に間に合うだろう。帰りは俺の腕に絡まって店を後にした。
同期された情報が本体にも伝わってきた。すでに満足したみくるが俺に抱きしめられて眠っている。青ハルヒが帰って来る頃にみくるを起こせばいいだろう。しかし、母乳の件が上手くいって良かった。みくるの母乳が飲めるのならこの先いくらでも付き合ってやるさ。みくるもハルヒや青有希の気持ちが分かったようだしな。体内が俺の遺伝子で満たされていても何も不安に思うことなく、その心地よさに身を委ねていた。
 こちらから起こすつもりで寝顔を眺めていると、みくるが眼を覚ました。
「おはよう、みくる」
「おはようございます。キョン君。……あっ!えっ?今何時ですか!?」
「もう少しで夕食だ。そろそろ起こそうと思っていたところでみくるが起きてきた。満足できたか?」
「はいっ!今夜もまたキョン君の傍で寝かせてください」
「なら下に戻ろう。もう何人も揃っているはずだ」
「はぁい」

 

 敷地外には相変わらず報道陣の数が多い。何のために来ているんだか……って、特番のせいか。青ハルヒと一緒にいる影分身に処分を任せよう。即死さえしなければ、性別や部位を問わず銃弾を打ちこんでも文句は言えまい。二度も警告したんだからな。81階に着いてしばらくした後、パトカーと救急車のサイレンが鳴り響いていた。
「昨日の特番のせいだろうけど、彼らも諦めるってことをしないのかい?ただでさえキミはここにいないことになっているんだろう?」
「それが無いからこうやって追い払っているんだ。『いくつカメラを壊せば気が済むんだ!』なんて、さっさと上司に怒られてもらいたいんだが……何台カメラを壊したか俺も数えるのをやめた。それにしても佐々木、俺からすれば食事の前にここに戻ってきているおまえらの方がよっぽど不自然だぞ?以前はテレポートで料理を運んでいたくらいだったのに……」
「キミのマッサージが待ちきれなくてね。研究といっても実験と失敗を繰り返すようなものじゃないし、理論を構築しないと始まらないんだよ。まだヒントすらつかめていない状態なんだ。キミ達と話していた方がよっぽどアイディアが閃く気がする。今みたいにシャミセンとくつろいでいながらね」
シャミセンが顎と背中を触られて喜んでいた。ようやく練習試合が終わったらしい。ハルヒ達とOG、ENOZがエレベーターから降りてきた。双子は朝着替えさせた姿のまま練習と試合をしていたようだ。空調完備は万全だし、厚手にしておいたから下着が透けるなどということはないが、ブラをつけていないと判断されると……ってそこまで気にしてたら何も始まらん。

 

「二人とも、明日の朝食の後、俺とハルヒは旅行に出かける。おまえらはどうする?」
『旅行!?キョンパパ、わたしも行きたい!』
「その間、練習にも試合にも出られないが大丈夫か?もっとも試合なら平日も来週の土日でもできる」
『キョンパパ、わたし、旅行がいい!』
「よし、じゃあ少しでも試合に出られるように全速力で行くぞ」
『全速力ってなあに?』
「凄く速いってことだ」
『キョンパパ、全速力!』
「じゃあ、決まりだな」
「くっくっ、その様子だと昼前には戻ってきてしまいそうな勢いだね。一応キミの言っていた通り三時から入れたけど、二時からでも大丈夫なんじゃないかい?」
「だろうな。ただ、そこまで長時間こっちにいることができないと思わせるには丁度いい。因みに何時まで入っているんだ?」
「夕食が始まる六時前までだよ。それ以降は夜練になってしまうからね」
「それでも明日だけで九人か。佐々木、待っている間の椅子は用意しておくから、雑誌をいくつかチョイスして持ってきてくれるか?」
「分かった。青僕と相談して選んでおくよ」

 

「それにしても、この一ヶ月の間に、みんな随分変わったわね。私も何かジュエリーを探しに行こうかしら?」
「ハルヒや佐々木のように有希もピアスつけるか?」
「えっ!?でもピアスホールを開けるのに結構かかるんじゃ……?」
「そんなもの、周りを見れば一目瞭然だろ?ハルヒや黄俺、黄朝比奈さんのピアスホールを開けている最中の状態を見たことがあるか?黄有希や黄朝倉、ジョンなら10秒もかからん」
「そう言われてみれば……キョンの言う通り」
「青朝倉と二人で有希やジョンに開けてもらうといい。大人びた女刑事に見せるために選んだピアスが文芸部室にいた連中にまで『可愛い』と言われてしまったからな。もう一回選びに行こうと思っていたところだ」
「くっくっ、そいつは面白そうだ。ウェディングドレス姿で行ってきたんだろう?他にどんな反応を示していたのか教えてくれたまえ」
「幼稚園児とほぼ変わらなかったぞ。お茶を持って行ったら扉を閉めろだの、結婚したといったら指輪を見せろだのうるさくてしょうがなかったが、お茶の匂いは覚えてくれていたらしい。久しぶりにこの匂いを嗅いだって喜んでいたよ。ただし、一台を除いてな」
『あ~なるほど!』
「えっ!?先輩たち何が『なるほど』なんですか?」
「青チームの古泉一樹と同じ思考回路をした椅子が一台置いてある。朝比奈みくるが北高時代使っていた椅子」
『あ……なるほど』
「アイツも相変わらずだったよ。『やはりみくるでないと駄目らしい』だの、ピアスの話になったときは『いや、みくるにはもっと大胆な……』だの、女刑事姿で来るって最後に言ったときは『アダルトなみくるが見られそうだ』だの。とりあえず、かかと落としを喰らわせておいたんだが、ピアスに関してはアイツの主張も一理あると思った。文芸部室のパソコンの画面を見せて、どれならみくるに似合いそうかアイツに選ばせてみるのも一つの手だな。青古泉と違って鼻血を吹き出すこともない。みくるが自分で選ぶよりは、ハルヒや佐々木たちがドラマに合うものを選んでもらった方がいいかもしれん」
「面白いじゃない!次のシーズンに合ったピアスを探しておけばいいんでしょ?有希、あたしにもピアスホールを開けて!あたしもアクセサリーを身につけたくなってきたわ」
「問題ない」
「ハルヒさんの場合は、買いに行く方向で良いと思うけど、朝比奈さんのものは、デザインするのはどうかしら?プラチナやダイヤモンドはないけど、純金なら余るほどあるじゃない!全部情報結合するんじゃなくて、形を変えるだけなら、冊子にも載せられるし一石二鳥よ」
「涼子、それよ!キョン、今夜からダイヤモンドとプラチナの鉱山あさって取ってきて!!」
「んなことでき………できるか。サイコメトリーとテレポートで十分だ。後は朝倉のナイフで形を整えてもらえばいい。ダイヤモンドカットダイヤモンドでなくても、朝倉のナイフスキルならダイヤモンドでも刃こぼれすることは無さそうだ。試しに今夜行ってみる」
「しかし、どこにダイヤモンドの鉱山があるのか、見当はついているのかね?」
「問題ない。アフリカのボツワナ共和国に世界最大級のダイヤモンド鉱山がある。山全体をサイコメトリーして原石をテレポートさせればいい」
「アフリカのボツワナ……って、どこだ?」
「南アフリカの一つ上の国がボツワナ。プラチナは南アフリカ共和国にある」
「それなら、今夜にでも行ってみるか」

 

 影分身体で夜練を終えて100階に行くと既に有希の姿があった。さっきも青朝倉と二人一緒に夕食を食べていたし、おでん屋は平気なのか?
「有希、おでん屋のスタッフの中に、半熟卵のおでんを作れる奴でもできたのか?」
「そう、朝比奈みくるのように常に温度計と時計を見ながら作業に集中している。だからさっきのように青チームの朝倉涼子と二人で夕食を食べることができた」
「それは何よりだ。店舗組も含めてできれば全員で食事をしたいところだからな。今日はどうする?」
「いつものように抱いて欲しい」
「分かった」
みくるはさっきしたばかりし、全身マッサージも終えたからアレを選んで一緒に寝ることにしよう。
「みくる、ちょっと来てくれるか?」
「キョン君、どうかしたんですか?」
「寝るときのランジェリー選びをするんだよ。OG達も全裸じゃなくてベビードール姿で寝ている。みくるに似合うベビードールを探して着せてみたいんだよ」
「ベビー……ドール?」
イメージを渡した方が早いか。額に触れてOGたちのベビードール姿をみくるに見せてみた。
「69階でこんなことしていたんですね。みんな可愛いです。でも、わたしに合うブラが見つかると良いんですけど」
「心配いらん。色とデザインが決まったらサイズは情報結合すればいい」
「じゃあ、わたしにも選ばせてください!キョン君、ありがとうございます」

 

 クリーム色を基調としたベビードールを選んで中央のベッドへ。みくるの髪の毛の色とベビードールが良く似合う。ショーツもブラもすべてベッドで着せてやった。いくら秘部が丸見えだろうが、もうこのくらいのことではみくるも恥ずかしいとは思わないらしい。いつもの閉鎖空間を展開してベッドに横になる。今日はみくるが一番に眠ることになりそうだな。俺の腕に頭を乗せると視線をこっちに向けた。
「着心地はどうだ?大胆下着というよりは大人用のパジャマってところか」
「他のみんなにもこうやって着せるつもりなんですか?」
「ああ、さっき話題になっていたアクセサリーも含めて、こういうものをデザインするのも悪くないと思ってる。ヒロインの自宅にあった衣装の情報をすべて朝倉たちに渡しているからな。女性誌の方はこういう路線に行くのも悪くないだろ?何せ一年に一回着ればいいってほどの服やドレス、ランジェリーが揃っていたからな」
「これくらいなら冊子に載っても恥ずかしくなさそうです」
「しかし、また長い一日になりそうだ」
「わたしが言えるようなことじゃないんですけど、キョン君も休むときは休んでくださいね?」
「そうやって妻に声をかけてもらえる時間が一番安らぎそうだ。みくるも今日はゆっくり休めよ?」
「キョン君、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。みくる」
キスをしてみくるが眼を閉じた。音は聞こえないにせよ、周りはまだ妻たちを抱いている最中だ。ブラインドフィールドを展開して照明を防ぐと、しばらくしてみくるの寝息が聞こえてきた。佐々木たちも同様に影分身と一緒にランジェリーを選んでベッドへ。青佐々木は繋がったままでいたいと言い出してオープンショーツを履き、同じ理由で佐々木はOバックショーツを履いていた。青みくるは薄いピンク色をベースにした可愛らしいベビードール。所々にある黒がセクシーさを醸し出していた。残りの二人の相手をしている影分身たちは、サ○ヤ人の尻尾のように腰よりも少し下から触手が生えて、有希や青ハルヒの後ろを襲っていた。影分身が閃いた責め方とはいえ、あの方法なら影分身を出さずに一人一体で済む。明日から俺も切り替えることにしよう。ついでに、アホの谷口にも執行猶予をあたえてやることにしよう。一定の位置まで不要物が来たらアイツの胃の中にテレポートするように妻やOG達に膜を張り、それ以降の不要物をすべてテレポート。ハルヒと青有希にも同じ膜を施して、青俺は全身マッサージ後、青有希を連れて自分のフロアに戻っていった。ハルヒもみんなに見られずに甘えたいからという理由で99階に降りたとはいえ、100階も随分と寂しくなってしまったな。

 

 皆が寝静まった頃を見計らって例の鉱山に財宝発掘ツアーへと乗り出した。影分身の意識はすべて本体に集め、OGや妻たちは人形と一緒に寝ていることになっていた。『山全体をサイコメトリーしてテレポートすればいい』と有希は言っていたが、もっと簡単に原石を集められる方法がある。告知でも訪れることになるだろうが、一人ボツワナ共和国へと足を運んだ。時差はマイナス七時間。まだ日も沈んでいない鉱山の上空にテレポート。ステルスを張って降下していくと、予想以上の巨大さに正直引いた。世界最大級のダイヤモンド鉱山とは聞いていたが、ここまで広いとはな。……これだけ開拓してなお、ダイヤモンド原石が眠っていると思うと、以前提案した財宝発掘ツアーで手に入れたお宝以上になりそうだ。超サ○ヤ人での閉鎖空間でないと覆いつくせそうにない。まぁ、そのときは複数張ればいいだけの話か。山の頂上からダイヤモンド原石と条件づけた磁場を張り、磁場から距離を置いた。山全体が震え、ダイヤモンド原石の上に生えていた木や土も一緒に磁場に吸着しようとしている。エネルギー弾で破壊しながらダイヤモンド原石が集まるのを待った。やれやれ、あのパフォーマンスを閃く前にジョンと計画していたものと同じくらいの大きさになってしまったな。一旦キューブに縮小して、残った作業は後回しだ。次にテレポートした先は南アフリカ共和国。プラチナ原石と条件づけた磁場でダイヤモンドとほぼ同様の大きさにまで吸い寄せられていく。何と言うか……原石を発掘している人たちに申し訳ない気分になったが、細かいものならまだ残っているだろう。サハラ砂漠にでも行って作業を進めることにしよう。
 ダイヤモンド原石を原寸大に戻すと、原石を一つ取り出しては余計な物質は排除していく。そこはサイコメトリーと情報結合で簡単に作業を進めることができる……が、いくらなんでも数が多すぎる。ダイヤモンドの形にしていくのは後回しにして純度99.99%のダイヤモンドをキューブに収めていった。

 

『キョン、時間だ』
やれやれ、もうそんな時間か。まだダイヤモンドの三分の一も終えていないというのに……まったく。人形と化していた影分身に意識を送って妻たちにおはようの挨拶。今朝は目立った議題もないかと思っていたのだが、例の特番で一般客が押し寄せるとして、食事を摂りに来る団員と、本店に行く目的以外で敷地内に入ろうとする一般客は入ることができないと条件を変え、SP五人がかりで丸一日対応することになった。報道陣は例の如く機材を破壊。カメラを取りに行っている間に敷地内へと繋がる車道の両サイドにSPが二人ずつ本社前に計四人、本店入口に一人立っていた。
「それで、進捗状況はいかがですか?」
古泉の一言をきっかけに全員の視線が集中した。
「進捗状況も何も、まだ仕分け作業すら六分の一しか終えていないぞ」
「いいから成果を見せなさいよ!」
「そんなこと言われても、原寸大に戻したらこのフロアどころか天空スタジアムが壊れるぞ?」
『天空スタジアムが壊れる!?』
「もしこれが宇宙から降ってきたら、被害は酷くてもツインタワー以上の超高層ビルを建築してもまだありあまる程だ。現地スタッフに申し訳ない気分になったぞ。日本の抱えている借金なんていとも簡単に返すことができるだろうな」
「凄いです……そんなにたくさんダイヤモンドを取ってきたんですか!?」
「プラチナも含めて全部だ。サハラ砂漠で仕分け作業していたくらいだよ」
『プラチナも含めて全部――――――――――――――――――――――っっ!?』
「サハラ砂漠くらい広大な土地でないと、原寸大に戻すことができないというわけですか。仕分け作業の終えた六分の一だけでも見たいくらいですが、研磨が終わった状態で確認した方が良さそうですね」
「でも、原寸大だけでも見てみたくなったわね!このビルの上空でもサハラ砂漠でもいいから見せてもらえないかしら?」
「わたしも朝倉さんと同じ。見せて欲しい」
その他大勢も同じ気持ちらしいな。仕方が無い。
「じゃあ、ダイヤモンドは磁場を消してしまっているからプラチナだけな。舞空術を使えるメンバーは飛びまわってみてくれ。でないと大きさが分からんだろうから」

 

 本社上空と言うには程遠いほど上空へとテレポートすると、プラチナの原石が入ったキューブを拡大。
「キョン、これ、全部プラチナの原石なの!?」
「天空スタジアムが壊れるという意味が良く分かりましたよ。彼の言っていた通りサハラ砂漠のような場所でないと作業ができません」
「しかし、たった一晩でよく終わらせられたな。サイコメトリーとテレポートじゃ、いくらなんでもここまで……」
「サイコメトリーとテレポートじゃない。条件をダイヤモンド原石とプラチナ原石に変えた磁場」
「えぇ―――――――――っ!?有希先輩、磁場って埃とか水を吸着するアレのことですか!?条件を変えただけでここまで吸い寄せられるなんて信じられないですよ……」
「山全体が揺れるほどだったからな。近いうちに鉱山が崩落したなんてニュースが出たら、全部俺のせいだと思ってくれ。そろそろ戻るけど大丈夫か?」
『問題ない』
「いやはや、それにしても驚きました。いくら世界最大級といえど、わたくしもあれほどとは……」
「まさに壮観でしたね。あなたのセリフの意味が良く分かりましたよ」
「あんたのやることのスケールが大きすぎて、ついていけそうにないわよ」
「なら、彼の正妻はわたし。わたしが彼についていく」
『あっ!(黄)有希さんずるいです!!わたしがキョン君の正妻になります!』
『僕も立候補してもいいかい?』
「涼宮ハルヒで入籍しているんだから、あたしに決まっているじゃない!」
「おまえら、妻になっただけじゃまだ物足りないって言うつもりか?少しはハルヒの気持ちを察してやれ」

 

 ハルヒがそのあと何も言うことは無く、プラチナやダイヤモンド原石についての話題が続いていた。
「じゃあ、できるだけ早く戻ってくるつもりだが、昼食の準備を頼む。有希一人じゃ時間がかかるから、手伝えるようなら手伝ってやってくれ。それから青ハルヒ、前回のコンサートでの反省点、観客が居ても関係者以外の観客は透明にすると取材陣やゲストに伝えてくれ。俺が出るのは最後だ。あと、三時から団員用マンションの体育館で団員の髪を切っていく。古泉、影分身一体をおまえに見えるように催眠をかけていいか?」
「かまいません。僕の同位体ではまだそこまでのことは出来ないと思いますので……」
「じゃあ、その二体であたっていく。そのあと五時から一般客を天空スタジアムへの入場を始める。警備と案内はすべて影分身で対応する。仕事が終わって天空スタジアムで練習をしていても構わんが、昨日も話した通りOG達が剛速球を受けるような練習はしないでくれ。それから、このあとすぐにハルヒがウェディングドレスに着替えるから青OG三人でヘアメイクを頼む」
『問題ない』
『キョンパパ、わたしもドレス着たい!!』
「ママと同じドレスでいいか?」
『問題ない!』
双子に合ったサイズに縮小してドレスチェンジ。ヘアメイクもしないと納得がいかなさそうだ。
「よし、最後だ。楽団用体育館の残りのスペースも遮音膜を取り付けた個室を用意する。目的は楽器が混ざらないようにするためだ。でないといくらメンバー同士で練習していても、最悪の場合、不協和音になりかねん。それに、本社に日本代表用の美容院フロアを設ける、今ほとんど使っていない19階のダンスフロアを美容室に変える予定だ。何かあればまた教えてくれ。……他になければこれで解散にする。夜まで長丁場だが、よろしく頼む」
『問題ない』

 

 ハルヒと双子がヘアメイクをしている間に団員用マンションの体育館に美容院と少人数で練習するようの個室をいくつも用意した。楽器、人数によって違ってくるだろうから、大きさを変えて用意してみたが、あとは団員に使い勝手を聞いてみることにしよう。本社19階のダンスルームも同様に美容院に作り替えた。団員が終わり次第OG達に声をかけて一人ずつカットしていけばいい。ヘアメイクを終えてポルシェに乗り込むと、またしても双子から催促がきた。
『ハルヒママだけずるい!!わたしも抱っこして!』
「じゃあ、途中で交代にしよう。しっかり掴まってろよ?」
『あたしに任せなさい!』
有希のマンションを猛スピードで飛びだしても二人の表情は笑顔そのもの。今度は拡大した状態でジェットコースターにでも乗せることにしよう。保育園だし平日休んでも大した問題にはならないのだが……幸も一緒でないと駄目だろうな。あとで時間割を見せてもらうことにしよう。一路チャペルへと向かっていた。その間ダイヤモンド原石の入ったキューブを持った影分身がサハラ砂漠でサイコメトリーと情報結合の作業を再開。10%の意識があれば十分可能だ。毒サソリが襲ってきたとしても人形に毒は通用しない。そのときは谷口の胃の中にテレポートしてやろう。それに、ダイヤモンドとプラチナの他にもタンザナイトとピンクサファイアの原石も取ってきてOG二人にプレゼントしてやることにしよう。
 しかし、昨日も一本も決まらなかったと聞いたが、たったあれだけのアレンジでそこまで難しいもんなのか?
『アレはアレでまた修錬を積まないと、そう易々とできるものじゃない。今日の野球が終わったら一人で零式改のサーブ練をするんじゃないか?』
まぁ、そうなるだろうな…って、今日は野球の練習に参加していたのか?捕球練習なら夜練でやっているはずだが。
『現実世界の六人はバッティング練習に混ざっている。サーブやスパイクの威力上昇のためだろう』
ジョンも野球だけでなく、バレー用語も随分覚えたようだな。何かインスパイアされるような漫画でもあったか?
『ああやって毎日のように見ていれば誰だって覚えるさ』
それもそうか。来シーズンはジョンも出てみないか?ENOZだけでなくジョンも参戦してきたとなれば周り中気になるだろ?俺たちも、日本代表選手も、ついでに報道陣もな。
『まぁ、気が向いたらだな。とにかく、今日の試合の後見せるんだろう?例の金属バットの件』
ああ、ジョンなら準備運動抜きで合わせられると確信めいたものを感じていたんだが、大丈夫だよな?
『180km/h投球のときに少し後ろで見ているつもりだ。いきなりアレに合わせろというのは正直キツイ』
ならそれで構わない。あのパフォーマンスが加わって初めて完成する代物だからな。しかし、運転している俺の身にもなってもらいたいよ。結婚式直後と変わりやしない。ハルヒも双子もぐっすりと眠っていた。

 

チャペルに着いたのが十一時半。これなら昼食にも間に合う。扉の鍵が開いているってことは。閉鎖空間を解いたら別のカップルが結婚式をやっているってことになりそうだ。よだれでメイクが台無しになっている双子がようやく眼を覚ましたところで、ハルヒと指輪交換と誓いの口づけを交わして本社へと舞い戻ってきた。
『おかえりなさい』
『みくるちゃん、ただいま!』
「ほれ、二人ともそんな顔じゃ幸に笑われるぞ?」
『そんな顔って?』
「お互いの顔をよく見てみろ」
さっきまで俺とハルヒに視線がいっていたせいか、互いの顔を見合った瞬間に大爆笑。双子のメイクと一緒にハルヒのメイクも取り、ドレスを着たまま昼食作りに参加したハルヒの服をユニフォームにドレスチェンジ。双子も同様に練習着を着させてから拡大した。俺たちが昼食までには間に合わないだろうと踏んで、食事の支度は有希とみくるでほとんど終えていた。そういや、大爆笑と言えば……
「みくる、鶴屋さんたちはいつ来ることになっているんだ?夕食からか?」
「はい、どちらの鶴屋さんも夕食からお願いしたいそうです。鶴屋さんも今日は試合に出られるから楽しみだって言っていました」
「ところで、みくるのイヤリングは結局どうする?これで純金とダイヤモンド、プラチナが手に入ったから、ハルヒや佐々木たちのデザインしたイヤリングで気に入ったものがあればそれで作るが……それだとデートに行く回数が一回減ることになってしまう」
「折角、ハルヒさんたちがわたしだけのイヤリングをデザインしてくれているのに、買いに行くわけにはいきません。キョン君とのデートはまた別の目的が見つかったときに連れて行ってください!」
「なら、そのときまでに俺も出かける用事を探しておく。みくるも何か閃いたら教えてくれ」
「キョン君、ありがとうございます!」

 

 これでW朝倉を除くSOS団メンバーの区別がつくようになった。あとは圭一さん達にも何か作れるものがあればいいんだが、特に森さんにはネックレスや時計、イヤリングを身に着けてもらいたいところだな。
「青朝倉、何か気になったジュエリーは見つかったか?朝倉も何か閃いたものはないか?SOS団メンバーで区別がつけられないのもW朝倉だけになってしまったからな。それに圭一さん達にも周りが区別できるようなものがあればいいと思ってる。特に森さんには、ぜひ身につけてもらいたい。圭一さん達は時計というのはどうです?」
「それがまだ……ピンと来たものが見つからないのよね。でも、黄わたしとの違いなら殺気で区別がつくじゃない!」
「みんなにバンダナを配った頃はそうだったが、今の朝倉からは殺気が漏れるなんてことはほとんどない。精々将棋かバトルをするときに殺気を放つくらい。普段は、ほんの少しの殺気に気付くかどうかってところだ。圭一さんたちもW古泉のボードゲームの強さと同じで、人参の好き嫌いが両極端だが、それで毎回判断するわけにもいかん。ちなみに、この前食べた野菜スイーツ、青圭一さんの方は五個中三個人参が入ったものを選んでいたからな」
『五個中三個ぉ!?』
「確かに両極端ね。わたしも自分がつけるジュエリーなんて考えたこともなかったわ。たまにはわたしもデザインを考えてみようかしら?」
「私も、いつ…いえ、いつ頃決まるかは自分でも分かりませんが、社員のデザインの中にいいものがあれば作っていただけないでしょうか?」
「今、サハラ砂漠で影分身にダイヤモンドの仕分けをやらせている。今日の夜はピンクサファイアとタンザナイトを取りに行く予定だ。OG二人のピアスも作りたいからな。他の宝石を入れる場合は今の森さんのように進言してくれればいい。他のOG達も二人と違う宝石のピアスやネックレスでもいいんだぞ?」
『本当ですか!?』
「いつも言っているだろ。こんなときに嘘をついてどうするんだ?」
「キョン、私もピンクサファイアを見に行きたい!一緒に連れて行って!!」
「先輩、私もお願いします!原石がどんなものなのか見てみたいです!」
「原石を見るだけなら今朝のように上空で拡大すればいいし、取りに行くのも閉鎖空間を展開して、磁場を作って、しばらく待つ。それだけの作業だぞ?」
「それなら大した時間もかからなさそうですし、今夜の試合が終わったら我々も連れて行っていただけませんか?眠気もそこまで残ることもないでしょう。僕も是非連れて行ってください」
「問題ない。ピンクサファイアならベトナムHamYen近郊、タンザナイトはタンザニア、メレラニ鉱山が有名」
「タンザナイトの名の由来が良く分かったよ。私たちも連れて行ってくれないかね?」
「面白いじゃない!さっさと試合を終わらせて、全員で見に行くわよ!!」
『問題ない』

 

 ハルヒや有希、子供たちが早々と昼食を平らげ練習試合に向かっていった。団員用美容院に本体と古泉に見える催眠をかけた影分身を配置して、時間までダイヤモンドの仕分けの方に専念するか。しかし、サイトで調べる前に鉱山の場所を教えてくれて助かった。三時までの空いた時間に何をして過ごそうかと前々から迷っていたんだ。仕分け作業に二体……いや、三体ほど回すことができそうだ。体育館の個室の方も最初は今日になっていきなり個室に分けられていることに驚いていたとサイコメトリーで情報が伝わってきたが、他の楽器と音が混ざらなくていいと喜んでいたようだ。今もいくつかの個室で楽器毎に練習していた。
『しかし、ピンクサファイアにタンザナイト、その他の宝石もとなると、世界中の経済が荒れるんじゃないか?キョンが推測していた通り、落盤騒ぎになるだろうし、山を昇れば原石が出てきた痕が残っているだろう』
確かに、S世界をO大いに盛り『下げる』ためのS涼宮ハルヒの団になってしまいそうだな。とはいえ、発掘した人間に所有権があるってことでいいんじゃないか?あれだけ大規模な捜索をしても未だにあれだけの原石が眠っていたんだからな。
『ドラ○エじゃあるまいし、他人の家を勝手に荒すのもどうかと思うぞ?』
ようやくそういう話ができるようになってきたか。それよりジョンと話しているだけで時間が経ってしまいそうだ。仕分け作業は進むだろうが、髪をカットしに来た団員に気付かないなんてことになりかねん。それでも、ジョンとの会話で時間も大分過ぎてしまったようだ。美容院に一人目の客が入ってきた。
「あっ、社長!!この間の打ち上げの料理、ありがとうございました!凄く美味しかったです!」
「あの程度のものでしたら、コンサートの度に作らせていただきます。どうぞ、こちらにおかけください」
「はいっ!宜しくお願いします!」

 
 

…To be continued