500年後からの来訪者After Future5-5(163-39)

Last-modified: 2016-10-13 (木) 20:58:09

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future5-5163-39氏

作品

シャミセンの冥福を祈り、81階には仏壇と錬金術で作り上げた黄金のシャミセン像が置かれた。翌日のディナーは作り過ぎたと感じるほど、日本代表全員がかりで食べても半分も食べきれず、カレーの半分はW有希に食いつくされてしまった。年越しパーティでは俺のパフォーマンスと寿司でハリウッドスター達を満足させられそうだし、自家製コーンスープやビーフシチュー、ハンバーグは翌朝にするべきだろうな。自家製パンも何種類か作って振る舞うことにしよう。

 

69階もあとは似たような状態のようだし、100階の方に意識を向けてみるか。W佐々木は全裸になってはいたが、俺の分身が佐々木の体内に隠れる程度で特に抱くことはしていない。有希やみくるたちは秘部の両方を色んな態勢で責められ何度も痙攣を繰り返していた。青ハルヒは影分身一体で後ろだけを執拗に責め、それでも何度も達している状態。シャミセンの黄金像は中央のベッドのど真ん中に置かれていた。そんな状態を見た青有希とハルヒが絶句している。
「ちょっとあんた、みんなにはしているのに、何であたしにだけしてくれないのよ!?」
「ハルヒにだけしていない?一体何の話だ?」
「今の状況を見れば一目瞭然じゃない!……他のみんなには後ろの方もしているのになんであたしだけ……」
「何だ、ハルヒもして欲しかったのか?」
「そんなわけないじゃない!なんであたしがそんな変態みたいなことしなくちゃいけないのよ!」
「だったら周りのことなんて気にしなくてもいいだろう。今日はどうする?そのまま寝るか?」
「周りがこんな状態で寝られるわけがないでしょ!?」
「なら個室に入ろう。それなら何も見えないし何も聞こえない」
「みんなと一緒よ!今日はあたしもあんたに抱かれたい」
「分かった。後ろの方はしないでいいんだな?」
「当・然・よ!」
今はこの程度で十分だ。もう少し様子を見させて「みんなと同じようにして!」とハルヒに言わせるまでは、この状態を継続する。さて、青有希の方はどうするのかな?
「キョン、わたし達も個室に行こ」
「みんなと一緒じゃなくていいのか?」
「うん。さすがに刺激が強すぎてついて行けそうにない」

 

青有希たちが真ん中の個室に入っていった。立体映写機のある部屋は下からOGをつれて上がってくるかもしれんが、これなら同期してまで連絡する必要あるまい。ハルヒの相手に専念することにしよう。
「ねぇ、キョンは他のみんなみたいにしてみたいと思う?」
「有希が嫌がることを強要するわけにはいかんだろう。それに、黄俺も目的を持ってやっているようだしな」
「目的?目的なんてあるの?」
「ああベッドからサイコメトリーで伝わってきた。朝比奈さんたちは便秘解消だそうだ。黄朝比奈さんがぽっこりお腹が出て、本人は太ったと思っていたらしいんだが、サイコメトリーしたらお通じが無くて、そのせいでお腹が出ていたらしい。佐々木たちの方は妊娠中の欲求不満解消のため。もっとも、ああやって話しているのが佐々木にとって一番良いようだが、たまには抱いて欲しくなるらしい」
「涼宮さんは?」
「さっきの黄ハルヒと同じだよ。黄有希も含めて、他のメンバーがやっていることを自分にも体験させろと温泉旅行中に言っていたそうだ。実際に体験してみたら思っていた以上に気持ち良かったみたいだぞ?有希も体験だけしてみるか?もしかしたら考えが変わるかもしれん。個室だからみんなに見られることもないしな」
「えっ!?でも、さっきも黄キョン君のカレーいっぱい食べたし……汚いよ」
「心配いらん。匂いも含めて、すべてテレポートさせてから行為に及んでいる。そのテレポート先を知って俺も笑ったよ」
「テレポート先を知ってキョンが笑う?……と、トイレとかじゃないの?」
「アホの谷口の胃の中だ。『みくるや佐々木のものなら喜んで受け入れるだろう』だとさ。どっちにしろテレポートだけでもしてしまおう。今日食べたカレーが入るだけの余裕を作っておいても悪いわけじゃない。でないとずっと苦しいままだからな。しっかし、有希があんな殺気放ってくるなんて思わなかったぞ。マフィア相手でも通用しそうだ。あのカレーは確かに美味かったけどな」
「ちょっと匂いを嗅いだだけで我慢なんてできなかった。一口食べたらわたしの予想をはるかに超えた美味しさだった。毎日食べても飽きそうにない。わたしも黄わたしと同じようにして食べる」
「あんな断崖絶壁、逆に食べづらいだろ。先に八合盛ったとしても、Wハルヒやエージェント達に抜かれるんじゃないか?」
「黄わたしがそんなこと許すなんて考えられない。どうしてあんな食べ方をしているのか今度聞いてみる。それと……体験だけ、してみようかな。汚くならないんだったら、ちょっとだけ、してみたくなった。キョンも二人に別れられるの?」
「ああ、やり方は黄古泉と一緒に聞いていたからな。最初はどちらか一方に意識が傾きそうだが、『何事も経験』だと黄俺も言っていたし、俺も倉庫とヘリの運転に分かれてみようと思ってる。もちろん有希が気に入れば、これからは二人で抱くことになりそうだ」
「じゃあ、お願い」

 

『キョン先輩!!ハルヒ先輩からOK貰いました!!私と結婚して下さい!』
やれやれ、青有希を入れてこれで10人か。しかし、よくハルヒもOKしたな。
『言っとくけど、正妻を一番にしないと全部白紙に戻すわよ!?』
『分かっているって』
そんなに正妻を一番にしたいのなら普通増やさないと思うんだが……まぁ、アイツが普通だった試しがないか。ジョンの世界にいるとどうなるか分からんから、敢えて寝ずに漫画喫茶を貸し切ってはみたものの、OKが出たのならそれでいいだろう。明日の練習を異世界の自分と代わってもらって指輪とネックレスを買いに行くことにしよう。
 翌朝、OG6人×2の名前を呼んでおはようと告げる。赤面していたり、照れくさそうにしていたり、キスをされたりと反応は様々だったが、大胆下着を履くようなメンバーはほぼいなくなった。それを考えると青チームのOGも欲求不満で色々と溜まっていたらしいな。あとはまだ退職できない青OG二人の夕食の件を青新川さんに伝えるだけ。スカ○ターで各局のニュースをチェックしていたが、昨日のビュッフェのVTRが流れていた程度。そのVTRの映像を静止画で写したらしき新聞社も多数いたようだ。見出しには『キョン社長、秘密裏の帰還か!?豪華絢爛ビュッフェ食べ放題!!』などと記載されていた。天空スタジアムの番組取材の件はまだ発展しないのか?まぁ、大方今日のコンサートで撮影できるとでも思っているんだろう。罠にかけられているとも知らずにな。新川さんと青朝倉の席には昨日のカレーと自家製コーンスープが置かれ、それを見た周りのメンバーから注目を浴びている。当然W有希はよだれが垂れていても全く気にしていない。
「カレーなら全員昨日食べただろう。二人が食べにくそうな事をするな。また作ればいいだろうが」
『今日食べたい!』
「無茶言うな!玉ねぎ炒めるだけで四時間かけているんだ!明日の夕食以降にしろ!」
『じゃあ、明日!』
「やれやれ、妻とデートもさせてもらえそうにないな。一応俺は、明日は休みの日なんだが?」
「誰とデートに行くって言うのよ!?」
「新妻に決まっているだろ?刻印決めてあるんだろうな?」
「それがまだ決めかねていて……あと、色々調べてから買いに行きたいです!」
「流石、朝倉のお眼鏡に叶っただけのことはある。店に行ってその中から選ぶより、もっと色々探してからってことか」
「あんたちょっと待ちなさいよ!あたし達にデザインセンスが無いって言いたいわけ!?」
「あのな、デザインセンスが無いような商品を店頭に置くと思うか?もしデザインセンスが無いのだとすれば、そのメーカーのデザイナーと店の店員の方だ。アイツからすれば、ハルヒ達と同じ店に行って、店で見つけた気に入ったものが他と被っていたら嫌だろう?逆に制限がかかってしまうんだ。言葉通り色々と調べてからの方がいいだろう」
「とりあえず、これで黄キョン君のカレーがまた食べられそう」
「あら?先に言われちゃったわね。みんなに見られて食べにくかったのよ」
「わたくしもでございます」
『キョンパパ、早く練習行きたい!』

 

 双子に急かされてようやく朝食を食べ始める。青OG二人は、昨日の件を青新川さんに確認してOKを貰っていた。しかし、青みくるにはこっちのみくると似たようなネックレスをと考えているんだが……青ハルヒや佐々木たちに何をプレゼントしていいのやらさっぱり分からん。買うならみくるやOGに買ったイヤリングやネックレスのように肌身離さずのものがいいだろうし………どうしたものか。
「みんながわたし達に注目していたのがようやく分かったわ。こんなに美味しいカレー、初めて食べたわよ!でも、一人前じゃ満足できそうにないわね」
「すまん、やっぱり月曜の朝にさせてくれ。全員揃っていた方がいい」
『え―――――――――――――――っ!!』
「でないと、またこの二人が月曜の朝に食べることになるだろうが!」
『ぶー…分かったわよ』
「やれやれ、双子がハルヒの真似をしていたのが全体に広がるとは思わなかった。ところで、圭一さん。番組撮影の依頼は今どうなっていますか?」
「例の『野球の試合なら』という策で対応しているが、それが何かあったのかね?」
「今日のコンサートで天空スタジアムの映像を撮ってやろうという報道陣が多いせいで少なくなっている可能性があるんじゃないかと思いまして。現にどこのニュースを見てもまだ何も動きがありませんからね。警備と席の誘導は俺の影分身であたる。天空スタジアムの閉鎖空間の条件は、カメラには一切何も映らず、音声も拾えず、シャッター音は鳴らず、フラッシュも焚けないという条件にしてある。加えて、スタジアム内に持ち込んだカメラに超小型爆弾をつけて午前零時になった瞬間に爆発させる。それでも記事にしてくるところには何か制裁をと思っているんだが、何か思いつく策はあるか?ちなみに、いくらチケットを持っていても、これまで出入り禁止になった報道陣には通れない様に細工を施した。入場開始の時刻になったら、報道陣には敷地内の様子は全く見えないようにするつもりだ」
「問題ない。各社をまわってスタジアムの記事を載せようとしているところは、印刷の段階で別の記事にすり替える。異世界の記事を載せるのが丁度いい」
「なるほど。異世界の方は海外組のスケジュール調整はあるものの、こちらの世界はそこまで時間がかかるはずが無いということか。コンサートが終了してから、また番組撮影の依頼が来ることになりそうだ」
「フラッシュやシャッター音で折角のコンサートを台無しにするような奴は、あたしが許さないんだから!」
「なら有希、それはおまえに一任していいか?」
「問題ない」

 

 コンサート以外については大した議題もなく、結婚指輪&ネックレスも後日ということになった。俺は99階で大量の玉ねぎのみじん切りを大鍋二つで炒め続けていた。新川さんに相談しようと思っていた肉の使い道もこれで万事解決。今回のカレーやハンバーグ、ビーフシチューなどのような俺のオリジナル料理を増やしていくことにしよう。B級グルメを俺なりにアレンジしてみるのもいいかもしれん。カレーを作っているだけで時刻は既に午後六時。夕食に降りると、どうやら俺の服に付いていたカレーの匂いに反応してW有希がよだれを零していた。
「まだ中盤だっていうのに、おまえらよだれを垂らすのが速すぎるだろ!やれやれ、W有希よりも犬の方がよっぽど『待て』ができそうだ。告知が終わったら社員にも週に一回くらいスペシャルランチでも作ってみるか」
「警備の方はあなたお一人で大丈夫なんですか?」
「心配いらん。身長190cm以上のSPに化けた影分身が敷地外に向かっているところだ。報道陣でなく観客も入れないようになっている。あとは東京ドームとほぼ変わらんからな。おでん屋と同様テレポートで一気に天空スタジアムに行ける。夜練は俺の影分身を入れて三人になってしまうが問題ないだろう」
SPに扮した影分身二体が敷地外へ出ると、東京ドームまで続いているのではないかと思えるような行列ができていた。すぐにでも入場開始させることにしよう。持っていたチケットの半券だけをちぎって情報結合を解除。順調に流れている中で、やはり現れたのがチケットは購入しているが二度と敷地内へ入れない様にした報道陣。
「申し訳ありませんが、チケットを持っていても、社長から許可されていない人間は入れないようになっています。チケット代はお返し致しますのでお引き取り下さい」
「何を証拠にそんなデタラメを言っているんだ!俺は客だぞ!?いいから入らせろ!!」
「女子日本代表が泊っているフロアにまで入り込んで撮影を強行しようとした方に入る権利などありません。証拠のVTRでしたら大画面で堂々とお見せしましょう。あなたが納得するまで何度でも繰り返すことにします。証拠がそんなに見たいのならね。あなた一人のために時間を割いているわけにはいかないんですよ。次の方どうぞ」
「ぐっ、くそ―――――――!!」

 

 その後も出禁になった報道陣が現れる度に進行が止まり、他の客と一緒に入りこもうとしても自分だけ入れずにいた。今後も来ると思うと、イチイチ癇に障る。社長に連絡して辞めさせる程度じゃ割に合わん。とりあえず閉鎖空間でまとめて閉じ込めておくことにしよう。イタリアのマフィアは手出しできないだろうが、韓国のマフィアくらいなら紛れ込んでいてもおかしくないと踏んでいたが、どうやら心配は無用のようだ。出禁になった連中のチケットを周辺にいた客にタダで譲っていた。チケット屋が倍以上の額で売りさばいていたが、こんな奴等を相手にしているとストレスを溜める一方だ。閉じ込めておいた出禁連中には、『コイツのせいでこの会社の取材が出来なくなった』という目で周りから見られるような催眠をかけて開放。苛立ってそのまま帰っていく奴もいたが、チケット代をきっちり受け取っていく奴もいた。明日からの罵声、中傷、非難、社内いじめに耐えながら生きていくといい。    
時刻は後10分程度で開演のブザーが鳴る頃合い。堂々とカメラを構えた奴があちこちで見受けられるが、既に小型爆弾は設置済み。こいつらも次からは出禁にするとしよう。一人ずつ小型カメラで撮影してDVD化しておけばいい。俺の記憶に残るような真似はしたくないし、帰った後の様子も気になるところだしな。
『あなたもそんなところにいないで、こちらにきませんか?』
古泉のテレパシーが届いた。辺りを見回すと、映画のときと同様、ステルスモードで特等席から見ている古泉たちがいた。子供たちやENOZ、W鶴屋さんも誘ったようだ。もしかしたら持ってきてくれたかもしれん。すぐに空いた席に着いて鶴屋さんに話しかけた。
「鶴屋さん、この前お願いしていた件ってどうなりましたか?」
「それならもう81階に置いてきたにょろよ!どんな風に映るのか年明けが楽しみっさ!」
「ありがとうございます!堂々とあの二文字の前でパフォーマンスしてくることにします」

 

開演のブザーが鳴ると、照明が消え、天空スタジアムのありとあらゆるものが透明になっていく。会場中がどよめき、歓声を上げる。満員の状態では星空は撮影できても、夜景までは観客が邪魔で撮影できまい。だから野球の試合なら番組撮影させてやると言っているのに、馬鹿な連中だよ、まったく。ようやくステージに照明があたり、ハルヒが入場。一礼をすると全体から拍手が沸き起こる。場慣れしているとはいえ、もう少し緊張感を見せたらどうなんだ?コイツは。指揮棒を持つとすぐに演奏を開始した。告知しておいた通り、ハレ晴レユカイからのスタート。影分身で聞いている分、ノイズや音ズレが聞こえず、心地いいくらいだ。今度、みくるに逆シャンプーを頼むというのも悪くない。二曲目のベト七も順調に終え、ノースリーブの黒いドレスを身に纏った有希が前に出る。ハルヒと有希がアイコンタクトでタイミングを合わせた次の瞬間、軽快にGod knows…の旋律が奏でられる。世界中探してこれと同等のことができるバイオリニストがどのくらいいるのか調査してみたいくらいだ。あまりのテクニックに演奏中にも関わらず、会場がどよめいていた。これくらいで驚いていては次の曲でどんな反応をしていいのか分からなくなるぞ。各所から撮影しているカメラも有希に照準を合わせていた。映っていないとも知らずにな。三曲目が終わったところで『bravo!』と会場のあちこちから有希に対するスタンディングオベーション。って……「ブラボー」はイタリア語での発音だったな。思い出したくもない顔を思い出してしまった。しかし、SOS団を目当てに来た客とコンサートを聞きにきた客にやはり分かれていたか。どちらかと言えばSOS団を目当てに来た観客が多いようだが、それも回を重ねていく毎にコンサートを聞きにきた客の方が増えていくかもしれん。絶対にありえないが有希を引き抜こうとする楽団からの電話も来るかもしれん。または、有希一人でフランスやイタリアに留学なんてこともありえるが、アイツの本来の任務から外れることになる。承諾するわけが無い。会場が鎮まったところでLost my music の演奏が始まった。ったく、例の件といい、今回といいどうしてこう先に閃かないんだろうな。ハルヒ達の今日の打ち上げは圭一さん達が用意しているかもしれんが、楽団の打ち上げのことをすっかり忘れていた。確認を取ったあと、やる予定が無かったということであれば月曜日の練習後に用意することにしよう。間奏の有希のテクニックはまさに「凄まじい」の一言に尽きる。四曲を終えてハルヒが一礼。『bravo!』の叫び声と一緒に、再び会場全体からのスタンディングオベーション。ハルヒの退場と共にすべての照明が消え、しばらくして一つの照明が照らされた。翼で隠されているが会場中が何をするのかはっきりしたらしい。青みくるの羽が広がり、上下に羽を動かしながら青みくるが会場中を飛び回る。ようやくステージに照明が点灯され、次第に情報結合されていくピアノにハルヒが腰かけ、有希も既に先ほどの席についていた。先週から始まった古泉のドラマの主題歌がオーケストラバージョンで演奏が始まる。みくるには月夜野くるみの催眠がかけられてそのまま定位置に留まっていた。青みくるの美声に耳を傾け、場内全体が癒されるような演奏。この上ない一時が訪れ、終わりを告げた。

 

「以上もちまして、本日の演目は終了となります。ご静聴ありがとうございました」
聞き慣れない声でコンサートの終わりを告げると、天空スタジアムが元のドームに戻り、照明が照らされた。おそらく楽団員の一人だろうな。1%ずつ残しておいたSPや案内を起動させて客を誘導していく。出てくる客を見るなり外で待機していた報道陣がインタビューに駆け寄ってきた。このくらいは宣伝になるから良しとするか。さっきからサイコメトリーが頻繁に反応して、報道陣の裏の声をキャッチしていたが、この後泣きを見ることになるとも知らずに………くくく……笑えるのはこっちの方だ。客がすべて出払った後、青OG四人の超能力の修行をするにはいい機会だ。『天空スタジアムに必要のないもの』と条件づけた磁場で各階を舞空術でまわらせて終了。閉鎖空間の条件をすべて元に戻して81階へと降りると、案の定、俺たちだけの打ち上げ。
「それじゃあ、第一回SOS交響楽団コンサートお疲れ様でした!乾杯!」
『かんぱ~い!』
「有希、ソロお疲れ様。楽団員の打ち上げはどうなっているか分かるか?」
「特に決めていない。でも何人かで声を掛け合っていることは確か。このあと着替えてから向かう予定」
「それじゃ打ち上げにならんだろうが。月曜の練習後に全員でもう一回やるぞ。もし何か連絡があれば、そのついでに伝えておいてくれ」
「問題ない」
当然のことながら、コンサートはたったの五曲。夜練に励んでいるOGや青俺は戻ってきていない。コンサートとは関係ないとはいえ、ジョンも含めて八人もいないんじゃな。テレパシーで連絡しておこう69階じゃなく81階に集まってくれってな。

 

 スカ○ターを取り出してスイッチを入れると、まだ帰りの電車なりタクシーの中だとばかり思っていたが、もうTV局に戻ったらしい。缶ビールで乾杯してやがる。音量を下げてぬか喜びさせておくとしよう。編集をするにはまだ早いだろうからな。他の報道陣を見ても何の変哲もない。
「あんた、そんなものをつけて一体何を見てんのよ!?あんたも盛り上がりなさいよ!」
「会場に来ていた報道陣のぬか喜びしている姿を見ていた。それに、盛り上がるには青俺やOG達がまだだ。楽団員も別にお疲れ様会をやっているみたいだし、有希に月曜の練習後に全体でやろうと話していたところだ。まぁ、その前に、指揮も伴奏も非の打ちどころが無かった。ハルヒもお疲れ様」
「フフン、分かればよろしい。そうね、団長としたことが団員のことを考えてなかったわ!楽団全員で打ち上げにすれば良かったわね。あんた、また何か考えているわけ?」
「まぁな。アリーナ席を全て片付けて天空スタジアムに料理を運ぼうかと思ってる。団員全員があのマンションにいるわけじゃないからな。最初はマンションの地下の体育館で……と思ったが、あのマンションの住人でないメンバーは駅から遠くなってしまう。リムジンで送ってもいいが、楽器が邪魔になるだろう。あのままパーティをした方がいい。料理は俺が用意しておくから、ハルヒ達も参加して団員と色々話してこい。やりたい楽曲の要望だってハルヒや有希にアプローチしてきてもおかしくないんだからな」
「もう何曲か立候補が出ているわよ。あとは有希が楽譜を用意してくれるわ!」
「だったらハルヒは次のビラのデザインをすることになりそうだな。次のコンサートは、報道陣はチケットがあっても入れないと書き加えておいてくれるか?」
「あたしに任せなさい!」
その後、青俺やOG達が戻ってきてもう一度乾杯の音頭をハルヒが取った。青新川さんに作ってもらった料理が無くなったところで解散。片付けにはENOZが名乗りをあげた。

 

 69階へと足を運ぶと、既に温泉にOG達が浸かっていた。
「全員揃っているようだな。こっちのOG六人に聞きたいことがある」
『私たちにですか?』
「夜練が練習メニューとして入るようになったのは今シーズンになってからってことでいいのか?他の宿泊先では夜の練習は無かったと判断していいか?」
「あんな練習、他の合宿所じゃできないですよ。夕食が終わり次第解散していました」
「逆に言えば、これまで見ることができたニュースや番組、ドラマが見られなくなったってことになる。古泉主演のドラマも明後日で二回目だ。九時に終わって、それからだと出だしが見られなくなってしまう。各部屋のTVの録画機能を使って番組を録画して構わないと伝えてくれるか?」
「あ―――――――――!!古泉先輩のドラマ、初回を見逃しちゃいました!!」
「心配するな。81階のテレビで録画してあるから今度見ればいい。それで、頼んでもいいか?」
『あたしに任せなさい!』
とりあえず、こっちの方はひとまずこれでいいだろう。スカ○ターをつけた本体でハルヒの髪を洗っていると、隣から佐々木が進捗状況を確認してきた。
「くっくっ、あれだけ堂々とカメラを構えていて、何も言われないのはおかしいと彼らは感じなかったのかい?」
「どの国のマフィアも報道陣もアホの谷口と同レベルが多すぎる。どいつもこいつも中身を確認せずに祝杯をあげている。このまま零時を過ぎてカメラが爆発したら、さぞショックだろうな」
「シャンプーが終わったら僕にも見せてくれないかい?」
「キョン、あたしにも見せて!」
「ならスカ○ターじゃなくモニターで出した方がいいだろう」

 

 ハルヒと佐々木、その更に隣にいた青有希の前にもスカウターと同じ映像が表示された。
「くくっ、SPまで雇っておいてあの会社も随分ガードが甘くなったもんだ。社長さえいなけりゃ、カメラを隠し持ってたってバレやしないんだからな。誰が中○のサポートなんかするかってーの」
「はははっ、芸能人チームなんかにコールド勝ちしていい気になっているだけっすよ。プロ球団を相手に勝てるわけが無いじゃないですか!でも、観客がいると下の夜景が撮れなかったんすよね。一回だけ対戦させてみませんか?観客がいない状態で撮影できるかもしれないっすよ?」
「それもそうだな。天狗になっているあのバカを少しよいしょすればいいだけだ。軽い軽い」
「こいつら―――――っ!!キョン!今すぐ殴りこみに行くわよ!!」
「そんなことしなくても時限爆弾を仕掛けてあるし、この映像は全て録画されている。カメラが爆破したところでこの映像を突き付けてやればいい。やり方はいくらでもあるんだ。他のところも似たような状況だ。天狗になっているのはどっちの方なのか、知らしめるには充分すぎるほど種を撒いてくれているんだ。もう少し遊ばせて爆弾発言が出ればそれを利用すればいい。刑罰を下すのはおまえの専売特許だろ?」
「面白いじゃない!どんな罰にしようかしら……」
「今回は僕もイラッとしたよ。罰が決まったら僕にも教えてくれないかい?」
「この程度の奴等ってことだ。まともに相手にしていたらこっちのストレスが溜まる。未だに告知の方もイタリアの事件について聞いてくる始末だからな」
「そういえば、キミは今どこにいるんだい?」
「インドネシアからシンガポールに向かっている最中だ。この後アフリカの方に向かっていくことになっている。まぁ、日本語版のアテレコをしに十二月には一旦日本に戻ってくるけどな」
「まだ一ヶ月ちょっとしか経ってないのよね。早く終わらないかな……」
「ああ、俺もそうありたいよ。影分身無しで生の演奏を聞いてみたい」

 

 その後、中央のベッドで秘部だけでなく後ろの方も責められている青有希を見たハルヒが愕然としていたが、本人は気になってはいるものの、未だに自分から言い出すことができず仕舞い。まだ指輪を買いには出かけてないが、新境地に足を踏み入れた新妻が慣れてきたらこちらに来させてもいいかもしれん。青ハルヒは昨日と同様、後ろだけでも満足しているようだしな。
『キョン、そろそろ慌て始めたようだぞ』
どうやらそうらしいな。全員の前にモニターを出すと、動きが止まり食い入るようにモニターを見ていた。さて、さっきの二人は一体どうなっているんだろうな。
「何だよこれ!?どうして何も映ってないんだよ!」
「馬鹿野郎!これじゃVTRで流せないだろうが!」
「俺、知らないっすよ!大体、音声すら録れてないなんてありえないっすよ!」
「とりあえず、カメラチェックをし忘れたおまえの責任だ。あとは自分でなんとかしろ」
「ちょっ、待ってくださいよ!……くそっ!一体どうなっているんだ!?」
『あっははははははは……く、苦しい…あの慌てっぷり見てたら笑い死にする……ブッ、あはははははははは』
「で、どうするつもりだ?大画面に出して公開処刑するか?丁度明日は皆休みだし人事部は誰もいない。電話をかけてきても誰も出ることはない。盛大にマヌケっぷりを見せてやろうじゃないか。大音量でな」
「FAXのついでにDVDを送り付けた方がいいんじゃないのかい?」
「駄目、DVDを送りつけても隠ぺいされるだけ。送り主が誰なのかはっきりしてしまう以上、大画面で堂々と放映すべき」
「そうね……『実録!報道陣の裏側を徹底公開!』とでもタイトルをつけて、どこのTV局の誰かまでバッチリ明記して放映しましょ!有希、編集間に合う?」
「問題ない。朝食後から放映を開始する」

 

 その後も100階では、互いに繋がった状態のまま各TV局、各新聞社の様子をモニターで確認。時限爆弾が作動した後の落胆っぷりまでをしっかりと眼に焼き付けて眠りについた。あとは有希と二人で新聞社の様子を見ながら写真は掲載できなくても記事にしようとしたところは内容によっては差し替える予定だったが、結局コンサートの件を記事にする新聞社はおらず、カレー作りと楽団員の打ち上げのための仕込みをしていた。同期してみると、OGの方は、昨日は玩具だけだったのが、ようやく俺の分身が入るところまで進展。もう一方の妻も今日は普通に抱かれたいと言い出し、そのまま12人とも抱くことになった。指輪とネックレスも決まったような話をしていたし、明日にでも行くことにしよう。みくるのときと同様、後ろに栓をした状態でバイクかポルシェに乗ることになりそうだ。
『キョン、時間だ』
結局100階でVTRを確認していたメンバーが全員寝不足状態。眠気を取って各自身支度へと向かった。
『しかし、超小型カメラに集音マイク、時限爆弾やモニターまで使いこなすようになるとはな。もう俺に頼まなくても全部自分でできるんじゃないのか?』
多分としか言いようがない。まだやったことの無いものもあるしな。
「おはようございます。どうでしたか?報道陣のその後は」
「朝食後にその実録を大画面でオンエアするそうだ。どこの局の誰かまでしっかり明記した上でな。ハルヒ達も最初はイラついていたが、何も映っていない映像を見て慌てている報道陣に大笑いしていたよ。ところでW鶴屋さんはどうしたんだ?」
「お二人は朝食を食べてから戻るそうです。もうすぐ、いらっしゃるかと思いますよ。しかし、大画面でオンエアとは驚きました。精々FAXを送ってDVDをテレポートするものだとばかり……」
「DVDを送りつけるだけじゃ隠ぺいされるから駄目だと有希が言い出したんだよ。どの道送り主が分かってしまうなら堂々と公開した方がいいだと。今日は圭一さんたちが休みの日だが、人事部には誰もいない状態を維持するつもりだ。月曜からイタ電が始まるかもしれんが宜しく頼む」
「イタ電だろうと許しを請う電話であろうと容赦なく切り捨てるまでです」

 

「できた」
「有希、ちょっと待った。モニターに映すのは朝食が終わってからだ。ハルヒ達でさえ大爆笑していたんだ。今W鶴屋さんに見せたらいつまで経っても朝食が終わらん」
「一体何ができたというんだね?」
「昨日の天空スタジアムでのコンサートを堂々と撮影して帰っていった報道陣の末路ですよ。序盤は苛立ちますが、その後の慌てぶりを見れば大爆笑間違いありません。どの局も新聞社も昨日は何事もなかったかのようにニュースを放送していますが、これからその内容を大画面でオンエアします」
『大画面でオンエア!?』
「ちょっと!そんなことをしたら本社前が大パニックになるわよ!?いつものようにFAXでいいんじゃないの!?」
「朝倉さん、落ち着いてください。どの道報道陣は侵入することができません。それに、どうやらFAXと一緒にDVDを送りつけると隠ぺいされると考えたようですね。誰から送られてきたのかはっきりと分かってしまう以上、隠ぺいされるよりは堂々と放映して、映った人間を葬り去るということでしょう」
「そう。今日人事部は誰もいない状態。それを逆利用する。明日以降は古泉一樹の同位体がすべて切り捨てる」
「古泉も参加してくれるのならこちらとしてもありがたいが、どうやって切り捨てるつもりかね?社員にも説明する必要があるだろう」
「簡単ですよ。本人からの電話については『自分の責任だ』とだけ伝えてこちらから切るまで。各TV局や新聞社のトップからの電話が来れば、その処分について聞いた上でその人間の映像のみ再度編集して放映し続けます。遅くとも火曜日には放映せずとも良くなるはずですよ。社員には僕に取り次ぐよう伝えていただければ結構です」
「それにプラスして今日、明日と本社入り口と本店入口にSPの催眠をかけた俺の影分身を三体配置する。基本は1%の意識しか持っていないが、何かしらの理由でサイコメトリーに引っ掛かったり、侵入したりする人間がいれば弾き返すつもりだ。この件については以上。次、俺ももっと早く気付けば良かったんだが、夜練のせいで日本代表選手たちが夕食以降のTV番組すら見られなくなっている可能性が高い。各客室のTVの録画機能を使っても構わないとOG達に伝えてもらうつもりだ。それ以外で何か聞いたら教えてほしい。古泉のドラマも明日で二回目だ。初回を見逃したメンバーにはDVDを用意しておいた。焼き増しする必要があるなら俺に言ってくれ。それから、昨日は俺たちと楽団員で別々に打ち上げをしていたが、一緒にやらないと意味が無い。明日の練習終了までに準備をしておくから楽団員全員での打ち上げを開催して欲しい。今後のコンサートでも同様だ。みくる達はどちらか一方が出ることになるだろう。互いに情報を共有して、何を聞かれても対応できるようにしておいてくれ」
「参りましたね…青僕のドラマを撮影していたときはそこまで感じませんでしたが、今度は僕が見られる立場というわけですか。サイコメトリーのおかげでNGを出すことはありませんでしたが、正直恥ずかしかったシーンがあるのも事実です。特にその……いえ、あまりまじまじと見ないでください。よろしくお願いします」

 

 朝食後、有希が例の映像を大画面に映し出した。カメラが爆破したシーンは当然編集してカットしたが、W鶴屋さんにはノーカットで見てもらうことに。最初の方はいくらW鶴屋さんといえど、苛立ちを隠せない様子だったが、カメラに何も映ってないことに慌て始めてから徐々に口角が上がり、爆破された後の呆然としたところを見てついに吹き出した。
『プッ……あっはははははははは……これは傑作にょろ!!ぬか喜びもいいとこっさ!あはははは……』
鶴屋さん達はこのままモニターを見せておくとして、古泉のドラマの第一回の録画映像を取りにきたのが森さんとOGの二人。森さんが見たい番組を録画し忘れるなんて初めて見たな。先週は青ハルヒと一緒に旅行に出かけていたから誰が何をやっていたのかさっぱりだ。
「キョン先輩!!」
「おう、決まったか?」
「指輪だけはなんとか。ネックレスでまだいいのが見つからなくて……」
「それなら、とりあえず指輪だけ買って、ネックレスはその後見回ることにしよう。一店舗だけで済ませることもない。ポルシェの助手席に座るか、バイクの後ろに乗るか、どっちにする?」
「じゃあ、ポルシェの助手席に乗せてください!!」
「指輪を扱っている店が開いたところで出発しよう。場所を教えてくれるか?」
「ここです!」
OGが俺の掌に触れ目星を付けた指輪のある店の情報が入ってきた。あとは時間になるまでスカウターで入口付近の様子を見ながら明日の準備をしていればいい。三階から10階までには大画面の音が聞こえないように逆遮音膜を張っておくことにしよう。しかし、どんな指輪を選んだのやら……

 
 

…To be continued