500年後からの来訪者After Future6-2(163-39)

Last-modified: 2016-11-01 (火) 13:00:53

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future6-2163-39氏

作品

SOS団への番組出演依頼、異世界での野球の試合申し込みと嬉しい知らせが続く中、とうとう古泉の結婚が身内に漏れた。その相手を知っているのは多分俺だけだろうが、俺と同じく知ってて内密にしている奴がいるかもしれん。報道陣は相変わらず、自分のところはすべて社長に押し付けて社員はやりたい放題。今朝のニュースでも新聞の見出しについて揚げ足を取られていたが、人のことをとやかく言う前に『謝るならまず自分から』と言いたいもんだ。世間の目にはどう映っているのか知りたくなったが、今はまだ泳がせておこう。

 

「くっくっ、面白いじゃないか。古泉君のドラマの打ち上げでは時間が早くて不可能ってことかい?」
「そうなるな。だが、それだけのために俳優陣を待たせるわけにもいかん」
「そうですね。皆さん疲れていますから早く帰りたいはずです。しかし、そうすると年末年始のおススメ料理は不可能でも、日本代表の年越しディナーなら可能かもしれません。オフシーズンでも日本代表が滞在しているなんて今年が初めてですし、報道陣もまさかそんなことをやっていたとは思わないでしょう。ハルヒさんには催眠をかけることになりそうですが、いかがです?」
「面白いじゃない!今年は盛大に盛り上げてやろうじゃないの!」
「でも、接客しているメンバーはここで一緒に盛り上がれないってことにならないかい?」
「バイキング形式なら心配いりませんよ。以前彼が作った野菜スイーツを僕が作ることにします。影分身にも大分慣れましたからね」
「とにかく!キョン、あんたも早く食べ終えなさいよ!早くあたしにヘアメイクして!」
「分かったから、そう急かすなよ」
やれやれ、これで青OGにヘアメイクをバトンタッチなんて言ったら怒りそうだ。他のメンバーが昼食を食べ進めている横で青ハルヒのヘアメイク。
「とりあえず、年越しディナーの件はまだ伝えずに十二月一日の件も直前に話を切り出そう。あまり早くに話をバラ撒くと天空スタジアムを無許可で撮影する奴が出てくるからな。それと、楽団員にも十二月からは木曜日がディナーになると次の練習で伝えておいてくれ」
『問題ない』

 

 いつもと同様、二人でポルシェの運転席に乗り込んで青ハルヒが抱きついてきた。
「早くこうしたかったのは分かったから、もう少し力を抜け。苦しいだろうが」
「ねぇ、キョン。今日は全速力じゃなくても夕食に間に合えばいいからさ、少しでもこうさせてくれない?」
「いつも抱き合っているだろ?」
「こういうときは特別なの!」
やれやれ、そんなときに青古泉の話なんて振ったらどんな制裁が下るか分かったもんじゃない。
「ウェディング用のピアスの他にも何かハルヒに合ったデザインも考えないとな」
「あんたにそう言ってもらえるのは嬉しいし、どんなピアスになるのかあたしも楽しみだけど、こっちのキョンもいい加減デザイン考えなさいよね……」
「青俺ならもうデザインできているみたいだぞ?今朝の会話で気がつかなかったのか?」
「もうできているのならなんで有希に渡さないのよ?」
「理由は不明だが、なにかしらの事情があって、今朝それを青有希に確認しているように俺には見えた」
「そういえば、今月は有希の誕生日だったわね」
「誕生日プレゼントなら何か別のものを考えるだろう。それに事前に確認している意味が分からなくなってしまう。誕生日に絡んだ何かなら内緒にするはずだし、今、俺たちがデザインしているものは誕生日プレゼントとは何ら関わり合いがない」
「じゃあ、何だっていうのよ?」
「それが分からんとさっき言っただろう?とにかく何かの目的で青有希に渡すのを遅らせていることは確かだ」
「ほんっとに、こういうことに関してはすぐに気がつく癖に、なんであんたは女の子の気持ちに疎いのよ!佐々木さんと親友だったっていうのが良く分かったわ!男子生徒や男性社員と違って、女の子として見てないんだから当たり前よね!」
「まぁ、それについてはおまえの言う通りだし、何も言い返せないな」

 

「それで、ミスターサブマリンに対抗する手段は見つかったのか?」
「球種はお互いすべてバレているし、あとは読み合いかな。こっちの有希や涼子、それに佐々木さんにも内野ゴロで仕留められるようになってもらわないと、この前みたいにすぐ満塁になっちゃうわよ」
トップバッターがイチローじゃ、有希と同様すぐにでも三塁に行くだろうな。
「あ、みくる達に鶴屋さんの予定聞いてもらうの忘れてた」
「そんなの帰ってからでいいわよ!それより、古泉君には伝えておくから、あんたはキャッチャーで出なさい!」
「はぁ!?青鶴屋さんじゃダメだっていいたいのか!?」
「あんたなら、あたしの投げる球くらい右手でキャッチしてセカンドに投げられるでしょ!?次は絶対に盗塁になんてさせないんだから!セカンドには黄あたしがいればいいわよ!」
「なら聞かせてくれよ。ハルヒ的ラインアップがどうなっているのか」
「そうね……一番レフト黄有希、二番セカンド黄あたし、三番ファーストみくるちゃん、四番キャッチャーキョン、五番ライト黄涼子、六番ピッチャーあたし、七番ショート鶴ちゃん、八番センター黄鶴ちゃん、九番サードこっちのキョン。どう?」
「投手がアンダースローなのに、なんで今まで内野ゴロで仕留めてこなかったんだと言いたげな采配だな。青有希たちは練習での成長過程を見てといいたいところだが、あんなメンバーを相手に内野手はちょっと難しいかもしれん。古泉とジョンは代打で、どっちのハルヒも足で勝負できるし悪くないな。鶴屋さん達の都合さえOKならそれでいいんじゃないか?」
「フフン、あたしにかかればちょろいもんよ!」
だが、逆に言えばそういう配置、采配でないと勝てないことを青ハルヒも認めているってことだ。そうでもなければ、二番バッターの初球を右手で捕れなんて注文が出てくるわけがない。俺がキャッチャーか……面白い、バントを全て封じてやる。
「たっだいま~!」
「あっ、キョン君、涼宮さんおかえりなさい」
夕食に間に合えばいいという青ハルヒの申し出を受け入れてペースを落としていたがそれでも夕食には少し早いくらいか。みくる達も揃っているし丁度いい。
「みくる達、すまんが鶴屋さんの予定聞いておいてもらえるか?」
「あっ、それならこっちの古泉君から言われてもうOKを貰っています!」
「仕事が早いな。だが、今回は監督の権限はなさそうだ」
「キョン君、それってどういうことですか?」
「青ハルヒが提示したラインナップに文句のつけようがなかった。鶴屋さんがどうなるかで変わってくるところだったんだが、どちらもOKなら青ハルヒの考えた打順とポジションで俺はいいと思ってる」
「涼宮さん、どんな采配にしたんですか?」
「フフン、夕食を楽しみにしてなさい!」

 

 五人目のOGも残すところあと一ヶ月と二十日。夕食を食べにメイクをした二人が来たところで夕食を食べ始めた。みくる達から鶴屋さんの予定を確認した監督が口火を切る。
「では、十四日の野球のスターティングメンバーをはっぴょ…「ちょ―っと待ちなさい!」
「涼宮さん、何かありましたか?」
「今回はあたしが決めたわ!キョンも納得していたし、あたしの采配で行くわよ!」
「くっくっ、面白いじゃないか。どんな采配になったのか聞かせてくれたまえ。監督の采配を聞くのはその後でも構わないだろう?」
「いいでしょう。お手並みを拝見させていただくことにします」
「一番レフト黄有希、二番セカンド黄あたし、三番ファーストみくるちゃん、四番キャッチャーキョン、五番ライト黄涼子、六番ピッチャーあたし、七番ショート鶴ちゃん、八番センター黄鶴ちゃん、九番サードこっちのキョン。どう?」
「補足説明をしておくとだ。これまでは青朝倉や青有希、佐々木たちの試合経験を積むためのポジショニングだったが、青ハルヒもこの采配でないと勝てないとまではいかないだろうが、苦戦を強いられると認めたってことだ。投手のアンダースローに、内野ゴロで打者を仕留める。古泉とジョンは代打で、どっちのハルヒも足で勝負できるように組まれている。バントも含めて青みくるにはレーザービーム以上の球を受け止めることになる。ついでに俺には二番手の第一球を素手で受け止めてそのままハルヒに送球しろと言われた。青ハルヒには速球を投げてもらう。ハルヒ、イチローは二塁で仕留める。真正面には投げずにキャッチした瞬間にタッチできる位置に投げる。いいな?」
「面白いじゃない!あんた、青あたしの球を取りこぼしでもしたらタダじゃおかないわよ!?」
「おまえこそ、俺の球取りこぼして三塁まで出塁させるなよ?」
『くっくっ、僕はベンチからゆっくりと観戦させてもらうよ』
「有希先輩!どの道夜練はできないし、今度は私たちも応援したいです!チアガールの衣装作ってください!!」
「問題ない。それに、仕留めるのはわたし」
「俺と黄俺は交代した方が良くないか?黄ハルヒにそんな絶妙な球、告知に影分身を割いているってのに可能なのか?」
「ジョンの世界で実際に試してみればいい。バッティング練習でないのなら俺とジョンが交代しても影分身が消えることはない。それに、佐々木たちを甘やかせるための采配じゃないんだ。青OGやENOZ、セッターの練習をしているメンバーを除いて野球に集中してもらうぞ」
『ぶー…分かったわよ』

 

「やれやれと言いたくなりましたよ。W佐々木さんや有希さん、朝倉さん抜きでの采配をされては誰だって認めます。キャッチャーをどうするかについては彼の発言通りジョンの世界で練習ということになりそうですね。黄有希さんを相手に、どれだけ通用するか試させていただきます」
「面白いじゃない!有希、あんたにだって負けないわよ!?」
「問題ない。わたしが二塁を勝ち取る」
「古泉君、塁審をお願いしてもいい?」
「了解しました。どういう結末になるのか僕も楽しみですよ」
夜練も終え、いつもの妻との時間。みくるとは明日話せるし、青みくるに今日は個室に行こうと提案して、ベビードールを選ばせてから二人で個室へと入った。
「キョン君、今日は何をするんですか?」
「古泉の結婚が発覚したからな。俺たちの結婚式の会場もアイツがセレクトした中から選んだものだし、国外のものも含めていくつかピックアップしておきたいんだが、一緒に探してくれないか?」
「それは構いませんけど、キョン君、どうやって?」
「結婚式場の冊子を用意した。古泉には合わなくても、みくるが気に入れば次のデート先ってことでどうだ?またウェディングドレスで出かけようぜ」
「じゃあ、この服に着替えさせてください!」
「今日は抱かなくてもいいのか?」
「キョン君と二人でそんな本が読めるなんて思いませんでした!また今度抱いてください!」
「なら、今度は今日の分割増しだな」
「はぁい」

 

 青みくると二人で分厚い本を読んでいると流石に腕が疲れてきたり、体勢が苦しくなったりして何度か変えながら意見を出し合っていた。うつ伏せの状態から肘を立ててページをめくっていると、ベビードールの下着から青みくるの胸が見え隠れしていた。たまにはこういうのも悪くない。その間、69階では、ブラインドフィールドは中が見えるかどうかで判断できるからいいんだが、遮音膜がちゃんと張れているかはサイコメトリーでもしない限りOG達に確認はできない。声が漏れて周りに響き、異世界の自分の声に羞恥心を感じているメンバーもいた。昨日はわざと声を漏らそうとした変態セッターも初日と同様、今日は完璧。すでに秘部には俺の分身と尻尾の二本が刺さっていた。
「毎日のようにこうして抱き合っているが、今までも散々やってきたからなのか、すぐ近くに初体験したばかりのメンバーが揃っているからなのか理由は俺も知らんが、どうした?締め付けが随分甘いんじゃないのか?こんな調子じゃ俺が満足する前に、以前のようにダウンしてしまうぞ?」
「そんなこと言われても、こんなに気持ちいいんじゃ、力を入れようとしてもすぐに抜けちゃいますぅ」
「そういや、玩具の中に締め付けをUPさせるものがあったな。明日からそれをつけて行動しろ。匂いはバレない様にしておいてやるから」
「はいぃ!先輩の言う通りにしますから、わたしのことを毎日抱いてください!」
こういうときは素直で良いんだが……どうしてああやって表に出すのかが分からん。行為を終えて秘部を拭きとると締め付け力UP用の玩具を奥に入れてから遮臭膜を展開してベビードールを着させた。本人は余韻に浸っている最中でどうでもいいらしい。まだ何人も声が聞こえてくるようだし、明日は12人中何人が赤面することになるのか楽しみだ。

 

 99階でディナーの仕込みを進めていると、
『キョン、有希の盗塁を阻止するわよ!さっさとジョンと交代しなさいよ!』
『丁度いい。ハルヒ、おまえに話したい事がある』
『どうでもいい話なら後にしなさいよ!』
『そうでもない。明日から異世界で配るビラの件だ。俺たちの方からも十四日に試合をやるって宣伝してみないか?』
『面白いじゃない!今夜中にデザインし直しておくわ!!』
『頼んだぞ』
『あたしに任せなさい!』
やれやれ、まさか今日声がかかるとは思わなかったが、夕食のときに言いそびれたと思っていたんだ。これで明日からのビラが変わるはず。ディナーの仕込みも影分身三体で今日中に仕上がる。明日はゆっくりみくると話すことにしよう。
 翌朝、周りから「どうしたの?」と声をかけられそうな程赤面しているOGが五人ほど。玩具を埋め込んだはずの変態セッターは満足気な表情をしていた。それに対して有希がテンションを下げている。まぁ、青俺をキャッチャーにしてやってみたら有希の盗塁を阻止できたってことでいいんだろうが、朝からこんな調子で大丈夫なんだか。こちらのOG達は表情を周りに悟られない様にすぐに練習に出向き、青OG達も店舗の方へと向かっていった。今日の議題は特にないし、ヘアメイクを終えたみくると一緒にポルシェに乗り込んだ。

 

「やっとキョン君と二人でチャペルに向かえるんですね!何度も北高に行ったりしましたけど、キョン君とこうやってドライブができて、わたしも嬉しいです!」
「ああ、俺もみくると話したいことがあったからな。なるべく早く行きたかったんだ」
「わたしと話したい事……ですか?」
「有希とこの時間平面上の未来について、もう話したか?」
「はい。今後は定期的にわたしの情報結合を戻すって……この時間平面上の未来を安定させるためだって……」
「有希のことだから、本人は感情をこめたつもりでも、みくるからすればそこまで分からなかったかもしれんな。結論から先に言った方が早そうだ。俺もみくると同様、有希に情報結合を定期的に弄ってもらうつもりだ」
「えっ!?キョン君、それじゃあ……」
「ああ、まずはみくるが生まれた未来まで生き続けることになる。今みたいな関係も継続だ。ずっとな」
「わたし、ずっとキョン君と一緒にいられるんですか!?」
「そういうことだ。もしかすると未来でみくる達のようなエージェントを送る総本山は、佐々木のラボではなく本社になるかもしれん。今のところ有希とみくる、それとジョンにしか打ち明けていないが、他のメンバーにどう話したものかと悩んでいる最中だ。有希から何か聞いているか?」
「特に何も。多分、このまま数年経ってお互いの年齢差がはっきりしてきた頃に言い出すんじゃないかって……」
「みくる自身も今より、それが顕著に現れてきた頃の方がいいと思うか?」
「有希さんも朝倉さんも宇宙人としてでなく普通の人間として生活していますし、今はまだ……話すべきじゃないと思います」
「有希から詳細は聞いたか?過去のみくるもそうだったが、ほとんどの時間平面上のみくるが未来に戻らずにとどまっているって話だ」
「多分、すべて聞いたと思います。わたしが戻る筈だった未来でのわたしの仕事は、全部有希さんが引き受けてくれていることも」
「有希からそれを聞いたときは笑ったよ。本来なら、みくるを前に立たせて、有希が陰に身を潜めるはずだった。そのみくるが過去に残るって話になったら、じゃあ未来の有希は、どういう行動に出るのか考えてみたんだよ」
「キョン君の考えだと、どうするんですか?」
「俺が有希の立場なら、みくるの人形を情報結合してそれを操る。みくるの人形を操っている有希と本来のみくるとのギャップを考えたら……あとは言わなくても分かるだろ?」
「でも、それは本来のわたしのことを知ってくれているキョン君だからこそです。この時間平面上の未来を安定させる身として送られる前の友人もわたしのことなんてもう忘れているはずです。それに、帰還命令が出た時点で未来に戻っていたとしても、キョン君たちと過ごしたあの数年間は、わたしにとってはとっても大事な思い出で……」

 

 高校、大学時代を思い出したみくるがようやく涙をこぼしていた。
「そうでもなけりゃ、もう一度俺に会いにきたみくるが、会って早々いきなり手を繋いだりしなかっただろうな」
「えっ!?未来のわたし、キョン君にそんなことしてたんですか?」
「ああ、胸の星形のほくろのことも、自分からカミングアウトしてきたぞ?俺がみくるのことを信用していなさそうに見えたらしくてな。みくるにそんなものがあるなんて、そのとき初めて知ったよ。その時点で俺がそのことを知らなかったと気付いたら、みくるがドレスチェンジするときと同じように頭をコツンと叩いていたよ」
「ってことは、わたし、自分で自分のほくろのこと、キョン君にバラしたってことですか!?」
「そうなるな。まぁ、それだけ高一の俺を見て懐かしんでいたんだろうし、みくるはずっと俺たちと一緒だったからそんなことをする必要性も無かったってことだ。とにかく、みくるが元居た時間平面上に行けば、俺は鶴屋さん並の大爆笑をすることに間違いない。それで、みくるはいつまで生きるつもりだ?」
「………え?いつまでって、この時間平面上がわたしの居た時間平面まで進んだら、それ以降はもう有希さんに情報結合を弄ってもらう必要もなくなるんじゃ……?」
「俺は500年生きるぞ」
「ご、500年ですか!?キョン君どうしてそんなに……?」
「ジョンが生きているのはこの時間平面上と、俺たちが500年先の未来で助けたジョンとその仲間たちのいる時間平面の二つだけ。残りはジョンどころか人類が絶滅している。折角、助けに行った時間平面がまた襲われかねないし、この時間平面上の未来だってどうなっているのか怪しいもんだ。いくら未来の教科書で急進派のクソったれ共はそれ以降攻めて来なかったと書かれていても、変わることなんて十分にありえる。500年後、他の時間平面上は人類は滅亡しているのに、どうしてこの時間平面だけ人類が生き残っているんだなんて急進派の連中が考えでもしたら、その時点でこの時間平面は終わりだ。宇宙人の侵略で人類が滅亡しましたなんて未来を一つでも無くしたいなんて神様的なことを考えるようになってしまったんだよ。こうやってみくるに話している間も、ジョンは一切反対してこない。朝倉はどういうつもりかは知らんが、ジョンはそのつもりだってことだ。もしかすると、ジョンの世界に行けなくなるときが来るかもしれん。ジョンが情報結合した自分を操って、二人に分かれるなんてことだって十分ありえる。青俺が預かっている美姫のパワーを内に秘めてな。有希にもこのことは伝えた。アイツもみくるが寿命で死んだとしてもどうするか未定だそうだ。以前はみくるが死んだ時点で有希も命を絶っていたらしい。それが未定に変わったのなら、もしかすると有希も一緒に500年後の未来で闘ってくれるかもしれん。できれば、黄、青のSOS団メンバーは残って欲しいが、そう上手くもいかんだろう。だが、これが俺の野望だ」

 

 話すことは全部話した。みくるがどういう決断をするにせよ、俺の道は変わらない。そろそろ時間も昼時か。
「生きます!!」
「みくる、どうかしたか?そろそろ昼時だ。戻ろう」
「キョン君、わたしも500年生きます!有希さんにもそう伝えます!今のわたしじゃ戦力になんてなれません。でも、この時間平面の未来を安定させるのがわたしの存在意義なんです!わたしが死んだあとに結局人類が滅亡するなんて絶対に許せません!」
「『わたしの存在意義』って佐々木みたいだな。だが、あと500年もあるんだ。みくるだって戦闘経験を積めば闘えるようになる。今は、バレーをするか野球の手伝いだな」
「キョン君、復興支援が終わったら、わたしに闘い方を教えてくれませんか?」
「みくるの頼みなら何だって叶えてやるさ。戻るぞ。メイクも一旦取ってしまおう。涙でボロボロだ」
「はいっ!」
メイク直しは昼食後にやるとして、今頃になってマズイことに気が付いた。
「すまん、明日の日本代表のディナーについてだが、生放送と被っているせいでSOS団メンバーが調理スタッフとして出ることができない。ハルヒとみくるは催眠をかけた状態で来てくれ。ホールスタッフも青OGに催眠をかけるかENOZに出てもらうかのどちらかだ。調理の方は俺の影分身で十分なんだが、古泉と……もう一人は誰の催眠をかけようかで迷っている。こっちにもTVカメラが入ってくるから俺が出るわけにもいかん」
「夏のオンシーズンも夜の調理スタッフに頼んでいましたし、彼らに見えるようにすればそこまで問題はないかと」
「よし、ならそれでいく。ホールスタッフは誰が出るか決めておいてくれ」
『問題ない』
メイク直しをしてからドライブの続き。重い話はもう終わったし、あとはみくるとドライブを楽しむことにした。

 

「あれ?なんであんた、アンスコ履いているの?」
「青私、また玩具を漁ってつけていたの!?もう!いい加減やめてよ!!」
「やめてって言われても……つけろって言ったのは先輩だよ?」
『先輩が!?』
「んー…、説明するとつけている本人も俺も恥ずかしくなるような話だから聞かない方がいいと思うぞ?それに、俺もそれについてよく知らずに『明日から付けてろ』なんて言ってしまったんだが……一日10分~15分でいいそうだ。すまん」
「大丈夫です!明日からもずっとつけています!」
「大丈夫じゃないわよ!何付けているのか知らないけど、短時間しか使わなくていいものを、丸一日つけなくてもいいじゃない!」
「ぶー…分かったわよ」
結局周りからの圧力に押されたか。最近はそれでやめるんだから、こっちも少しは進歩した……かな?
「え?でも、短時間でも毎日つけろってことでしょ?キョン、何渡したの?」
「だから聞かない方がいいって」
『気になります!!』
やれやれ……結局話す羽目になってしまったか。しかしまぁ、今朝も何人も赤面することになるほどだったんだ。今から磨いておいても損をすることはない。案の定、赤面しているメンバーが何人もいたが、つけていた本人は至って普通。というよりちょっと興奮気味……?だが、明日から夕食後の時間はつけることにほぼ全員が賛成した。明日はいいとして、夜練は大丈夫なのか?おい。
「とりあえず、昨日みたいなことになるなよ?」
『問題ない!』
恥ずかしい思いをしたくないからとはいえ、こんなことで超能力の修行の士気が上がるとは思わなかった。

 

「キョン君、今日も個室でもいいですか?」
「なんだ、昨日の分割増するんじゃなかったのか?」
「わたし達の……ってわけじゃないですけど、ああいう時間も欲しいです!」
「ほぇ?キョン君と個室で何をしてたんですか?」
「古泉の結婚式の式場探しだよ。今日はみくるともチャペルに行ったが、あれは古泉が厳選してきてくれた中から四人で選んだものだ。国外のものも含めて冊子を見ながらどこがいいか話してたんだよ」
「キョン君、わたしもそれがいいです!!」
「じゃあ、今日は二人とも個室だな。ベビードールを選んだら別の個室に入ろう」
『はぁい』
個室に入って昨日の続きをしていたものの、青みくるの方は我慢ができずに冊子をどかして個室で抱き合っていた。明日はみくるの方がそうなるかもしれん。その夜はディナーの支度を終えたこともあり、ジョンと入れ替わって盗塁を試みる有希を刺す練習。80%でも十分ゾーン状態に成れた。修行の方も順調に進んでいるらしい。翌朝のニュースは相も変わらず互いの社長の責め合い。だが、『謝るならまず自分から』と見出しをつけていた新聞社の社長が周りからの執拗な責めに耐えきれなかったのか自社の社長室で土下座しているところを写した一面記事が掲載されていた。記者会見じゃ色々と聞かれると踏んだらしいな。言い返せばより一層叩かれると見越して、自社で謝罪したといったところだろう。例のTV局は、今夜古泉の反撃を喰らうとも知らずに全くの無反応。記事を差し替えた週刊誌に対する処分についてはどこも触れておらず、週刊誌なだけに来週発売のもので対策を取らないと、やられるだけで文字通り手も足も出せない。ディナーの仕込みを終えているならと有希からドライブの誘いがきたが、スカウターでTV局の様子を見ながらじゃ、折角のドライブも楽しめないだろうと土曜日の昼食の支度を先にやることにして土曜日は夕食までに戻るとして、昼食後すぐに出かけることになった。

 

「あんた一体、みくるちゃん達と個室で何してたのよ!?」
朝、眼が醒めたハルヒから怒号が閉鎖空間内に鳴り響いたが、事情を説明して「抱き合うだけが夫婦の時間じゃないだろ?」と話すと、いつものように他の人間が正妻に隠れて何をしていたのか嫉妬していたらしい。「ふむ、それもそうね」の相変わらずの一言と共に、今夜はハルヒも参加することになった。鏡部屋の鏡は正式にこれで取り外すことになりそうだ。みくる達が選んだところに付箋でも張っておくことにしよう。それでもハルヒなら最初から全部見るなんて言いかねんが、まぁ、念のためだ。朝食時に赤面していたOGは、今日は二人だけ。全員が『絶対に周りに音が漏れない』と条件づけていたはずなんだが、何が悪かったのやら……俺にも分からん。変態セッターがつけていた道具のことやこの後どうしたいかなど、余計な雑念が入っていたのかもしれん。今日は夜練もないし、情報結合で何種類もカラーを用意させられたアレはいつ使うことになるのやら。
 古泉の影分身が運転するリムジンに青チームSOS団五人を乗せてTV局へ。青みくるの飛び方、カメラワーク、羽を生やすパフォーマンスの見せ方をどうするかで時間を喰い、SOS団だけで何回演らされたか片手で数えきれなくなった時点で数えるのをやめた。まぁ、それだけスタジオが狭く、カメラも自由に動かせない、しかも生放送となればリハーサルに余念なんてあってはならない。座る順は大御所MCの左隣から青ハルヒ、青みくる、青有希、青佐々木、青朝倉。この間の試合で朝倉の超光速送球とバックスクリーン直撃弾を目の当たりにしているはずだが、やはり局が違ってはそういう事も聞けないらしい。オープニング後一番手で出てきたのは青チーム五人。場合に応じてCMや他のアーティストとのトーク時間で調整するつもりだろう。催眠を解除した青みくるのネックレス、イヤリングについても振られ、エンジェルウィングはすべてプラチナ、ダイヤモンドの内部にアクアマリンを埋め込んで、すべて俺がデザインして作ったものだから、いくらになるのか分からないとコメント。まぁ、実際にいくらになるのか作った本人も分からんからな。勝手に鑑定でも専門家に聞くでもしてくれ。人事部とネックレス自体に影響がなければどうでもいい。ファンから「同じネックレスを」などと青古泉のような連中からの電話が来てもおかしくないからな。みくる達のファンクラブサイトにUPしろなんてことにもなりかねん。あれについてもみくるの例のハートのイヤリングと同様、値段を決めておくべきだったか?などと考えているうちに女性アナウンサーが話し始めた。羽を生やすパフォーマンスはこの後。古泉の心配していた種はどうなることやら。

 

「さて、今年のM○テ、スーパーライブはSOS団の本拠地、SOS天空スタジアムで行われることになったそうです!タ○リさんも実際に行かれたんですよね?」
「あれはね……日本であそこ以外にあんな絶景見たことないし、観客まで透けて見えるっていうのが未だに信じられない。最初のコンサートのときは透けてなかったって話だったらしいけど……」
「そうですね。観客が入るとどうなるのかあたし達もそこまで頭が回らなくて……。それをキョンが改善してくれたのが今の状態です。それと、あたし達も是非使って欲しいとは思っているんですけど、実はまだ決定じゃないんです」
「決定じゃない!?一体どうして?」
「こちらからTV局側に要求した内容でまだ通っていないものがあって……それがクリアされれば、天空スタジアムでお待ちしています!」
「俺も近々あの場所にまた行くことになっているんだけども、あそこでスーパーライブがやれるのなら、どんな要求でも通してもらいたい。じゃ、スタンバイお願いします!」
ディナー、夕食を終えて、俺の本体はOG達にシャンプーをしながらスカウターでモニターを見ていた。シャンプー台に横になるところから全裸の状態なのは今に始まったことではないが、OG全員の秘部に例の玩具が奥深くまではまっていた。シャンプーの心地よさを感じながら下半身のトレーニングをしている。100階でも佐々木たち以外にもやらせてみようかとも考えてしまうな。特にハルヒと青有希は出産して筋肉が緩くなっているはず。有希は無論対象外。トレーニングをしても効果がないからな。青有希や青ハルヒは演奏中。青みくるはスタジオを飛び回っている最中だし、明日にでも100階のメンバーに提案しよう。ハルヒや青有希は羞恥心を隠せないだろうがな。

 

「くくく……ははははは」
『先輩、どうしたんですか!?』
「今頃、古泉も笑いを堪えているはずだ。大御所MCに『どんな要求でも通してもらいたい』なんて言われたら、もう断れないだろう?たとえその要求が『社長の謝罪』だったとしてもだ。それがなければ、報道陣どころかアーティスト達まで本社に入れなくなるぞ。こちら側に頼りがいがありすぎるくらいの味方がついたも同然だよ。明日のニュースでそれが無ければ、古泉から脅しの電話が入ることになる。生放送じゃもう取り返しがつかん」
「でも、それでようやく謝るんじゃ、謝ったことになってないですよ!天空スタジアムを使いたいだけじゃないですか!」
「そう。だからこそ、次に使うときも何かしらの条件をつける。『天空スタジアムを使いたいだけのために謝ったようなもの』だと主張してな。何を条件にするかは迷いどころだが、こちらにメリットのあるものなんてもうほとんどない。相手を陥れるようなことくらいだな。例えば……次のコンサートでこの局の人間が強引に入ろうとしているところをカメラに収めておいてその分の謝罪とか。もっとも、もうそんなことをされたところで嬉しくも何ともない。その代わり、この局の人間をすべて制限することが可能だ。『社長にまた謝らせたいのか?』と脅すことができる。勿論天空スタジアムを何かしらの目的で使いたいと言ってきた残りのテレビ局も同様だ。すべて『記者会見を開いた上での』土下座謝罪しか認めない」

 
 

…To be continued